欧州解放前哨戦
バミューダ沖海戦編、決着となります。
それではどうぞ
+ + +
「光子魚雷の準備はまだか!」
「はい!あと数分で発射可能かと!」
「急げ!」
艦内の慌ただしさが増して行く。
誰もが額に汗を滲ませ、その時に備えていた。
そして、
「敵艦、ホバー砲の発射準備を開始しました!」
「艦長、多連装光子魚雷用意よし!」
シュルツは頷き、そして叫んだ。
「これで終わらせる!光子魚雷撃て!」
バシュッ!バシュッ!
複数の光子魚雷が放たれニブルヘイムへと向かって行く。
ホバー砲のチャージしている敵艦は、全てのレーザー発射を停止していた。
だが、シュルツに油断はない。
泥沼と化した戦況を傾けるには此が最後のチャンスであったからだ。
「まだだ!空母からの迎撃があるかもしれん。撃てる限りの砲弾を奴に叩き込め!」
「はっ!」
ペガサスは、有りったけの砲弾をニブルヘイムへと放つ。
敵空母は、弾幕の迎撃で光子魚雷への対応をすることが出来なかった。
それは、ホバー砲へのエネルギー充填を超兵器空母が担当し、迎撃に特化した兵装であるパルスレーザーを使用できない事が要因でもある。
魚雷はひた走る。
乗員の誰もがこれで敵が沈むことを祈っていた。
そして遂に、
ピカッ……ブゥオオオン!
水中での鈍い光が輝いた直後、光子弾頭が炸裂し、対消滅反応でエネルギーの殆んどが核兵器の数十倍の変換効率で熱エネルギーに転化され、超高温の熱が水と接触し一気に蒸発させて体積を増大させる。
それは、凄まじい膂力を伴った衝撃波になり、轟音と共にニブルヘイムに殺到した。
巨大な船体を覆い尽くす程の水柱と蒸気が上がり、敵は瞬く間に姿を消してしまう。
「衝撃波、来ます!」
「防壁を最大展開!総員、衝撃に備えろ!」
光子魚雷の余波は、空気中よりも物理現象を電波させやすい水中を通じてペガサスにも襲いかかる。
ゴォォォォォ!
「ぐっ!」
「あ、あぁぁ!」
艦内に悲鳴が轟く。
激しく揺れる艦橋で、シュルツは水蒸気が立ち込める前方を睨みながら叫んだ。
「な、ナギ少尉!超兵器ノイズの反応はどうか!」
「う、うぐっ!は、はい……あっ!」
幾多の戦いを経験してきたシュルツは、部下の声色を聞けば大概の状況を悟る位の事は可能だ。
だがそれ故に、彼は激しい徒労感に苛まれる事となる。
(まだ…終らんと言うのか!)
彼の予想は的中していた。
「ち、超兵器ノイズ健在!え…嘘でしょ!?ちょ、超兵器ノイズ極大化!計測不能!」
シュルツは内心で舌打ちをしながら水蒸気の晴れて行く眼前を睨み付ける。
「!」
蒸気の中から姿を見せた超兵器は、沈んではいなかった。
しかし…。
「敵艦、空母部大破!ですが…。」
シュルツは…いや、その場にいた者全ての表情が引きつった。
眼前には、完膚無きまでに破壊された超兵器空母に挟まれた¨無傷¨の戦艦が鎮座していた。
「くっ…怯むな。奴は空母部を切り離すことが出来ない。機動が落ちていれば、袋叩きに出来る。攻撃を再か…い?」
シュルツは、言葉を失う。
敵艦の甲板で光学兵器ジェネレータが発光し、直後に二本のビームが超兵器空母の前後に照射された。
そして茶苦茶に破壊され最早お荷物でしかない空母部と戦艦を繋いでいた接合部を、まるで鋏の様に二本のビームが切断した。
ビィィン…シュンッ!
「あ、あれは…近接戦闘用光学兵器か?まさかあんな方法で切り離して来るとは…。」
「嫌な兵器ですね…バルト海に停泊していた超兵器グロースシュトラールに投降を勧告する為に出向き、超兵器の周囲を取り囲んでいた艦隊が、丸ごと¨スライス¨された事件を思い出します。」
近接戦闘用光学兵器
【カニ光線】
にゃんこビーム同様間抜けた名前ではあるが、侮ることは出来ない。
攻撃対照が自艦から数百メートルに入ってきた場合や帝国が使用いた際は、停船勧告をするために近付いてきた船舶に対する不意討ちを目的として使用された記録もある。
イメージは鋏を連想してもらえば良いだろう。
光の剣を二本、鋏を最大に広げた様に水平に展開させ、そしてそれを閉じて行く事で相手を切断する。
超兵器はその巨大さ故に喫水が高く、懐に入られるとかえって大型兵器の死角になり、攻撃が出来なくなる弱点があった。
この兵器は、それを克服するべく装備された超兵器ならではの兵器と言えよう。
今回超兵器は、この兵器を空母の切り離しを目的として使用した。
三隻の艦船を横並びに繋げたニブルヘイムは、防御が堅い反面、動きが鈍く被弾面積が広い。
それを切り離すことで、機動性能が格段に上昇していた。
だが、それだけではない。
「撃て!光学兵器は奴には無意味だ。実弾で対処しろ!」
「はっ!」
ボォン!ボォン!
ペガサスが超兵器に発砲する。
しかし
ビギィィン!
