トライアングル・フリート   作:アンギュラ

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リアル超多忙によりお待たせして申し訳ありません。



地中海海戦の後半戦になります。


それではどうぞ


明日を迎える者はどちらだ! VS 超兵器

   + + +

 

 

 

「ぐあっ…!」

 

 

艦に走る激震に、真冬は思わず声をあげる。

 

 

 

駿河からの苛烈な砲撃は、弁天を着実に追い詰めていた。

 

 

 

 

そして…

 

 

 

視線の傍らには、暗闇でもなお不自然な迄に目立つ漆黒の巨大軍艦が入ってくる。

 

 

 

 

(……っ!)

 

 

 

不思議と身体は震えない。

 

 

いや、理解できていないと言うべきか。

 

 

 

¨鬼¨と言う解りやすい厄災とは異なる何か得体の知れないナニか…。

 

 

 

言葉では形容出来ないおぞましさを真冬は感じているのだった。

 

 

 

「か、艦長!」

 

 

「あ、ああ…」

 

 

 

彼女は平賀の悲鳴で我に帰る。

 

 

そう、呆けているわけにはいかないのだ。

 

 

 

目の前に立ちはだかる双胴の鬼を打ち倒さぬ限り、相手の旗艦へ挑む資格は与えられない。

 

 

 

 

「回避急げ!魚雷も随時発射!主砲、攻ぅ撃始め!」

 

 

 

「撃ちぃ方始め!」

 

 

 

ボォン!

 

 

 

彼女達は、降り注ぐ砲弾雨を足掻きながら反撃を加えて行く。

 

 

だが…

 

 

バガン!

 

 

 

「砲弾並びに魚雷…効果無し!」

 

 

 

「硬てぇ…」

 

 

 

彼女達の砲弾は超兵器に傷一つ付ける事が出来ない。

 

 

既に駿河の砲身の全てが弁天へ照準を合わせている。

 

 

 

(砲弾の嵐が来る!)

 

 

 

 

真冬が身構えた時だった。

 

 

 

ビジィイン!

 

 

 

「!」

 

 

 

駿河の側面へ大量の光学兵器が殺到する。

 

 

 

真冬がその発射元へ視線を移すと、一隻の艦艇が此方へと向かっていた。

 

 

 

『遅くなりました!』

 

 

 

「知名か!」

 

 

 

『はい!』

 

 

 

もえかを乗せたタカオが駿河へと突っ込んでくる。

 

 

 

「一度距離を取って下さい!此方で駿河を引き付けます!」

 

 

 

『すまねぇ…。』

 

 

「くっ!何なのよコイツ!ハリマよりタフなんじゃないの!?」

 

 

 

「アレとは対になる超兵器だからかな…。でも今はとにかく駿河の意識を弁天から外そう!AGSは距離が離れていく対象には当たりにくくなる!」

 

 

 

「了解!ホラ、こっち向きなさいよ!」

 

 

弁天が駿河から距離を取り始め、タカオは更に攻勢を強めていく。

 

 

しかし実際は、攻め手に欠いている状況だ。

 

 

同海域にヨトゥンヘイムがいる以上、長い時間を駿河一隻に割くのは余りにも危険過ぎる。

 

 

 

もえかはモニターや駿河の行動を観察しながら打開に向けた思考を加速させて行く。

 

 

 

(ある程度の情報は把握した。右舷側の実弾防御装甲は使用不能か…。あれ?どうして駿河は使用不能になった面を常に弁天へ向けてるの?)

