トライアングル・フリート   作:アンギュラ

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お疲れ様です


欧州解放前哨戦 南欧海戦編の続きと成ります。



それではどうぞ


鶴は千年、怪物■年 等しく来たる死は永遠  VS  超兵器

   + + +

 

 

 

「攻撃が来ない…。敵に何かあったのでしょうか?」

 

 

 

「ああ…多分大戦艦ハルナがシチリア島に到着し、超兵器の砲撃発射を阻止したんだろうな」

 

 

 

「え?」

 

 

 

平賀を始め、艦橋内がざわつく。

 

 

 

タカオからの警告を受けた弁天を含め異世界艦隊は、差し迫った死の恐怖に極限の緊張を強いられていた。

 

しかし、敵からの砲撃は待てども来ず、思わず真冬に話し掛けた平賀への彼女からの返答は、クルーからしてみれば驚愕に値するものだったに違いない。

 

彼女達の意見を代弁するかのように、平賀は真冬へと詰め寄る。

 

 

 

 

「大戦艦ハルナはバミューダで戦闘をしていたのでは無いのですか?」

 

 

 

「勿論そうだ。日本を出発する前の組分けでも、東進組に割り当てられていたしな。だが大戦艦ハルナが此方へ急派される手筈になっていたことは確かだ」

 

 

 

「そ、そうなのですか?」

 

 

「まぁ俺も、この件に関しては演習が終わってスエズに入る直前位に知らされたクチだからな。迂闊な混乱を招かねぇ様にだか何だか知らねぇが、口外しねぇ様に言われてたんだよ」

 

 

平賀は、まるで思考が追い付いて行かない。

 

 

真冬は表情変えず「いいか?」と、状況を整理するように口を開く。

 

 

 

 

「東進組の連中と俺達の戦力を比べれば明らかに向こうの方が上だ。スキズブラズニルに異世界艦隊の本部を置くにあたって、ウィルキアと蒼き鋼の天才艦長や、大戦艦二隻と超高性能潜水艦である401、そして供与されたはれかぜを含めたウィルキア艦艇二隻の配置は…まぁ妥当だよな。普通に考えりゃ敵もあっち側に戦力を集中させた布陣で攻めてくる筈だ」

 

 

「………」

 

 

 

「だがよ…」

 

 

ここで彼女の表情が一際険しくなるのを平賀は感じた。

 

 

 

 

「事はそう言う問題じゃねぇんだ。世界を陥とせる超兵器に対応出来る戦力が現状で俺達くらいしか居ないとすれば、二手に別れたどちらか¨片方が敗北しても詰み¨なんだよ。この意味は解るよな?」

 

 

 

「は、はい…」

 

 

 

「だから、蒼き鋼の連中やウィルキアの連中は、超兵器が必ずどちらかに戦力の集中を謀ると踏んでいた。そして俺達がババを引いちまったって訳だ」

 

 

 

「……」

 

 

「尤も、超兵器の戦力は数では図れねぇ。バミューダに展開する超兵器の数が此方より少なかったとして、それでもお釣りが来ちまう様なデタラメな兵装を持ってりゃ、いずれにしても苦戦するだろうしな…」

 

 

 

 

「ですが、大戦艦ハルナの増援は向こうの戦況が有利なったことを示しているのではないのですか?」

 

 

 

 

「それは解らねぇな」

 

 

 

「何故です?現に私の端末には、大戦艦ハルナが超兵器アルケオプテリクスを撃墜と報告が入っているのですよ?」

 

 

 

「確かに航空機型超兵器の存在は、この世界では脅威かもしれねぇし、ソイツの撃墜の影響は少なからずあるだろうが、だが忘れてねぇか?その報告の中には岬達はれかぜが、国家戦力を相手に出来る戦力を持った、超兵器ノーチラスと交戦中ってなってただろうが」

 

 

 

「あっ…」

 

 

 

「一隻でも沈めば戦況は悪化する。恐らくは向こうもギリギリの状態なんだろうぜ。本来ならハルナを留めて置きたい位にな…」

 

 

 

「そんな…では何故?」

 

 

 

「それ程までに俺達と奴等の戦力差が有るって判断した結果なんだろうな。少なくとも、この戦いが始まった当初はプラッタ級三隻と、あの小型艇どもを吐き出したデュアルクレイターとか言う超兵器の存在は知り得なかった。それを報告した結果、向こうはハルナを急派することを決断したのかもしれねぇ」

 

 

 

「そうだったんですね…ですが、これは心強いです!」

 

 

 

「ああ…そうだな」

 

 

 

「艦長?」

 

 

 

真冬は未だ険しい表情のまま海を見つめ続けている。

 

 

 

(本当は違うだろうな。ハルナは元々、状況関わらず此方に急派される予定だった。恐らくはアルケオプテリクス撃墜後直ぐにこっちに向かっていた筈だ。でなきゃ今頃ここまで到着出来る訳がねぇからな…)

 

 

 

真冬の予想は当たっていた。

 

 

 

今回、東西に別れての欧州解放戦。

 

 

 

シュルツは以前、欧州解放の前哨戦となる二つの戦いが始まるタイミングが重要と語っていた。

 

 

理由は、内通者に異世界艦隊の編成が露呈した時点で、敵が大方戦力的に乏しいヴェルナー率いる西進組壊滅に向けられると踏んでいたからである。

 

 

 

故にシュルツ率いる東進組は、ヴェルナー達よりも¨早く¨戦闘に入り敵の布陣や出方を見極め、更には敵戦力を早めに削いで数の余裕を得た後に、ハルナを地中海へ急派する準備を整えており、それが今回のヨトゥンヘイムによるニ度目の超砲撃を妨害する結果を生んでいたのだ。

