MrサタンZ 真の英雄   作:寅好き

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 ラストスパートなので展開が一気に変わります。


伝説の究極戦士

 界王神界に穿たれた巨大な大穴を前に魔人ブウは口角をあげて嫌らしい笑みを浮かべていた。

 それとは逆に戦いを見守っていたZ戦士には絶望が走る。

 大穴を占める闇と同等の不安と恐怖という闇が心に現れかけていた。

 その時、魔人ブウの表情が曇り、逆にZ戦士の心の闇は払われ、表情は晴れ渡る。

「かなり強いなお前」

服は破け身体中に数えきれないほどの怪我を負ったベジットが現れたのだ。

「イキテイタカ」

腹立たしげに声を荒げて魔人ブウは言う。

「ああなんとかな。お前を全力を出さずに倒そうとしたことが間違いだった。次は全力でやらせてもらうぜ。超サイヤ人3のベジットでな!」

そう宣言をするとベジットは足を肩幅に広げ腕を腰のあたりまであげ気を爆発させる。

 黄金の気が吹き荒ぶ、まるで嵐のようだ。

 界王神界を丸々呑み込むと言っても過言ではない。

 グングンと際限なく爆発的に膨れ上がるベジットの気。

 スパークがともない始め、これから3へと差し掛かった時だった。

 魔人ブウが舞い上がる。

 そしてガリガリだった体が風呂敷を広げたように広がった。

 皮しかないためこのようになったのだろう。

 そのまま黒い皮は気を溜めるために無防備になっているベジットに襲い掛かりまとわりついた。

「なんだこれは、離れやがれ!」

ベジットがもがけばもがくほど飲み込まれていく。

 そして、ついにベジットは魔人ブウに呑み込まれた。

 この攻防は長いようで短い数瞬の出来事であり、Z戦士も手を出すことができなかった。

 呑み込まれた二人が目覚めたのは以前に一度訪れたことのある肉でできた壁で囲まれている空間であった。

「どひゃあどうなってんだこりゃあ!!」

そのような空間に悟空の叫び声が広がる。

「五月蝿いぞカカロット!」

隣からはいつものつんけんした口調でベジータが文句を飛ばす。

「だってよお、合体が解けちまってるんだぞ!」

「フンッ、大方取り込まれてここに来た時に解けたんだろう。また戻れば元に戻るだろう」

落ち着き払った表情でベジータは語る。

 冷静に分析するあたりは、さすがに戦いに慣れたサイヤ人の王子である。

「じゃあこっから出りゃあいいんだな」

「ああ、口かけつどちらかからな」

「オラは口がいいぞ」

「フン、俺もだ」

久々に意見が合った二人が舞い上がろうとしたとき、肉の壁が競り上がり、何かが這えてきた。

 先ほどまで戦っていた魔人ブウの上半身である。

「フヒヒヒヒ、モドッタモドッタ」

空間に響き渡り、不快な笑い声。

「分かっていたような話ぶりだな」

ベジータが苛立ちを隠さずに怒鳴る。

「アア」

簡潔に一言で魔人ブウは答える。

 カーシが恐れていたのはこのことであった。

 前回の戦いの知識を有しているためにベジットの解除法を知っていたのだ。

「ここから出しやがれ!」

悟空が叫ぶ。

「アアイイゾ。タダシ……」

魔人ブウは人差し指を悟空とベジータに向け気を放った。

 見た目はドドンパしかし、威力は遥かに違う。

 放たれた一本の光線は悟空とベジータの耳に光るポタラを撃ち抜き破壊した。

「ヒャハハハハハハ!ノゾミドオリダシテヤル」

魔人ブウは再び壁の中に戻り、空間が歪み始める。

「やべえぞ。ポタラが壊されちまった」

「このままでやるだけだ」

二人は壁に呑み込まれ、そして外に排出された。

 二人が再び外に出た時だった。

「悟空、ベジータ早く仲間の元へ行け!!」

緊迫した声が飛ぶ。

 声がした方を見ると魔人ブウをカーシが羽交い締めにして拘束していた。

「お前たちが揃った時最後の希望になるんだ。やり方は皆に伝えてある早く!!」

「ああ、行くぞベジータ!」

「指図するなカカロット!」

悟空とベジータはカーシの拘束も長くはもたないことを察して仲間の元に向かった。

 悟飯、青年トランクス、少年トランクス、悟天がすでに待っていた。

「悟飯おらたちはどうすりゃあいいんだ」

「カーシさんが言うには、父さんがここに立って、僕とトランクスさんと、トランクスと悟天、そしてベジータさんで父さんを囲みます」

言われた通りに皆は行動をするが、ベジータは従わない。

「なぜ俺が――」

「父さん!」

「パパ!」

二人のトランクスの声。

「チッ。クソッタレ!今回だけだぞ!」

ベジータも悪態をつきながら渋々輪に加わる。

「で、こっからどうするんだ?」

「はい、皆の気を父さんに注ぎ込むらしいです」

「仕方ない、いくぞカカロット!」

「いきます」

「悟空さん」

「お父さん」

「おじさん」

ベジータ、悟飯、トランクス、悟天、トランクス、の5人のサイヤ人が悟空に一斉に気を注ぎ込む。

「やったぞ………」

その様子を見て安心したように腕がちぎれたカーシは、焼け焦げて黒い煙をあげながら落下していった。

 サイヤ人のが注ぎ込まれた悟空が光出す。

 その光がなくなった時には、皆の中心に立つ悟空は、金色の気が少し混じった赤い気を纏い、瞳は碧眼から黒い瞳に、体は一切の無駄を削ぎ落とされたようなスリムな体型の悟空が。

 神の領域に足を踏み入れた悟空がいた。

 あれはそう。

「伝説の超サイヤ人ゴッドじゃ!!」

老界王神が驚愕した表情でそう言った。

 ついに史上最強の戦士、超サイヤ人ゴッドが現れた。


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