トライアングル・フリート   作:アンギュラ

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お疲れ様です。

播磨戦決着です。

どうか最後までお付き合いください。

それではどうぞ




涙で解けぬ雪の華    vs 超兵器&Unknow

   + + +

 

 

 

 

《オ前ノ心ヲ見タゾ…私ノ物ダ……》

 

 

 

獰猛な目玉が明乃を睨む。

 

 

 

《オ前ノ恐レモ見タ…不安 怒リ 哀シミ 全テヲ見タ…》

 

 

 

「やめて……」

 

 

 

《オ前ト私ハ似テイル。兵器ナノダ。人々ノ都合デ作ラレ、人々ニ疎マレ、ソシテ使イ潰サレル》

 

 

 

「やめて…やめて」

 

 

 

 

《身ニ覚エガアルノダロウ?孤児トイウ身ノ上ニ向ケラレル差別ト同情ノ眼差シ、ソノ優秀サ故ニ時ニハ疎マレ、マタ利用シヨウト近付ク者達。誰モオ前ノ事ナド真ニ思ウ者等存在シナイ。何故ナラオ前ハ我ラト同ジ、殺戮ト死ト虚無ヲ生ミ出ス……》

 

 

 

 

「やめて止めてヤメテやめてヤメテヤめテ」

 

 

 

《私ガ蒔イタ種ガ芽吹イタ。【超兵器:岬明乃】ナノダ》

 

 

「イゃぁアぁぁあぁぁアああ!」

 

 

 

 

 

 

絶望の叫びが響き渡る。

 

 

 

 

明乃の脳裏には、幼い頃自分に向けられる周りの大人達の不快な視線、小学校の頃にクラスメイトや担任から言われた心ない言葉、まるで動物園に展示される珍獣を相手にするような扱い受けてきた過去。

 

 

 

 

その類い稀なる知能と身体能力から、定期的に訪れては、医学の為と称して自分の身体をまるで実験動物を見るような目で嘗めるよう眺め、弄くり回す白衣の研究者達の姿。

 

 

 

 

思えば、一人の人間として尊厳を持って接して貰ったことなど無かった。

 

 

 

明乃の人当たりの良い人格は、そうした過酷な環境に順応しようとする心の防衛本能が造り出したのかもしれない。

 

 

 

 

しかし、長年にわたる不遇な扱いは彼女の心を着実に蝕み脆くして行き、そこに超兵器の付け入る隙を生み出してしまったのだ。

 

 

 

目玉は不気味な程優しい口調で囁いてくる。

 

 

 

《岬明乃。私ヲ使イ、私ト共ニ歩メ。オ前ヲ理解出来ルノハ、オ前ト同ジ苦シミヲ知ル私ダケナノダ……》

 

 

 

 

 

「あなた…だけ?」

 

 

 

 

《ソウダ…私ハ未ダ彼ノ者ノ命令ニ縛ラレテイル。私ノ行イニ、憎悪ヤ恐レヲ向ケル者ハイテモ称賛スル者ハイナイ…。私ハ孤独ナノダ、オ前同様ニ……》

 

 

「孤独……」

 

 

 

 

《共ニ歩モウ。サァ私ヲ受ケ入レヨ……》

 

 

 

限界の精神状態の明乃には、相手からの提案がとても甘美なものに感じられた。

 

 

 

 

 

 

目の前の力を手に出来れば、不遇な扱いは無くなる。

 

 

目の前の力を手に出来れば、大切な者を失わずに済む。

 

 

目の前の相手を受け入れられれば、自分は孤独から解放される。

 

 

 

 

 

明乃は手を伸ばし、力を欲しようとした。

 

 

 

 

     《明乃!》

 

 

 

 

 

「!!?」

 

 

 

 

 

彼女はその声に我に帰った。

 

 

 

 

     《明乃!》

 

 

 

 

 

聞き間違える筈がない。

 

 

 

なぜならその声は……

 

 

 

「お父さん?お母さん?ねぇ、どこにいるの?」

 

 

 

亡くなった筈の彼女の両親のものだったからである。

 

 

 

彼女は辺りを見渡すも、両親の姿を見ることは出来ない。

 

 

 

 

 

その時だった

 

 

 

 

明乃の胸から、勢い良く小さな光の玉が飛び出し、闇に包まれた世界に温かな光が灯る。

 

 

光は、明乃の周りをクルクル回り、目の前で止まった。

 

 

 

 

 

 

   + + +

 

 

出雲とペガサスは、播磨への攻勢を強める。

 

 

切り札である光子榴弾砲は、あくまでも試験段階であり。現段階での連続発射にはリスクを伴う。

 

 

 

外すことは許されない以上、出来るだけ播磨を一ヶ所に釘付けする必要があったのだ。

 

 

 

 

 

「まだだ!!播磨の急速加速とサイドスラスターを封じないと、かわされる可能性がある。攻撃の手を緩めるな!砲撃・ミサイル・レーザー、とにかく何でもいい。撃ち続けろ!」

 

 

 

 

ヴェルナーは、厳しい表情を浮かべる。

 

 

正直なところ、暴走状態の播磨は、通常の攻撃を悉く跳ね返してしまう為に決定力に欠いてしまうのだ。

 

 

 

 

防壁の飽和を待つ前にこちらがやられる可能性もある以上、光子榴弾砲の発射は急務であるが、かといってかわされる訳にもいかす、最早手詰まりと言ってもいい状態だ。

 

 

 

 

その時、出雲のシュルツから通信が入る。

 