 

 

 

 

 

(全く、ウィルキアや蒼き鋼の艦長は何者なんだ…。まるでこうなる事が解っていたみてぇに…。これがいつ死んでもおかしくねぇ状況にドップリ浸かってる奴の思考って訳か?アイツ等の世界はそんな世界なのかよ…)

 

 

 

真冬は、出発前に目撃した二人の艦長の姿を思い浮かべた。

 

 

 

後からの合流により会話こそ交わせなかったが、海を見詰める二人の姿は、真冬の考えうる艦長の姿とはかけ離れていた。

 

 

 

どこか遠い、遥か彼方を見ているような目。

 

 

穏やかな表情の中に垣間見える背負った者の重圧。

 

 

目の前の救助に全力を懸けてきた彼女にとって、世界などと言う巨大な単位を救う事は、正直な処独善に過ぎないと思っていたのだ。

 

 

目の前で苦しみに喘ぐ一人の人間を救えぬ者が、何故世界を救うなどと言うのか…と。

 

 

 

だがその認識は、戦場と言う名の現場を共にすることで改められつつある。

 

 

 

単艦で国家を相手にしうる超兵器が世界に拡散している今、犠牲をゼロにすることは不可能に近いだろう。

 

 

 

精々、超兵器を早期に撃沈し、これ以上の被害を拡大させない事を考えるのが自然であり当然なのだ。

 

 

 

しかし、彼らは違う。

 

 

 

相手がどんなに強大であっても、たとえ世界が異なっていても、たった一人の犠牲にすら心を傷め、その命を取り零さぬよう必死に足掻く。

 

 

 

そんな彼等の姿を見ていると、つい思ってしまうのだ。

 

 

 

もしや一つの命を疎かにしていたのは自分なのではないか…と。

 

 

 

 

だがその思考を、彼女は直ぐに捨て去る。

 

 

 

理由は簡単だ。

 

 

 

ここは救助の現場ではない。

 

 

¨戦場¨なのだ。

 

 

 

本来彼女達がいるべき場所ではないし、自分達の日頃の訓練は、戦争ではなく救助の為に用いられるべきと考えているからだ。

 

 

 

だからたとえ、多くの人民を救う手立てが、砲を交える事でしか得られないとしても、その方法を彼女は決して認めない。

 

 

 

それはそうだろう。

 

 

 

もし超兵器に人間が乗っていたのなら、それらの人間を殺してしまわない限り、民衆を救えない事になってしまう。

 

 

 

戦無くして得ることの出来ない命など、人魚の心を持った彼女には受け入れられなかった。

 

 

 

だが無情にも彼女は今、戦場にいる。

 

 

 

故に心に縫い付けるのだ。

 

 

 

(俺は…結局この方法でしか人を救えなかった。だが、間違ってる!狂ってる!これだけはこの命が尽き果てるまで絶対に忘れねぇ!)

 

 

 

 

真冬はそう自身を戒めつつ、次なる指示を飛ばしていった。

 

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

(やはり401の砲雷長の様にはいかないか…。誘導が単調過ぎるのやもしれん。401が共有戦術ネットワークに挙げているものを元に弾頭の誘導パターンをアップグレードするべきだったか…)

 

 

 

 

ハルナは乗って来たセイランを潜航させて遠隔操作し、自身の機関音を餌に注意を削ぎ、ヨトゥンヘイムの有する超巨大主砲への破壊を試みた。

 

 

 

しかし、敵が主砲の連結を解除し、加速した事で直撃させることが出来なかったのだ。

 

 

 

そういった意味ではあらゆる不足の事態を想定し、数に限りのある侵食弾頭を有効に活用するべく、複雑な誘導を一手に引き受けている杏兵の手腕の高さは、最早ハルナですら認める処であろう。

 

 

 

(この場にもう一隻居なかった事が悔やまれる。奴等のデータがまるで足りない現在では、迂闊に超重力砲を使用するには余りに危険だった…。責めて他の二隻を引き止めくれる者が居れば…)

 

 

 

ハルナは思わず眉を潜めた。

 

 

 

群像ならば或いは超重力砲発射に踏み切り、事態を好転させていたかもしれない。

 

 

 

しかしながら彼女達霧の¨高度過ぎる演算¨は、どうしても情報の不足を何よりも瑕疵としてしまう傾向があった。

 

 

 

この場には、ウィルキアから提供された超兵器リストに記載の無い双胴戦艦¨駿河¨が展開している。

 

 

仮にもキリシマを撃沈に追い込んだ播磨の姉妹艦である駿河の存在を意識し過ぎたが故に、超重力砲の使用をどうしても彼女の演算が否定してしまう。

 

 

 

【戦術の流れ】

 

 

群像を始め、人類が多用するこの非科学的なロジックは時に霧の艦隊をも翻弄する奇怪な戦術を生み出してきた。

 

 

しかしながら、不確定要素を廃し、徹底的に数学的緻密さを含んだ論理演算の元に攻撃を行う彼女達にとって、戦場の流れなどと言う数値化出来ないものを、攻撃の根拠にする確率は皆無に等しいだろう。

 

 

 

チ…チ…

 

 

 

ハルナは、コアをフル回転させて次なる行動を選択して行く。

 

 

 

チ…

 

 

 

ビィイン! ビィイン!

 

 

 

彼女の主砲である35.6cmレーザーアクティブターレットから黄色い閃光が放ち、ヨトゥンヘイム本体と接続艦である超兵器空母を狙う。

 

 

 

巨大主砲にエネルギーを送っていた今なら、防壁が手薄になっていると予測したのだ。

 

 

 

しかし、

 

 

 

ビギィ!

