げどう☆ぼまーとしりある☆きらー   作:黄金馬鹿

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今回は丸々刹那さんの過去回。この頃はまだ一般人なんやで


其の十四

 彼女の名前は、サクと言った。苗字はないらしく、ただ、サクという名前があるのみ。親もおらず、ここにある村の中の大人達に世話をされているらしい。

 この島は英語を使っていた。だから、当時は英語しか話せなかった俺でも意思疎通は楽だった。

 

「それで、お兄ちゃんはどこから来たの?」

「ここから数キロ先のイギリスって国だ。行ったことないのか?」

「うん。船もないから、ここ島から出れないの」

「そうか……」

 

 やはり、この島は外界、島の外とは完全に切り離されているらしく、俺が立った砂浜も特に誰かが踏み荒らした後もなく、漂流したゴミが散らかるだけ。だが、それも目に付くものは捨ててるのか掃除しているのか。特に目立つ大きなゴミはなかった。

 そして、勿論獣の足跡も。つまり、幻獣は海まで来ない。本当に宝を守っているだけなのか?当時の俺はそんな事を考えていた。

 

「……サク、外に出たいか?」

「うん。お外にはいっぱい、楽しい事があるって聞いたから」

 

 彼女の言動と仕草は外見から判断する年齢よりは幾分か幼く感じたのを覚えている。後から判明したのだが、彼女の年齢は十三。だが、その無知は『仕組まれた物』であった。

 彼女の事を俺は哀れには感じなかった。だが、同情はした。

 こんな場所で、親もなく一人で親戚をたらい回しにされるような生活、嫌だろうと。それに、彼女は外に出たいと言った。なら、ここの宝をぶん取ったら彼女を養えるくらいにはなるんじゃないか、と。

 

「じゃあ、取引をしよう」

「取引?」

「あぁ。サク、ここら辺でお宝がありそうな場所、あるか?教えてくれたら俺が帰るときに一緒に連れてってやる」

「ホント!?……でも、私、そんな場所知らない……」

「なら、地図とかはあるか?別にこの砂浜に書いてくれてもいい」

「あ、じゃあ書くね」

 

 サクは俺の言葉を受けて砂浜に指で地図を書きはじめた。縮尺は滅茶苦茶だろうが、大雑把な事が調べれれば、後はこちらで調べられる。

 時間だけは幾らでもある。この島を調べ尽くすくらいのことは出来る。

 

「えっと、ここが山で、ここから川が流れてるの。それで、ここが村で……その奥には洞窟があって、後は森だよ」

 

 サクの大雑把な説明は、彼女の書いた地図を見る限り当たっていた。この島は小さいからか、彼女のような幼い子でも全体像は把握できているようだった。

 その中で、俺が気になったのは一点。

 

「洞窟?」

「うん。いつもは入っちゃダメって言われているんだけど、十何年かに一度だけ、村長から指名された人が入っていいんだって」

 

 ……怪しいな。当時の俺は真っ先にそう思った。

 結論からすれば、それは当たっていた。あそこは、この島の中で一番の大当たりだった。

 

「そうか……案内は出来るか?」

「出来るけど、入れないよ?」

「いいんだ。力推しには少し得手があるんでな」

 

 サクが首を傾げたが、気にするな。と俺は彼女の髪の毛を無理矢理撫でた。サクはその時、きゃー。と小さな悲鳴をあげていたが、それでも笑顔だったのを、俺は覚えている。

 この子を守るためなら、笑顔にするためなら金程度、身を粉にして幾らでも稼いだっていい。そう思えるくらいだった。

 俺が関わる子供、というのはお家、つまりは魔術師故に魔術師の子供としか関われなかった。だから、こういう普通の、元気な歳相応の子供が、一層可愛く思えた。勿論、性的な意味で、とかではない。俺はロリコンではないからだ。

