サタンがどこぞで必死にカーシとともに修行していた時に、セルがテレビ局を乗っ取りセルゲームの開催を宣言したり、防衛軍がセルに傷つけることすらできずに全滅させられるという、全人類を震撼させるできごとが起こっていた。
そんななかで人類は最後の希望の光として世界最強の男ミスターサタンに全ての望みをかけることにしたのだった。
サタンの修行もセルゲームの前日に無事終えることになった。
「どうだサタン。」
「ああ…、今までとは世界が変わって見えるな。」
サタンは落ち着き払って辺りを見回した。
サタン修行を終えることで、実力だけでなく、風格も身に付けていた。
「パパーお帰りなさい。報道局の人達が来てるよ。」
1人娘のビーデルが花が咲くような満面の笑みを浮かべてサタンのもとにやって来た。
「そうか。ご苦労だったなビーデル。少し話をしてくる。」
サタンは報道局の面々と話すべく去っていった。
「ねえカーシさん。パパなんか変わっちゃってない?」
ビーデルは悲しそうにカーシに聞く。サタンのあまりの変わりように動揺と悲しさがビーデルのなかでごちゃ混ぜになっていた。
「大丈夫だビーデル。サタンはセルゲームの前で緊張しているだけだ。少したてば戻る。(悟空なんていつもそうだしな)」
カーシとしてももう家族そのものであるビーデルが悲しんでいるのは、見ていて胸が痛むので安心するように優しく諭した。「そうだといいな。」
ビーデルはぽつりぽつりとこぼした。
だがビーデルの悩みなど関係ないように時間は過ぎセルゲーム当日がやって来た。
「ミスターサタン。お迎えにやって来ました。今日1日英雄サタン密着24時、お願いします。」
「ああ、だが昨日言ったように私が危ないと言ったら直ぐに退くんだぞ。」
「は、はい。」
サタンの有無を言わせぬ雰囲気に報道陣は頷くことしかできなかった。
サタンが家の外に出ると門弟だけでなく、多くの人が集まっていた。
サタンが姿を見せた瞬間どこからともなく沸き起こるサタンコール。その様子だけでも人類がどれだけセルを恐れ、サタンに期待しているかが伺えた。
「皆集まってくれてありがとう。では行ってくる。」
以前のサタンであればマイクパフォーマンスの1つでもやったはずであるが、今回のサタンはそのようなことはせずに、冷静に感謝の意と行ってくるとだけ簡潔に言い、報道局が用意した車に乗り込んだ。
いつも饒舌なサタンが車内でも沈黙を貫いていたので、報道陣はサタンでも緊張しているのかなと簡単に思っていた。だがサタンが黙っていたのは全く違うものであることなどいつも一緒にいたカーシでもわからないものであった。
車で移動してかれこれ3時間、荒れ果てた岩場に場違いで大きな武舞台が見えてきた。
「あれか…」
「そうですあれがセルゲーム会場です。カメラさんとってとって。」
「はい。」
武舞台が見えてきたことで報道陣も慌ただしく動き始めた。
近づく度に武舞台の大きさが実感された。
(悟空さんはあの広い武舞台をも狭苦しそうに移動していたな。わしなんかとは次元が違うということか)
武舞台を見て苦笑いを浮かべたのを見逃さなかったカーシがサタンに呟く。
「安心しろ、大丈夫だ。おれが直ぐに終わらせてやるから。」
「ああ」
サタンは素っ気なく返したが、心の中では本当にカーシに感謝していた。
サタンはついに決戦の地に降り立った。まあ戦うのはカーシなのだが。
「うっ!!」
降り立つと同時にサタンに戦慄が走る。
修行によって気を感じられるようになったが故にセルの力が桁違いだということがわかったからである。
(なんてことだ。わしはこんな化け物にあんな風に喧嘩を売っていたのか。無知とは恐ろしいものだ。
ずっと悩んでいたのだが、カーシは大丈夫なんだろうか。セルの恐ろしさは分かるが、カーシからはこれほどの気を感じたことはない。わしはカーシに傷ついて欲しくはない。)