 

 

 

「………」

 

 

 

彼女の放ったレーザーは無情にも弾かれてしまう。

 

 

しかしそれは、ヨトゥンヘイムの防壁に直撃した訳ではなかった。

 

 

 

超兵器本体である戦艦部は、合流してきた駿河に庇われる形で攻撃をかわす。

 

そして接続艦は。

 

 

 

(あれは…デュアルクレイターか)

 

 

 

接続艦の近くにいたデュアルクレイターからケーブルの様なものが伸びていた。

 

 

 

恐らくはエネルギーを供給し、防壁を展開させたのだろう。

 

 

 

この一連の流れで、ハルナの奇襲は事実上潰えた事になる。

 

 

 

彼女は事態が膠着する兆しを見せていることを感じていた。

 

 

 

巨大主砲を装備しているヨトゥンヘイムに今のところハルナに反撃する様子は見られず、デュアルクレイターや迎撃装備主体の駿河ではハルナは攻められなくとも沈められはしない。

 

 

 

(膠着か。体力という概念が無い以上、此方は何時までも付き合えるが、それは向こうも同じだろう。ただ、401達との合流を考えるならば合理的ではない。それに…)

 

 

 

彼女は、自らの帰りを待っている蒔絵の姿を思い浮かべた。

 

 

 

(これ以上、蒔絵に寂しい思いをさせるわけにはいかない。トモダチだから…)

 

 

 

ハルナはもう一度砲門を超兵器へ向け、攻撃を再開する。

 

 

 

(今は少しでも手が欲しい…まだかキリシマ!)

 

 

 

互いに超絶な力を持つ兵器同士の根比べが始まった。

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

シチリア島 南部

 

 

 

先程まで三隻を翻弄していた超兵器達の動きに変化が見られた。

 

 

 

尾張が急速にこの海域から離脱を謀り始めたのである。

 

 

 

他の超兵器はそれを支援するかのように、尾張を追っていたタカオに攻撃を集中させた。

 

 

 

「もうっ!急にどうしたって言うの…よっ!」

 

 

 

ボボォオン!

 

 

 

 

タカオは、飛び交う砲弾を対空レーザーで迎撃して行く。

 

 

 

しかし残りの超兵器全てから魚雷やミサイル、更に光学兵器が次々と殺到し対処が間に合わない。

 

 

「くっ、このっ!」

 

 

 

 

「タカオ!あまりムキにならないで!…あっ!」

 

 

 

 

気付いた時には遅かった。

 

 

 

今まで逃走していた尾張が急に距離を詰め、視界が覆われてしまう程の巨体がタカオの真横へと移動してくる。

 

 

 

「タカオ!回避を!クラインフィールドを全開にして回避を!」

 

 

 

「くっ…あああっ!」

 

 

 

タカオは攻撃に使う演算を全力でクラインフィールドに回し、それらが展開された次の瞬間…

 

 

バゴォオウン!

 

 

 

 

 

尾張はその凄まじい旋回性能と質量を利用してタカオの側面へ横薙の衝突を思いきり喰らわせたのだ。

 

 

 

 

「あ゛あ゛っ!」

 

 

 

「もえか!」

 

 

 

クラインフィールドによってダメージは無いものの、タカオはそのフィールドごと押し込まれて急激に船体が傾き、もえかは衝撃で吹き飛ばされる。

 

 

 

タカオは人間離れした跳躍で素早く壁ともえかの間に入り、彼女の身体を抱き止めた。

 

 

「もえか!もえかしっかりして!」

 

 

「ご、ごめん…」

 

 

 

「ビックリさせないでよ!」

 

 

 

「そ、そんなことよりタカオ!」

 

 

 

「くっ…!」

 

 

 

ギリギリと、フィールドが軋みをあげる。

 

 

タカオはスラスターを起動して踏ん張るが、質量が余りにも違いすぎた。

 

 

 

船体が完全に横倒しになり、反撃すらままならない。

 

 

 

 

「タカオ!力比べじゃ勝てない。一度潜航して体勢を元に戻さないと!」

 

 

 

「わ、解ったわ!」

 

 

 

タカオはその船体を海中へと沈めた次の瞬間、相手を失った尾張はその場で勢いよく回転した。

 

 

 

タカオは海中で体勢を復帰させる。その直後に、直ぐ頭上を尾張の巨大なスクリューが通過してフィールドと接触し、衝撃で船体に激震が走る。

 

 

 

「ぐっ…!」

 

 

「あぁああ!」

 

 

 

タカオはもえかを抱き止めたまま、その場を離れて行く尾張の背中を睨み付けた。

 

 

 

(一矢…報いてやる!)

 

 

 

 

ガゴン…バシュゥゥウ!

 

 

 

 

艦首から一発の侵食魚雷が発射され、尾張のスクリューへと走り始めた。

 

 

 

彼女はフィールドを展開しつつ、弾頭の誘導に演算を割く。

 

 

 

(もう少し…もう少しでスクリューに…はっ!)

 

 

 

 

ボボォオン!

 

 

 

タカオ周辺が爆発による気泡に包まれる。

 

 

 

超兵器はタカオが海中に逃げる事を読んでいたのだ。

 

 

 

 

小型艇や高速巡洋艦からの大量かつ絶え間ない対潜兵器が投下され、タカオ周辺の海中を爆圧の嵐で引っ掻き回す。

 

 

 

 

(うぐっ!?フィールドを維持するだけで演算が…誘導にまわらない!)