 

 

 

『ヴェルナー!401が動くぞ!いよいよだ!』

 

 

 

 

 

ヴェルナーは拳を握り締め、ジトッと額に滲んだ不快な汗を拭う。

 

 

恐らくここが勝負の分かれ目であることは言うまでもなく、何か一つのでも手違いがあれば全てが終わる。

 

 

 

 

 

 

故にヴェルナーは、自分に言い聞かせる様

にしっかりとした口調で指示を出した。

 

 

 

 

「総員、総攻撃準備!シュルツ艦長が動かれるぞ!なんとしてもここであの化け物を仕留めるんだ!」

 

 

ペガサスは、播磨に全砲門を向けた。

 

 

 

   + + +

 

 

 

「杏平!全ての魚雷発射菅とミサイルの弾頭を侵食弾頭にして装填!目標は、播磨のスクリューと舵!静!播磨のスクリュー音のパターンはとれているか?」

 

 

「はい!既に火器管制システムに入力済みです!」

 

 

「よし。いおり!フルバーストスタンバイ!砲弾をばら蒔いたら全力でこの場から距離を取る!」

 

 

『もぅ、エンジンに無理させ過ぎだよ~!!でもオッケー!必ず持たせてみせる!』

 

 

「頼む!」

 

 

「艦長よぉ……スクリュー潰しても、まだスラスターがあるぜ?」

 

 

「スラスターはあくまでも補助装置だ。あの巨体を動かすにはスクリューと舵が必要不可欠になる。今はそれを潰して動きを鈍く出来ればいい。」

 

 

 

 

「了解!いっちょやりますか!」

 

 

 

 

「艦長!クラインフィールドの飽和率は80%を越えています!」

 

 

 

 

「問題ない……フルバースト終了後、後方を中心にフィールドを展開すればまだ余力はある。イオナ!行けるか?」

 

 

「やってみる。群像……」

 

 

 

イオナは手を差し出した。

 

 

群像は少し目を丸くすると、決心したようにイオナの手をしっかりと握った。

 

 

 

 

「これより蒼き艦隊は、超兵器播磨の動きを封じ、戦艦出雲に攻撃のチャンスを作る!いくぞ!フルファイア!」

 

 

 

 

401から一斉に魚雷とミサイルが発射され播磨の舵とスクリューに殺到した。

 

 

 

 

   + + +

 

 

「艦長!播磨後部より破砕音を確認!敵艦、速力・操舵性共に低下!好機です!」

 

 

「よし!光子榴弾砲、エネルギー充填!目標・超兵器播磨!」

 

 

 

 

「了解!光子抽出装置作動開始!完了まで、およそ72秒!」

 

 

 

 

光子榴弾砲の砲身がゆっくりと播磨に向けられ、砲門が眩い光を放つ。

 

 

 

 

播磨は足掻く。

 

 

しかし、その巨体をスラスターのみで動かすには無理があり、一方で真下では401がフルバーストで離脱にかかる。

 

 

 

播磨は、最上級の危険因子である光子榴弾砲の発射準備をしている出雲に、主砲の照準を向けた。

 

 

 

 

 

「ナギ少尉。光子抽出機によるエネルギーの充填と401の退避はまだか?」

 

 

「エネルギー充填84%、401はいまだ危険区域。もう少し掛かります!嘘……敵艦、主砲を此方に回頭!

間に合いません!」

 

 

「くそ!あと一歩なのに……!」

 

シュルツは壁に拳をぶつけ、ナギも悲鳴にも似た声を張り上げた。

 

 

 

「敵艦、発砲!主砲弾来ます!」

 

 

(ここまで来て…!!)

 

 

 

誰もがそう思ったその時……

 

 

 

 

 

『しょげた声出してんじゃ…ないわよ!!』

 

 

 

「!?」

 

 

 

出雲の目の前に、物凄い勢いで現れたのは……

 

 

 

 

「重巡タカオ!」

 

 

 

『私だって…艦長の役にたてるんだから!』

 

 

 

 

 

タカオは、出雲の前に急速停止すると、クラインフィールドを展開した。

 

 

 

直後、

 

ズドォォォン!

 

 

播磨の主砲がフィールドに直撃して炸裂する。

 

 

 

 

『クラインフィールド…完全に飽和。後がないわ!必ず決めなさい!』

 

 

 

「救援感謝する!早く本艦謝線上から退避せよ!」

 

 

 

『了解!決めなさいよ!』

 

 

 

「ナギ少尉!」

 

 

 

 

「エネルギー充填完了!後は401の退避が…。」

 

 

『やってくれ!』

 

 

 

「千早艦長!」

 

 

『十分距離はとりました。後はクラインフィールドを後方に全力展開して防ぎます!時間がない早く!』

 

 

「博士!」

 

 

 

「発射照準軸、敵超兵器播磨を固定!最終安全装置解除…確認!発射準備完了!いつでも撃てます!」

 

 

 

シュルツに迷いは無い。

 

 

 

彼は【双角の鬼】を睨み、思い切り叫んだ。

 

 

 

「光子榴弾砲……撃てぇぇぇぇぇ!」

 

 

 

 

タカオが出雲の前からどけた瞬間、眩い光の球体が、目にも止まらぬ速さで播磨へ向かって行き、幾多の攻撃を防いできた防御重力場と電磁防壁に衝突、激しい紫電が迸る。

 

 

 

「いけぇぇぇ!いってくれぇぇ!」

 

 

 

 

シュルツは叫ぶ。

 

だが現実は非情だった。

 

