わぁい^^
二年というのは長いようで短い。と、言うのは二十八年間生きていた俺とその生を終えた英霊だからこそ分かること。六香ちゃんやマシュちゃんにゃまだちょっと分からねぇことだ。
だが、大人連中ってのはそれが分かっている。それはもう、嫌というほど。だから、第一特異点、オルレアンへのレイシフトってのは早めに行われる事になった。
ジャック・ザ・リッパー、メディア、沖田総司、織田信長。そして、マシュちゃん。これだけの戦力が整っている。そして、時間をかける理由はない。なら、早めにやってしまおうというのが俺達の出した結論だった。
「じゃあ、これより第一特異点へのレイシフトを始めるよ。第一特異点、オルレアンは……」
「かの有名な聖女、ジャンヌ・ダルクが生きた時代ですね。そして、この時代は既に百年戦争が終わって、ジャンヌが処刑された後」
「何が起こっているのかが分からないので、まずは情報を集める事が先決になりそうです」
沖田とメディアの説明でロマンが僕の出番……と呟いて涙目になっているが、知った事ではない。俺の方も既に準備は終えて後はレイシフトを待つだけだ。
一応、手榴弾を三つ、シグとそのサブマガジンを三つ。小型のグレネードランチャーを一つと弾を三つ持ってきている。置換魔術が使えなくなる可能性がある以上、かなりの重武装をしてきた。
軍人から見れば重武装とは言えず、鼻で笑われるような装備だろうが、俺はアマチュアだ。一度で携行出来る武器には制限があるし、アサルトライフルは持ち歩くとなるとかなり邪魔になるしマガジンもスペースを取る。だから、今回は機動性を重視し、火力を求めることの出来る装備で挑むことにした。
一応、ジャックが元から持っている、メスの入ったポーチには信管を、寒そうだったからスカートを履かせてさらにその上からポーチを着けさせ、そこに紙粘土と発火装置を大量に詰め込んでおいた。まぁ、ジャックも何時もの服装は趣味じゃなかったみたいだしな。黒い服と黒いスカート。ヘソは隠せなかったが、まぁこんなもんでいいだろうって感じだ。
他は何時もの格好だが、六香ちゃんはカルデアから支給される礼装の下にボディースーツのような礼装、戦闘服を着用している。
まぁ、男の俺がいるしね。あのスーツは体のラインが結構出るから、六香ちゃんも恥ずかしいだろうし俺は何も言わんが。取り敢えず、電池で動く小型の扇風機だけは渡しておく。マシュちゃんは気合入れるだけで鎧姿になるし特筆しない。
さて、これで準備は整った。後はオルレアンに行くだけだ。
「それじゃあ、二人共。サーヴァント達は君達がレイシフトしたらすぐにそっちへ行く仕様になってるから心配しないでね。それじゃあ、行くよ」
ロマンの声を聞いて俺は作戦を頭の中で思い浮かべる。
まずはジャックに偵察をさせて敵が近づいてきたら沖田と信長に、負傷人がいたのならメディアに……
「あ、やべっ」
ロマン貴様ァァァ!!?
俺の言葉は発せられる前にレイシフトは実行され、俺の意識は落ちた。あの野郎、絶対後で射撃の的にしてやる。
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「おかあさん、おかあさん。起きて、おかあさん」
「マスター!起きてください!死にますよ!?」
「いや何でだよ!!?」
俺は二人の言葉と揺さぶりでメディアの言葉にツッコミを入れながら目を覚ました。全く、何で寝ているだけで殺されなきゃ……あっ。
「なぁ、メディアさん。俺の周りにいるのはなんだ?」
「ワイバーンです」
俺の周りにはよだれを垂らして餌か何かを今か今かと待ち構える羽根の生えたトカゲ共。まぁ、つまりは、よくゲームの雑魚キャラとして出てくるワイバーンだ。
「ジャック、ワイバーンって幻想種だよな?」
「うん。わたしたちなら倒せるけど、おかあさんだったらすぐに解体されちゃうよ?」
ふむ、なるほど。それは即ち、だ。
俺はレイシフトした先が見事にワイバーンが集まる場所で、気絶していた俺を二人は何とか目覚めさせたが、絶賛ピンチ、と。
で、周りに他の人間の気配なし。つまり、ロマンの野郎、マジで俺だけレイシフト先の座標をミスったというわけだ。
アイツ殺す。
「ジャック、好きなだけ解体してこい!メディア、俺が齧られたら助けてくれ!そして治療頼む!」
懐からシグを取り出して構える。俺の生命線がメディアなのが確定しやがったよクソが。ロマンのやつ、マジで後でぶっ殺す。
取り敢えず、ワイバーンに拳銃をば……うん、弾かれるわな。そりゃあそうなるわな。クソが。
「メディアさぁん!神代の魔術であのトカゲ共何とかしてくださいよぉ!!」
「あ、攻撃魔術じゃふっ飛ばすこともできないので」
「使えねぇな魔女!!」
こんな所でグレポン使うわけにも行かんし、拳銃は効かねぇし……えぇい!置換魔術のガチャだ!!
