猿沼麗瑚は前世、ゴレイヌという名前のプロハンターだった。しかし今はしがない男子中学生である。
ある日の放課後……彼が通う学校で正気を無くした複数の人間が女生徒を襲っていた。猿沼はそれを助けるべく向かうが、その先で彼はひとつの出会いを果たす。

それは彼の今後の人生を大きく変える、正に運命の出会いであった。

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細かい事気にせず頭空っぽにして読んでもらえれば幸いです。


ゴレイヌ☆白書

 俺の名前は猿沼 麗瑚(さるぬま れいご)。親には悪いが、随分似合わない字面の名前をつけてくれたもんだ。

 そして、前世の名前をゴレイヌという。

 

 人に言えば頭がどうかしてると思われるだろうが、俺には前世の記憶というものがあるのだ。しかも、今生きている世界とは別の世界ときている。当然誰にも話したことは無い。黄色い救急車にはお世話になりたくないからな。

 以前生きていた世界ではハンターという仕事をしていた。生まれ変わったという事は前の俺は死んだという事なのだろうが、常に危険と隣り合わせの仕事だ。覚えていないのが幸いなほど、ろくな死に方はしていないだろうぜ。だがどうせ覚えていないのだ。満足のいく人生を送り寿命で死んだとでも思っておこう。そっちの方が幸せだ。

 

 この前世の記憶というものが俺の妄想でないという証拠に、俺は前世で習得した「念」という能力が使える。正確には使えるようになった、だがな。

 前の時も使える奴は少数派だったが、この世界で俺はまだ念能力者に会ったことが無い。気という似た概念はあるが、能力とまでは確立されていないように思える。いまだ俺がこの世界を知らないだけのひよっこってだけなのかもしれないが、それでも何も知らないはずの俺がちゃんと能力としてそれを身につけたのだ。ただの妄想の産物ではないだろう。

 

 産まれた時はあいまいだった記憶が、自我が発達するにつれて徐々に鮮明になっていった。そして完全に俺が「ゴレイヌ」としての自我を取り戻すと、まず最初に始めたのはその能力を再び身につけることだった。今思えばゴレイヌとして生きた記憶を嘘にしたくなかったのだろう。家族にばれないように修行するのは大変だったぜ。

 

 しかし念能力を覚えたからといって、今の俺はしがない男子中学生だ。念能力を使う場面など無いし、せいぜい鍛えた体で体育の授業でヒーローになるのがいいところだが……ま、目立ちたがりなたちでもないしな。今のところは無難なところにとどめている。将来的な目標が決まってそれがスポーツ選手だったら生かせばいいが、未だに俺は新しい人生での生き方を決めかねている。自分で思っている以上に、俺は14年間ずっと新しい人生というものを受け止められずにいるようだ。これといった目標もなく、ただぼんやりと平和にこの「日本」という国で生活している状態は前世の俺からすれば非常にもどかしく感じるが……だからといって、そう簡単に人生の目標など決まるわけもない。

 

 まあ、人生は長い。この国は危険も少なしい、今はせいぜい己を研鑽してくるべく時に備えればいいのだ。焦る必要は無いだろう。

 

 そう思うながら、今日も俺は中学へ通うのだ。

 

 

 

 

 

 

「死ねぇぇぇ!」

「おっと」

 

 俺は鈍く光るナイフを避け、襲い掛かって来たチンピラの腹に一発くれてやる。するとあっけなく男は白目をむいて気絶した。

 

「最近多いな……」

 

 ここしばらく、今のように急に襲い掛かてくる輩が増えた。すでに何人か警察に引き渡したため、この辺の警察官とはちょっとした知り合いになってしまったほどだ。俺の制服と顔を交互に二度見されるのにも慣れたさ……。悪かったな、老け顔で。これでも一応中学生だ。

 そいつらは気が狂ったヤク中に見えなくもないが、俺からしてみれば誰かに操られているようにも感じられた。もしやこの世界にも念能力者が居るのではと、ためしに凝をしてみたが……結果はハズレ。記憶のおかげとはいえ俺が念を使えるようになったんだから、この世界にも似たような能力者が居てもおかしくないんだがな。ま、物騒ではあるがおかしなことをやらかそうって奴が居ないのは幸いだ。

 念能力者は見当たらないが、この町は妙な気配がすることが多いからな……少々気にしすぎていたのかもしれない。

 

 しかし。

 

「ん? 虫か?」

 

 まただ。気配だけして、姿が見えない。そんな奇妙な感覚がして、顔の横を振り払った。何かをつぶしたような感覚がしたが、手を見ても何もついていない。……気にしすぎかもしれないとも思うが、この感覚は気持ち悪いな。

 

 やはり、しばらく注意を怠らないようにしよう。

 

 

 

 

 

 

 そう思っていた矢先だった。

 

「きゃあ!?」

 

 ガラスの音が割れる音と共に聞こえてきた女生徒の声に、残って委員会の仕事をしていた俺はすぐに走り出した。悲鳴と音が気になったのはもちろんだが、今までと比べべくも無いほどの”奇妙な気配”を感じ取ったからだ。湧いて出た、という表現が適切なほどいきなりだ。これは何かある!

