期末試験と試験勉強に追われていまして。
物語もラストまであと一、二話、です。
お付き合いお願いします。
燃えるように逆立つ赤い髪、穏やかな漆黒を湛える瞳、体はほっそりと全ての無駄が取り除かれた感じの均整が取れた肉体。
今までの悟空とは似て非なるものがそこにいた。
「どういうことだカカロット!全く強さを感じないぞ!」
気を悟空に送ったためにフラフラになりながら詰め寄るベジータ。
「父さん、僕も父さんの気が全く感じられません。まるで人造人間のように…」
悟飯も悟空の変わりように同様が隠せない。
当の悟空は穏やかな瞳で二人を見つめるばかりである。
そんな皆の所に老界王神がやって来る。
「これでいいんじゃよ。まあ文句を言わずに見ておれ。とんでもない強さを見られるぞ。さあ悟空お前の『神』の力を見せてやれ」
飄々とした表情で老界王神は悟空を送り出そうとする。
「ああ行ってくる」
悟空もそう返すと、言葉を残して姿が消える。
まるでそこには何もなかったかのように。
水面であっても波紋すら起きることはないであろう動きで。
皆と共にいるサタンの元へボロボロになりながらもなんとか体を再生させたブウが戻ってくる。
「カーシさん心配しましたよ。もう大丈夫なんですか?」
サタンは急いでカーシの元へ寄る。
「大丈夫とは言えないが、万全を期したいサタン協力してくれ」
「はい?」
いきなり協力を求められるサタンはカーシの真意が分からないながらも一応了承する。
二人は準備に向かった。
◆◇◆◇◆◇
空気を揺らすことも、衝撃波を撒き散らすこともなく、また気を放つこともなく現れた悟空に対して驚きが隠せない魔人ブウ。
しばらくたじろいでいたが、ベジータや悟飯のように気を感じられないことと、痩せ細ったような体をしている悟空を見て気を抜き始める。
それが今の悟空に対しての行動の命取りとなる。
魔人ブウの目の前にいたはずの悟空がいなくなっている。
まばたきすらしていないことから、言い知れない恐怖を魔人ブウは感じる。
「よっ」
「!!!」
突然背後から叩かれる肩。
冷や汗が絶え間なく流れ落ちるのが感じられる魔人ブウ。
恐れおののきながら振り返ると、穏やかな表情の悟空が。
そして、その悟空の口元が緩んだ時だった。
「グワァアアァー!?」
悟空が手を置いていた魔人ブウの肩が消し飛んだ。
塵一つ残すことなく。
痛みと底知れない恐怖に表情を歪めながらも悟空から距離を取り、消し飛ばされた肩の再生を行おうとするブウ。
「!!??」
しかし、顔面蒼白になりガタガタと震え出す魔人ブウ。
それもそのはず、全く再生することができなかったからだ。
遠くから戦いに見いっている仲間たちも何がなんだが分からない。
戦いと言える代物ではもうないからだ。
そして、どんなに痛手を与えても下卑た笑顔で再生していた魔人ブウが恐れの表情を浮かべて、再生できないのだから当然だ。
そんな中で、老界王神が微笑みながら呟く。
「当然の結果じゃな。今の悟空は『気』ではなく『神』の力を操っておる。『神』の力はあらゆる邪悪なものを払う力。今の悪意の塊の魔人ブウには逆立ちしても抗えん力じゃ。当然浄化された箇所も再生することは不可能じゃ」
ついに悟空が戦闘民族ね神になった瞬間だった。
魔人ブウはいてもたってもいられない状態に陥っていた。
今までの完全に優位な状態は儚く壊れ、もう奇跡が起ころうともどうにもならない窮地にたたされていたからだ。
そして魔人ブウがとった行動は――逃走だった。
魔人ブウは悟空に背を向けると、とんでもないスピードで天に向かって飛び去ったのだ。
混乱しながらも宇宙空間にまでは追っては来られないだろうと判断したのだろう。
コンマ一秒にも満たない中で悟空の姿が見えない所にまで舞い上がっていた。
魔人ブウに安堵の表情が浮かんだ時だった。
「遅かったな」
「ヒィッッ!!」
悟空が目の前にいた。
さっきまで地上にいたはずの悟空が、すでに大気圏まで達しているのに。
魔人ブウは恐怖に顔を歪めながらも再び向きをかえて逃げようとした時だった。
振り返った所に悟空がいて、手をおかれるもう片方の肩。
「グワォオアァオ!!」
悟空の腕から「神」の力が発せられる。
万全だったもう一方の肩も消し飛び浄化された。
両肩を失った魔人ブウの戦意はもうすでに枯れ果てていた。
死んだ魚のような虚ろな瞳、逃げようが、戦おうがもうどうにもならないという現実を受け入れるしかない。
少しずつ近づいてくる穏やかな瞳の悟空が魔人ブウには破壊神のように感じる。
避けられない絶対の『死』をもたらしに、完全なる恐怖が迫ってくる。
今までは万物に対して真逆の立場であった魔人ブウがだ。
眼前まで歩みよった悟空が『神性』に満ちた腕を魔人ブウに伸ばす。
あらゆる邪悪を払う悟空の手が近づく。
魔人ブウには駒送りのように見え『死』までカウントダウンに入った時だった。
あと一センチ、いや一センチないかというところで悟空の手が止まった。
「あ、あと一歩ってところで…」
悟空の燃えるように逆立った赤い髪が、黒く戻り、穏やかな瞳も以前の優しさを感じさせる瞳に、無駄が一切ない体も以前の筋肉隆々なものに戻り大気圏から落下していった。
超サイヤ人ゴッドの際限のない力には制限時間があり、それがきれた時だった。
かなり独自設定的なところもありましたがお許しください。