 

 

 

彼女は浮かんできた疑問を下に、いま一度状況を確認する。

 

 

 

超兵器から距離を開ける為に動き出した弁天は、牽制の為に魚雷や砲弾を放ち、駿河はそれらを実弾防御装甲の展開できない右舷側で防御重力場を用いて反らしている。

 

 

 

だが超兵器の左舷から接近を謀るタカオに対しては、実弾防御をこまめに展開収納を繰り返し、防御重力場も併用していた。

 

 

 

火力的な面から見ては至極合理的なのだろうが、彼女疑問は別な所に移っている。

 

 

 

なぜ¨実弾防御装甲を出し入れしなければならなのか¨だ。

 

 

 

確かに大口径を廃してとは言え、多数のAGSの攻撃は脅威だろう。

 

 

しかしだ

     

 

播磨の100cm砲の威力に比べたらAGSの力は弱く、むしろ実弾防御装甲を展開しながらでも使用できるミサイルや光学兵器の方が使い勝手も威力も申し分無い。

 

 

 

だが駿河は、小まめに装甲を収納しては砲撃を加えてくる。

 

 

 

 

(手数を増やす為?…いや、きっとそれは副産物的なものだ。相手が防御特化型の超兵器だとすれば…あっ!)

 

 

 

 

もえかの頭の中で何かが繋がり始めていた。

 

 

 

 

(実弾防御装甲を収納してるんじゃない。艦の側面…若しくは艦底への魚雷に対する防御として¨展開¨していたんだ!)

 

 

 

全て得心がいった。

 

 

 

 

駿河の目的は飽くまでも旗艦の護衛であり、敵戦力を分散と、有限な弾薬と精神を極限まで浪費させ続ける事が目的なのだ。

 

 

 

故に彼の艦は沈まぬ事が第一の目標となる訳なのである。

 

 

 

実弾防御装甲には、おきく分けて2つの役割がある。

 

一つ目は、甲板上へ飛来する物理攻撃を防ぐ事により、防壁の使用を節約する意味い。

 

 

 

二つ目は、防御重力場が水上の1/10しか展開できない甲板より下を守る事だ。

 

 

 

弁天の砲撃が、事実上駿河の防御重力場を抜けないとすると、脅威なのは魚雷しかない。

 

 

故に敵は弁天を付け狙っていたのではなく、装甲が甲板上に展開出来なくなった右舷側を常に弁天へと向けていただけなのだ。

 

 

 

そして多種に渡る攻撃手段を有するタカオには、あらゆる防御手段を講じる。

 

 

しかし、それには弱点が存在していた。

 

 

 

 

(実弾防御装甲を甲板上に展開している間は喫水付近の防御が逆に手薄になる。そこが狙い目!)

 

 

 

 

彼女はタカオに目配せし、それに従って彼女が魚雷を発射する。

勿論、侵食魚雷も織り混ぜて…。

 

 

 

「いけ!」

 

 

しかし魚雷が接触しようとした瞬間、彼の艦は装甲を格納、防御重力場の力も相まってタカオの魚雷は虚しく砕け散って行く。

 

 

 

だが、それこそが彼女の狙いだった。

 

 

 

「今、キリシマ!」

 

 

 

『了解!』

 

 

 

ガゴン!…ビジィイン!

 

 

 

キリシマの艦橋上部が展開し、円筒状の物がクルクルと回転して発射されて駿河の直上へと静止。

 

 

危険を察知した駿河が空かさず撃ち落としにかかる。

 

 

しかしキリシマは巧みに操作してその攻撃をかわし、装置を起動させた。

 

 

 

バシュン…ジジ…ゴォウン!

 

 

 

複数の稲妻が轟音と共に駿河に向けて落ちて行き、超高圧の電流が海水を瞬時に蒸発させる。

 

 

更に、海水を通じて伝わった電流が駿河内部に格納されていた弾薬に流れ込んで次々と炸裂させていった。

 

 

 

ボゴォ!

 

 

 

巨大な船体の至る所から黒煙が上がる。

 

 

 

 

「今だ!畳み掛けろ!」

 

 

 

真冬の罵声と共に、砲弾と魚雷が一斉に発射され、息を合わせるようにタカオからも砲弾が超兵器へと向かう。

 

 

対する駿河は空かさず装甲を展開しようとする。

 

 

だが…

 

 

ギ…ギギィ!

