トライアングル・フリート   作:アンギュラ

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お疲れ様です。

引き続き播磨戦です。

色々ゴチャついてきましたが、決着に向けて進んで参りますのでよろしくお願いします。

どうかお付き合い下さい。

それではどうぞ。



目覚めた鬼神    vs 超兵器

   + + +

 

「何なの…あれ…」

 

 

もえかは、状況にまったくついていけない中、シュルツからの通信が飛び込んできた。

 

 

 

 

『絶対に単調な動きはせずに動き回って下さい!一瞬でやられてしまう!』

 

 

 

 

 

シュルツからの怒声に、我に帰りタカオに指示を飛ばす。

 

 

 

 

「タカオ、私達も行こう!」

 

 

「まずいわね、フィールドが飽和しかけてる。蓄積したダメージを放出しないとやられるわ!」

 

 

「くっ、解った。タカオ、千早艦長に連絡を取って。一度交替で播磨から距離を取りながらダメージを放出して、出直そう。それまで残りの艦で、播磨を牽制して防壁の飽和に努める。どう?」

 

 

「…解ったわ。キリシマ、401、聞こえた?」

 

 

『…仕方がない。だがフィールドに少し余裕があるとはいえ、超重力砲の発射の余波で、演算がいまひとつなんだ…あんまり長くは持たないぞ!』

 

『了解。まず、タカオと私達からダメージの放出を行う。次はキリシマとはれかぜ。はれかぜにはこちらから連絡する』

 

 

「だそうよ、もえか」

 

 

「……解った。タカオ、出来るだけ急ごう」

 

「了解!」

 

 

401とタカオは一度播磨から距離を取り始めた。

 

 

 

   + + +

 

 

 

 

「いやぁぁぁ!江田さぁぁん!」

 

 

芽依は錯乱していた。

原因はつい今しがたのシュルツと一宮とのやり取りを聞いていたからだろう。

 

 

完全に我を忘れており、危険な状態だった。

 

 

「メイちゃん落ち着いて!お願い!」

 

 

「おい!しっかりしろ!」

 

 

「メイ!―メイ!」

 

 

3人で芽依を押さえつけるが、暴れながら耳をつんざく絶叫に怯んでしまった。

 

 

 

 

「あぁぁあぁあぁぁあ!」

 

「うっ、くっ!」

 

 

 

明乃も凄まじい悲鳴に目をしかめたその時……

 

 

 

プスッ!

 

 

 

「ひっ!」

 

 

 

 

ビクッと身体を震わせた芽依は気を失った。

 

倒れた芽依を抱き止めた志摩が見上げる先には注射器を持った美波が立っている。

 

 

 

 

 

「砲雷長の悲鳴が聞こえたので飛んできた。」

 

 

「有り難う美波さん。メイちゃんは…?」

 

 

「戦線への復帰は現状無理だろう。たとえ戻れたとしても、今度は完全に心が壊れてしまう」

 

 

「…そんな」

 

 

「この反応…砲雷長にとって撃墜された人物は何か情を抱くに値する人物だったのやもしれん。だが¨失われて¨しまった…」

 

 

 

 

「失われた………」

 

 

 

 

ドクン……ドクン………

 

 

 

その時、明乃の心の中に何かが生まれようとしていた。

 

 

暗くて冷たい、血走った大きな目玉がギョロりと鈍く光を放つ。

 

 

「¨宗谷副長¨ブルマーの砲雷術の研修課程を修了してるよね……」

 

 

「え、ええ、ですが……」

 

 

「お願い。砲雷長代理を務めて」

 

 

「ですが……ひっ!?」

 

 

 

 

 

明乃を見た真白は、凍りつく。

 

 

 

その表情は、最早真白の知る岬明乃ではなかった。

 

 

鮮血の様に光る絶対零度の目が、目深に被った艦長帽から覗いていたのだ。

 

 

 

 

「艦…長?」

 

 

「…奪った。私達から大切な者を…心を…奪ったんだ!許さない!粉砕する!塵すら残しはしない!¨知床航海長¨取り舵一杯!¨柳原機関長¨機関全速!¨立石砲術長¨全砲門一斉掃射ぁあ!」

 

 

真白は、明乃の様子に戦慄を覚えていた。

 

 

(まただ、艦長のあの表情…怖い―ん?何が怖いんだ?…そうだ、まるで超兵器を目の当たりにした時の様な……)

 

 

疑問は真白の中で確信に変わった。

 

 

砲火の最中、轟音で良くは聞き取れなかったが、明乃の表情そして口元の動きで内容は理解できた。

 

 

 