「!?」
砲弾は防御重力場で跳ね返ってしまった。
「くそっ!防壁が堅い…。」
「恐らく、小笠原の時の播磨と同じでしょう。超兵器空母二隻が何らかの方法で、超兵器機関の出力の移譲を行った結果、本体の防壁出力が上昇した。」
彼の表情に明らかな苛立ちが浮かぶ。
ニブルヘイムは、超兵器空母二隻を犠牲にして、戦艦部の出力を格段に上昇させていたのだ。
博士は、超兵器を観察しながら何か考えている。
「どうされましたか?」
「ええ…艦長、不自然だとは思いませんか?」
「と、言いますと?」
「ニブルヘイムと呼称してはいますが、事実上あの戦艦部は超巨大レーザー戦艦グロースシュトラールのものです。以前バルト海で対峙した彼の艦は、我々の攻撃を受けた事で暴走しました。しかし今回は…。」
「確かに…超兵器空母二隻分の出力を移譲しているのにも関わらず、暴走していない…。」
「これは私の推測ですが…今回の超兵器で強化されているのは、なにも兵装だけではなく、超兵器機関の暴走を抑える¨枷¨も強化されているのではないでしょうか。現にその例は幾つか有ります。」
「ヴォルケンクラッツァーと帝国の総旗艦直衛艦である、あの三隻ですね?」
「ええ。今まで私達は、高出力艦ほど超兵器機関を縛る枷の力が弱くなると考えていましたが、それは高出力艦の枷を磐石にするには時間がかかり、解放軍の躍進により調整期間に余裕が無かった帝国がカテゴリーSSクラス以上の超兵器の完全化を優先し、他の超兵器の枷の強化を後回しにした事が原因だったとすれば…。」
「裏を返せば、時間さえあれば枷をきちんと整備し、超兵器は出力を上げて滅的な兵装を暴走のリスクを負わずとも使用出来る…と?」
「その通りです。下手をすれば、後に現れる超兵器は、攻撃の負荷による暴走と、それによる自壊を期待できなくなると考えた方が良いでしょう。」
「………。」
二人の間に重い沈黙が流れる。
先に顔を上げたのはシュルツだった。
「だとすれば臆している暇は有りません。奴を撃沈してヴェルナーとの合流を果たさなければ。」
「そうですね…。」
「か、艦長!」
「どうした?」
「に、ニブルヘイム甲板上で動きが!」
ナギの切迫した様子に、二人は眼前に視線を移す。
「!?」
ジト…と嫌な汗がシュルツの額を伝った。
ニブルヘイムの甲板には、先程までは無かった兵装が複数出現している。
だが、ホバー砲程巨大な物出はなく、通常の戦艦に備え付けてある副砲よりも一回り小さい位だった。
しかし、一同の顔からは血の気が引いている。
その理由は…。
「光子榴弾砲…¨やはり¨装備していたのか!まずいぞ!総員、回避運動に専念せよ!」
シュルツが慌てて指示を飛ばし、ペガサスが動き出す。
「危険です!一度完全に敵から離れた方が良いでしょう!敵の光子榴弾砲は我々の物と違い¨本物¨ですから!」
「無駄です!発射速度が速すぎる!今は¨あの時¨のとは違う。奴に我々の進行方向を悟られないようにするしかない!」
「くっ…。」
博士は思わず顔をしかめた。
かつてバルト海で超兵器と対峙したシュルツ達解放軍艦隊は、当時グロースシュトラールと呼ばれていた超兵器と対戦した。
事前の調査結果から、この超兵器が光学兵器を使用することが判明し、博士がサルベージした超兵器を構造解析した中から電磁防壁を復元。
それを装備した艦艇のみで出撃することとなった。
第二次世界対戦当時の兵装がまだ主流であった中で、レーザーと言う未知なる兵器を主体とした軍艦との戦いは、熾烈を極めた事は言うまでもない。
しかしながら、その巨大な船体と分厚い装甲の為なのか、それともレーザーが主体であるため、防御重力場よりも電磁防壁を強化していた為なのか、グロースシュトラールは実弾に対する防御重力場が他の超大型艦に比べて比較的弱く、攻撃が通りやすかったのだ。
解放軍は連携して、超兵器を大破まで追い込み、停船させることに成功。
降伏勧告を行い、事態は無事に終息する筈だった。
しかし…。
グロースシュトラールは突如として暴走を始め、今までよりも苛烈な攻撃を開始した。
その中で敵が使用された兵器こそ、光子榴弾砲だったのだ。
その凄まじい威力に、解放軍は、航空機や潜水艦を含めて、瞬く間に撃破されてしまう。
シュルツ達一行は、残された空母数隻と共に退避を開始、ゴトランド島の東側へ移動する。
島を挟んで西側に展開する超兵器は、立て続けにレーザーや光子榴弾砲を発射、しかし超兵器の攻撃が島を越える事はなかった。
これを好機と見たシュルツは、航空機を使用して敵の位置を観測させ、砲撃やミサイルを中心とした攻撃を展開、更に航空機からも遠距離からミサイルを使用した攻撃を行って敵を追い詰める。
ところが、長期戦の様相を呈していた戦況は思わぬ形で幕を閉じた。
超兵器の自壊である。
暴走後の異常なエネルギーに船体が耐えきれず、大爆発を引き起こして完全に消滅してしまったのだ。