 しかしたどり着いた先には割れたガラスと血痕が残るだけで誰も居ない。周囲を見てここに居た人間が何処に行ったか探そうとすれば、窓の外に複数の人間に襲われる二人の少女の姿が見えた。急いで窓から飛び降りたが、ちょうど少女らが校内に逃げ込み襲っていた奴らもそれを追っていったところだった。クソッ、タイミングが悪い!

 

 待ってろ、今助けるからな!

 

 

 

 

 

 

+++++++++++++++

 

 

 

 

 

 

 

「螢子!! ぼたん!!」

 

 巨大なモニターに映し出された映像に、幽助は叫んだ。それを見た異形の笛を奏でていた男は、笛から口を離して幽助に話しかける。

 

「美しい音色だろう。お前の彼女の葬送曲にと思ったのだが、早かったね。ちょっと予定が狂ってしまった」

 

 そう言った男は、自らを四聖獣リーダーの朱雀であると名乗った。

 

 幽助を始め、桑原、飛影、蔵馬の4人は朱雀の持つ虫笛を壊すためにここ、妖魔街へとやってきたのだ。

 四聖獣と呼ばれるこの街を統治する妖怪たちは、虫笛を使い人間界に数千匹の魔回虫を放った。取り付いた人間の破壊・暴力・殺害衝動を強力にひきおこすその虫を全滅させるには、操っている虫笛を破壊するしかない。虫笛を渡す代わりに四聖獣は人間界への移住権を求めてきたが、そんな要求を飲めるはずもない。霊界が張っている妖魔街と人間界の間にある結界を解けば、瞬く間に町の人間は殺しつくされるだろう。

 幽助たちはすでに3人の四聖獣を倒してきたが、最後に立ちふさがる朱雀はここまでたどり着いた幽助に戦いの前菜として幼馴染の螢子が殺される様を見せつけたいようだった。とんだヘド野郎だと、幽助は怒りに烈火のごとく瞳を燃やした。

 あの世の水先案内人、幽助に霊界探偵としての仕事をもってきたぼたん。彼女が螢子に合流して一緒に逃げているようだが、あの世の住人とはいえぼたんに戦う力は無い。しかも今は現世に溶け込むために生身の体を得ているため、物理攻撃は容赦なく彼女をも傷つけるだろう。2人を救うためには、一刻も早く目の前のヘド野郎をブッ飛ばして虫笛を奪うほかないのだ。

 

 しかし、怒りを燃やす幽助と愉悦の笑みを浮かべる朱雀の表情が同時に変わった。螢子達を映すモニター内で、想定外の出来事がおきたのだ。

 

『ごふぁ!?』

『おっと先生。女生徒を襲うとは、いよいよあんたクビだぜ? ……大丈夫か?』

『猿沼くん!』

『あ、ありがとう。どこのどなたか知らないけど、助かったよ』

『! あ、ああ、いや、当然のことをしたまで、だ。です。はははっ』

「さ、猿沼ぁ!?」

 

 螢子とぼたんを追い詰めていた魔回虫に取り付かれた人間を殴り飛ばしたのは、妙に老けた顔をした一人の男子生徒っだった。幽助はその人物を見て思わず叫ぶ。なにしろ知らない相手ではない。だが、その人物が人を殴る所など初めて見たのだ。

 

(ありゃあ相当な威力のパンチだぜ。猿沼あいつ、俺にはいつも喧嘩はほどほどにとか言っておきながら随分慣れた感じじゃねーか)

 

 男子生徒の名は猿沼麗瑚。幽助のクラスメイトだ。

 老けた濃い顔以外にこれといった目立つところのない男だが、不思議とクラス中の信頼を集める奴だった。しかも腫れ物に触るような態度の周りの奴らと違って、幽助にも普通に接してくる上に幼馴染と同じような小言を真正面から言ってくる変な奴だ。だが距離感が絶妙なのか、不思議と煙たく感じない男である。

 しかし、少なくとも真面目で喧嘩とは縁のない奴だと思っていた。それがどう見てもイッてしまっている教師の岩本をはじめとした操られている人間を前にしても、怯えるどころか泰然と佇んでいる。何故かぼたんを見た時だけしどろもどろになっていたが、他の異常者に向き直った彼の姿はひどく頼もしく感じられた。

 

「なんだあの男は……」

「へっ! どうやらまたテメェの予定が狂ったみたいだな!」

 

 よく分からないが、見る限り二人の安全は確保されたようだ。

 

 幽助は目の前の男を倒す事に専念すべく、ニヤリと笑って拳を構えた。

 

 

 

 

 

++++++++++++++++

 

 

 

 

 

 俺は今、雷に打たれたような衝撃に身を震わせている。何故なら今、運命の出会いを果たしたからだ。

 