明乃は笑っていた…いや、楽しんでいるのだ。

 

 

獰猛な目とニタニタとねじ曲がる口元

 

 

 

そして、この言葉

 

 

《【破壊】ソレコソガ私ノ本分》

 

 

 

真白は意を決して動き出した。

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

 

「くっ、この私が…!」

 

 

 

 

キリシマのクラインフィールドは、既に飽和していた。

 

 

 

本来、核兵器にすら耐えうる霧のクラインフィールドが、荒覇吐との戦闘によりダメージを蓄積していたとはいえ飽和に至ったのには理由があった。

 

一つは、円盤航空機ハウニプーによるレーザー攻撃、そして……

 

 

ドドドドドド !

 

 

 

 

常人では視認すら不可能な速さの超高速砲撃だった。

 

 

 

播磨の後方のハッチから出現したそれは、荒覇吐のガトリング砲に酷似している。

 

違いは、そのガトリング砲が弾を電磁力で加速する¨レールガン¨であることくらいだった。

 

【砲搭型ガトリングレールガン】

 

 

 

実弾系最強の砲撃を一分間で100発もの速さで発射するそれに、キリシマのフィールドはいとも簡単に飽和してしまった。

 

 

元々霧の艦隊が人類相手に突撃出来たのは、絶対の盾のクラインフィールドがあったからである。

故に、攻撃を回避するという戦術が決定的に欠如しており、フィールドが消失し、通常戦艦並みの防御しかないキリシマは、始めて回避に関する戦術の重要性を始めて認識していた。

 

 

彼女は播磨の反対側にいる出雲を見た。

 

 

 

 

出雲は、ガトリングレールガンを意識してか、巧みに播磨の前方側に移動している。

 

 

 

 

勿論リスクはあった。

正面に回り込むことで、多数の大口径主砲の雨にに晒される。

だが、音速を超える弾速で発射されるレールガンを相手にするよりは、遥かに有効な手段に思えた。

 

 

(これ以上は…まずい…!)

 

 

キリシマが播磨前方へと移動しようとした矢先に相手に動きがあった。

 

 

 

 

播磨がキリシマの方に転舵してきたのである。

 

 

―好都合だ!

 

 

しかし、キリシマの判断は甘かった。

 

大口径主砲だけでなく副砲からの猛烈な砲弾の雨がキリシマを襲ったのだ。

 

 

「あぐっ!?な、なんだこれはっ!あいつらこんな弾幕を平気で回避し続けていたのか!!?」

 

 

 

 

キリシマは歯噛みする。

砲弾が次々と着弾し、みるみる船体が破壊されっていった。

 

負けじと無事なレーザー主砲とありったけの侵食弾頭を発射し、あちこちで砲弾同士がぶつかり炸裂している。

 

 

だが、肝心の播磨自身は強力な防御重力場が侵食弾頭をそらしてしまう。

 

霧と超兵器の壮絶な殴り合い、そこに人類の入り込む余地など存在しなかった。

 

しかし、勝負の決着は唐突に訪れた。

 

 

 

「!!?」

 

 

 

 

キリシマは目を見開く

 

 

 

播磨正面の160cm砲が徐々に天を向いており、それが最大仰角に達したとき、目の前にまるで搭がそびえ立つ様な異様な光景が広がった。

 

 

 

 

 

『キリシマ!逃げろ!速く逃げるんだ!』

 

 

 

 

「ハハッ…逃げろったって、とっくにスラスターも壊れちまってるよ……」

 

 

 

 

 

キリシマは自嘲ぎみに笑うと、天に両手をかざした。

 

 

 

 

 

「来い!、それがお前の切り札なら受け止めてやる!」

 

 

 

 

 

 

キリシマは全ての兵装の使用を止め、その余剰エネルギーを回し、クラインフィールドを再展開させた直後……

 

 

 

ドォウン!ドォウン!ドォウン!

 

 

大気が震える轟音とともに、播磨が160cm砲を発射した。

 

 

 

 

真っ赤に燃えるいくつもの砲弾は、ハウニプーの観測により正確に弾道を描き、まるで隕石のようにキリシマに落下て行く。

 

 

 

 

「ぐ、ぐわぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

クラインフィールドに衝突して砲弾が炸裂し、その衝撃で海面は凹んでキリシマの船体の3割近くが吹き飛んだ。

 

 

急激に傾き始める甲板の上で、キリシマはなんとか踏みとどまった。

 

だが二発目が着弾。

 

 

 

 

 

「あぁぁあぁあ!」

 

 

炸裂した砲弾の衝撃と熱波によって、辺りは地獄と化した。

 

