トライアングル・フリート   作:アンギュラ

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大変長らくお待たせしました。

超兵器戦の続編です。

それではどうぞ


大群の悪鬼   vs 超兵器

   + + +

 

 

401は一度音響魚雷で放ち、深々度に潜航して敵から姿を眩ましている。

 

 

「状況を整理しよう。敵は少なくとも¨七隻¨はいるとみて間違いない。」

 

 

「七隻!?何でだよ!初めに検知したときは確かに三隻だけだったぜ!?」

 

 

群像の発言は、クルーに衝撃を与えた。

敵の数が予想よりも多すぎるからだ。

しかし、群像はそれに構わず続ける。

 

 

「敵は、海中に大量の対潜弾を撃ち込んでソナー感度が低下した際に背後のレムレースを¨送り込んできた¨つまり、敵の数は俺達を囲い混んでいるレムレース六隻と、それらの内三隻を発艦させた¨母艦¨を含めた七隻が存在することになる。」

 

 

「母艦?送り込んできた?まさか潜水艦が潜水艦を発艦させたとかじゃねぇよな?」

 

 

「そのまさかだ。」

 

 

「マジかよ…。」

 

 

杏兵は、呆れたような表情をとった。

 

「此を見て欲しい。」

 

 

群像は、一度イオナに視線を送った後にモニターを見つめた。

コクリと頷くイオナがモニターの画面を切り替える。

そこに表示されたものに、ブリッジのピリッとした雰囲気が更に増した。

 

そこには、エイやマンタに似た形状の超兵器が写し出される。

 

 

「超巨大高速潜水艦アームドウィング。恐らくは奴がレムレースを発艦させた母艦だ。全幅だけなら全超兵器の中でも最大クラスの奴は、潜水艦を内部に格納、発艦する能力を備えている。この統率のとれた動きは、母艦からの指示によるものだろう。」

 

 

「まるで群れた狼に囲まれているような気分です…。狼は格上の獲物を狩るとき、一気に襲い掛からず少しずつ噛みついては離れて、相手が弱るのを待ってから襲い掛りますから。」

 

 

「群狼戦術ってか?冗談キツいぜ…。それにしてもこんな巨大な相手を何で発見出来なかったんだ?イオナセンサーならお手の物だろうに。」

 

 

 

「イオナが人間を乗せているからさ…。」

 

 

 

「人間を…乗せている?どういう事ですか艦長。」

 

 

僧が首をかしげる。

群像は皆に訴えかけるように続けた。

 

「俺達は超兵器という存在を無意識の内に過小評価していたのかもしれない。彼等には¨戦術¨がある。岬艦長の話から推察するに、超兵器達はかつての世界で人間に操縦されていたことは明白だ。そして全世界の人類を相手に幾つもの戦火を潜り抜けてきた。故に、対人類の攻略法や回避方法は既に熟知しているんだ。だからいくら霧の艦艇だからとはいえ、俺達人類が操作している以上、奴等にはある程度の対応が可能になる。」

 

 

「「………。」」

 

 

一同は群像の話に聞き入っていた。

 

 

「今回だってそうだ。俺達はイオナの負担を軽減するために、センサーの一部や、機関。そして攻撃の一部を人間が操作している。そして、人間が扱えば必然的に綻びが出てきてしまうんだ。故に、第三の敵の存在を考慮せず、三隻のレムレースと改アルケオプテリクスからの攻撃だけに囚われてしまった。」

 

 

「確かに…。私も敵は前方の三隻と空から攻撃してくる敵のみに集中していました…。」

 

 

「いや、なにも静を責めている訳じゃない。これはこれから超兵器を相手取る上で、俺も含めた全員が肝に命じなければならないことだ。何せ相手は戦術を会得した霧の艦隊と言っても過言ではない相手なのだからな。」

 

 

 

群像は、全員の表情が引き締まっていくのを感じていた。

油断…とは違うだろうが、超兵器は人類の造り出した兵器の延長線であり、霧の艦艇とは根本的に性能が違うという固定概念がクルーの中に無意識下に存在していたことは確かだろう。

 

その些細な綻びが、彼等の世界では至極当たり前だった霧の艦隊という未知の存在に対して抱いていた警戒心を薄くしていたのだ。

 