グロースシュトラールとの邂逅は、解放軍司令部に今後の対応を迫るものとなった。
光学兵器と未知なる殲滅兵器の登場、そして超兵器の暴走である。
今後、更なる強力な超兵器の登場を予感した司令部は、ブラウン博士に対して新たなる対超兵器要兵器開発を指示、博士が独自の理論を元に再現した物こそ、小笠原等で使用された光子榴弾砲だった。
しかしながら、グロースシュトラール本体が完全消滅してしまったことにより、空想することでしか再現出来なかった解放軍側の光子兵器は、反物質の獲得をヒュウガに実現してもらった以外はあまり進歩がない。
対して超兵器が使用する光子榴弾砲は、装填時間も短く発射速度も速い。
更に、この海域にはバルト海中央に存在したゴトランド島のような盾となってくれる島々が存在しない。
発射されればそれが即、死を意味する事は明白だった。
「敵艦、発射準備を完了した模様!来ます!」
「防壁を最大展開!」
「艦長、無駄です!あの衝撃波は、防御重力場や電磁防壁では相殺出来ません!」
「簡易クラインフィールドならどうです?」
「不安です…。一発なら未だしも、超兵器は複数を同時に発射するつもりでしょう。正直な所、メンタルモデルが近くに居なければ、更なるフィールドの強化は期待出来ません!」
「くそっ!こんなところで沈むわけにはいかないというのに…!」
「か、艦長!ご指示を!」
ナギが悲鳴にも似た叫び声を轟かせる。
シュルツは、あらゆる防壁を最大展開し、艦を出来るだけジグザグに航行させ機動を読ませないよう指示を出すが、所詮は小細工でしかないことを十分理解していた。
そして遂に、それが発射される。
ピシュァァァン!
「来た!総員、衝撃に備…。」
ブゥォォォォン!
「くっ…あぁぁぁ!」
「きゃあぁぁ!」
光子榴弾砲がペガサスの後方に着弾した。
直撃は避けたものの、衝撃波は容赦なくシュルツ達を襲う。
その凄まじい爆圧は防壁をいとも簡単に飽和させてしまった。
「被害を報告!」
「艦後方中破!火災発生!機関損傷、速力低下!甲板被弾、航空機発進できません!防壁飽和!尚、艦後方を中心に怪我人が出た模様、人数は把握出来ていません!」
「機関の復旧を優先しろ!狙い撃ちにされたらお仕舞いだ!舵は生きているのか!?」
「はっ!舵には損傷有りません!」
「現状出せるだけの速力を出せ!とにかく動き回るんだ!次、被弾すれば跡形も残らないぞ!」
シュルツの罵声に、乗員が慌ただしく動き回る。
しかし、艦内は事態の収拾がまだついておらず、混乱していた。
そしてその混乱が無情にも、ニブルヘイムに次なる攻撃を決断させる隙を作ってしまっていた。
超兵器の甲板上には、複数の眩い光が輝き始める。
だがそれだけではない…。
「!!?」
「あ…あぁぁ!」
シュルツの表情が凍り付き、ナギの絶望した悲鳴が艦橋に響き渡った。
超兵器の甲板上にある、近接戦闘要以外の¨全て¨の光学兵器ジェネレータが発射態勢の前兆である発光を開始した。
「何て事だ…ホバー砲を含めた全ての兵装を一斉射撃だと?化け物め!」
「そんな…。もしそんなことをされれば、我々など髪の毛一本も遺さず消滅してしまいます!」
「機関の復旧はまだか!」
「ダメです!間に合いません!」
《下賎ナ者達ヨ…偉大ナル光ノ前ニ消滅セヨ…。》
「…くそっ!」
シュルツは拳を握り締め、悔しげに唇を噛む。
最早敵の一斉射撃は止めることは出来なかった。
誰もが死を覚悟する。
そして…。
……ビギィィイン!
ニブルヘイムから、あらゆる兵装が放たれ、砲弾を遥かに越える速度で殺到してきた。
ペガサスはレーザーでバラバラにされ、光子榴弾砲で跡形も無く消し去られるだろう。
だが…。
ビィイン…ブゥォォォン!
蒼白い閃光が超兵器とペガサスの間を通り抜けた。
すると、ペガサスに向かっていたレーザーや光子榴弾砲が掻き消されて行く。
「こ、これは…超重力砲か?」
『遅くなりましたシュルツ艦長。』
通信機から少年の声が響いてくる。
「千早艦長!」
『此より援護を開始します。』
+ + +
「杏平っ1番から2番通常魚雷、続いて3番から4番、音響魚雷撃てっ!」
「はいさー!」
バシュッ!バシュッ!
魚雷がニブルヘイムへと向かって行き、防壁と衝突する。
「やはり、防御重力場が強くなっているか…。」
群像は表情を険しくした。
アームドウィング撃破した蒼き鋼は、401の補給と超重力砲の修理を開始していた。
しかし、イオナとヒュウガが超兵器の出力上昇を検知し、作業を中断して駆け付けたのだ。
その判断は正しかった。
駆け付けた彼等の目撃したものは、あらゆる兵装を一斉射撃しようとするニブルヘイムと、損傷を負ったペガサスの姿であった。
群像は、急いでヒュウガに指示を飛ばし、超重力砲を使って敵の攻撃を掻き消す。
獲物を仕留め損なったニブルヘイムは、怒りの矛先を此方に向けてくる。
凄まじい数の攻撃が、ヒュウガに向かって殺到した。
ボォォォオン!