 

 

キリシマは炎が身体を包んでも、天を見上げ、迫り来る紅蓮の砲弾を睨む、彼女が出来たのはそこまでだった。

 

 

 

 

三発目の砲弾が着弾。

 

 

フィールドが衝撃を受けきれず消失し、キリシマの身体は吹き飛ばされて、ボロボロになった艦橋に激突。

 

更に跳ね返って、辛うじて原型を止めていた甲板に投げ出された。

 

手足がぐちゃぐちゃに曲がった歪な大の字で横たわるキリシマの視線は、次の瞬間に自分を粉砕するであろう砲弾を見上げていた。

 

 

「ハルナ…蒔絵…私は!私は…まだ…死にたくな……」

 

 

 

 

ズドォォォォン!

 

 

160cm砲の砲弾がキリシマを直撃し、体をくの字に折り曲げそして炸裂した。

 

 

 

凄まじい爆圧と熱波により大戦艦キリシマの船体とメンタルモデルはめちゃくちゃに砕け、直後に重力子エンジンが大爆発しを起こして虹色の光を放ち散っていった。

 

 

オーロラにも似た美しい光が……

 

 

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

 

真白は、戦闘の隙を見て真霜に連絡を取っていた。

 

 

 

 

「宗谷室長、時間が有りませんお願いがあります」

 

 

 

 

そして真霜からの返答に真白は決意の表情を見せる。

 

 

 

 

 

(艦長は私が守る!)

 

 

はれかぜは揺れ、ハウニプーと播磨からの苛烈な砲撃は止まない。

 

 

防御重力場も限界である中、明乃は攻撃の手を緩めず、播磨への突撃を強行している。

先程、キリシマ撃沈の報を受けてからは、更にひどい。

 

 

 

まるで、攻撃衝動に心を喰われてしまったかのようだった。

 

 

   + + +

 

 

「あれほどの力を持った蒼き艦隊ですら敵わないのか……」

 

 

シュルツの顔が一層険しいものとなった。

 

 

「艦長、致し方有りません。試験段階ですが【光子流弾砲】の使用を検討するしか手はないかと……」

 

 

「まさか、これを使うわざるをえない状況になるとはな……だがやむを得ない。ここで奴の防壁を飽和させる。総員、攻撃準備をなせ!」

 

 

 

シュルツの号令で、艦内の動きが慌ただしくなる。

 

 

   + + +

 

 

 

 

 

ズドォォォォン!

 

「うっ、ぐっ!」

 

 

401のブリッジが激しく揺れ、クルーは手近な者にしがみついた。

 

 

 

衝撃が去った後、一同の表情は暗く、群像の表情は特に険しかった。

 

 

世界に風穴を開けるべく、覚悟して危険な海にこぎだした筈だったにも関わらず、蓋を開けてみれば、味方の撃墜と撃沈にこれ程心が揺らいでいる。

 

 

味方を守りきれなかったことに腹を立てていたのかもしれない。

 

 

 

 

世界に風穴を開けると大言壮語を吐いておきながら、実際には手も足も出なかった自分自身に………

 

 

「群像?」

 

 

「あぁ……うん、どうした?」

 

 

「群像、凄く辛そう……」

 

 

「そう…か?」

 

 

心配そうに覗き込んでくるイオナに、群像は慌てて表情を戻す。

 

 

 

艦長の不安は艦全体に広がり、指揮に大きな影響を及ぼす。

 

 

如何なる状況でも感情を殺し、的確な指示を出すことが、自分や味方の生存率に影響を及ぼすという意味では、群像の表情はあってはならないものだった。

 

 

「心配するな。大丈夫だ……」

 

 

「…うん。わかった」

 

 

イオナはそれ以上なにも言わなかったが、少し困ったように笑うイオナの表情に、群像は気持ちを見透かされているような居心地の悪さを覚える。

 

 

「艦長よぉ。いい加減アイツを何とか出来ねぇのか?」

 

 

 

杏平の言葉をかけられイオナから視線を外した群像は表情を引き締めて答える。

 

 

 

 

「あの円盤型航空機の事か?」

 

 

「ああ、静の話じゃアイツは一機が観測用、一機がその護衛兼牽制役なんだろ?他の艦には牽制でもこっちは潜水艦だ、播磨からの攻撃もある。こうも何発も喰らってたら身がもたないぜ?せめてあの観測用の円盤だけでも落とせねぇもんなのか?」

 

 

 

 

「確かに杏平の言うことにも一理ある。それについては、既に手を打ってある。」

 

 

 