群像はこの戦いから真っ先にその事実を認識していた。それは、彼が艦長であり、クルーの感情を在るべき状態にすることが仕事であることもあるが、間違いを正し修正出来る事がこそが人類の強さであると彼自身が信じている証でも有るのだった。

 

そして、群像は努めて自信に満ち溢れた表情で告げる。

 

 

「よし。これからは仕切り直しだ!取り敢えず俺達を囲い込んでいるレムレースに攻撃を仕掛けよう。そうすれば自と母艦にも動きが有る筈だ。」

 

 

 

「一体何をするつもりなんだ?まさかまた博打見たいな事じゃねぇよな?」

 

 

不安げに見つめてくる杏兵に対し、群像は口元をニッと広げただけだった。

 

 

(うぁ~ヤル気だよこの人…。)

 

 

彼のウンザリしたような表情を尻目に群像は次なる指示をクルーに出すのだった。

 

 

 

   + + +

 

 

(姉さまが、共有戦術ネットワークに作戦をアップロードした。はぁ!?なによそれ、それじゃあ姉さまが…って成る程ね。相変わらず大胆だわ艦長は…。それじゃ私の方もさっさと片付けちゃいましょうか。)

 

 

 

ヒュウガの周囲に展開されたリングが一層輝きを放つ。

 

あらゆる攻撃を迎撃しながら、彼女のコアは演算を続ける。

 

 

(作戦概要は味方に通達済み、あとは敵が餌に釣られるかだけど……。)

 

彼女は空が見えなくなりそうな程の弾頭を撒き散らす凶鳥をみつめる。

そして…。

 

〔来た!今だわ、ハルナ!タイミングは任せたわよ!〕

 

 

〔…了解。一撃で落とす。〕

 

 

ハルナからの声を最後に、ヒュウガは改アルケオプテリクスから視線を外し、アルウスを睨んだ。

 

 

(漸く、一対一になれるわね。大戦艦の意地を見せてあげるわ!)

 

 

ヒュウガは既に次の戦いを見据える。

 

 

一方のペガサスでは、クルー全体に緊張が走っていた。

 

 

(ニブルヘイムからの攻撃が止まない。急がなければ大戦艦ハルナの身動きが取れない。少しでも隙を作れれば良いのだが…。)

 

 

シュルツは歯痒い気持ちをなんとか押し殺す。

 

 

「艦長。アレを使いましょう。」

 

 

「博士…。しかしアレは対ニブルヘイムの切り札だったはず。今使うのは…。」

 

 

 

「残念ながらそうは言っていられません。つい今しがた、401から量子通信にて新たな超兵器の存在が伝えられました。」

 

 

「な、なんですって!?」

 

 

「現在確定しているのは、レムレースがあと三隻追加された事。そしてこれは未確認ですが、それらを発艦させた母艦の超兵器、超巨大高速潜水艦アームドウィングがこの海域の何処かに潜んでいる可能性が出てきたと言うことです。」

 

 

 

「何て事だ…。超兵器十一隻が相手とは…。国ひとつを簡単に滅ぼせる戦力ですよ!」

 

 

 

「はい。地中海にいる部隊の事も考慮すれば、最早猶予は有りません。ニブルヘイムを撃沈するには弱くとも一時的に攻撃の手が止めば…。」

 

 

「解りました。至急準備させます。」

 

 

シュルツは、慌てて指示を飛ばした。

 

 

(超兵器の多重運用による艦隊…。これ程追い込まれたのはあの三隻の超兵器航空戦艦とヴォルケンクラッツァーとの戦い以来だ…。)

 

 

彼の額には嫌な汗がジワリと滲む。

 

 

 

   + + +

 

ノーチラスとはれかぜによる攻防は激しさを増していた。

 

 

 

「対潜噴進魚雷、対潜ミサイルVLS、噴進爆雷砲随時発射始め。攻撃の手を緩めないで!ただ魚雷の猛攻が来たら迎撃を優先して!」

 

 

「了解!」

 

 

艦橋に明乃のこえが慌ただしく響く。

 

ウィルキアから提供された自動装填装置は、凄まじい速度で次弾を装填し、弾頭を発射。

小型のはれかぜが煙で見えなくなるほど苛烈な対潜攻撃、それでいてレーダーやソナーのみを頼りせざるを得ない状況での

的確な迎撃をやってのけるはれかぜクルーの洗練された行動力。

並みの潜水艦では数分ももつまい。

 