 

 

「艦長!光が…。」

 

 

 

防壁にぶつかった砲弾の光が徐々に弱まっていく。

 

 

 

 

「諦めるな!」

 

「シュルツ艦長!!?」

 

「これからだ!」

 

 

 

ナギは播磨へと視線を向け今にも消えそうな光を見て絶望しかけた。

 

 

 

その時……

 

 

「総員、対衝撃防御!外に居るものは直ちに艦内に戻れ!衝撃波と熱波が襲ってくるぞ!勝負はこれからだ!目と耳は絶対守れ!」

 

 

 

 

シュルツが叫んだ。

 

 

同時に全ての艦、全ての乗員が目と耳を庇って体勢を低くした次の瞬間、凄まじい光と轟音が鳴り響き、大きく艦が揺れた。

 

 

 

 

「うっぐぅ…!」

 

 

 

 

周りから呻き声が聞こえ、シュルツ自身も暫くは立ち上がることができなかった。

 

 

揺れが収まり、一同は立ち上がって敵が居たであろう方角を見た。

 

 

 

辺りには光子エネルギーから変換された膨大な熱量により海水が蒸発し、靄が立ち込めている。

 

 

 

 

「やった…やったんです!艦長!私達は…超兵器を…倒したんですよ!」

 

 

 

ナギが叫び、表情を和らげると、出雲のクルーも次々と安堵の表情を浮かべた。

 

 

ただ一人、シュルツを除いては…。

 

 

 

 

「そうか、まだ足りないのか……播磨!!」

 

 

一同はギョッとした。

 

 

靄の中に巨大なシルエットが浮かび上がったのを見たからだ。

 

 

「あ…ああ…あぁぁ」

 

 

 

 

ナギを始め、一同も姿を現した播磨の姿に戦慄する。

 

 

 

そこには居たのは一匹の鬼

 

 

 

左舷のドリルは脱落し、飛行甲板も破損。

 

 

 

幾つか砲も、熱でグニャグニャに湾曲し、攻撃を受けた船体が熱を持っているのか、彼の艦が通った海面が蒸気を挙げていた。

 

 

 

 

それでも尚、播磨は止まらない。

 

 

 

 

「一時的に、全出力を防御に回して、武装とスラスターを死守したのか…!」

 

 

 

「狂っている!これ以上の戦いに、何の意味があると言うの?」

 

 

 

 

博士からも、思わず弱気な発言が飛び出す。

 

 

 

 

「解っているとも。それがお前の…いや、超兵器の矜持か!」

 

 

 

 

《我ガ名ハ播磨…【東洋の魔神】ナリ。貴殿ト私ノ間ニ、最早言葉ハ不用。互イニ砲ヲ交エ、砲デ語ラウノミ……》

 

 

 

「そうか…お前は、真の全身全霊で戦いたかったのか…」

 

 

「艦長?一体誰とお話しになっているのですか?」

 

 

 

「ならば答えよう。そして終わりにしよう。【撃沈】と言う結果をもって、お前の戦に幕を下ろしてやる!」

 

 

「か、艦長?」

 

 

 

「大丈夫だナギ少尉。何でもない……それより、砲撃戦準備!ケリをつけるぞ!」

 

 

「は、はっ!」

 

 

 

播磨と出雲は同時に動き出し、出雲が始めに砲撃を行う。

 

 

 

 

本来であれば、防御重力場に阻まれたであろう。

 

しかし……

 

 

 

ズドォォォン!

 

 

 

 

出雲の砲撃は播磨の甲板に着弾して炸裂し、衝撃で近くの副砲が吹き飛んで黒煙を上げる。

 

 

 

 

「防御重力場が消えた!?タカオ!」

 

 

 

「でも侵食弾頭は弾切れよ?通常弾頭も残り少ない。あの巨体を沈めるには火力不足だわ……そうか!超重力砲なら!」

 

 

 

「駄目!クラインフィールドが無い状態じゃ、エネルギーを蓄積している間に狙い撃ちされる!」

 

 

「それじゃどうしろって…ちょっと待って、通信よ。……ん、解ったわ。行くわよもえか!」

 

 

「どうするの?」

 

 

「こうするのよ!」

 

 

 

 

タカオは、ロックビームを照射し、海が割れて播磨が捉えられる。

 

 

 

「今よ!」

 

 

 

 

タカオが叫んだ。

 

 

 

すると遥か遠くで蒼白い光が輝く。

 

 

401の超重力砲だった。

 

 

姿を眩まし、ロックビームを使用しない事で、完全に播磨の隙をついたのだ。

更に401の超重力砲は、戦利品として大戦艦ヒュウガの物を取り付けている為、威力はタカオのそれよりも遥かに上回っている。

 

 

勝負は決まったも同然……しかし

 

 

 

「タカオ!緊急回避!」

 

 

 

 

タカオは、ハッとして視線を向ける。

 

播磨は不愉快な軋み音を上げながら160cm砲を此方に向けて来る。

 

 

もし直撃すれば、クラインフィールドを失ったタカオなどひとたまりもない。

 

 

「ヤバ……」

 

 

タカオは急遽ロックビームを解除して、回避運動に入った。

 

 

直後、タカオのいたところを砲弾が通過して炸裂。至近距離での爆発で激しく船体が揺れる。

 

 

 

そして播磨の真の狙いは別にあった。

 

 

超重力砲の回避である。

 

 

 

タカオにロックビームを解除させて、開放された船体をサイドスラスターと超巨大砲の発射の衝撃で急速に横にスライドさせる。

 

 

 

艦としてはあり得ない勢いで横滑りをした播磨の横を切り札である超重力砲が通過した。

 

 

 

「超重力砲が…かわされた!?」

 

 

「何でよ!これだけの艦に囲まれて、これだけの攻撃を受けて、何で止まらないの?何で沈まないのよ!」

 

 

 

いつもは強気のタカオも今度ばかりは弱音を吐くしかなく、それは伝播するかの様に全ての艦艇に広がった。

 

 

 

 

 

 

「超重力砲がかわされるなんて……」

 

 

「そんなことはどうでもいい!今はとにかく攻撃を継続するんだ!」

 

 

 

シュルツはナギに叱咤して攻勢を更に強めていく。

 

 

 

(攻撃は通る!今を逃せば終わりだ!)