サタンが黙っていたのはカーシの心配をしてのことだった。気を感じれるからこその悩みである。
悟空やベジータさえも復活したブウの気は不思議とは感じてもあまり驚異に感じていなかった。
そうブウも極限までに気を押さえていたからだ。
「あれれ、なんか来ますよ。」報道陣が指差す方向を見るとベジータが舞空術でやって来たところであった。
「空からやって来た気がしましたが、まあいいか、観客かもしれないので忠告してあげましょう。」
「や、やめておけベジータさんは冗談はつうじないんだ。」
ベジータとも付き合いがあったために性格は熟知しており、恐ろしさは分かっていた。
そして段々元に戻り始めるサタン。
そして後れ馳せながらやって来るZ戦士一向。「あ悟空さんだ。カーシさんちょっと挨拶してくるよ。」
「サタン」
カーシの制止も聞かずに悟空のところに向かう。
「悟空さんお久しぶりです。」
「ん、誰だオメエ、オラのことしってんのか?」
(しまった)
サタンと悟空は親戚関係であり仲良くしていたのでつい以前のように挨拶に来たのだが。
過去であることをついつい忘れていたのだ。
「すまん人違いだった。」
そそくさと戻っていくサタン。
(悟空さんの姿がまったく変わらないから過去ということ忘れていたよ。それよりなんで見た目が全く変わっていないんだ。)
サタンは新たな疑問をもったのだった。
そんななか報道陣がサタンにある意味の無茶ぶりをかける。
「ミスターサタン、セルやアイツらにひびらせるためと、視聴者の皆さんのためになんか見せてくれませんか。」
ついにきたこのふり、以前のサタンはここで振られることなく自分から瓦を取り出して場を白けさせたのだが、今回は違った。
「よしやってやるか。」
サタンは覚悟を決めて武舞台に上がる。
「おいおい、あいつなんかする気だぜ。」
クリリンが疲れたように肩を落とし首を振りながら悟空に話しかける。
クリリンだけでなく他のZ戦士も怪訝な顔をして見ている。
「はああぁぁっ」
サタンは周りの視線を無視し、手を合わせ精神を集中する。
サタンの手と手の間に丸い光の玉が現れる。
「おいおい、あいつ気を扱ってるぞ。」
「マジかよ、なかなか強い気だぞ。」
「ふん」
クリリンとヤムチャは驚きの声をあげ、ベジータはつまらなそうに、悟空はそんなベジータを見て苦笑いをしている。
「はあっ、サタンスーパーアタック。」
サタンは出来上がった気弾を前方に打ち出す。
サタンの放った気弾はフヨフヨと亀が歩むぐらいのスピードで飛んで行く。
『プッ驚いて損したぜ。』
クリリンとヤムチャはそれをみて腹を抱えて笑っている。
しかしそれも直ぐにやむことになる。サタンの気弾が約2~30メートル程の岩に当たった瞬間凄まじい爆音と爆風が巻き起こり岩が消し飛んでいた。
Z戦士主にクリリンとヤムチャは驚愕の表情、悟空は楽しそうに見ている。
ピッコロ、ベジータは興味なさそうと、反応は多種多様だが、以前のようにしらけることはなかった。
「………あっ、アナウンサーである私としたことが驚きで何も話せなくなるとは、申し訳ありません。皆さーんミスターサタンが驚愕の力を見せてくださいました。安心してください。もうサタンに勝てる者はいないと確信しました。ではそろそろセルゲームスタートの時間です。ミスターサタンよろしくお願いします。」
アナウンサーが時計を見てそろそろだとサタンに振る、しかしそこで待ったがかかった。
「師匠のサタンの手を煩わす必要はない。おれが戦う。」
カーシが手に隠したメモをチラチラ見ながら棒読みで宣言した。
次回からセルゲームですが、直ぐに終わりそうなので、アニメ版よろしく少し引き延ばすかもしれません。