しかし、ノーチラスもこれでは終わらない。

 

 

『敵艦、増速!敵速…え?嘘…て、敵速65kt!』

 

 

『敵艦、対艦ミサイル並びに各種魚雷を多量に発射!数は…15~22!』

 

 

「こぉげき止めぇ!迎撃に集中して!」

 

 

はれかぜから迎撃用レーザーや魚雷が発射され、双方の間には爆煙や水柱が上がる。

 

 

 

「リンちゃん!常に動き回って!絶対に単調な動きはだめ!」

 

 

「ひ、ひぃ!こ、こっわいィ~!」

 

 

リンは恐怖に打ちひしがれながらも必死に陀輪を回していた。

 

左右に何度も転陀するはれかぜは揺れる。

それこそ慣れていない者なら数分で吐瀉物を撒き散らしかねない激しい揺に、全員が必死に耐えている。

 

 

「う、ぐあぁ!か、艦長。さ、流石にはげ…う、うわぁぁ!激し過ぎる!少し距離を!距離を取りましょう!突っ込むなんて無謀だ、早く距離を!」

 

 

けたたましい爆音に晒される艦橋で、真白は必死に叫んだ。

しかし、必死に手近な物にしがみ付きながらも、明乃はノーチラスがいるであろう方向から目を離さない。

 

 

「艦ちょ…。」

 

 

「待ってください副長!このまま…このまま艦長を信じて進みましょう!」

 

 

「納沙さん!?」

 

 

明乃に駆け寄ろうとした真白を制止したのは幸子だった。

 

しかし、真白は納得がいかない。彼女はノーチラスのデータは事前に把握していた。

 

たった一隻で国家の主力艦隊を相手に出来る強敵。

 

いや、スペックが上昇している点に於いては、最早怪物と言うべき存在なのだから。

 

故に、万全の対策を練って事に当たりたいと考えた真白の判断は至極当然と言える。

 

 

 

自分に非が無ければ、たとえ誰であろうと物申してきた彼女ならではの対応なのである。

 

 

「納沙さん止めるな!お前だって解るだろ!?流石に危険すぎる!」

 

 

「解ってます!でも私…何となく艦長の言いたいことが解る気がするんです!」

 

 

「何だって!?」

 

 

「私だけじゃ有りません。きっと皆も同じことを考えています!気付きませんか?超兵器と相対した時のこの感覚を。」

 

 

「感覚…だと?」

 

 

首をかしげる真白が見渡すと、艦橋メンバーは一様に真白を見つめて頷く。

幸子は、少し表情を暗くしながら続けた。

 

 

「はい…超兵器は無人です。でもこうして戦っていると感じてしまうんです。まるで¨人間が乗っている艦¨を相手にしているようだと。」

 

 

 

「!!!」

 

 

真白は驚愕の表情を見せる。

 

「敵は逃げる。策労して、あらゆる手を使ってくる。きっとそれは、かつて超兵器が蹂躙してきた世界で¨人間に使われてきた¨からだと思います。人間の戦術を会得して使っているんです。でも…故に、付け入る隙が出来る。」

 

 

「な、何故だ。」

 

 

「超兵器は¨強大な存在¨であっても¨完璧な存在¨ではないからです。」

 

 

「完璧ではない!?あれ程の力を有しているのにか?」

 

 

「はい。本当に超兵器が完璧な兵器なら、初めからソレで攻めてくればいい訳ですし、きっとソレの形状も必然的に同一になる筈ですよね?でも超兵器達は皆別々の形状をとり、性能もバラバラ…。」

 

 

「じゃあムスペルヘイムはどうなる?北極海にいる超兵器は?どちらもシュルツ艦長の話では、国や世界単位で相手にしなければならない超兵器だと言うが…。」

 

 

「それだって欠点はあります。思い出してみてください。私達は補給を受け、万全の状態で小笠原での海戦に挑み、最後の一隻だった播磨を満身創痍になりながらも撃沈しました。方や、横須賀に現れたムスペルヘイムは、連戦が続き万全の状態ではないウィルキアのドリル戦艦シュペーアと異世界からの移動で状況がつかめていない401の二隻で撃退したんですよ?」

 

 

「あっ…。」

 

 

真白は幸子の言うことを察した。

 

 