 

 

 

タカオはやむ無く、もえかの身の安全を優先して侵食魚雷の誘導から手を引く。

 

 

 

そして、対潜兵器の届かない深々度へと船体を沈めていった。

 

 

 

 

   + + +

 

 

「タカオが!」

 

 

 

エミリアが悲鳴を上げる。

 

 

 

 

「ジーナス少尉、至急タカオに連絡を!」

 

 

「は、はい!」

 

 

 

慌てて通信機を手に取る彼女から視線を外すと、ヴェルナーは再び眼前を見つめた。

 

 

 

 

尾張はこの海域から離れて行き、高速超兵器や小型艇達が海中に向かって砲弾を叩き込んでいる。

 

 

 

 

(恐らくはタカオは無事だろうが、やはり旗艦の危機を察知したか。戦線が徐々にシチリア島に近付いて来ている)

 

 

 

 

 

「艦長!タカオより応答あり、無事です!」

 

 

 

 

「そうか…良かった」

 

 

 

「艦長、尾張以外の敵が集結しています。今なら…」

 

 

 

「タカオがまだいます」

 

 

 

「深々度へ潜航すれば問題ありません」

 

 

 

 

ヴェルナーは少し考え、それから大きく頷く。

 

 

 

 

「解りました。光子榴弾砲準備急げ!ジーナス少尉、タカオに限界まで潜航してクラインフィールドを張るよう伝えてくれ!弁天にも一度退避するよう伝達!」

 

 

 

「はっ!」

 

 

 

艦内が再び慌ただしく動き出す。

 

 

 

「艦長、タカオより通信。クラインフィールドのエネルギー放出まで5分程時間が欲しいとのこと!」

 

 

 

 

「その旨、了解と伝えてくれ。光子榴弾砲発射迄の時間は?」

 

 

 

「およそ3分半!」

 

 

 

「敵に気取られるな!ここで一気に超兵器を叩く!」

 

 

 

「はっ!」

 

 

 

 

 

エミリアは艦内各所に伝令を伝えて行く。

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

「知名!」

 

 

 

真冬は、思わず叫ばずにはいられなかった。

 

 

それほどに、目の前の光景は衝撃的であり、艦橋の至る所で悲鳴があがる。

 

 

 

ピッピッ!

 

 

 

「艦長、メアリースチュアートからです。タカオならびに知名一官は無事とのこと!」

 

 

 

「何?でも沈んだんだぞ!」

 

 

 

「どうやら蒼き鋼の艦艇は、潜航能力を有しているようです。現在は対潜弾を回避するため深々度へ潜航している模様!」

 

 

 

「デタラメ過ぎるぜ。だが、タカオが沈んだのに奴等が攻撃を止めねぇ理由は解った」

 

 

 

 

真冬は内心ホッと胸を撫で下ろすが、直ぐに表情を険しいものに戻して行く。

 

 

 

 

(ただこのままじゃ、知名達は何時までも海中に釘付けにされちまう。どうする…)

 

 

 

「艦長、メアリースチュアートから伝令です。至急その海域から距離を取れと!」

 

 

 

「おい!知名を見殺しにするつもりか?ふざけんな!」

 

 

 

 

『見殺しではありません』

 

 

 

「ヴェルナーてめぇ…」

 

 

 

『あなたならきっとそう仰ると思っていました。ですが安心してください。知名艦長は必ず我々が何とかします。弁天は一度退避してください』

 

 

 

 

 

「信じていいのか?アイツはこれからの時代を担って行く俺の大切な後輩なんだ。何か有ったら只じゃおかねぇ!」

 

 

 

 

『勿論です。タカオは現在、対潜弾の届かない深夜度にてクラインフィールドに蓄積したエネルギーを放出し、再起を図っています。一時的にこの戦域は、我々二隻だけで超兵器を抑え込まなければならない状況に置かれてしまいました。我々もあなた方を完全には援護できない。一度退避して状況を注視してください』

 

 

 

 

(メアリーが前に出る。何か策があるのか?いずれにせよ、タカオが戦線を離脱している今、数では奴等に勝てねぇ…悔しいが一度引くしかない)

 

 

 

 

真冬は歯噛みしつつクルーに指示を飛ばし、弁天は海域を離れて行く。

 

 

 

日は傾き始め、空が茜色から藍色へと変化し、白く輝く月が皮肉にも戦場を美しく照らしていた。

 

 

 

   + + +

 

 

 

 

超兵器達は、海中に対する対潜攻撃を緩めてはいなかった。

 

 

 

見た目は重巡洋艦だとしても、その戦闘力は凄まじい。

 

 

 

迂闊に浮上させるわけにはいかなかったのだろう。

 

 

 

バシュウ バシゥゥウ!

 

 

 

 

ミサイルや爆雷、そして対潜誘導魚雷が絶え間なく発射され、水柱が何本も上がり、その間に尾張は異世界艦隊からかなりの距離を取っていた。

 

 

 

すると突然、尾張の動きが止まる。

 

 

 

ガゴン…

 

 

 

超兵器後部の飛行甲板の一際大きなハッチが開き、中から巨大な何かが現れる。

 

 

それは、兵器としては余りにも派手な山吹色で塗装されており、姿形は異形意外の何物でもない。

 

 

 

非常に長大な主翼と主翼より前に突き出て先端がまるで鳥の嘴のように細くなっている胴体部。

 

機体後部には、大きな筒状のジェットエンジンが二基と、主翼には左右四基ずつの小型ジェットエンジンが備え付けてある。

 

 

その姿はさながら飛翔する鶴の様な外見だ。

 

 

 

しかしそれだけでは只の巨大なジェット航空機に過ぎないだろう。

 

 

 

その兵器の異形たらしめている最大の特徴は、機体上部に取り付けられた、三つの¨ローター¨だった。

 

 

 

二つは比較的小型で、機体後部のジェットエンジンが備え付けてある筒の上部に、そして機体前方の胴体上部に設置されている物は非常に巨大であり、一本の軸に二組のローターが備えてある二重反転ローターが確認出来た。

 

 

 

【航空機型超兵器の発艦】

 

 

ヴェルナーが、考えうる最悪展開が現実のものとなってしまったのである。

 

 

現状の数の不利を、ハルナの増援によって何とか解消したかに見えた戦況が振り出しに…いや、もしかしたら其よりも悪い状況に陥っている可能性もあった。

 

 

 

航空機型超兵器の出現と共に、暫しの静寂が訪れ…

 

 

 

フゥィイイイ!バダバダバダバダバダバダ!