「大丈夫なのか?ヒュウガのスキャニングでは時速3000kmを超える速度で飛んでんだろ?それに旋回性能も高い。潜水艦で落とすには骨がおれるぜ?」

 

 

 

「心配するな…必ず墜とすさ。奴を落とせば、播磨の砲撃精度は著しく低下し、フィールドや防御重力場の回復の邪魔をされないためにも重要な作戦だ。必ず成功させる」

 

 

「まったく…その自信はどこから出てくるものやら。それに、仮に円盤型航空機撃墜したとして播磨はどうするんだ?」

 

 

 

「ヒュウガが席をはずしている今、サポートは期待できないが、勝算は0ではない。幸いにして、奴の対潜武装はミサイルと噴進爆雷砲の二つだけ。警戒すべきはミサイルだが、それを覗けば我々は播磨を遠距離から攻められる唯一の存在だ。必ずチャンスを作るぞ!」

 

 

群像の言葉にクルーたちは頷き、クラインフィールドのダメージを放出した401は、再び播磨へと舵を切った。

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

 

「キリ…シマ?」

 

 

 

 

遠くに見える虹色の光を見て、もえかとタカオは愕然とした。

 

 

 

「タカオ!キリシマはどうなったの!?」

 

 

「解らないわ……重力震が強すぎて観測ができない。キリシマのコアが無事なら、再生はいくらでもきくけど、失われてしまえば……」

 

 

「そんな………」

 

 

「悲観する暇は無いわ。まずは、こいつを何とかするわよ!」

 

 

 

 

「そう…だね」

 

 

悲しみを殺してもえかが見た先には、空に超高速で飛行する2機の円盤がいた。

 

 

 

「チッ、こざかしいわね…。叩き落としてやるわ!」

 

 

 

「タカオ!あぶない!」

 

 

 

次の瞬間、凄まじい水柱が立ち上ぼり、タカオの船体が大きく傾き、もえかとタカオは思わずよろけてしまう。

 

この水柱の元凶は言うまでもなく播磨だろう。

 

 

ハウニプーによる観測により砲撃精度の増した播磨の100cm砲は、距離とっていても、まるでミサイルの様に正確に飛んでくるのだ。

 

 

 

更に上空にいる護衛のハウニプーからのレーザー攻撃も相まって、クラインフィールドのダメージの放出が間に合っていない。

 

 

 

 

「まずいわね……ダメージを放出するどころか、もう飽和寸前よ!何とかアイツの私達への位置観測を止めさせないとやられるわ!」

 

 

「そんなこと言ったって……あっ!た、タカオ!あ、あれ!」

 

 

「今度は何…え?」

 

 

 

 

タカオが目を見開く。

 

播磨の超巨大砲 160cm砲が再び稼働を開始した。

 

 

 

 

 

「まずい…あれはまさか!」

 

 

 

 

播磨の狙いは……

 

 

 

 

「私達?」

 

 

「くっ、離脱するわよ!今あんなの喰らったら塵も残らない!」

 

 

「タカオ!急いで回避準備を……きゃぁぁ!」

 

 

ズドォォォォン!

 

 

播磨の100cm砲が、次々とタカオの回りに着弾し海面を掻き回し、上空からのハウニプーの牽制で身動きがとれず、その間にも播磨は超巨大砲の発射体制に入る。

 

 

 

最早一刻の猶予もなかった。

 

 

 

 

「仕方ないわね。もえか!潜るわよ!」

 

 

 

 

タカオは、苦肉の策として潜航を選んだなのだった。

そして、彼女船体が水中に完全に沈んで僅か数秒後………

 

 

 

 

ズドォォォォン!

 

 

 

 

海面付近で爆音が轟いた。その轟音はタカオの耳にビリビリと不快な振動を伝える。

 

 

「間一髪だったわね……」

 

 

「潜航したけど、なにか策はあるの?」

 

 

「少なくとも砲撃には晒されないわ。でもこれはただの時間稼ぎね。長くは持たない……水中は衝撃をよく伝えるからフィールドの負荷が増えるのよ。それに水上艦の私は水中戦は不向きだし、小回りもきかないわ」

 

 

「演習の時は聞かなかったけど、戦闘にどのくらいの制限がかかるの?」

 

 

「直ぐに使えるのは魚雷とミサイルくらいね。レーザーは水中での屈折率の関係で思ったように目標には当てられないわ。401なら、水中でのレーザーの扱いには長けているから問題はないでしょうけど、超重力砲は莫大な演算を要するから、クラインフィールドの展開に支障を来すし、水圧や浸水を防ぐ役割もあるフィールドが飽和すれば、私は大丈夫だけど、もえかは耐えられないでしょうね」