武器庫にいつも通りの感覚で繋げて何か掴んで引っこ抜く!!
「あったよ!スナイパーライフル!!」
「でかしたって、ええぇぇぇぇぇぇ!!?」
何かメディアが驚いているが知ったことか!!俺は生き残るぞ!!
「ジャック!そっちはどうだ!」
「ちょっと死にそう」
「ジャックゥゥゥゥ!!?」
そんでもって気が付いたらジャックがワイバーンに齧られてた。腹からいかれてた。油断したなあの幼女!!
取り敢えず、スナイパーライフルを構えてジャックを齧っているワイバーンの目を撃つ。流石のワイバーンも生き物。故に、目を撃たれれば目は潰れ、激痛で口が開く。それによって開放されたジャックが素早く身動ぎしてナイフで口の中を切り裂いてから着地、そのまま跳ねるように飛んで俺の元まで戻ってくる。抑えている腹からは夥しい量の血が流れていた。
「メディア!」
「任せてください!」
メディアが杖を両手で握って構え、ジャックへ向けて振るう。杖から溢れでたメディアの魔力はジャックを包み、穴の空いた腹を完全に修復してみせた。
やっぱすげぇな……流石コルキスの魔女と言われただけある。それに、メディアの高速神言に加えて回復強化スキル、うたかたの恋もあってか治癒魔術がかなり早く、強力に作用してる。こりゃ、現代の魔術師が数人がかりでも追いつけねぇな。
ジャックは回復したのを確認してから再び両手でナイフを構える。
「ジャック、前に出てくれ。俺が援護する!」
「私も少しだけですが、攻撃魔術で援護します!」
「うん。じゃ、斬るね」
残りのワイバーンはまだまだ。二十は軽くいる。ここはジャックにやってもらわなければ俺達はどうしようもできない。
ジャックがその敏捷を活かしてワイバーンの中心に潜り込み、一体に狙いをつけてそのナイフを一閃。羽根を切り落とし、地に落ちたワイバーンの背に乗ってそのままナイフを突き刺し、一瞬で背中の皮膚を鱗ごと開いて手を突っ込み、心臓を見つけたのか脈動する何かを引き抜き、その手で握り潰す。真っ赤に染まったジャックはそれだけでワイバーン達に狙われる事となる。
が、それを俺は許さん。
「
俺が声を出してジャックへ向けて手榴弾を投げる。ジャックはそれを受け取り、爆発までの時間を数えた後、自分が離脱できるだけの時間を残して突っ込んできたワイバーンに投げ、離脱。その瞬間に弾けた手榴弾は数体のワイバーンを巻きこみ、絶命させる。
「これが近代兵器の力だ!」
さらにグレポン……グレネードランチャーを発射。ポンッという音と共に放物線を描いて飛んでいったグレネードはワイバーンに当たり、ワイバーンを二匹ふっ飛ばす。これで残り六匹!