 磯風で少しパサパサな彼女の頭をそれなりに撫でてやってから、俺はサクと共に件の村へと赴く事にした。

 砂浜から数十分の身近な距離にあるその村に行くまでに、俺は置換魔術で実家の適当な写真集を取ってきてサクへと見せた。彼女はそれを見て目を煌めかせていたのを、俺はハッキリと覚えている。この顔を、何時でも見たいと思ったから。

 

「外にはこんなに沢山、綺麗な場所があるの?」

「あぁ、沢山あるぞ。その本に載ってる写真よりも、な」

「そうなの!?すごーい……」

 

 サクの純粋な、心の底から出た言葉。それを聞いてから、俺の心の中の、彼女を島の外へ連れ出して養うという気持ちが更に大きくなっていった。

 子供は宝だ。子供の笑顔は宝だ。今までひねくれたガキしか見てなかった俺は、そこでその言葉の意味をやっと理解した。

 そして、数十分歩いた俺は村に辿り着いた。そこは、まだ木と草で出来たような家ばかりが立ち並ぶ、神秘が溢れていた頃の家をそのまま持ってきたような、今では家とも呼べない家が建ち並んでいた。

 畑があり、井戸がある。正しく昔ならでは、というか昔そのものな生活をしていそうな村だった。

 

「お兄ちゃんはどうするの?」

「そうさな……ちょっと離れた場所にテントを張るよ」

「テント?」

「そこからかよ……あっと、携帯出来る家、だな。見るか?」

「うん!」

 

 好奇心旺盛だな、と俺はちょっとした苦笑を浮かべた。キラキラと煌めく目には、どうしても逆らえなかった。

 俺は村から距離を取って、数分歩いた場所にテントを建てた。一人だと少し時間がかかりそうだったため、サクにも手伝ってもらった。

 

「で、ここに杭を打ち込んで……こんなもんか」

「うわぁ……すごーい……」

「今じゃ普通に売ってるっての……」

 

 俺の言葉を完璧に無視してサクは興奮冷めやらぬまま、テントの中へと入っていった。まだ何も無いのに入っていってちょっと興奮しすぎたのか軽い奇声を上げていた。

 そして、暫くして落ち着いたのか、俺もテントの中に入った。

 

「せまーい!」

「一人用だからな。狭いのが普通さ」

 

 狭いと文句を言いながらも暴れるサクを軽く抑えつけてまた頭をガシガシと撫でる。きゃー、と楽しそうな悲鳴をあげるサク。

 さて。と俺は一息ついて、サクを抱えてテントの外に出た。

 

「さて、サク。今日は俺の準備があるからここまで、だ」

「えー」

 

 抱えたサクを下ろして目線を合わせて声をかける。サクは不満気に唇を少し尖らせて不満の声を漏らした。

 

「大丈夫だ。俺が生きてたら明日も遊んでやるし、外にだって連れ出してやる。だから、明日になったらこのテントの中に入るか、ここの付近で待っててくれ」

 

 ガシガシと再び髪の毛を撫でてやれば、サクの不満な表情が笑顔になり、そして手が離れた所でサクが一回頷いた。

 

「……うん、わかった」

「いい子だ」

 

 一度抱きしめ、背中をちょっとだけ叩いてから、サクを離す。

 

「ほら、また明日だ。大丈夫だ。絶対にお前を外に連れ出してやるよ」

「……うん。約束、だよ?」

「あぁ、約束だ」

 

 約束の証と言わんばかりにサクの頭を再び撫でてから、サクを村の方へ向けて、背中を優しく押した。

 サクはその衝撃で一歩前に出て、そのまま歩き始めた。こっちに向かって約束だよ、と何度も叫び、俺は約束だ。と何度も伝えた。そして、サクが見えなくなった所で俺はその日、武器の準備を始めたんだ。

 幻獣。つまりは幻想種を倒すためには何が必要か。今でなら、無理だと叫んで逃げ出すが、若かった俺はイケるイケる。と謎の確信を持っていた。それでも、その時装備した銃火器は全く持って無駄ではなかった。完璧だったと思う。