「あぐっ!?」
レーザーに混じって放たれた光子榴弾砲が炸裂した衝撃波は、ヒュウガだけでなく海中に潜む401にも届き、激震がクルーを襲う。
「くっ、何て威力だ…。」
「今の一撃でクラインフィールドが18%消失しました!」
「イオナ。ニブルヘイムへの有効な攻撃は?」
「通常弾頭はほとんど無意味。敵艦にダメージを残すには侵食魚雷か超重力砲が必要不可欠。」
「艦長、此方の超重力砲は使用不能。ヒュウガも、先程の発射で暫くは冷却が必要に成ります!」
「侵食魚雷の残弾は?」
「此方は24、ヒュウガは42です!」
「……解った。ヒュウガ!聞こえるか!?」
『何かしら?』
「残りの残弾全てを奴に叩き込め!俺達の侵食魚雷も全て使う。」
「艦長!それでは…!」
「いや、現段階ではこれしかない。防御重力場は弾道を変えられても、侵食魚雷の放つ無限の重力を飽和することは出来ない。」
「致命打にはならなくとも、防御重力場の効力を一時的に弱めるんですね?」
「そうだ。ヒュウガ、通常弾頭を発射して、防御重力場の作動地点を観測、データを此方に送れ。その情報を下に侵食弾頭兵器の起動地点を防御重力場発生地点にセット、全弾を発射する。」
「でもよぉ。それじゃ敵の撃沈には漕ぎ着けられないんじゃねぇか?」
「確かにそうだ。だから、防御重力場が弱体した隙にペガサスから光子魚雷を放って貰う。イオナ、通信を繋げ。」
「ん…。」
「遅くなりましたシュルツ艦長。」
『千早艦長!』
「此より援護を開始します。此方が侵食弾頭兵器を全て放ち防御重力場を弱めます。その隙にそちらは、光子魚雷をニブルヘイムへぶつけて下さい。そうすれば超兵器を撃ち…。」
『すみません…どうやら無理そうです。』
「何があったんですか?」
『ええ…たった今、此方の機関が水没しました。』
「なんですって!?」
+ + +
ペガサスの艦内は騒然としていた。
「浸水の原因は?」
「恐らく光子榴弾砲かと…。」
「不味いな…。」
シュルツは険しい表情を浮かべる。
光子榴弾砲の発する衝撃波は、海上だけではなく、上空や海中にまで及ぶ。
ペガサスは、海上から見えるダメージだけではなく、衝撃波によって艦底にも損傷を負っていたのだ。
「怪我人は、機関室に閉じ込められた者は?」
「奇跡的に無事です。しかし、機関出力が…。」
「ああ…そうだな。」
「艦長、ご指示を…。」
「………。」
シュルツは少しの無言で俯き、そして口を開いた。
「艦を棄てよう…。」
「か、艦長!」
「千早艦長…聞こえますか?」
『ええ…。』
「この艦は限界です。申し訳有りませんが、我が兵を救出しては頂けませんか?」
『解りました。至急ヒュウガを向かわせます。此方は超兵器を牽制しますので、出来るだけ速やかに避難の準備を進めてください。』
「感謝します…。」
「艦長!敵はまだ…!」
「ナギ少尉、解ってくれ…総員、退艦だ。」
「!!!」
ナギは涙を一杯に浮かべながら敬礼をし、各所に通達を回す。
その間にも、徐々に艦は傾きつつあった。
博士が心配そうに、シュルツの顔を除いてくる。
「大丈夫ですか艦長?」
「ええ…。博士、光子魚雷は、通常の爆発でも起動しますか?」
「え?ええ…反物質が何らかの原子に触れれば対消滅は起こりますが…まさか!」
「そのまさかです。博士は、まだ動ける者に、光子魚雷にリモート作動式の爆薬を仕掛けるよう指示してください。艦が沈む前に、これごと奴に突っ込んで¨自爆¨させます。」
「艦長…。」
苦肉の策だった。
航空支援の乏しい中での航空戦艦の破棄は異世界艦隊にとって痛手でしかない。
しかし、現状この世界に存在しない技術を用いた超兵器やペガサスをこのまま沈没させておくのは、各国に破滅的な技術の流出を招きかねない危険を秘めている。
シュルツは、先程群像から提案された案を用いてペガサスを自爆させ、¨あってはならない¨技術を諸とも消滅させる道を選んだ。
「艦長、退艦準備並びに自爆工作の用意整いました!大戦艦ヒュウガ、間も無く接舷します!」
「解った。総員ヒュウガに乗り込め。怪我人の搬送を優先しろ。」
「はっ!」
ナギを戦闘に乗員達が艦橋から出て行く。
彼が外へと視線を移すと、ヒュウガがニブルヘイムの攻撃をフィールドで防ぎつつも此方に近付いてきている。
遠方からは、401が絶え間無くミサイルを発射し、ニブルヘイムを牽制していた。
だが事実上、超兵器機関三隻分の出力を有するニブルヘイムの攻撃は苛烈を極めている。
流石の401もそう長くは持ちそうに無かった。
「艦長!艦長も退避を!…艦長?」
「………。」
シュルツは人が居なくなってしまった艦橋を見渡していた。
彼にとって艦とはただの道具ではない。
苦楽を共にしてきた¨戦友¨なのだ。
(すまない…本当に…お前には、なんと謝っていいのか…。)
「艦長!」
「!」
博士の放った必死の叫びに、シュルツは我に帰る。
「さぁ!あとは我々だけです。退避しましょう!」
「申し訳ありません博士…先に、退避を始めてください。必ず後から向かいます。」
「嘘よ…。」
「………。」
「艦長!あなたが死ぬ事で亡くなった兵士達への罪滅ぼしには成らないんですよ!?」
「博士…お願いです。あなたは退避してください。完了し次第艦をニブルヘイムへと向けます。」
「艦長!」
「エルネスティーネ・ブラウン博士!命令だ!速やかに退避しろ!」
「!」
凄まじい怒声に、博士は身体が硬直してしまう。
目には涙が浮かんでいた。
それを見たシュルツは、表情を穏やかにすると、彼女の手を握り、諭すように口を開いた。
「こんなやり取りが最期なのは私も寂しいです。博士、先に退避をしてください…お願いだ。」
「か、艦長…。」
彼女はグッと目を瞑ると手をゆっくりと離し、振り返らずに駆け出して行った。
彼は、もう一度艦橋を見渡し、そしてニブルヘイムを睨んだ。
「貴様は、必ずここで沈める。何があってもだ!」
+ + +
「はぁ…はぁ…。」
「博士!早く此方へ!」
ナギがヒュウガの甲板上で手を振っている。
博士は、息を切らせながらクラインフィールドで作られた足場を駆け上がった。
ガゴンッ!