 

 

「万事休す……か。でも、砲撃に晒されないだけでも違うと思う。ミサイルや爆雷もある程度なら迎撃可能なことも解った。今のうちに少しでもフィールドのダメージを放出しよう。そうして時間を稼いで、チャンスを作るしかないと思う」

 

 

「解ったわ。それじゃ……ん?」

 

 

「どうかしたの?」

 

 

「今、通信が入ったの………うん、そう解ったわ。それじゃまた後で」

 

 

「タカオ?」

 

 

「さすが、私のマイアドミラル……」

 

 

「千早艦長からの通信だったの?」

 

 

「違うわ。だけど艦長は既に手を打っていたの。だからアイツから通信が来たって訳。待っていればチャンスが必ず来るわ!」

 

 

 

 

「アイツって?」

 

 

「それは……」

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

「くそ!早くあの超巨大砲を無力化しなければ全滅だ!」

 

 

「しかし、こうも正確な砲撃を浴びせられては、回避に専念せざるを得ません!」

 

 

「くっ 光子榴弾砲の準備はまだか?」

 

 

「調整に今少しかかります!」

 

 

「急がせろ!超巨大砲に狙われたらおしまいだ!」

 

 

 

「艦長!」

 

 

「今度はなんなんだ……」

 

 

「い、いえ。はれかぜが………」

 

 

「はれかぜがどうかしたの………か?」

 

 

 

 

シュルツがはれかぜの方角に目をやると、そこには播磨に向かって攻撃をしながら突っ込んでくるはれかぜの姿があった。

 

 

 

 

「馬鹿な…なぜ突撃してきている!砲撃戦で相手になるような相手じゃないんだぞ!ナギ少尉。至急離脱するよう通達するんだ!」

 

 

「ダメです。通じている筈なのですが応答が有りません!」

 

 

「血迷ったとでも言うのか?いや、岬艦長に限ってそんなことがあるわけがない…」

 

 

「艦長!超巨大砲がまた稼働を再開しました!狙いは……」

 

 

「くそ!狙いははれかぜだ。総員、対空戦準備!はれかぜの位置を観測しているハウニプーに対空ミサイルを集中させろ!このままでは犠牲者が出てしまう!」

 

 

ミサイルがハウニプーに殺到するが、素早い動きと護衛のハウニプーのパルスレーザーに迎撃され撃ち落とす事が出来ない。

 

 

 

その間にも超巨大砲ははれかぜに狙いを定める。

 

 

「やはり駄目なのか……」

 

シュルツを含め誰もが、はれかぜの撃沈を覚悟したその時……

 

 

 

 

ゴォォォォ!

 

 

出雲の真上を凄まじい速さの飛行物体が通過した。

 

 

更にそれは、はれかぜの位置観測を行っているハウニプーに向かって行き、機体に抱いていたミサイルを至近距離で発射。

 

 

 

ミサイルは着弾すると、まるで食いちぎるようにハウニプーの機体を抉り取り、直後発生した爆発によってバラバラに四散しながら海へと落ちていく。

 

 

直後、はれかぜは転舵し回避運動に入り、それと同時に、播磨の超巨大砲が火を噴いた。

 

 

 

隕石の如く降り注ぐ、巨大な砲弾が海を掻き回す。

 

 

しかし位置を正確に把握出来なくなった播磨は、はれかぜに砲弾を直撃させることが出来なかった。

 

 

 

 

はれかぜは直ぐ様離脱を試みる。

 

 

 

シュルツは目を見張った。

 

 

ハウニプーを撃墜出来たこともそうだが何より驚いたのは、その飛行物体の機種である。

 

 

 

時速3000kmで飛行する敵に追い付いたのは何とレシプロ機であったからだ。

 

 

 

更にその苛烈な速度で凄まじい旋回性能を発揮して、レシプロ機が凄まじいレーザー攻撃を仕掛ける。

 

 

 

勿論、相手もただでは終わらない。

 

 

レーザーを巧みに利用して攻撃を加えて来たのだ。

 

 

機体をレーザーが貫く寸前、何かの壁に当たり消滅、本体は無傷だった。

 

 

 

「もしやあれは、クライン…フィールド?」

 

 

 

 

シュルツが呟いた時、謎のレシプロ機から通信が入る。

 

 

『間に合ったか……』

 

 

 

 

「あなたは……まさか!大戦艦¨ハルナ¨!!?」

 

 

『ああ、遅れてすまない。少し事情があってな……』

 

 

「構いませんが、しかしあなたの乗っているその機体は?」

 