 やっと騒ぎを起こしている異常者と襲われる少女らに追い付いたと思ったら、その内1人はクラスメイトの雪村だった。

 とりあえず襲い掛かろうとしていた男を一人(なんと本校の教師だった。嘆かわしい)ぶっとばし、彼女らに無事を問うたが……振り向いた先、そこには女神が居た。

 俺に「ありがとう」と礼を言う声はまるで鈴を転がすように可憐で、長いまつげが影を落とす大きな瞳は今まで見たどんな宝石よりも……おそらくグリードアイランドにあるというブループラネットという至高の品よりも美しいだろう。白く小さなおもて、桜色の小ぶりな唇に、ポニーテールに結んだふわふわの長い髪の毛。全てが可憐で、美しい。ああ、俺の語彙力はこんなものだったのか? 彼女の素晴らしさを表すのには、こんな言葉では足りない。しかし激しく脈打つ心臓にふりまわされて、俺は気の利いた言葉ひとつを喋ることも不可能だった。どうにか出てきた言葉は情けなくもどもっていて、死にたくなった。

 だが、死にたくなっている場合ではない。とりあえずこの馬鹿どもを黙らせることが先決だ。

 

「猿沼ぁぁぁあああぁぁ!! 教師を殴るなど許さんぞぉぉぉおぉ!!」

 

 気絶したかと思いきや、男……教師の岩本は晴れ上がった顔のまま唾を吐き散らしながら叫んて飛びかかってくる。それを軽くいなし、「やはり普通の状態ではないな」と考える。なにはともあれ、雪村と名前も知らぬ俺の女神を一刻も早くこの場から遠ざけねば。

 

黒の賢人!!(ブラックゴレイヌ)

 

 念能力者でなければ見えないであろう、俺の能力で出現させた巨躯の猿。そいつに指示を出し校門まで行かせると、能力を発動させてそいつと少女を入れ替えた。それを二度繰り返し、2人を安全圏まで逃がすことに成功する。傍目に見れば突然2人が消えたように見える上に、当事者たちも何が起こったか分からないだろう。だが、今はそれでいい。何よりもまず二人の安全が最優先なのだ。

 

「さあ、気絶しないならとことんまでつきあってやろう。どこまでもつかな?」

 

 そう言って、俺は挑発するように笑った。

 

 

 

 

 

 

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 四聖獣の事件を解決してからわずかに時が流れ、幽助たちは暗黒武術大会にゲストとして呼ばれていた。

 様々な思惑が渦巻く大会であるが、熾烈な戦いが続く中……幽助を待ち受けていたのは思いがけぬ再開だった。

 

 その相手は、たった一人でその場所に立っていた。戦いのリングに立つのは、しばらく見ていない懐かしの老け顔。

 

「猿沼!? 何でお前がここに……!」

「悪いな浦飯。俺は、ここに勝つためにやってきた。スポンサーを探すこと、無理に霊感を呼び覚ましたこと、ゲスト以外に人間枠をねじ込ませたこと……苦労はあったが、俺はこの大会に勝ってどうしても叶えねばならん願いがある」

「け、けどお前まず何で一人なんだよ? チームメイトはどうし「俺だ」は?」

 

 

 

「俺が5人分になる」

 

 

 

 そうゴレイヌが言うなり、ボッとゴレイヌの周囲に4体の猿が現れた! すかさず司会の女性が解説に入る。

 

『お~っと! さっそくゴレイヌ選手の「白の賢人」(ホワイトゴレイヌ)黒の賢人」(ブラックゴレイヌ)金の賢人」(ゴールデンゴレイヌ)裸の原人」(ありのままのゴレイヌ)が現れたぁぁぁぁ!! なんと、彼は強引にトーナメントに割り込んだだけでなく、たった一人自らの不思議な能力だけで参加したのです! しかも彼は人間だぁぁー! しかしのその瞳に燃える決意はダイヤモンドよりも硬く野望は妖怪以上に強欲そのもの! いったいどんな試合が繰り広げられるのか!? これは目が離せません!』

 

 ゴレイヌはそっと目を瞑り、瞼の裏に想い人の姿を思い浮かべる。

 

 

____ああ、ぼたんさん。貴女はとても可憐で美しい。そして清い心の持ち主だ。しかし貴女はあの世の住人……たとえ想いを打ち明けても、俺はそばに居る事すら出来ない。

 

 

 だからこそ、優勝者には何でも願いを叶える権利を与える暗黒武術大会に出場したのだ。かつて人間を妖怪へと変えた実績を持つこの大会に。

 

 ゴレイヌはすっと目を開くと、苛烈な声で開戦を告げた。

 

 

 

「俺は人間をやめるぞ、浦飯ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 

 

 

 こうして妖怪が跋扈する闇の大会の中、人間同士……それも級友との戦いという、悲しき戦いの幕が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お粗末様でした!ここまで読んで頂きありがとうございます。
最後のくだりが書けて満足。

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