博士が、飛び乗ったと同時に、ペガサスが超兵器へと動き出す。
「あ、あれ?あのぅ博士…か、艦長は?」
「………。」
博士の顔は涙で濡れていた。
それを見た彼女は全てを悟る。
「嘘…でしょ?博士!なんで!なんで止めなかったんですか!」
「………。」
ナギは博士に掴みかかり激しく揺さぶった。
「どうして!?ねぇどうしてですか!あなたは艦長が大切じゃなかったんですか!?この程度の存在だったんですか!?」
「止めたわよ!」
「!」
彼女は、滅多に上げることがない大きな声で叫んだ。
「何度も止めた…一緒に居ようと思った…でも、あの方は…。あなたも解るでしょう?あの方を大切に思っているあなたなら…解る筈よ。きっとこう言う選択をする人だって…。」
ナギは博士から離れ、絶望したようにその場にへたりこんだ。
「そんな…。今、艦長を失ったら、私…私達、どうすればいいんですか…。」
「あら~?お困りかしら?」
「大戦艦…ヒュウガ?」
「私の艦内に、退避スペースを確保したわ。中に入って頂戴。」
「そんなことよりも艦長が…。」
「全く…困った艦長サマねぇ。でも心配ないわ。¨コッチの¨艦長サマはお見通しだったみたいだから。」
「え?それはどういう…。」
「話してる時間は無さそうね…。流石に遠くなると帰ってくるのも面倒だし、それじゃあ行くわ。」
「行くって何処に…えっ、えぇ!?」
ナギが状況を理解する間も無く、ヒュウガは跳躍すると、海面にフィールドで作った足場を出現させて物凄い速度で駆け出した。
あっと言う間に小さくなるヒュウガの姿を、博士は祈るように見つめる。
(千早艦長…大戦艦ヒュウガ。艦長を…頼みます!)
+ + +
(こうして、操艦をするのは久しぶりだな…。)
シュルツは陀輪を握り、超兵器へと突き進んでいた。
(もう少し粘れると思ったが…。ヴォルケンクラッツァーを撃沈する為には、¨超兵器の従属艦¨がいては不可能だ。奴を道連れにしてでも撃沈しなければならん!)
一人になっても、彼の決意は変わらなかった。
しかし、心残りがないと言えば嘘になる。
自分亡き後の異世界艦隊の動向だ。
まだ見ぬ超兵器との対応、各国との交渉など課題は多い。
何よりも世界を相手取る戦力を有した北極海にいる化け物がどの程度強化されているのか解らない状況で、残された彼等が上手く立ち回れるのかは、彼にとって最も大きい憂いであることは間違いないだろう。
(済まない…無責任なのかもしれないが、我々の世界でも人類は団結出来た。ならこの世界でも可能な筈だ。だから…頼む。)
シュルツはニブルヘイムを睨み付けた。
(貴様には、皆の邪魔立てはさせん!)
彼が心のなかで超兵器に啖呵を切った時だった。
ボォン!
「!!!!?」
「やっと追い付いたわ…。もぅ、あんまり手間を掛けさせないで欲しいわね…。」
「大戦艦…ヒュウガ!?」
艦橋の壁をぶち抜いて、ヒュウガが突入してきた。
シュルツは驚愕するが、直ぐに表情を元に戻す。
「何をしに来たのですか?早く自艦のへと戻って下さい!あそこには私の部下達が…。」
「大丈夫よ。」
「だってあれは私の一部だもの心配ないわ。駄々をこねていないで戻るわよ。」
「しかし私は、この艦を超兵器へと…。」
「面倒ね…。」
グイッ!
「あっ…ちょ…。」
ヒュウガはシュルツを腕に抱えると、猛スピードでペガサスから脱出した。
「かっ…あっ!」
「喋らないで!呼吸をすることだけ考えなさい!」
彼女の凄まじい移動速度に彼は呼吸をすることすらまたならない。
ドサッ!