「そうです。高出力艦程、起動までの調整に時間を要するんです。つまりそれまでは、持ち前の力を十分に発揮できないか、若しくは動けない。だからウィルキアのある世界の帝国の人達は、低出力の超兵器や通常艦艇を展開してシュルツ艦長達を足留めしたんだと思うんです。そんなものが完璧な兵器だと言えますか?」

 

 

「確かに。では艦長はチャンスを狙って…。」

 

 

「違います。」

 

 

「なに?」

 

 

真白は再び眉を潜めた

今までの会話からすれば、明乃は敵がいつか隙を見せる瞬間を狙って撃沈を計っている事になる。

 

それを真っ向から否定された彼女はいよいよ解らなくなってしまった。

 

 

「解らない…。艦長は一体何を考えているんだ。」

 

 

「それは艦長の隣にずっといた副長なら解る筈です。だって、私達ですら気付いたんですから。」

 

 

ドキリとした。

少なくとも艦橋メンバー…いや、下手をすれば艦内の全員が明乃の考えを理解していたとしたら、彼女の隣にいる自分は、近くにいながら全く彼女の事を見ていなかった事になる。

 

 

真白は慌てて明乃の背中を見つめた。

眼前を見つめ続ける彼女の背中からは、緊張と恐れのようなものが伝わってくる。

 

真白の知る岬明乃と言う人物は、決して好戦的な人物ではないし、むしろ死者が出かねない戦場に仲間を伴って突撃していく事を何よりも忌むべきもと考える人物なのだ。

 

 

その彼女がそうまでして戦場を駆けていく理由は…。

 

 

「あっ…。」

 

 

真白は、理解した。明乃がそうまでして超兵器に相対する理由が。

 

 

「¨超兵器の成長¨…か。」

 

 

幸子はコクリと頷く。

 

 

「はい。超兵器は私達人間の様に不完全であるが故に、自信の欠点や改善点を修正して強くなっていくと推測します。小笠原で対戦した超兵器の性能が、データよりも強化されていたのはきっとその為でしょう。」

 

 

「………。」

 

 

「だから艦長は前に進むことを選んだんです。もしここで超兵器に逃亡、若しくは私達が撃沈されれば、彼等の力はより強大さを増して人類に襲いかかる可能性が高い。それを防ぐには、この戦いでの確実な撃沈が必要不可欠だと艦長は考えているんだと推測したんです。」

 

 

「そんな所まで考えて…。」

 

 

真白は幸子の言葉に思わず納得してしまう。

 

艦橋にいるメンバーの中で唯一指揮権を持たず、実作業に於ける特筆した能力も無い彼女が、無くてはならない存在である理由がそこにはあった。

 

 

状況を常に観察して分析し、それを蓄積されたデータを元に現場に於けるあらゆる可能性を推察する。

そしてそれらを、優秀ではあるがクセのあるはれかぜクルーに対し、噛み砕いて説明できる話術でもって指揮官に伝え、より的確な指示を出せるよう選択肢を広げる参謀的なポジションに位置しているのだ。

 

 

勿論、彼女自信は広げた選択肢を最適かつ有効に使う術を持ち合わせてはいないが、艦の運営関わる艦橋メンバーの緩衝材としては、むしろ十分過ぎるほどに機能していた。

特に、艦のトップであるこの二人に関しては。

 

 

人間性や人生観など、あらゆる点が真逆な彼女達は、まともに話せば間違いなく衝突するだろう。

 

そして、超兵器との戦いに於ける彼女達の不和は、はれかぜにより確実な死をもたらす。

それだけはなんとしても避けなければならなかった。

 

 

幸子との対話を経た真白は、今は明乃の傍らで眼前を見つめている。

 

二人の心が同一の方向に向かった事を確信した幸子は一先ず安堵した。

 

 

しかしその安堵は轟音と共に終わりを告げる。

 

ズドォォン‼

 

 

「うっ、ああぁぁあ!」

 

 

艦内に悲鳴が響き渡る。

 

超兵器との距離が詰まった事により、敵の放つ超音速魚雷の回避が難しくなってきていたのだ。

 

だが明乃は諦めてはいない。

 

 

(敵の増速…。きっとダメージが蓄積してるんだ。叩くなら今しかない!)