 

『これか?これは、【セイラン】という401が所有している航空機だ。見た目はアレだが、少なくとも人類の航空機よりは性能は桁違いだろう。コイツらは私が相手をする。その間にお前達は、播磨攻略の糸口を掴み撃沈しろ』

 

 

 

 

 

「潜水艦が航空機を所有!?しかし、ずれにせよありがたい!だがあなたは、参戦に消極的だったのではないのですか?だから、今回はスキズブラズニルに残り刑部蒔絵さんの護衛務めていた」

 

 

『勿論だ。蒔絵を不用意な戦闘に巻き込む訳にはいかん。だが、キリシマを通じてモタリングしていた超兵器の映像から、放置すれば後に蒔絵の生命にとって重大な驚異になると判断した。千早群像は、おそらくこうなることを事前に予測していたのだろう』

 

 

 

 

「千早艦長が……ですか?」

 

 

 

 

『ああ……出撃前にセイランの扱い説明についてと、使用権限の移譲を済ませるよう指示を受けていた。本来フィールドを張ることが出来ない航空機でも、私が直接乗ることで、その問題も解消されるからな』

 

 

 

 

「そうだったのですか……解りました!我々は播磨を攻めます。あなたは敵航空機を撃墜し、播磨の超巨大砲の無力化をお願いしたい」

 

 

『心得ている。それともう一つ伝えておくことがある。戦況を変えるものではないが、これでお前達の憂いは少しは晴れるやもしれん』

 

 

 

「どのような内容なのですか?」

 

 

 

 

「それは………」

 

 

 

「!!!」

 

 

 

ハルナからの伝言に目を見開いた彼は、再び表情を引き締め、クルーに指示を飛ばして播磨へと再び距離を詰めていった。

 

 

   + + +

 

 

ハルナの登場の少し前

 

 

 

はれかぜは播磨へと突撃していた。

 

 

 

全ての砲門を播磨に向け、全速力で突っ込むと言う、今までのはれかぜにはなかった戦術。

 

 

 

 

不安になった幸子が明乃に近づく。

 

 

「か、艦長。このままでは播磨の弾幕に突っ込む事になります。回避を選択されてはどうでしょうか……?」

 

 

「納沙記録員、それは指揮を預かる艦長への介入であると見なすが?」

 

 

 

「申し訳ありません……」

 

 

 

 

ギロリと睨まれ 、幸子は思わず下がってしまった

 

 

 

 

「かかか、艦長!でもこれ以上は流石にマズイよう。逃げた方がいいよぅ……」

 

 

 

鈴においては恐怖で号泣しており、涙でろくに前も見えない状態だ。

 

 

 

だが、明乃の表情は冷徹だった。

 

 

「知床航海長!聞こえなかった?進路そのまま、全速前進!」

 

 

「で、でもぅ……」

 

 

「復唱せよぉぉ!」

 

 

「ひ、ひぃぃ!!し、進路そのまま!ぜぜ全速前進!」

 

 

明乃の怒声に、鈴を始め辺りの人間はすっかり怯えてしまっている。

 

 

 

 

その時、満を持して真白が明乃に近づいた。

 

 

 

「艦長、お伝えしなければならないことがあります……」

 

 

「なにか?宗谷副長」

 

 

 

「はい、岬明乃艦長。あなたをはれかぜ艦長から解任し拘束します。」

 

 

「なっ……!」

 

 

 

「なんの権限で?と仰りたいのでしょう?これは、宗谷真霜安全監督室長からの命令です!貴官は本作戦において、乗組員の生命に著しい危険をはらんだ命令を立て続けに発令した。これは海の安全を守るブルーマーマイドの根本理念を逸脱する行為であり、極めて看過できない!!よって、現時刻をもって、岬明乃一等監査官をはれかぜ艦長より解任。私…宗谷真白はれかぜ副長を艦長とし、乗組員は彼女の指揮に入る事とする。これは、れっきとした上位命令です。従って頂きますよ。¨岬さん¨」

 

 

 

「副長ぉぉぉ!」

 

 

 

「いえ、もう艦長です。内田まゆみ右舷航海管制員!確か柔道の経験者だったな。岬さんを拘束して。納沙さんは鏑木さんに連絡を!」

 

 

「りょ、了解!」

 

 

 

明乃は拘束しようと近づいたまゆみに掴みかかるが、呆気なく抑え込まれ拘束されてしまう。

 

 

 

「邪魔をするなぁぁ!撃滅だ!!撃滅する!」

 

 

明乃の怨嗟を含んだ叫びが艦橋に響き渡るが、喚きちらす明乃を無視して幸子に訊ねた。

 

 

 

 

「状況は?」

 

「敵の超巨大砲が此方を狙ってきています。」

 

 

「回避を!」

 

「無理です!!播磨に接近しすぎています。弾幕が凄すぎて、迂闊に動く事ができません!」

 

 

「くっ、出来るだけ私達を釘付けにして止めを刺すつもりか!せめて上空にいる観測機体を撃墜出来れば……」

 

 

 

 

 

その時だった。

 

ズドォォォォン!