 

 

 

出雲は、播磨と正面から撃ち合った。

 

 

 

播磨の甲板上では、至るところで煙が上がっている。

 

 

 

攻撃は効いている筈だ。

 

 

 

だが、それでもシュルツはゾクリとする背筋の寒さを感じていた。

 

 

 

直後、彼の予感は的中する。

 

 

 

 

「まずい…取り舵一杯、緊急回避!突撃が来るぞ!」

 

 

 

 

播磨は右のドリルを稼働させ、一直線に突っ込んできた。

 

 

 

出雲は回避運動に入るが、一歩間に合わない。

 

 

 

 

 

艦に激震が走り、シュルツも体が吹き飛ばされて、壁に激突した。

 

しかし、激痛に怯んでいる余裕は彼等にある訳もない。

 

 

 

 

「あ、くっ…!ひ、がい報告を……」

 

 

「は、はい!右舷後方大破、浸水発生、エネルギー回路に異常発生のため光学兵器を使用できません!」

 

 

「ダメージコントロール急げ!」

 

 

出雲は浸水により速力が徐々に低下して行き、このままでは蜂の巣になってしまう。

 

 

 

その時、

 

 

『シュルツ艦長!タカオに援護を頼みました。一度離脱してください!考えがあります!』

 

 

「はれかぜか…策とは?」

 

 

『それは…』

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

「お父さん!お母さん!」

 

 

明乃が呼び掛けると、小さな光の球は二つに分裂し、人の形を成した。

それは忘れるはずもない、あの時のままの優しい両親の姿だった。

 

 

 

《明乃…大きくなったな》

 

 

《友達は出来た?身体を壊したりはしてない?》

 

 

「うん…元気だよ……」

 

 

《明乃?》

 

 

「ごめんなさい!私のせいでお父さんとお母さんが……それに私…いい子じゃなくなっちゃったの!怒りや不安が込み上げてきて、自分じゃないみたいに抑えが効かなくなる。これじゃまるで……化け物だよ!お父さんとお母さんの子じゃなくなっちゃう!!」

 

 

《明乃……》

 

 

 

涙を溢して謝罪をする明乃を両親は心配そうに見つめる。

 

 

その時、背後でギョロリとおぞましい目玉が彼女に囁いた。

 

 

 

《ソノ通リ…最早オ前ハ人ニ非ズ。全テヲ虚無ニスル存在。即チ我等ト同類ナノダ》

 

 

 

「う、うっ、ぐぁ…あっ」

 

 

 

明乃は頭を抑えもがき苦しむ。

 

 

 

彼女の脳には、世界で起きてきた災悪が写し出されたいたのだ。

 

 

 

 

戦争

 

 

「あっ…」

 

 

 

テロ

 

 

 

 

「ひぐっ!」

 

 

差別

 

 

 

「がぁ…」

 

 

 

恨みの連鎖

 

 

 

「ひぃ!!」

 

 

 

 

「うぇっ…」

 

 

 

そして最後に明乃は見た。

 

 

【終わりの世界】を……

 

 

 

 

目玉は彼女に優しく囁く。

 

 

 

《オ前見タダロウ。何者モ存在シナイ世界ヲ、戦モ病モ無イ世界ヲ…如何ナル苦モ無イ世界ヲ……》

 

 

 

「う、うぅぅ……」

 

 

 

《オ前ハ私ト同類ダ。私ヲ見ヨ!》

 

 

 

明乃は目の前の目玉と対峙した。

 

彼女は思ってしまうのだ。

 

 

 

¨この世界に行きたい¨と

 

 

 

 

苦しみを知っている明乃だからこそ、苦しみの無い終わりの風景に安息の気持ちを抱いてしまっていたのだ。

 

なぜかひどく優しく見える目玉の下へ、明乃は進もうとした。

 

 

 

それを思い止まらせたものは……

 

 

 

()()()

 

 

 

両親の声だった。

二人は明乃の身体を堅く抱き締め、言い聞かせるように彼女に語りかける。

 

 

 

 

《明乃。私達の話を良く聞きなさい。お前は兵器でも、世界の救世主でもない。¨私達の娘¨なのよ》

 

 

 

《どれだけ¨アレ¨と¨同じ¨かじゃない。どれだけ¨違う¨かなんだ。思い出してごらん。そして忘れないでくれ。兵器が決して持てないもの、明乃が持っているものを…どれだけ私達が明乃を大切に思っていたかを……》

 

 

 

 

 

明乃は目を見開いた。

そして、彼女の頬を血の通った暖かな雫が流れ落ちていく。

 

 

 

胸に手を当てると、そこにあの時貰った懐中時計の感触が手に伝わった。

 

 

 