「かっ…かはぁ…。」
何か床のような所に降ろされ、漸く呼吸が楽になった彼は回りを見渡す。
「ここは…。」
「私の甲板よ。ようこそウィルキアの艦長サマ、大戦艦ヒュウガへ。」
彼は、ヒュウガの船上を暫くは見渡した。
そして思い出したかのように、後ろを振り返る。
「しまった!艦の操陀が…。」
「心配しなくていいわ。」
「!!?」
シュルツは唖然とした。
人が居ない筈のペガサスは、正確に超兵器に向かって突き進んでいたのだ。
「姉さまが、アクティブデコイを操作して牽引しているのよ。防御は私に任せて。此くらいなら何とか出来るわ。」
「しかし、それでは401の演算が…。」
「姉さまが一人で全部こなすなら…ね。」
「まさか…。」
+ + +
「静、敵は捉えているか?」
「はい!勿論です。」
群像は、クルーに目まぐるしく指示を飛ばす。
隣にいるイオナは、目を閉じて集中していた。
群像達は、クルーに操縦を任せることでイオナの演算領域を増幅させ、アクティブデコイによるペガサスの誘導を実現させていのだ。
群像は絶え間無く指示を飛ばし続ける。
「僧!操陀はお前が便りだ。タイミングを合わせてぴったりに付けろ!」
「お任せください!」
「杏平、火器の用意は任せる。」
「はいさ~!」
「いおり、機関は?」
『オッケー!準備済みぃ!』
「イオナ!」
「デコイの誘導とペガサスの防御を同時進行中。」
「いよいよ正念場だ。皆、気を抜くな!」
「「了解!」」
+ + +
超兵器の攻撃は、自身に向かうペガサスだけではなく、ヒュウガにも及んでいた。
しかし彼女は、顔色一つ変えずに苛烈な攻撃を防御し、普通の艦船では到底不可能な複雑な操艦を同時にやってのける。
(なんて操艦なんだ…これが蒼き鋼…いや、千早艦長が見ている世界だと言うのか…。)
彼は背中にゾクリとするような感覚を覚える。
群像の世界の話しは既に知っていたし、実際にその戦いぶりも見てきている。
しかし実際、こうして彼等の艦に乗艦し、戦う場面を目の当たりにしたシュルツは、驚愕せざるを得ない。
それはそうだろう。
群像の世界では、国家戦力を駆使したとしても、霧の¨魚雷艇¨すら沈める事は叶わなかった。
それを、霧の潜水艦を入手し、それを完全に使いこなしたとしても、大戦艦程の戦力を倒し、仲間に率いれる等の功績は、シュルツですらも想像の範疇を超えていたことは言うまでもない。
だが、彼が本当に驚愕していたのはそこではない。
この過ぎたる戦力は、同時に人間に対する甘美な誘惑に他ならない。
もし、この戦力が国家に渡るなら、間違いなく自国の利益の為に利用されるだろうし、個人で所有していた者が居るなら、その者は力を乱用し、独裁者として君臨しているに違いない。
彼等は、この戦力を私的にではなく、霧と人類との和平、言い換えれば¨世界の和平¨の為に利用し、奔走しているのだ。
しかも、政府や軍関係者でもない¨少年少女¨達が…だ。
(千早艦長…あなたは一体何者なんだ…何を背負っているんだ。)
「…っと!ちょっと聞いてる!?」
「え…あぁ、何でしょうか?」
「そろそろ頃合いよ。中に入って頂戴。全く…大変だったのよ。私の船体は人間を乗せられるようには造られてないから、あれほどの人数を収容するスペースを確保するのにどれ程苦労したか…。」
「お手数をお掛けしました…。」
心底呆れたような表情を向けてくるヒュウガに、彼はぎこちなく会釈を返す。
それを見たヒュウガはため息をつきながら眼前を見つめた。
「まぁいいわ…。艦橋に入れるようにしたから、そちらに行って頂戴。」
「ええ…。」
シュルツは、険しい表情のまま中へと入っていく。
「はぁ…。どうして艦長と言うのはあんなに悩むのかしらね。私も艦隊旗艦を経験していたけれどまるで解らない概念だわ。でも…。」
ヒュウガは、少しだけ眉を潜める。
(ヤマト…総旗艦のあなたなら解るのかしら。艦隊を統べる者の¨孤独¨と言うものを…。)
+ + +
「艦…長…?」
艦橋に入ってきたシュルツを、ナギは目を丸くして見つめた。
シュルツの前に進み出た博士の視線はとても鋭くシュルツを刺すが、目は赤く腫れており、涙が一杯に溜まっているのが解る。
そして彼の存在に気付いた兵士たちもシュルツを取り囲むように集まってきた。
(怒っているのだろうな…。)
シュルツは俯く。
暫しの沈黙の後に口を開いたのは博士だった。
「何か、仰って下さい…。」
「済まない…。」
「!!」
パァン!