 

 

明乃は確信に満ちた表情で振り返った。

 

 

「対潜噴進魚雷、対潜ミサイルVLS攻撃止め!噴進爆雷砲はそのまま攻撃を継続!バラスト注水、並びに¨新型推進装置¨用意!急いで!」

 

 

「艦長!行かれるのですね?」

 

 

「うん!今しか無いから。」

 

 

はれかぜは、ノーチラスに対し、追い込みの準備に入る。

 

 

はれかぜ艦尾の両側には、超兵器シュトゥルムヴィントに備え付けられていたスラスターの小型版が備え付けられており、艦首には、指向性スラスターも追加された。

 

どちらも、ヒュウガと蒔絵による開発によって成されたものだ。

性能テストは済んでいるが幾つか可動の際に制限がかかる。

この装置の本来の用途は、舵や推進装置の破損、回避し難い攻撃を緊急的に回避する際、補助的に使う物なのである。

 

故に、船体強化に時間を割けなかった事が原因であるとはいえ、通常の推進装置の併用は船体に過負荷が掛かり、破損の恐れが高まる。

更に、超高速での転陀は転覆のリスクも同時に高めてしまうため、使い時の判断が難しいのだ。

 

 

明乃はバラストへの注水を指示した事で高速時の艦の安定を確保し、また直線方向への加速にのみ使用することで船体への負荷を軽減すること考えていた。

 

 

更に垂直発射式の兵装は、あらゆる方向への攻撃が瞬時に可能な為、発射機と違い旋回に要する時間を短縮出来る半面、敵が近くにいる場合は、一度打ち上げねばならないこの兵器ではかえって時間が掛かってしまう。

 

 

よって、装填速度が早く、砲弾に近い弾道を描いて飛翔する噴進爆雷砲に攻撃手段を限定したのだ。

 

 

『艦長、バラストの調整完了。同時に、新型推進装置へのエネルギー回路解放完了ぞな!』

 

 

「噴進爆雷砲、用意よし!何時でも撃っちゃうよ!」

 

 

 

各々から準備完了の知らせが入る。

 

 

明乃は再び前を向き、声を張った。

 

 

 

「新型推進装置点火 機関全速 急速加速!総員加速時の揺れに備えて!」

 

 

彼女が叫んだ直後、はれかぜ艦尾のスラスターが可動した。

急加速装置との効果も相まって船舶とは思えない加速を発揮したはれかぜの艦首が上がり、一瞬ではあるが艦底が丸見えになった。

 

直後、

 

バッシャァァン!

 

着水音と共にはれかぜは海を突き抜けた。

 

 

「うっ、くっ…。ほ、本艦の速度上昇中!80 85 90kt!まだ上がります!」

 

 

「噴進爆雷砲を撃てるだけ撃ち込んで!」

 

 

幸子の叫びに構わず、明乃は攻撃の指示を飛ばす。

 

敵の増速によって離されつつあった距離がみるみる縮まって行く。

 

更に、はれかぜから凄まじい数の対潜弾がノーチラスのいる海域に殺到する。

 

 

対潜弾が着水した海面では夥しい数の水柱が上がり、海中は爆圧で引っ掻き回された。

 

 

「115 120 125kt!」

 

 

「艦長!船体が浮き始めてる!これ以上は危険だ!」

 

 

 

「新型推進装置の出力を現状で固定、速度125ktを維持!ノーチラスの脇を通過するまで何とか耐えて!」

 

 

艦橋に怒号が飛び交う。

真白の言うとおり、かなり危険な状態だった。

 

いくらバラストを注水しているとは言え、超兵器の様な質量の無いはれかぜの小さな船体は、超高速航行によって浮き上がり、安定性を欠いている。

このままでは少しでも波や風に煽られれば転覆してしまう。

 

しかし、中途半端な減速は、最も危険なノーチラス本体付近で艦を停滞させる事にも繋がってしまうのだ。

 

 

 

(もう少し…もう少しだけ頑張ってはれかぜ、皆!)