あの日あの時以来、同じ時刻を指し続けている懐中時計。

 

 

 

明乃は両親を忘れない為、敢えて直すことはなかった。

 

 

 

だがその行為こそが、彼女を過去に縛り付け、現実を不幸と決めつけて、心の時計を前に進める事を頑なに拒んでいた明乃自信の気持ちを具現化したものだったのかもしれない。

 

 

 

 

しかし今、両親の言葉を得て彼女の脳裏に浮かんだ記憶が、止まってしまった心の時計の針を動かし始めていた。

 

 

 

それは何万分の一秒か、何億分の一秒かは解らない位小さなものかもしれない。

 

しかし、¨止まっていない¨事だけは確かだった。

 

 

 

 

 

短い間だったが、両親に沢山の愛情を貰った記憶。

 

 

自分の娘と分け隔てなく育ててくれたもえかの母との記憶。

 

 

自分と同じ苦を共有し、共に笑い、泣いてくれた親友もえかとの記憶。

 

 

 

時に叱咤され、ぶつかる事があっても、自分を信じて見捨てなかった晴風の仲間たちとの記憶。

 

 

ブルーマーメイドになり、実際に助けた人々から感謝されたり。真摯に指導してくれた先輩達と過ごした記憶。

 

 

 

 

 

 

¨無かった事¨には出来ない、小さくとも大切な記憶が明乃の時を動かしたのだ。

 

 

彼女は振り返り、おぞましい目玉に相対する。

 

 

 

 

   + + +

 

「な、なんだ!!?」

 

「鏑木医務長、どうした?」

 

 

「岬さんから検知された超兵器ノイズが…弱くなっている?それに新たな脳波が…超兵器ノイズと、全く逆の波形の…一体何が起きているんだ……」

 

 

 

 

   + + +

 

 

「あなたには何もない。両親からの愛も…友人との思い出もっ!」

 

 

 

《………》

 

 

 

「あなたはとても可哀想な存在……私は、あなたみたいな存在には…なりたくない!」

 

 

 

迫り来る闇に対する確固たる拒絶。

 

 

すると、暗闇に支配されていた風景が眩い光におおわれ始めた。

 

 

 

 

   + + +

 

「新たな脳波に超兵器ノイズが打ち消されていく!?」

 

眠っている明乃の唇がぎゅっと結ばれた。

 

 

 

   + + +

 

 

 

目玉は強い光に耐えられず呻き声を上げる。

 

 

《ググォォ!!愚カナ……オ前ハ全テ失ウゾ…全テダ!》

 

 

 

辺りの光は一層強くなる。

 

 

 

《グゥゥオオオオ!》

 

 

 

目玉は苦痛の悲鳴を上げ、のたうち回りながら闇の彼方へと姿を消していった。

 

 

最後に一言を残して……

 

 

 

《イズレ…マタ……》

 

 

 

辺りが完全に光に覆われると、明乃の体がフワリと浮き上がる。

 

 

 

彼女は離れていく両親に叫んだ。

 

 

 

「お父さん!お母さん!嫌だ!もっと一緒に………!」

 

 

 

《明乃。いつ、どんなときでも明乃を大切に思っているよ》

 

 

 

《今は戻りなさい。大切な人達の下へ…大丈夫!!いつも側にいるわ。【晴風】が私達を導いてくれたから……》

 

 

「晴風が…?」

 

 

 

《どんなに辛くとも、あなたの下に良い風が吹くように祈っているわ》

 

 

 

 

明乃は手を伸ばす。

 

 

 

だが両親との距離はどんどん離れ、姿が光の中に消えていった。

 

 

   + + +

 

 

ガタンッ!

 

美波が目を丸くして唖然としている。

 

いや、美波だけではない。艦橋にいた全ての者が、音のした方を見て驚愕している。

 

 

岬明乃は立ち上がっていた。

 

 

「岬…さん?」

 

 

「¨シロちゃん¨砲撃戦準備……」

 

 

「シロ…もしや!大丈夫なのですか?」

 

 

「話している時間がない、早く!」

 

 

「は、はい!」

 

 

 

 

真白は慌てて指示を飛ばした。

 

その時、マチコから報告が届く。

 

 

『警告!敵艦発砲!主砲弾5此方に向かう!』

 

 

「知床航海長、回避を…!!」

 

 

 

「する必要はないよ!あれは当たらない……」

 

 

「何をいう……」

 

 

「それよりも、次に来る砲弾が本命だよ!今回の砲弾が全て着弾した瞬間に機関全速、取り舵20度!」

 

 

「何でそんなことわかるんだ!」

 

 

「感じるの……」

 

 

「え?」

 

 

「解るの。アレを…超兵器を感じる……」

 

 

 

 

明乃は、彼方にいる播磨を睨んだ。

 

 

 

 

「今ならやれる。終わりに出来る!お願いシロちゃん…信じて!」

 

 

懇願するような声に、真白はなにも言い返せなかった。

 

 

 

 

「岬さん私はあなたを…あなたを……」

 

 

『主砲弾接近!』

 

 

「信じます!」

 

 

彼女がそう叫んだ次の瞬間、播磨の砲弾が着弾した。

 

 

しかし、はれかぜには一切当たらず、そして先程彼女が言った通り、播磨がもう一度はれかぜに向かって発砲する。

 

 

 

 

『敵艦発砲!弾数3此方に向かう!』

 

 

「機関全速!取り舵20度!」

 

 

 

「ひっ!よ、ようそろ~!」

 

 