鈍い音が艦橋に響く。
博士の平手打ちによって、シュルツの艦長帽が床に落下した。
「違う…そんな言葉なんか聞きたくない!」
「はか…せ…。」
「どうして?どうして一人で全部背負うの!?狡い!あなたは狡いですよ!」
「………。」
「私は背負いたかった…いいえ、私だけではなく皆、あなたが今まで背負ってきた孤独や沢山の死を共に背負いたいと思っていたのですよ!?」
「!!!」
彼は目を見開く。
「あなたは今回の責任を取らなければならない。私達と¨最後¨まで超兵器を打倒し、そして私達の世界に真なる和平をもたらすその時まで共に戦うのですよ!」
シュルツは、周りを見渡す。
兵士たちは一様に彼に対して敬礼をしていた。
ナギや博士もそれに倣って敬礼する。
《海の仲間は¨家族¨ですから!》
シュルツは明乃の言葉を思い出す。
今まで彼は、部下に不要な重荷を与えぬよう感情を殺し、必要以上に干渉はしてこなかった。
しかし、それは彼の杞憂だったのかもしれない。
目の前にいる者達は全て、彼を一人の人間として慕う者達だったからだ。
シュルツは床に落ちた艦長帽を拾い、いつもの様に目深に被ると姿勢を正す。
「皆…私は今ここに誓おう。必ず最後まで共に戦うと。だから、私は諸君らの命を守る。そして諸君等は…私のいや、私達が今まで救うことの出来なかった民衆や戦友達の死を共に背負って戦ってはくれないか?艦長でも士官でもなく、一人の人間として…諸君等にお願いしたい。」
彼は穏やかに、しかしそれ以上に力強く彼等に訴え敬礼を返した。
一同の目に輝きが灯り…
「「はっ!」」
威勢の言い声が帰ってくる。
彼はゆっくりと頷くと、艦橋の窓辺から、正面を見つめた。
そこには、デコイに牽引されるペガサスの姿がある。
「怖がらないで下さい。」
「博士…。」
「艦長にとって艦とは戦友と同じなのでしょう?大丈夫です…彼女の犠牲も私達が共に背負います。ですから…共に見届けましょう。この戦いの結末を…。」
「はい…あの、博士。」
「何でしょうか?」
「ありがとうございます。」
「い、いえ…あ、あの。申し訳ありませんでした…打ってしまって。処罰は如何様にもお受け致します。」
「良いのです。お陰で目が覚めましたから。」
二人は再び前を見つめた。
苦楽を共にしてきた艦の最期を看取る為に。
+ + +
「艦長、デコイが予定されたラインを突破しました!」
「よし!頃合いだ。杏平、ヒュウガ今だ!侵食魚雷をありったけ撃ち込め!」
「はいさ~!」
『了解!』
401とヒュウガから凄まじい量の侵食弾頭兵器が超兵器へと向かって行き炸裂した。
それらが発する強烈な重力による圧縮力が、超兵器の防壁をみるみる飽和させて行く。
ニブルヘイムは暴れた。
全ての兵装を撒き散らし、殺到する侵食弾頭兵器を撃墜しようと試みる。
しかし、杏平やヒュウガが設定した複雑な誘導によって弾頭はニブルヘイムの迎撃を悉く回避し、殺到し続けた。
戦い終盤に訪れる一進一退の攻防。
先に動いたのはニブルヘイムだった。
《主ヨ…我ニ光ノ加護ヲ!》
「!」
シュルツは、超兵器の次なる行動が解った。
「ホバー砲と光子榴弾砲を全てペガサスに向けるきか!」
ニブルヘイムの艦上で激しい光が輝き出す。
「イオナ、時間がない!敵はチャージに時間を取られている。デコイとペガサスのフィールドを外して、誘導の速度を上げろ!」
「了解。」
「群像!こっちの侵食魚雷は弾切れだぞ!」
「ヒュウガ!まだ行けるか!」
『まだ大丈夫だけど…。』
「吐き出しきれ!敵に隙を与えるな!」
『了解!全弾一斉に発射するわ!』
ブシュゥァアアア!
ヒュウガ甲板上を埋め尽くす程のミサイル発射官が全て開き、弾頭が一斉に発射される。
その際の煙でヒュウガの船体が見えなくなる程の凄まじい勢いでだ。
ミサイルはニブルヘイムへと向かい、防御重力場をみるみる削って行く。
そして…。
「ん!?もしかして…。」
ヒュウガは手を翳し、ミサイルの一発を操作する。
弾頭は、防御重力場が作動しているであろう地点を¨通過¨し、ニブルヘイム本体へと着弾した。
敵の甲板一部と兵装が、侵食弾頭によって抉り取られて消滅する。
「防壁が消滅した!姉さま!」
『了解。』
デコイはペガサスの牽引速度を更に上げて行く。
ニブルヘイムのホバー砲は、更に鋭い輝きを放つ。
ヒュウガは、吐き出す弾頭の狙いを光子榴弾砲とホバー砲へと定めた。
「姉さまの邪魔はさせない!」
ビィユォオン!ボンッ!
ミサイルが着弾した光子榴弾砲の発射装置が抉られ、ホバー砲もエネルギーが上手く装填出来ず耳障りな音をたてる。
ギィェェエ!ボォォォン!
悲鳴の様な音の後にホバー砲が大爆発を起こし、膨大なエネルギーの奔流がニブルヘイムに逆流する。それによってその他の光学兵器がジェネレータが焼き切れ、あっという間に使い物にならなくなってしまった。
だがそれだけではない。
「どす黒いオーラが…超兵器機関が暴走を始めようとしている!?その前にっ!」
シュルツは、戦友であるペガサスを見守る。
「済まない…お前の犠牲をきっと無駄にはしないぞ!必ず…。」
『シュルツ艦長!光子魚雷を起爆させてください!』
群像の声が響く。
それと同時にペガサスはどす黒いオーラを放つ化け物に衝突した。
バギンッ…ギギィィィイ!