 

 

 

 

耳を突き刺すようなジェットの音と巨大なローターから発する不愉快な爆音が辺りを支配し、その巨体が甲板からゆっくりと離れて浮遊する。

 

 

 

 

バダバダバダバダ!

 

 

 

ローターの回転が更に上がり、茜色と藍色が混じり合う空に山吹色の機体は一気に空へと舞い上がる。

 

 

 

白から金色に輝きを増す月は、機体をより妖しく艶やかに色付けし、ローターとジェットエンジンの混じり合う爆音が、超兵器の存在をより不気味且つ高圧的に演出した。

 

 

 

ここに、南欧に集結した全ての超兵器が姿を露にしたのである。

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

 

「超兵器【Журавлик 】(ジュラーヴリク)…最悪だ。敵に全てのカードを切られてしまった…。」

 

 

 

 

ヴェルナーの表情からは完全に血の気が失われていた。

 

 

ジュラーヴリクが出現した今だからこそ理解できる。

 

 

 

超兵器達が執拗にタカオを攻撃して潜航に追い込み、尾張を戦闘海域から逃がした理由は、この超兵器を発艦させる為だったのだ。

 

 

 

 

「艦長!至急航空部隊に着艦のご指示を!このままでは全滅します!」

 

 

 

そんな彼を叱咤するように筑波からの怒声が飛び、ヴェルナーは慌てて着艦の指示を出すと、次なる一手を必死に絞り出そうとするも一向に思い付かない。

 

 

事は異世界艦隊を総動員して当たるレベルに相当していた。

 

 

 

 

ところが、ヴェルナーの不安をよそに、超兵器は意外な行動に出る。

 

 

 

バダバダバダバダ…。

 

 

 

ジュラーヴリクは機首をシチリア島に向け、その巨体に似合わぬ速度であっという間に飛び去ってしまったのだ。

 

 

 

危機が去った事に、一瞬だけ安堵の気持ちが浮かぶも、ヴェルナーはその気持ちに鍵をかける。

 

 

 

「逃げた?いや、旗艦の応援に向かったのか!」

 

 

 

「不味いですな…。向こうには駿河やデュアルクレイター、そしてヨトゥンヘイムがおります。そこへジュラーヴリクもとなれば…」

 

 

 

「大戦艦ハルナですら対処は困難になる…」

 

 

 

「ええ…。硫黄島での演習の際にも感じましたが、蒼き鋼の艦艇は千早艦長が居てこそ初めて真価を発揮できると思われます。彼女達単体では、少々動きが単調になりがちですからなぁ」

 

 

 

 

「不利な状況には変わりは無いと?」

 

 

 

「いえ、まだ機会は失われておりません!光子榴弾砲で出来ゆる限り、この場にいる超兵器だけでも撃沈するのです!」

 

 

 

 

筑波の言う通り、ジュラーヴリク発艦を妨害させない為に、超兵器達はタカオの浮上を阻止するため集結していた。

 

 

 

だがそれが成された以上、再び超兵器が散開し、更には小型艇からの対潜攻撃でタカオの浮上が妨害され続ければ、間違いなく不利な状況に陥る。

 

 

 

失意に囚われる時間も、躊躇する時間も皆無であった。

 

 

 

「ジーナス少尉!タカオからの返答と光子榴弾砲の準備はどうか?」

 

 

 

 

「はっ!タカオ、クラインフィールドのエネルギー放出を完了。弁天も安全距離に退避。光子榴弾砲の発射準備完了!」

 

 

 

 

ヴェルナーは大きく頷き、発射の指示出した。

 

 

 

 

「光子榴弾砲…発射!」

 

 

 

ビッシャアァァン!

 

 

 

激しく輝く白い閃光が高速で飛翔し、超兵器や小型艇が展開する海域の中心へと向かって行った。

 

 

 

  + + +

 

 

 

「超兵器ジュラーヴリク…ロシア語で【鶴】か?何だってんだありゃ…あんなデカイ奴が空中を浮くってのか!?」

 

 

 

 

真冬は目眩にもにた感覚を覚える。いや、それはクルーも同様だろう。

 

 

 

航空機と言う概念が無い現世界に於いて、戦艦と同等クラスの鉄の塊が浮かび上がり高速で飛翔する様は、まるでSF映画を見ているかのように現実味がまるで沸いてこなかった。

 

 

 

 

一同が唖然とする中、平賀は突如眩い光を放つメアリースチュアートへ視線向けた。

 

 

 

 

「な、何なんです?あれは…」

 

 

 

日が落ちようとしている海に、まるで太陽の如く輝くそれに、クルー達がざわめいた。

 

 

 

 

「何か始める気か?」

 

 

 

真冬がポツリと呟いた時。

 

 

 

 

「宗谷艦長!至急簡易クラインフィールドを展開して目を閉じ、手近な物に捕まってください!」

 

 

 

 

「笹井…」

 

 

 

今まで様子を観察していた笹井が叫ぶ。

 

 

 

普段の抑揚の無い口調とは違う語気に真冬は少し同様するが、直ぐ様指示を飛ばした。

 

 

 

「全員目を閉じて伏せろ!直ぐにだ!」

 

 

 

 

クルー達は直ぐ様指示通りに行動する。

 

 

彼女自身も目を閉じようとした時、ふと超兵器艦隊の動きが目に留まった。

 

 

 

メアリースチュアートの行動に気付いた彼等は、一様に¨集結¨していた。

 

 

 

(何をする気なんだ?)

