MrサタンZ 真の英雄   作:寅好き

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老界王神復活

 界王神界に風を切る音が響き渡る、研ぎ澄まされた剣閃が舞うように空気を切り裂いていく。

 以前は軽く振ることさえ困難であったZソードを、剣の達人のトランクスはもうすでに物にしていた。

 確かにZソードは今でも重く感じるのは変わらないのだが、トランクスはそのZソードの重ささえも剣技に利用しているのだ。

「本当にてえしたもんだ」

と悟空が讃えれば。

「当然だ。俺の息子なのだからな」

とベジータが返すのが通例になっていた。

 悟空、ベジータ、悟飯、少年トランクス、悟天、ピッコロ、そしてカーシもトランクスに負けず劣らず打倒魔人ブウを目標に大変な修行を行っていた。

 悟空、ベジータ、悟飯、カーシが順番に組み手をし、少年トランクスと悟天をピッコロが相手をするといった感じである。

 そんな組み手をしているときでさえも、トランクスの剣の美しさは皆の目を惹き付けるものがあった。

 そして、今回は今までの成果を試すことになっていた。

「すでにトランクスさんはZソードをものにしています。魔人ブウと戦う前に試し切りをしてもらいたいと思います」

界王神が切り出す。

「そりゃあいいな。で何を切るんだ?」

「これです」

悟空の問に界王神は答えるように腕を天に向けて翳すと、立方体の黒い金属が現れる。

「これは宇宙で一番固いカッチン鉱です。トランクスさんにはZソードでこれを切ってもらいます」

 

「おお、本当にかてえな。こりゃあ試し切りにうってつけだ!」

悟空は現れたカッチン鉱を軽く拳で叩くと、そう感想をもらす。

 そして、ここで動いたのはベジータだった。

 カッチン鉱を持ち上げて離れていく。

「父さん、どうしたんですか?」

「知れたこと、俺がお前にこれを投げてやるから、お前はそれを切れ」

トランクスの問いかけにベジータは短く答えるとカッチン鉱を抱えたままさらに遠ざかっていった。

 ベジータが配置に着くと、トランクスもZソードを構える。

 皆は声援をかけようとするが、トランクスの剣を構える姿が、そして、その緊張感がそれを許さない。

 ゴクリ、誰かの唾を飲む音が静寂に満たされた空間に鳴り響いた時であった。

「でりゃあっ!!」

掛け声とともにベジータが大きく振りかぶりカッチン鉱をトランクスに向けて投擲する。

 カッチン鉱はその重さもかなりのものであるが、そんなことは感じさせないような速度でトランクスに向かって飛んでくる。

 音速など遥かに及ばない速度で迫るカッチン鉱をトランクスは静に見据える。

 その様子は、水面に映った月のように静かで荒々しさなど一辺も感じさせない姿である。

 カッチン鉱がトランクスの剣の間合いに入った時、その静寂は断たれた。

「はあっ!!」

静から動へ、一寸の乱れもない剣閃は、紫電の輝きを一本残して過ぎ去った。

 カッチン鉱は何事もなかったかのように遠く離れた所に着弾した。

「どうなったんだ?」

悟空さえもトランクスが振り抜いたZソードとカッチン鉱の勝負の行方を見切れてはいなかった。

 それほどまでにトランクスの剣の振りが早かったとも言える。

「み、見に行きましょう」

界王神の声に皆頷き、戻ってきたベジータも交えてカッチン鉱を見に行く。

 カッチン鉱は何一つ傷が無いように見えた。

 しかし、悟空が指で軽く押してみると、カッチン鉱でさえ今切られたことに気づいたかのように、するすると上部が斜めに滑り落ちた。

「すっげえさずが兄ちゃん!!」

「本当に凄いよトランクスさん」

「お見事です」

少年トランクス、悟飯、界王神がそれぞれ賛辞を送る。

「あ、ありがとうございます」

照れながらもトランクスが賛辞に答えた時であった。

 なんとZソードが神々しく輝き始めた。

 その輝きに皆が耐えられなくなり、目を閉じしばらくたち、目を開けた時だった。

「ハロー」

しわくちゃの界王神もどきがその場に突然現れていた。

 突然の登場に驚きを隠せない一同を尻目にしわくちゃ界王神もどきが口を開いた。

「わしをこっちの方法で封印を解くとは本当にたいしたもんじゃ」

なにか、感慨深げに頷きながら話している老人に界王神が一同を代表して問いかける。

「あのう、貴方はいったい?」

「情けないのう、御先祖様の顔すら分からんとは。わしはずっとず~~と前の界王神じゃ」

「えーーーーっ!!」

皆が驚きの声をあげるのを老界王神はしてやったりといった感じで笑みを浮かべ喜んでいる。

「ご、御先祖様はいったいどうやってここへ?」

「なんじゃそんなことも知らなかったのか嘆かわしい。わしは剣にされ封印されとったんじゃ。そしてその封印が解かれたからわしがこうやって元に戻れたということじゃ」

老界王神の突飛な話に皆が呆然とする。

「なんじゃ、お前らわしの話が信じられんのか。お前さんがわしの封印を解いたんじゃろ」

老界王神はトランクスに指を指してそう言う。

「えっ俺ですか」

「そうじゃお前さんじゃ。わしの封印を解く方法は二つ。一つ目が剣を折ること。そして二つ目が宇宙一固い金属を切ること。どちらもほぼ不可能な為にわしを剣にしたものが作った制約なんじゃ。そしてその二つのなかでもより難しく、最高難易度のものをお前さんはクリアしたということなんじゃ」

老界王神の話に皆驚き、尊敬の眼差しをトランクスに向ける。

「で、なんでじっちゃんは封印されたんだ?」

悟空が問いかける。

「聞きたいか?聞きたいか?」

「ああ教えてくれ」

「それはなあ……」

 そこからは、老界王神の自慢交じりの話が永遠のように続いたので簡潔に纏めると、潜在能力を限界以上に引き出す能力ということであるみたいだ。

 ナメック星の長老の能力の上位互換能力と言ってもいい。

「で、じっちゃんの能力があれば魔人ブウに勝てるんか?」

延々と自慢話を聞かされて疲れきっている皆に変わって悟空が本題を切り出す。

 

「たぶん無理じゃ」

 

場の空気が凍りつき、絶望が舞い降りた。




原作を大幅に変えさせてもらいました。
原作をこよなく愛するファンの皆さんには申し訳ないです。

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