 

 

 

 

突如、高速で現れた航空機が上空の敵を撃墜し、粉々になった敵の円盤型航空機が落ちていく。

 

 

呆気にとられている一同をよそに、謎の航空機から通信が入ってきた。

 

 

 

 

『今だ!早く安全圏に離脱し、体制を立て直せ!』

 

 

 

「あなたは?」

 

 

 

『大戦艦ハルナだ。説明している暇はない。超巨大砲はもう発射寸前だ!早く離脱しろ!』

 

 

「支援感謝します!航海長、取り舵一杯!」

 

 

「よ、ようそろ―!」

 

 

 

 

はれかぜが転舵し、全力で播磨から距離を取った直後、先程まではれかぜがいた海面に巨大な砲弾が着弾して炸裂した。

 

 

距離を取り始めたはれかぜのもとにも、その轟音と波が押し寄せる。

 

 

怯んでいる暇も立ち止まる隙もあるわけがない。

 

 

 

真白は、指示を飛ばして、砲弾を巧みに回避しながら播磨から距離をとっていった。

 

 

そこへ美波が色々な機材と一緒に艦橋へと入ってくる。

 

 

 

 

「話は聞いた。これから調査にはいる」

 

 

 

「頼む、何とか岬さんを助ける糸口を掴んで欲しい」

 

 

 

「私に異常なんて無い!早く拘束を解いて!一刻も早く敵を撃滅しなければならないの!」

 

 

 

喚き散らす明乃の様子をみて美波と真白が頷き合う。

 

 

 

 

「やってみよう……だがこの症状が¨6年前¨と同一かどうかは疑わしい。違うとなれば、別の角度から調べるしかないが……」

 

 

「頼む……!」

 

 

「心得た。内田さん、悪いがそのまま岬さんを押さえて居てくれ。注射や機材を装着するのに暴れられては危険だ。山下さんは岬さんの上着を脱がせてくれ、機材を装着する」

 

 

「「了解」」

 

 

 

「何をする、やめろ!」

 

 

 

「岬さん…少しの我慢だ」

 

 

もがく明乃をまゆみが押さえ付け、秀子が上着を剥ぎ取って下着だけにする。

 

さらに美波が手際よく機材を装着し、モニターに波形が表示された。

 

更に彼女は、注射で明乃の血液を採取し調べ始めた。

 

 

 

真白は、前を向いたまま振り返らない。

 

危険域を脱しつつあるとはいえ、砲弾は止まずに飛んでくるのだ。

 

 

 

【岬明乃を正気に戻すまで誰一人失わせない】

 

 

 

その気持ちだけが唯一真白の正気を支えていたのだった。

 

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

超兵器との決戦の数日前の東京

 

 

 

総理大臣官邸

 

 

 

 

超兵器の対策本部が置かれた官邸内では、皆の溜め息が漏れ聞こえる。

 

 

無理もない、諸外国への対応や住民への支援と破壊された街の復興予算の策定。

 

 

やることは山ほどあるが、何より閣僚たちの頭を悩ませているのは、やはり超兵器に対する対応だろう。

 

 

万が一敗北と言うことに成れば、諸外国からの責任追及は免れないし、何より世界は滅びに向かう。

 

 

 

 

「少し頭を整理してくる」

 

 

 

 

内閣総理大臣、大湊清蔵は席を立ち部屋を後にする。

 

 

 

 

向かった先は、愛煙家の議員立ちの願いによって建物の片隅に追いやられるように設置された喫煙所であった。

 

 

彼は煙草を取りだして火を付け、口にくわえる。

 

 

 

 

「ん……ふぅ……」

 

 

 

ゆっくりと煙を吐き出した彼は、一瞬ではあるが久方ぶりに肩の力が抜けた気がした。

 

 

だが、ふと視線を向けた先に立っている人物を見た大湊はうんざりしたような表情を浮かべ、名残惜むように吸ったばかりの煙草を灰皿に突っ込む。

 

 

 

 

「やはり現れたか……」

 

 

 

大湊は、口に含んでいた残りの煙を吐き出すと、苛立たしげに喫煙所の外へ出た。

 