「収束……収束……収束……ファイア!!」
そして、俺の後ろのメディアが巨大な魔法陣に浮かべた魔力塊をとんでもない速さで打ち出す。それは綺麗にワイバーンの頭をふっ飛ばした。
「やりますねぇ!」
「これでも魔女ですから!」
俺も負けてらんねぇな。と、言いたい所だが俺もカルデアに置いてある武器しか使えねぇし、弾薬の補給なんて外と交流が取れない以上、出来ない。グレポンの弾も残り三十切っている故に、あまり贅沢が出来ない。
ここはまだ神秘が薄い。紀元前の特異点なんて行った日にはどれだけ援護に弾を使うか分からない。
だから、抑える。俺は弾が無ければ何も出来ないクソザコだからな!
取り敢えず、スナイパーライフルは武器庫に戻してメディアの後ろに下がる。
後はまぁ、蹂躙だ。ワイバーンの首が飛び、体の部位が切断され、脳を掻き混ぜられたり。ジャックのやりたい事をやるだけの戦いになった。
俺は置換魔術でペットボトルの水を取り出し、戦い終わったジャックの頭からそれを浴びせて返り血を落とした。
「マスター、ちょっといいですか?」
「なんだ?」
もう一本必要かな、と俺が置換魔術で水を取り出すと、それと入れ替わるようにメディアが俺のコートの内側に手を突っ込んだ。
「……やっぱり。こんな術式じゃ……だとすると、起源が……」
「ど、どうした?」
「……いえ。ちょっと気になっただけですから」
な、なんかむず痒いなぁ……さっきメディアは起源がどうとか言っていたが、関係あるのか?っていうか、俺自身、俺の起源は把握してないし。する必要もないしな。
「マスター。もしかして、マスターは普通の魔術は……」
「あぁ、からっきしだぜ?ガンド撃ちすら出来ねぇからな」
バァン。と指を銃の形にしてふざけてみる。勿論、そんな物でガンドは出ない。
その他にも五大元素の魔術は勿論、強化魔術すらマトモに出来ない。魔術士としては欠陥品中の欠陥品。自分でも色々とやって使える魔術を探した訳だが、結局は無かった。それ故にか、俺はそれなりに知識だけはある。それが魔術士を殺すときに役だった事は数知れず、だけどな。
一応、結界魔術、それも相手が範囲内に入ったら分かる。程度の魔術とか、他にも超簡単な魔術は使えるんだけどな。それだけだ。
「……マスター。多分、貴方が魔術を使えない理由は……」
『刹那!生きてるかい!?』
「あっロマンテメェ!!よくもワイバーンの群れのド真ん中にレイシフトなんてさせやがったなテメェ!!」
ロマンがいきなり通信をかけてきやがった。これで怒らねぇ奴はいねぇだろ。で、メディアさん、何ですかね。あ、何でもないの?なら何でそんなに頬を膨らませて……あ、すいません。何でも無いです、はい。だからその攻撃魔術を止めてください死んでしまいます。
「取り敢えず、クソ野郎ロマン。六香ちゃん達はどこだ」
『クソ野郎ロマン!!?』
「いいから言えよ」
『機材のミスなのに……えっと、六香ちゃんは君達から数十キロ離れた場所にレイシフトしたよ。敵性反応はまだ無いね』
「そうか。なら、あまり勝手に動かないように言っておいてくれ。すぐに向かう」
『分かったよ。君の近くにはまだポツポツと敵性反応があるから、気を付けてね』
「分かった。ジャック、俺とメディアは六香ちゃんの所へ真っ直ぐ進むから、近づいてくる奴は解体しろ。ただ、人間は捕まえて俺の前に引きずり出してこい。サーヴァントの場合は逃げてきてくれ」
「うん。頑張るね」
ジャックが俺達の前で一瞬にして消える。やっぱり、速い。これを追える英霊がいると言うのだから、英霊ってのはおっかない。
さて、ジャックが偵察に行った訳だし、俺達も歩くとするか。な、メディア。
「はい。あ、何だったら運んでいきましょうか?」
いや、それは……男がこんな小さな子に運ばれるってのは色んな物が許さなくてな……
「なんなら抱えて空を飛びましょうか?」
それは公開処刑かなぁ……
書き溜め尽きたよ
あと、ここのジャックちゃんはノリがいいよ