「岬さん。なぜあなたが敵の攻撃を予測出来るのかは解らない。でもこれだけは言える。本当のあなたは、私達を決して死なせない。だから信じます!!岬明乃を私達は信じます!」

 

 

「シロ…ちゃん……」

 

 

「だからこれを、あなたにお返しします」

 

 

 

 

真白は明乃に艦長帽を被せ、美波も下着姿の明乃に上着を羽織らせる。

 

 

真白は優しく笑顔を向けた。

 

 

 

「お帰りなさい!¨艦長¨」

 

「うん…ありがとう」

 

 

 

彼女は潤んだ瞳を一度閉じると、カッと見開き指示を出した。

 

 

 

 

「皆!私に考えがあるの。シュルツ艦長に通信を繋いで!」

 

 

 

 

「はい!」

 

 

 

 

「シュルツ艦長!タカオに援護を頼みました。一度離脱してください!考えがあります!」

 

 

『岬艦長……策とは?』

 

 

 

「それは電子撹乱ミサイルを使用し、播磨を叩く作戦です。出雲とタカオ、そして401は出来るだけ播磨の後方真ん中付近の甲板に穴を開けて、それから出来るだけ播磨の目をはれかぜから逸らして下さい。超兵器機関を無力化します!」

 

 

『なるほど。奴の心臓さえ叩けば……』

 

 

「播磨を無力化できます!」

 

 

 

『解りました。至急通達を出します。御武運を!』

 

 

 

 

明乃は通信を終えると再び指示を出した。

 

 

 

 

「総員、砲撃戦準備!シュルツ艦長達が、チャンスを作ってくれてる。私達も攻撃をしのぎつつチャンスを作ろう!タマちゃん!電子撹乱ミサイルβ用意!」

 

 

「うぃ!」

 

 

「リンちゃんは、播磨との距離を出来るだけ一定に保って!近付き過ぎると攻撃の対象になりやすい。今は出来るだけ邪魔をされたくない。危険があるようなら知らせるからその時はいう通りに艦を動かして!」

 

 

「は、はぃ!」

 

 

明乃の復活によって、事態は決着へと動き始めていた。

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

タカオの援護により、播磨から距離を取った出雲は、反撃の準備に入っていた。

 

 

 

 

「艦長!弾薬がもう尽きそうです!」

 

 

「無駄弾を撃つなよ!このチャンスを逃す訳にはいかない。回り込んで!確実に甲板を破壊しろ!」

 

 

『401より出雲へ、タカオともに援護する』

 

 

「了解!救援感謝する」

 

 

 

『艦後方にあるガトリングレールガンを破壊します。一度注意を引いてもらいたい』

 

 

シュルツは頷くと通信を切る

 

 

 

 

「ミサイル発射用意!」

 

 

 

 

出雲は超兵器機関のある播磨の後方甲板へ

ミサイルを発射。

 

 

 

 

最重要の危機を感じ取った播磨がガトリングレールガンで迎撃に入り、音速を遥かに超える強烈な弾丸が殺到しミサイルはあえなく砕け散った。

 

 

 

 

その時、水面下から幾多のミサイルが飛び出しガトリングレールガンに襲いかかり、激しい爆発音と共に、いままで後方の守りを固めていたレールガンが粉々に爆散した。

 

 

「よし!全砲門開け!超兵器機関周辺の甲板を破壊するんだ!」

 

 

 

 

 

出雲 ペガサス タカオ 401は残りの砲弾を有りったけ発射し、超兵器機関周辺の甲板を破壊していく。

 

 

 

   + + +

 

 

 

 

 

「タカオ!弾薬がもう…。」

 

 

「くっ…401!あんたはどうなの?」

 

 

『此方も弾薬はあと幾分もない……』

 

 

「参ったわ…やはり超兵器機関周辺の内部装甲は厚く造られている。甲板を破壊した位じゃ露出しないわよ!」

 

 

「とにかく弾薬が有る限り通常弾頭で攻撃し続けるしかない!」

 

 

「侵食弾頭さえ有れば……」

 

 

「望の物はこれか?」

 

 

「そうそう!この侵食弾頭が…ってハルナ!?いつの間に?それにこれは……」

 

 

 

「光子榴弾砲作動時にお前に乗り込んだ。困っていた様だから401に許可を得てセイランを解体し侵食弾頭に再構成した。一発しかないが、防壁が無い今なら有効だろう。使え」

 

 

「有り難いわ!使わせて貰うわよ!」

 

 

「礼には及ばん…蒔絵を守る為だ」

 

 

「それじゃ行くわ!」

 

 

 

『待って!』

 

 

「この声はミケちゃん?」

 

 

『これから電子撹乱ミサイルを撃つ!今からココちゃんに座標データを送ってもらうから、モカちゃんはその後に私の指定した場所に侵食弾頭を撃って!撃ったら出来るだけ超兵器から距離を取るよう全艦に伝えて!』

 

 

「でもそれじゃ……」

 

 

『説明の時間がない!いくよ!』

 

 

「ちょっ、ミケちゃん!?」

 

 

 

 

通信が切れたと同時にはれかぜからミサイルが発射された。

 

 

 

 

「え?ミケちゃんどうして…超兵器機関とは全然違う方向に飛んで……」

 

 

 

 

はれかぜの発射した電子撹乱ミサイルは、超兵器機関ではなく、播磨の艦橋に向かって飛行し直撃、途端に強烈なジャミング波が辺りに撒き散らされ、今まで暴れ狂っていた播磨の様子が一変した。

 

 

 