 

 

明乃は祈るように海を見つめる。

そして、

 

 

「敵超兵器のいると思われる海域を通過しました!」

 

 

『海中の破砕音はまだ対潜弾の影響で確認できませんわ!』

 

 

『ん?オイルの様なものが海面に漂いだした。部品の一部も浮いている。撃沈したのか?』

 

 

 

「油断は出来ない。新型推進装置の出力を下げて!リンちゃん転陀出来る?」

 

 

「だ、駄目!まだ速度が出過ぎてる。水の抵抗が凄くて舵が利かないよ~。」

 

 

「解った…。サトちゃん聞こえる?」

 

 

『何ぞな?』

 

 

「リンちゃんは操舵で手が離せない。サトちゃんは艦橋に上がって指向性スラスターを操作して転陀の補助をお願い!」

 

 

『解ったぞな!』

 

 

「艦長…敵は沈んだのでしょうか?」

 

 

「どう…かな。」

 

 

真白の問いに対する明乃の表情は優れない。

 

小笠原での戦いで、炎上し船体が傾いて半分以上沈んでいても尚、此方に砲を向けてくる超兵器の姿が目に焼き付いていたからだ。

 

 

(撃沈…いや、きっとそれはない。つぐちゃんやめぐちゃんから超兵器ノイズの消失は報告されていない。機関が生きている以上は必ず…。)

 

 

『艦長!』

 

 

マチコ声に明乃は「やはりか…。」と言う表情を浮かべた。

 

 

「どうしたの?」

 

 

『海面が…超兵器が居たと思われる海面が隆起してきまっ…あっ!』

 

 

こう言う場面での「あっ」は、間違いなく悪い知らせであることは確かだろう。

 

明乃は監視所へ飛び出て行く。

後方を眺めた明乃が見たものは…。

 

 

ブゴォォォ!

 

 

海面から巨大な円筒状の物体が浮上してくるのが見えた。

 

 

「艦長!まだ完全に減速していません!危ないで…す…よ?」

 

 

明乃の身を案じて飛び出してきた真白が固まる。

 

 

「あ、あれは何なのですか?」

 

 

「ノーチラス…。」

 

 

浮上したノーチラスは、はれかぜの度重なる対潜攻撃により浸水が発生したのか、船体の側面から水を噴いている。

艦尾にあったであろう推進装置もグニャリとネジ曲がっていた。

 

 

初めて目の当たりにする潜航型超兵器に二人は驚愕する。

 

決して潜水艦が珍しいから驚いているわけではない。

 

大和型戦艦と同等か、それ以上の巨体を有する艦艇が潜水艦であること、更に、それでいて現代の水上艦を凌駕する速度や戦艦を遥かに上回る攻撃能力を有することに驚愕したのだ。

 

 

そんな二人を他所に、ノーチラスの艦橋前方に備え付けられていた、潜水艦には不釣り合いな大きさの主砲が回頭し始め、

艦後方の甲板上に設置されている、光学兵器のジェネレータが発光を始めていた。

 

 

 

「まずい!」

 

 

明乃は再び艦橋に駆け込むと、通信機を掴んで叫んだ。

 

 

「防壁を緊急展開!まだ終わってない!超巨大高速潜水戦艦ノーチラス浮上!繰り返す。ノーチラス浮上!これより本艦は対潜から対艦への砲雷同時戦に切り替える。急いで!」

 

 

 

はれかぜとノーチラスによる水上での第二の戦いが始まった。

 

 

   + + +

 

 

 

「ナギ少尉。弾頭の起爆は念の為ニブルヘイムより1000手前で起爆するよう設定しろ!」

 

 

 

「はっ!」

 

 

ナギは急いで指示を伝える。

そして、

 

 

「弾頭の起爆設定並びに装填を完了しました!」

 

 

「周囲の味方艦への影響はないか?」

 

 

「ありません!距離は十分離れています。念の為、防壁を展開するよう全艦に通達済み!」

 

 

「よし!発射を確認後、本艦は直ちにニブルヘイムから距離を取る。総員、弾頭が起爆したら速やかに対衝撃防御を取れ!」

 

 

「はっ!」

 

 

「牽制弾幕を張るぞ!全砲門をニブルヘイムに向けろ…撃て!」

 

 

ボォォオン!

 

 

砲弾 ミサイル 光学兵器、あらゆる兵器がニブルヘイムへ殺到し、防壁に逸らされた弾頭が起爆、超兵器周辺が爆煙に包まれる。

 

 

 

「今だ!通常のミサイルに紛れて発射しろ!目標 超巨大航空戦艦ニブルヘイム!¨光子弾頭ASROC¨…撃てぇぇぇ!」

 

 

 

カチャン…ブシュォォォォ!