 

彼の目の前に現れた人物は敬礼をする。

 

 

大湊はそれに適当な頷きで返すと皮肉じみた口調で話始めた。

 

 

 

「おやおや。この様なところにわざわざお越しとは……流石の【来島の巴御前】も、この度はお手上げと言ったところですかな?宗谷真雪殿」

 

 

「あなたも相変わらずでなによりですわ大湊さん」

 

 

「全く………防衛省時代から貴女の一族には苦労を強いられましたが、どうやら今回も例に漏れず厄介事を持ち込もうとそう言うわけですな?」

 

 

 

目の前にいる彼女の顔をろくに見もせずに、ヘラヘラと軽薄な表情を崩していない大湊に対して、真雪も毅然とした態度を崩さない。

 

 

 

「はい。この度のブルーマーマイドの異世界艦隊への合流の件で伺いました」

 

 

 

 

「アレは仕方がないよ。こちらの弱みを握られちゃぁね」

 

 

 

 

「違います。その事ではなく、¨派遣されているメンバー¨についてです。」

 

 

 

 

大湊の顔が急に険しくなった。

 

 

 

 

 

「気付いていたのかね?」

 

 

 

「いえ……ですが優秀な者はいくらでもいます。なぜその中で¨彼女達¨なのか教えて頂きたい」

 

 

「理由?強いて言うならば、6年前の事件で実戦経験豊富な彼女達だからとしか……」

 

 

 

「嘘ですね?」

 

 

 

「…………」

 

 

 

「先程、彼女達と言いましたが、正確には¨彼女¨でしょう?他のメンバーは言わば目眩ましのようなもの」

 

 

「はぁぁ……」

 

 

 

大湊は心底うんざりしたように溜め息をついた。

 

 

 

 

「¨岬明乃¨艦長の事かね?」

 

 

「はい。あなたはもしや【16年前の事故】と今回の超兵器の強襲に何か関連があると考えてらっしゃるのではないかと」

 

 

 

 

「そこまで掴んでいたとはね……」

 

 

 

「確信はありませんでした……ですが、当時の隊員の証言と、今回の案件とが無関係とは思えないのです。それに当時、ただの海難事故に防衛省が動いたという記録もあましたしね」

 

 

「失敗だったね……もっと完璧に箝口令を強いておくべきだったかなぁ……」

 

 

 

 

「あの時、あの海で一体何があったのですか?」

 

 

「機密事項だよ」

 

 

「教え子達の命が懸かっているのですよ!」

 

 

 

 

二人は暫し睨み合う。

 

 

 

折れたのは意外にも大湊だった。

 

 

 

「君は、本当に変わらないな¨真雪¨君。真っ直ぐで、そして何より綺麗だ。君が昔、私に恋文を渡したときを思い出したよ」

 

 

「今は、そんなこといってる場合じゃ…」

 

 

 

「16年前の海難事故。あれは、ただの事故じゃない……いや、¨事故ですらない¨可能性がある」

 

 

 

 

大湊表情から軽薄さが消え失せ、餓えた肉食獣のような表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

「当時、気象庁へ問い合わせたんだよ。日本近海は、強い高気圧のど真ん中にいた。嵐が発生する可能性は低かったし、当時の気象レーダーにも、事故発生海域に積乱雲の類いはなかった。それは、直前まで事故海域を航行していた船舶の乗組員からの聞き取りでも、嵐が起こる兆候すら無かったとの証言を得ている」

 

 

 

 

「そこまでは、私も聞き及んでいます」

 

 

 

「うむ……問題はここからだ。当時、事故にあった船舶の生存者から興味深い証言を得ていてね」

 

 

 

「どの様なものですか?」

 

 

「【雷を纏った空を飛ぶ巨大な化け物】を見た………と」

 

 

 

 

 

「…………は?」

 

 

 

 

真雪は頭がついて行かない。

 

 

一瞬、大湊が自分をからかっているとも思った。

 

 

だが、彼と旧知の仲である真雪だからこそ解るのだ。

 

 

 

この表情の大湊に嘘など微塵もないのだと………




お付き合い頂きありがとうございました。

一度決着までにクッションを置いていこうと思います。

それではまたいつか。




とらふり!

大湊
「娘は君に似てきたね。荒々しいとことか腹黒い所とかさ。三番目の子は父親似の様だがね」

真雪
「はい、あの子を見ているとまるであの人の生き写しの様ですわ。あ・の・ひ・と・の(ハート)」

大湊
「真顔でクネクネされてノロケられても対応に苦慮するよ…」




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