 防刃ジャケットに、グレネード、は洞窟内での戦いが容易に想定されるためアサルトライフルとサブアームにサブマシンガン。そして、最終兵器のシグ。そしてナイフと改造スタンガン。今の俺でも、こういった状況になれば同じ装備を持ち出すだろう。俺はそれの手入れをして、確実に撃てるように調整してから、早めに寝た。

 そして次の日。万全の体調なのを確認してから、自身に軽い強化魔術がかかるのを確認し、フル装備でテントを出た。

 サクの地図を頭の中で思い浮かべ、記憶通りに進んでいくと確かに村の外れには洞窟があり、俺は通行を妨げるように張られているロープを潜り抜けて誰もいないのを確認してから中へと侵入した。

 思えば、この時。もしくは前の日。ビビって逃げていれば、サクと共に島の外へと無事に逃げられたのかもしれない。

 俺は高鳴る心臓を抑えながら足音を殺してゆっくり、ゆっくりと洞窟の中へ向けて歩いて行った。

 だが、幻獣らしい物はどこにも居ない。いや、それどころか生き物がいるのかすら危うい。そんな洞窟だった。

 俺はその洞窟を、足音を鳴らさずに慎重に、慎重に歩いて行った。そして、俺は最深部らしき場所を発見した。

 火が、灯りが灯っていた。故に、誰かがいる。何かがいる。そんな確信があった。唾を飲み、壁に張り付き、最深部の、ドーム状になっている場所を、顔の半分だけを出して確認した。

 そこには、男がいた。男。そう、人が。ヤケに古臭い、中世の貴族のような格好をした男が、ワイングラスに入った赤い液体を飲みながら、本を読んでいた。

 俺はその姿を見た瞬間、背筋が凍った。

 赤い目、そして刃物のように尖った犬歯。そして、極めつけには、鏡に映って、いない、男。

 死徒。吸血鬼。グール。何でもいい。呼び方は重要じゃない。だが、確実にわかるのは、あの男は吸血鬼だ。喧嘩を売っていい相手じゃない。サクが住む場所にいていい存在ではない。この世に残っていていい存在ではない。

 畜生。俺は心の中でそう叫びながら、足音を立てないようにそっと、そっとその場から逃げ出した。

 来る時の何倍もの時間を使って洞窟から抜け出した俺は、すぐに村へ向かって走った。目的は、サクだ。

 走った俺は、急に現れた異邦人に驚く先住民共を退け、まだ時間ではないためか村をブラブラしていたサクを見つけた。

 

「サク、サク!!」

「え?お兄ちゃん?」

 

 俺はサクの前で止まるとすぐに肩を掴んでサクの目を見た。

 

「ここから逃げるぞ!!こんな場所、お前のいていい場所じゃない!!」

「え、え?そ、それってどういう……?」

「宝なんてなかった!!幻獣なんていなかった!!居たのは死徒だ!!怪物なんだよ!!だから、逃げるぞ!!こんな場所にいる意味なんて、これっぽっちも……」

 

 ―――その瞬間、バチッと俺の首筋から音が鳴り、俺の体の自由が奪われた。

 そして俺の体が地に伏せ、まだ健在だった意識の中で見たのは、村の人間に何処かへ連れて行かれるサクと、俺のスタンガンをいつの間にかスッて俺へと使った、村の男だった。

 その時の、サクの俺を心配する目は、今でも忘れられない。




サクちゃんの名前はとある単語から。次回、サクちゃんの名前の意味が分かります

そして、この島にいるのは死徒。こんなのを、まだマトモな思考回路をしている置換魔術しか使えない刹那ニキが倒せるのか……それとも逃げるのか……まぁ、死んでたら今の刹那ニキ、オルガマリーさんみたいな事になってるんで、死んではいませんけど

刹那ニキのチョロさは、実は刹那ニキの起源へと直結しています。ってか、行動が正しくそれです。

用心棒っていう、殺し屋とはまた違った職をしているのも起源に繋がってます
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