 

 

 

光子弾頭を乗せたミサイルが発射された。

 

 

「取り舵一杯!転陀完了次第全速前進!急げ!」

 

 

ペガサスは離脱態勢に入った。

 

ミサイルは飛翔し、一段目と二段目が切り離される。

二段目に取り付けられた魚雷がパラシュートで降下を開始した。

 

 

 

「急速加速!少しでも距離を稼げ!」

 

 

ペガサスが牽制弾幕をニブルヘイムに浴びせながら速度を上げ、二隻の距離はみるみる離れていく。

 

ゆっくりと海面に着水した魚雷は、その衝撃でパラシュートが外れ、スクリューが回転して目標に向かって走り出した。

 

 

「ここからが正念場だ!防壁を展開、総員衝撃に備えろ!」

 

 

 

ここで初めてニブルヘイムの甲板の機銃が魚雷に向けられる。

 

魚雷の接近を感知したニブルヘイムは、その一発魚雷に強烈な敵意を感じたのだろう。

砲撃中心だった攻撃の中で放たれたたった一発の魚雷。

 

人類の破壊の歴史と共に歩んできたからこそ感知出来る違和感が、此方に向かってくる魚雷を《危険…迎撃セヨ》と訴えてくるのだ。

 

 

機銃の狙いを海中を駆ける魚雷の延長線上に定め、破壊のタイミングを計る。

 

 

しかし、ニブルヘイムの機銃が魚雷に向かって放たれることはなかった。

 

 

 

ピカッ!

 

 

 

超兵器の遥か手前で、光子魚雷が作動。

 

周囲の物質との化学反応により、反応の際に起きるエネルギーの殆どを熱エネルギー転換する光子榴弾砲。

その魚雷版とも言えるこの兵器は周囲の海水を瞬く間に蒸発させ、その熱波と超高圧衝撃波を超音速で周囲に放射した。

 

 

ドゥゥウオォォォン!

 

 

爆音が轟き、凄まじい水蒸気が舞い上がる。

更に衝撃波は、周囲に居た航空機数百機を跡形もなく薙ぎ払った。

 

光子魚雷の爆心地に最も近かったニブルヘイムは、完全に蒸気で隠れてしまう。

 

 

「光子魚雷の衝撃波をやり過ごしました!周囲の航空機は衝撃波により消失!ニブルヘイム沈黙…未だ反撃の兆候は有りません!」

 

 

 

「油断するな!¨奴¨が来るぞ!簡易クラインフィールドの蓄積エネルギーを防御重力場発生装置に出来るだけ回せ!」

 

 

空を睨むシュルツの視界には、超加速で衝撃波をやり過ごし、此方に向かって旋回してくる深紅の機体の姿があった。

 

 

 

「アルケオプテリクス…先ずは貴様を堕とす!」

 

 

シュルツは拳を強く握りしめた。

 

 

 

 

 




お付き合い頂き、ありがとうございます。

せめて一つでも撃破に持っていけるよう善処致します。

次回まで今しばらくお待ちください。

















とらふり!


芽衣
「副長はホント素直じゃないなぁ。諭すにしてもあんなに突っかかる事ないのに…。」



真白
「ば、バカ!戦闘中だぞ!それに、ならんモノはならんとはっきり言うのも愛だ!いいか?愛だぁ!」


芽衣
「でも、結局はココちゃんに言いくるめられてたよね?」


真白
「う…。」


芽衣
「ミーちゃんLOVEのココちゃんの方が艦長を理解してるって…なんかアレだよね。」


真白
「なな、なんだアレって!は、はっきり言ってみろ!」


芽衣
「フフフ…本当に良いのかなぁ~?言っちゃうよ~♪」


真白
「《撃っちゃうよ~》みたいなニュアンスで言うな!」


芽衣
「だって私が本当の事を言えば、副長の心は雷撃受けたみたいに木っ端微塵になっちゃうからさ。」



真白
「ごめんなさい!」


芽衣
「アハハッ、冗談だよ!でもさ、ミケ艦長はそう言う副長の事もきっと纏めて好きだと思うよ!」


真白
「うぐぅ〃〃〃〃〃。」


芽衣
(分かりやすいなぁ…。でも結局はミケ艦長の好きをLOVEの方に変える事が重要なんだけどね…。副長、ファイト!)





それではまたいつか

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