 

 

 

「宗谷艦長!」

 

 

 

「待て、もう少し見てみたい」

 

 

 

「ダメです!」

 

 

 

「ちょ…お前!」

 

 

 

笹井は真冬の目を手で覆い、無理矢理床へと伏せさせた。

 

 

 

その直後、

 

 

 

ブゥオオオオン!

 

 

 

目を塞がれているにも関わらず、眩い閃光が眼球を刺し、凄まじい轟音が鳴り響いて艦が激しく揺さぶられた。

 

 

 

「うぉ!?…ぐっ、あ!」

 

 

 

彼女は激しい衝撃に歯を食い縛り、クルーからは悲鳴が上がる。

 

 

 

(な、何なんだこれは!本当に人間が起こしている現象なのか?)

 

 

 

いまだに残る鈍い目の痛みと激震に耐えながら、真冬は今更ながらに超兵器との戦いの凄まじさを痛感していた。

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

「光子榴弾砲着弾!水蒸気により、爆心地点の観測不能!」

 

 

 

「観測を継続!いつでも攻撃を加えられる様準備を怠るな!」

 

 

 

「はっ!」

 

 

 

クルーに指示を飛ばしつつ、ヴェルナーは眼前から一切目を離さない。

 

 

 

 

(大戦艦ヒュウガによって改良された光子榴弾砲の威力は凄まじいな…。しかし、奴等がこれで終わるとは…)

 

 

 

「艦長!水蒸気が晴れて行きます!」

 

 

 

 

全員が固唾を飲んで、爆心地点を見つめる。

 

 

あれほど群がっていた小型艇は、改良された光子榴弾砲の衝撃波によって跡形も無く凪ぎ払われており姿は見えない。

 

しかし、

 

 

「あっ…」

 

 

 

エミリアの表情が青ざめた。

 

 

 

超兵器達は健在していたのだ。

 

 

だが、様子が少し違う。

 

 

ヴィルベルヴィントの傍らに移動したサイレント・ブラッタからケーブルが伸びている。

 

 

 

他の超兵器も同様であった。

 

 

 

ヴィントシュトースにルフトシュトロームが、そしてクラールヴィントにはヴィンディヒがそれぞれケーブルを伸ばしており、周囲にはドス黒いオーラが立ち込めていた。

 

 

 

ガシュン…

 

 

 

超兵器はケーブルを切断すると、行動を開始する。

 

 

ただ対照的にケーブルを伸ばしていた超兵器は…

 

 

 

「超兵器反応が¨減って¨いる?艦長!」

 

 

 

エミリアの悲鳴にヴェルナーは頷いた。

 

 

 

「損傷した艦や弱い艦の出力を分け与えて力場を強化したのか…だが奴等の超兵器機関は容易く暴走する。不味いな…」

 

 

 

ジトリと嫌な汗が彼の額を流れて行く。

 

 

そこに再びエミリアの悲鳴が轟いた。

 

 

 

 

「敵超兵器暴走開始しました!敵速は…えっ、ええ!?」

 

 

 

「ジーナス少尉、どうした!」

 

 

 

「は、はっ!超兵器ヴィルベルヴィント、敵速は243kt!ヴィントシュトース敵速176kt!」

 

 

 

「何だと!?243kt!?プロペラ機程の速度だぞ!」

 

 

 

「間違い有りません!あっ!ヴィルベルヴィント転進!シチリア島へ向かっている模様!」

 

 

 

「くそっ!そう言うことか!」

 

 

 

「艦長。我々も大戦艦ハルナとの合流を図った方が良いのかもしれませんな」

 

 

 

「同感です。分断された状態では分が悪い。ジーナス少尉!各艦に連絡して戦線の移動を…」

 

 

 

 

ボォオン!

 

 

 

「!?」

 

 

 

突如として環境に激震が走る。

 

 

慌てて眼前を見据えると、遥かに向こうに此方を向いた¨尾張¨が多数のミサイルを発射しているのが見えた。

 

 

 

 

「成る程…距離を取ったのは、飽くまでジュラーヴリクを発艦させる為か。我々はここで貴様の相手をしている暇は無い!沈めさせてもらうぞ!」

 

 

 

 

刻一刻と変化する戦況に精神を削られつつも、ヴェルナーの瞳は未だ死んではいなかった。

 

 

 

 

  + + +

 

 

 

光子榴弾砲の衝撃が去った後、タカオは海底からの浮上を始めていた。

 

 

 

「敵の数は減ったみたいね。超兵器機関に出力を与えていた超兵器は、光子榴弾砲の影響で沈没が始まっているわ。それにしても一体どういう状況なの?」

 

 

 

「一旦、整理した方が良いかもしれない…」

 

 

 

もえかはもたらされた情報から海上での様子を頭に思い浮かべる。

 

 

 

(航空機型超兵器とヴィルベルヴィントはシチリア島へ移動。急がないとハルナが危ない…。光子榴弾砲のによって小型艇は撃破、超兵器数隻も起動を停止して沈降中。現状、残る超兵器は…)