互いが衝突したことにより、激しい摩擦音が響き渡る。
超兵器の放つオーラに触れたペガサスはみるみるうちに、船体がボロボロになり崩れ始めた。
シュルツは手に握り締めたリモートの起爆装置のスイッチに指を掛けた。
「必ず…超兵器を完全に打倒し、平和を取り戻して見せると誓う!だから…。」
彼は決してペガサスから目を離さなかった。
いかな姿に成り果てようとも、超兵器に食らい付く姿は、彼等の魂を体現しているかのように見えたからだ。
見届けるのは彼の責任でもある。
そして、その最期の判断を下すのもだ。
「良くやったペガサス。眠れ…。」
ピッ!
ボンッ…キィィン!
ペガサスの弾薬この起爆装置が起動し、眩い光が船体を包む。
シュルツは、巨大な黒い化け物の懐に、一瞬だけ美しく輝く白い光を見た。
そして、それがおぞましい黒と重なった時…。
ブゥォオオオオン!
「!!!」
猛烈な轟音と衝撃波が辺りを引っ掻き回す。
ヒュウガと401は、クラインフィールドを最大展開させた。
波が暴れ、艦が激しく揺さぶられる。
「ぐっ…。」
「あ、あぁっ!」
艦内に悲鳴が轟く。
超兵器の爆発に伴う高波は、しばらくの間続いた。
+ + +
超兵器消滅の余波が消えた後には、何事も無かったかの様な静かな海が広がる。
「終ったか…。」
シュルツの言葉には、超兵器を打倒した安堵と、艦を失ってしまったことによる失意が入り交じっていた。
そこへヒュウガが、いつもの軽薄な笑みを浮かべて入ってくる。
「終わってないわよ艦長さん。」
「大戦艦ヒュウガ…。」
「本格的な欧州解放には、西進組と欧州ブルーマーメイドとの合流は不可欠なんでしょう?」
「ええ…一度スキズブラズニルへ戻って体制を建て直さなくてはなりません。」
「ふふっ。もっと落ち込んでると思ったけど、大丈夫そうね。」
「はい。いつまでもこのままではいけませんから。」
ヒュウガは笑みを深くする。
「了~解。それじゃスキズブラズニルに向かうわね。」
「お願いします。」
一同は再び海を進む。
バミューダ沖海戦
戦果:展開する全超兵器の撃沈。
損害:航空戦艦ペガサス、自爆による消滅。
+ + +
一方、西進組のヴェルナーは青ざめていた。
「ま、まさかそんな…。」
彼等もまた、想像を絶する苦難を味わっていたのだった。
お付き合い頂きありがとうございます。
痛み分けになった今回の海戦ですが、航空支援の無いこの世界に於いてのペガサスの消失はかなり痛い状況となってしまいました。
次回より、欧州解放前哨戦 地中海海戦編スタートとなりますが、実は初投稿からそろそろ一周年と言うことで、特別編を1話を書きまして次に進みたいと思います。
特別編は、本編の伏線とかねてより感想のでお寄せ頂きました、¨特殊超兵器¨をゲストとして登場させたいと思います。
次回まで今しばらくお待ち下さい。
それではまたいつか。
とらふり!
アームドウィング&ノーチラス
「お疲れ様~。」
播磨
「あっ!お疲れ~。」
荒覇吐
「量子魚雷の発射、大変だったわね。」
アームドウィング
「まさかアレを利用されるとは思わなかったよ…。」
ノーチラス
「でも、また皆に会えて嬉しい…海の中で一人は嫌だから。」
荒覇吐
「ノーチラス…。そ、そう言えばアルウスと艦隊旗艦は?」
アルウス
「お疲れッス!」
ニブルヘイム
「お疲れ様です。」
近江
「良く戻ったわねアルウス。そして…お疲れ様でした、艦隊旗艦ニブルヘイム。」
ニブルヘイム
「その名前は中々しっくり来ないね。今までの様にグロースシュトラールで構わないよ。」
近江
「仰せのままに…。」
グロースシュトラール
「硬い挨拶は此くらいにしておこうか。君も、留守中の皆を預かって貰って感謝に絶えない。」
近江
「恐縮ですわ。」
グロースシュトラール
「君は真面目だなぁ。そうだ、久し振りにアレを皆に見せてあげよう。集まって貰えるかな?」
近江
「そんな…わざわざ御足労を…。」
グロースシュトラール
「いいんだ。ほら、皆此方においで!」
シュトゥルムヴィント
「艦隊旗艦様!」
レムレース
「わぁ~い!」
播磨
「やったぁ~!久し振りに見れるよ!」
グロースシュトラール
「どれどれ、皆集まったみたいだね。それじゃ行くよ!カラフルなレーザーショーの始まりだ。手始めに【荷電粒子垂れ桜】!」
荒覇吐
「おぉ…。」
グロースシュトラール
「レインボーレーザー!」
アルウス
「見事ッス!各種レーザー全発射で夜空が彩られたッス!」
グロースシュトラール
「さぁ次はメインの光子榴弾尺玉だぁ。」
播磨
「たぁ~まや~!ねぇねぇ艦隊旗艦!アレ!最後のシメのアレやってよ!」
グロースシュトラール
「よし、それでは最後に皆さんと声を揃えて参ります!せ~のっ!」
超兵器一同
「カニ光線!」
グロースシュトラール
「お後が宜しいようで…。」
超兵器一同
「ワァ!パチパチ!」
近江
(気さくな方で何よりだわ。このクラス方は難しい方が多いから…そう、地中海にいらっしゃるアノ方のように…。)