 

砲撃は続いているが、今までのような正確な砲撃ではなく、全く見当違いの方向に闇雲に乱射を始めたのだ。

 

 

 

無人であるが故にセンサー類を狂わされた播磨は、言わば目隠しをされた状態に等しく、相手が何処に居るかも何処へ攻撃して良いのかも解らなかったのだ。

 

 

 

 

攻撃のチャンスとしては正に今だが、霧の艦隊のジャミング波は強力であり、播磨に一番近い所にいたタカオにも影響が出てしまっている。

 

 

 

 

 

「これじゃ狙えないわよ……」

 

 

「そうか!!だからさっきの座標に……タカオ!今から言う座標に侵食弾頭を誘導して!」

 

 

 

「出来なくは無いけど、ジャミング波の緩和に演算を割くと、正直当たるかどうかは五分五分よ?」

 

 

「心配するな。私が演算を補助する」

 

 

「ハルナ…解ったわ。やってやるわ!」

 

 

 

タカオは、精製された侵食弾頭を装填し、ハルナの演算を借りて狙いを定める。

 

 

 

 

「いっけぇぇ!」

 

 

 

 

侵食弾頭を積んだミサイルが発射された。

 

 

 

センサーを麻痺させられている播磨に最早迎撃能力は無い。

 

 

 

 

ミサイルは一直線に飛行し、甲板に開けられた穴に入り込んで、超兵器機関を覆っている装甲に直撃し、極小のブラックホールが分厚い装甲を無限の圧縮で食い破った。

 

 

 

 

「どう!?」

 

 

 

 

 

「ダメ…届かない!」

 

 

 

 

「そんな……」

 

 

タカオが愕然としたとき。

 

 

一発のミサイルが超兵器機関へと飛び込んでいった。

 

 

 

   + + +

 

 

「艦長!弾薬欠乏です!もう打てません!」

 

 

「そうか……だが!」

 

 

 

 

 

 

 

はれかぜから一発のミサイルが播磨へと飛んで行くのを見ながらシュルツはナギへと問いかけた。

 

 

 

 

「ナギ少尉。貴官はパンドラの箱を知っているか?」

 

 

「この世の災悪の全てが入っていて蓋を開けるとそれが溢れて世界に混沌が訪れるアレですか?」

 

 

「そして、災悪の溢れ出た箱に残ったものは……」

 

 

「¨希望¨ですよね?でも私はそんなもの有るなんて信じられません……」

 

 

「貴官の言う通りだ。我々が見てきた世界は災悪に溢れていた。とても希望一つでどうこうなるような状況ではない。だが、それでも人が¨希望¨に焦がれてしまうのはどうしてだと思う?」

 

 

「それは……」

 

 

 

 

「壊れないからだ。いや¨壊せない¨と言うべきか…希望は元々パンドラの箱の中であらゆる災悪と共にあった。それでも希望は希望としてあらゆる災悪にも染まらず存在し続け、どんな災悪でも壊す事は出来なかった。故に人々は焦がれてしまう。どんな混迷や苦難の時代でも、どんなに強力な兵器や暴力でも、決して破壊出来ない希望があると……私は彼女にそれを見たのだ」

 

 

「岬艦長…ですか?」

 

 

「彼女は今、間違いなくこの世界の苦難の中心にいる。でも感じるんだ、彼女の心に超兵器ですら決して壊せぬ強い芯が存在することを……」

 

 

ミサイルの行き先を見守るシュルツはそれに希望が宿っていると強く感じた。

 

 

 

 

   + + +

 

 

『侵食弾頭着弾!敵艦は……未だ停船せず!』

 

 

 

 

「解ってる。タマちゃん今!電子撹乱ミサイルα発射!」

 

 

「うぃ!」

 

 

はれかぜは、明乃の指示であらかじめ用意しておいた電子撹乱ミサイルαを発射する。

 

 

 

 

明乃は全ての展開が見えていた。

 

 

 

故に、電子撹乱ミサイルβで播磨のセンサーをまず始めに狂わせ、ハルナが¨精製するであろう¨侵食弾頭に超兵器機関の分厚い装甲を破壊させてから、切り札である電子撹乱ミサイルαを発射したのだ。

 

 

 

 

迎撃も出来ず、装甲にも覆われていない丸裸の超兵器機関にミサイルが吸い込まれて炸裂した。

 

 

 

明乃にはその後の展開も読めている。

 

 

 

 

 

「全艦、全速退避!」

 

 

 

 

通信を使って全艦に知らせた明乃が視線を向けた先には、船体からどす黒いオーラが立ち込めている播磨の姿が写っており、真白を始めとしたはれかぜ一同に絶望の色に包まれる。

 

 

 

 

「くそ!やはりダメなのか……」

 

 

 

「違う…あれは!」

 

 

 

 

 

「な、何が起きていると言うんだ!?」

 

 

 

 

   + + +

 

 

「超兵器の動きが更に活発に!」

 

 

「違う…様子がおかしい。見ろ!」

 

 

 

 

 

シュルツが指差した先には、砲弾を乱射していた砲塔がボロボロと崩れていく播磨の姿が見えた。

 

 

 

 

 

『全艦、全速退避!』

 

 

 

「岬艦長!?」

 

 

 

彼女の声を聞いたシュルツの表情が青ざめて行く。

 

 

 

 

 

「まずい…あれは¨自壊¨だ!超異常暴走の超兵器機関の過剰なエネルギーに、船体の方が耐えられないんだ。巻き込まれるぞ!退避だ!出来るだけ超兵器から距離を取れ!」

 