 

 

 

尾張

 

クラールヴィント

 

ヴィントシュトース

 

 

そして、先程の攻撃に巻き込まれなかったパーフェクト・プラッタ

 

 

 

「四隻か…。でも暴走した超兵器二隻と、姿を消せるパーフェクト・プラッタそして尾張。撃沈した超兵器と小型艇の戦力を引いても全然戦力の低下に繋がっていない…」

 

 

 

「もえか!メアリースチュアートから通信が!尾張が航空機の発艦を始めたみたいよ!」

 

 

 

「………」

 

 

 

「浮上を急ぐわ!このままじゃ航空機の対潜攻撃で浮上出来なくなる」

 

 

 

 

暗い海底に重力子エンジンの音が鳴り響き、タカオの浮上速度が上がって行く。

 

 

 

もえかは、モニターに視線を向けながら状況を思い描いていた。

 

 

 

 

「!」

 

 

 

彼女目に留まったのは、音波の波形である。

 

 

 

タカオのセンサーは、現世界の艦艇よりも、より詳細で多くの情報を表示していた。

 

 

 

海上での艦艇の動き、沈没する超兵器や小型艇の残骸の音、そして…

 

 

 

 

「ねぇタカオ、一旦浮上を停止して!」

 

 

 

「何でよ!早く浮上しないと航空機が…」

 

 

 

「これっ!この音波の波形…これをスピーカーに出せる?」

 

 

 

「え?これって尾張の…で、出来るけど…でも」

 

 

 

「お願い!」

 

 

 

タカオは渋々浮上を停止し、収集している音から不必要な音を除去して再生する。

 

 

 

「流すわよ」

 

 

「うん」

 

 

 

ゴポォオオオ!

 

 

 

「………」

 

 

 

もえかは目を閉じて意識を集中させ、耳を凝らす。

僅かな音でも聴き逃す訳にはいかなかった。

 

 

 

ゴポォオオオ・・・

ギィンギィン…

 

 

 

「聞こえた!やっぱり!」

 

 

重い低音の中に軋みの様な高い音が混じるのを彼女は聴き逃さなかった。

 

 

もえかはタカオに詰め寄る。

 

 

 

「タカオ、さっき尾張に何かした?」

 

 

 

「したけど何でよ」

 

 

「答えて!大切な事なの!」

 

 

「わ、解ったわよ!」

 

 

 

彼女からの返答に、もえかの疑念が確信に変化する。

 

 

 

「やっぱり浮上を中止しよう。私達はこのまま潜航を続ける」

 

 

 

「はぁ?あんた正気?水中じゃ魚雷と超重力砲しか使えなくなるのよ?」

 

 

 

「それでいい。それだけあれば、尾張を叩ける!」

 

 

 

「他の超兵器はどうするのよ!あの二隻だけで相手出来る戦力じゃないわ!航空機だっているのよ!?」

 

 

 

 

「大丈夫。今すぐ尾張を攻める訳じゃない。私達は弁天を海中から援護しながら、機会を伺うの。あと、海中では常時アクティブソナーを使用して!」

 

 

 

「は?」

 

 

タカオは益々首を傾げてしまう。

 

 

同然だろう。

 

 

姿を晒している海上ならいざ知らず、姿を隠せる海中にいながらソナーを打つ行為は、敵に自分の居場所をわざわざ知らせる行為に他ならない。

 

 

 

不満そうなタカオを他所に、もえかの表情は確信に満ちていた。

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

バギィン!

 

 

 

砲弾がクラインフィールドに衝突して弾け飛ぶ。

 

 

 

正直な処、ハルナは圧されていた。

 

 

 

「くっ…。あの小型艇、厄介だな…」

 

 

 

デュアルクレイターが発艦させた大量の小型艇は、低出力ながら防御重力場や電磁防壁を装備しており、更には光学兵器や小型の単装レールガンを搭載していた。

 

 

 

更には…

 

 

 

ボォオン!

 

 

 

「くっ…!」

 

 

ヨトゥンヘイム本体を守護している駿河からは、大口径主砲を撤去した代わりに搭載された大量のAGSとミサイル発射官から猛烈な砲撃が絶え間無く飛んでくる。

 

 

 

 

ハルナは反撃を繰り出すが、如何せん敵の数が多く、攻撃対象が分散してしまう。

 

 

 

更にデュアルクレイターや駿河が装備しているパルスレーザーやバルカン砲は迎撃に優れており、ハルナの放つミサイルを尽く撃ち落としてしまうのだ。

 

 

 

 

此方の攻撃が一切通らず、敵の砲撃だけが無情にも届く。

しかも、非常に回避しにくい兵器を使用し、射数が多いだけに、核兵器すら通さないクラインフィールドを持ち合わせていたとしても、直ぐにダメージを蓄積してしまう。

 

 

 

 

(このままではいずれフィールドが飽和する…)

 

 

 

そして、彼女に追い撃ちをかけるように、先程ジュラーヴリクとヴィルベルヴィントが此方に向かっていると連絡を受けていた。

 

 

 

 

(せめて、敵の妨害を覚悟してでも超重力砲を敵旗艦に浴びせるべきか…)

 

 

 

 

確かに超重力砲は彼女達霧の艦隊の最大の武器であることは確かだろう。

 

 

だが、その莫大な威力の代償として、彼女達の演算の大半を発射に伴う計算に費やさなければならず、発射方向のクラインフィールドを解放しなければならない為、隙を付かれかねないのだ。

 

 

 

 

彼女は迎撃を行いながら、駿河の後に隠れているヨトゥンヘイム本体から意識を外していない。

 

 

いや、出来ないのだ。

 

 

 

何故かは解らない。

 

 

 

しかし、超大型レールガンを発射した以外に動きを見せないヨトゥンヘイムはある意味不気味であると彼女のコアが警鐘を鳴らす。

 

 

 

特に本体部分である戦艦部は、この場にいるどの超兵器よりも船体色が暗く、黒と言うよりも闇に近い。

 

 

日中行動するには逆に目立ち過ぎる漆黒の船体色は、日が傾きつつある現在は背景に溶けて行く様にも感じられた。

 

 

 

 

(くっ…どうする?やはり超重力砲を…)

 

 

 

ボボボボォオン!

 

 

 

「何!?」

 

 

 

ハルナが振り返ると、茜色に染まるシチリア島の上空を巨大な翼を広げた異形の兵器が此方に向かって来るのが見えた。

 

 

 

(超兵器ジュラーヴリクか…不味いフィールドが限界に近い。一度エネルギーを放出しなければ…)

 

 

 

 

だが、超兵器と小型艇はここぞとばかりにハルナに対しての攻勢を強める。

 

 

人類対して敵なしと言われた彼女達霧の艦隊でも、クラインフィールドが無ければ通常の戦艦と防御装甲は何ら変わりない。

 

 

即ち、クラインフィールドが解けた瞬間こそ、ハルナの敗北は確定してしまうのだ。

 

 

 

彼女は珍しく眉をひそめ、必ず帰ると約束した友人の顔を思い浮かべる。

 

 

 

「ここまでなのか…すまない蒔絵。私はお前との約束を守れそうに…」

 

 

 

 

『なんだハルナ。大戦艦ともあろうお前が、随分弱気じゃないか』

 

 

 

 

「!」

 

 

 

全てを諦めかけた彼女に、何者かが通信で話し掛けてくる。

 

 

 

それと同時に…。

 

 

 

ボォオン!ボォオン!

 

 

 

ハルナに攻撃を仕掛けていた超兵器や小型艇に、次々とミサイルが殺到していた。

 

 

 

彼女はミサイルが飛翔してきた方向に視線を向ける。

 

 

ザバァァア!

 

 

 

海中から一隻の¨金剛型戦艦¨が現れた。

 

 

 

その船体には、ハルナの船体と同様にタトゥの様な紋様が刻まれている。

 

 

艦橋の上には、一人の女性が何やら芝居掛かった様にポーズを取っていた。

 

 

ハルナは表情を元に戻す。しかし、その顔はどこか安堵を含んでいるようにも見える。

 

 

 

 

彼女は、海中から現れた¨もう一人の友人¨に向かって口を開いた。

 

 

 

 

「遅かったな…キリシマ」

 

 

 




お付き合い頂きありがとうございます。


いよいよ超兵器ジュラーヴリク(鶴)が登場しました。


画像検索で鶴の飛翔した姿とジュラーヴリクを見比べてみると、足を後に伸ばして飛ぶところや、長い首部分なんかが上手いこと表現された超兵器で、成る程と思ってしまいました。


擬人化?では無いかもしれませんが、動物の擬兵器化も鋼鉄の咆哮っぽくて私はとても好きな超兵器の一つです。


物語中盤までもう少しですが、やはりナハトは一筋縄では行かないかもしれません。

ですが、焦らず一歩ずつ進んで参ります。



それでは次回まで今しばらくお待ちください。



またいつか。






























とらふり! 1/144ちょうへいきふりいと





播磨
「ジュラーヴリク格好いい!駿河も負けるなぁ!」



荒覇吐
「駿河はアンタと違って、堅実そうよね。撃ちまくってる様に見えるけどAGSなら命中率は申し分無いし…。」





播磨
「アンタと違ってって何だよ!妹にはドリルだって超砲撃だって無いんだぞ!」




荒覇吐
「なんでも欲張ってつければ良いわけじゃないでしょ!?実際ドリルなんて牽制にしか使ってなかったじゃない!」



播磨
「ふぅ~んだ!私は砲撃主体なんだからいいんだよぅ!」



荒覇吐
「アンタ私をイラつかせる天才ね…。妹もどうせ私の真似をしてドリルとか付けてるんでしょ?」




播磨
「う~ん。ドリルはどうかなぁ…。前の世界であっさり沈んじゃったから、防御を固めたいとか言ってたよ。ホラ、私達甲板が広いから被弾面積も大きい訳だし…。」




荒覇吐
「ちゃんと考えてるのね…。てかアンタは妹が真剣に考えてるのに何でドーラ・ドルヒの160cm砲なんて付けたのよ!」




播磨
「格好いいから!」



荒覇吐
「ハァ~。」



近江
「どうしたの?荒覇吐。溜め息なんかついて。」



荒覇吐
「ああ、播磨の考えなしに呆れていた所よ…。」



播磨
「何だよ考えなしって!」



近江
「止めなさい!あなたの妹も頑張ってるんだからきちんと応援しなきゃダメでしょ?」




播磨
「はぁい。」



近江
「解ればよろしい!ん?グロースシュトラール、如何されましたか?」



グロースシュトラール
「…………。」



近江
「あのう…艦隊旗艦?」



グロースシュトラール
「ん?ああ、済まないね。少し考え事をしていたんだ。」





近江
「そう…ですか。」




グロースシュトラール
(ナハト…。君は私以上の強化をしているみたいだね。総旗艦直衛艦であるムスペルヘイムを模し、彼の艦に心酔している君らしいが、大き過ぎる武装は隙も多くなる。それを承知で実装したのかい?それとも他に策が…いや、私の考え過ぎだったかな?)
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