 

 

 

出雲は播磨から離れる軌道を取り、タカオもそれに続く。

 

しかし、

 

 

 

 

「はれかぜの退避が遅れています!」

 

 

「ミサイルを発射していた分、退避が遅れたのか!?救援を……」

 

 

「ダメです!今からでは間に合いません!えっ!?あれは……」

 

 

シュルツが視線を向た先には、はれかぜのすぐ脇の海面から勢い良く姿を現す蒼い潜水艦が飛び込んで来る。

 

 

 

 

蒼き鋼のイ401だ。

 

 

 

 

401は、はれかぜの艦首に回り込むとフックを射出して自身と彼の艦を接続し、スラスターをフル稼働させその場から一気に離脱を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

全ての艦が播磨から距離を取ったその直後。

 

 

 

キュィィィィィン…

 

 

チカッ…………………………

 

 

ゴォォオオオ

ドォォォォオオオン!

 

 

 

 

 

一瞬の眩い光の後に、凄まじい爆発と衝撃波が周りの海に巨大な波を発生させた。

 

 

 

その大波と爆風は十分距離を取っていたはれかぜにも届き、船体が激しく揺さぶられる。

 

 

 

 

「きゃぁぁ!」

 

「て、転覆するぞ!」

 

「総員、対衝撃防御!なんでもいいから掴める物に掴まって!」

 

 

 

 

猛烈な台風でも経験したことの無いような激しい波と揺れに、はれかぜの乗組員からは悲鳴あがる。

 

 

 

 

たった一隻の艦が爆発したとは思えない威力の爆風は、まるで永遠にも感じられる五分程という長きにわたり続き、海をかき回し続けた。

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

 

静寂を取り戻した海は、先程までの激しい先頭が嘘のように静まり返っている。

 

 

 

 

「ん……うっ、んぅ」

 

 

 

 

明乃と真白は体勢を起こし、艦橋の外へ出て播磨のいた方向を見渡す。

 

 

 

そこには、小さな島の様にも見えた巨大な船体は存在せず、どこまでも平坦で穏やかな海が広がっていた。

 

 

 

 

 

「ちょ、超兵器播磨…消滅?勝ったのですか?」

 

 

「うん……」

 

 

 

 

明乃が静かに頷いた時、遅れて艦橋から飛び出してきた幸子が空を見上げて呟いた。

 

 

 

 

「か、艦長…ゆ、雪が……」

 

 

 

 

「馬鹿なっ!ここは小笠原諸島なんだぞ?雪など…あっ……」

 

 

 

 

チラチラと舞う雪の結晶。

 

 

 

 

雲も無いのに何故か舞い降りる雪は、既に傾きつつある太陽の光で一層白く美しく輝いた。

 

 

 

 

 

「艦長、これは一体……か、艦長!?」

 

 

 

 

真白は目を丸くした。

 

 

明乃は、目から大粒の涙を溢して泣いていたのだから。

 

 

 

 

「シロちゃん。どうして…どうしてだろうね…この雪を見ると、なぜだかとても寂しくて…寒くて…悲しい気持ちになるの…勝ったのに…皆をまもれたの…に……」

 

 

 

「か、艦長!?」

 

 

 

 

 

崩れるように倒れた明乃を受け止めた真白は戦慄する。

 

 

 

その身体は、まるで死人の様に冷たくなっていたのだ

 

 

 

 

「艦長!どうされたんですか!?しっかり!しっかりしてください!鏑木医務長!早く、艦長が!岬さんが!!」

 

 

 

頬に涙の跡を残した明乃は、真白がいくら揺すっても目を覚まさなかった。

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

「シュルツ艦長…雪が……」

 

 

 

話かけられたシュルツの表情に勝利の余韻は微塵もなかった。

 

 

「【フィンブルヴィンテル】か……」

 

 

「フィ…なんですか?」

 

 

「【神々の黄昏ラグナロク】ひいてはこの世の終末だ。その前兆として、世界に【大いなる冬】が訪れ、世の中は戦と混沌に満ちていく…北欧の神話だ。その大いなる冬を【フィンブルヴィンテル】という」

 

 

「この雪が、今後の世界に戦火が広がっていく前触れだと?」

 

 

「わからん…だが、超兵器の強化、また異世界ならではの国家間の難しい舵取りを我々は乗りきらねば成らない事だけは確かだ」

 

 

 

 

シュルツは、一人で艦橋の外に出ると、雪の舞う海を見て呟いた。

 

 

 

「東洋の魔神【播磨】よ……満足だったか?」

 

 

 

《貴殿ラトノ戦…誠ニ有意義デアッタ……》

 

 

 

 

 

 

 

「永久に眠れ…二度と這い上がれぬ深く冷たき海底で……」

 

 

 

 

シュルツは死者を弔うような穏やかな声で呟き、そして艦橋へ戻っていった。




お付き合い頂きありがとうございます。

長くかかりましたが、ようやく沈みました。

第一章も終盤に差し掛かっているので何とか上手くまとめられればと思っています。


それではまたいつか。











とらふり! 1/144ちょうへいきふりいと

播磨
「ア~楽シカッタ!満足満足!」

???
「………」

播磨
「ゲ…」


???
「……」

播磨
「ハァ……アイツイツモ何考エテルノカ解ンナイ。イツモ氷ノ海デ、クールブッチャッテサ!」


???
「!!!」


播磨
「アワワ、ゴメンナイ!何モ言ッテマセン!」
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