 

 

装甲は悲鳴を揚げて動く気配がない。

 

 

キリシマの電撃を喰らい、高熱で膨張した装甲は最早使い物にならなくなっており、自由な展開を封じてしまえば、弱点を徹底的に突く事が可能となってくるのだ。

 

 

 

駿河は一方的に2隻からの攻撃を受けてしまう。

 

 

 

ところが迎撃と防御に特化した駿河は尚も傾く事なく、残存した兵器を使用して反撃を続ける。

 

 

 

「チッ!何で沈まないの…よ!」

 

 

 

攻撃を継続しつつもタカオの声には焦りと苛立ちが混じる。

 

 

人類艦を相手にしてた彼女に取っては、一隻に対する長時間の戦闘経験などある筈もなかったのだ。

 

だがそれは、この場にいる全ての者が同時に感じている事でもある訳だが、彼女達の心は折れてはいなかった。

 

 

 

(もう直ぐ…もう直ぐ会えるよ。…ミケちゃん!)

 

 

 

最初の絶望的な状況とは違う。

 

 

 

残り2隻…

 

 

 

その先には大切な友人や仲間達との再会が待っているのだ。

 

 

 

 

【生き残る!】

 

 

 

心の中にある決して折れない芯が彼女達のボロボロの肉体を動かしていた。

 

 

 

 

「もえか!埒が明かない!超重力砲を…」

 

 

 

「焦っちゃダメ!ヨトゥンヘイムは私達の事もきっと見てる!今隙を与えたら差し込まれちゃう!」

 

 

 

「でも!」

 

 

 

「今は攻撃を続けて!きっと隙は出来る!」

 

 

 

 

ゴールが見えている。

 

 

 

そこに生まれる心の隙を、超兵器は決して見逃さないと言う事をもえかは痛いほど味わってきた。

 

 

故に、彼女は徹底的且つ確実に超兵器を叩く選択を選んだのだ。

 

 

 

 

彼女達の抜け目ない攻撃によって、駿河の防御重力場は力を弱めて行く。

 

 

しかし、甲板の至る所から黒煙を上げ、砲身がグニャグニャに捻曲がろうとも、未だ戦意を失わずに残りの砲門を向けて来る様は、【東亜の魔神】と恐れられた播磨を彷彿させる化け物としか形容出来なかった。

 

 

 

 

「もう一度隙を作らなきゃ…タカオ!¨超音波振動魚雷¨用意!通常弾頭に音響魚雷も織り混ぜて!」

 

 

 

「了解!」

 

 

バシュン!

 

 

 

魚雷群が駿河へと向かう。

 

 

そして単調な動きの通常弾頭を超兵器が迎撃した隙に、音響魚雷が炸裂して駿河の耳を奪い、最後に超音波振動魚雷を起動。

大量に出現した気泡似よって、不沈と思われた双胴の船体が始めて傾き始めた。

 

 

 

だが、彼女達は手を緩めない。

 

 

激しい砲撃に、対に駿河の防御重力場が完全に飽和する。

 

 

「叩き込んでやれ!電子撹乱ミサイル、攻撃始め!」

 

 

「電子撹乱ミサイル、発射始め!」

 

 

 

雄叫びの様に叫ぶ真冬の合図と共に、弁天からミサイルが発射され、そして駿河の艦橋付近に着弾。

 

 

強烈な電磁パルスが、超兵器の観測機器類を一気にスクラップにしてしまった。

 

これで駿河は目も失った事になる。

 

 

攻め込むのには絶好の機会であった。

 

 

 

しかし…

 

 

 

ドゴォ!

 

 

 

「ぐあっ!」

 

 

「あ゛あ゛ぁっ!」

 

 

 

ミサイルこそ飛んで来ないまでも、弁天の位置を見失っている筈の駿河は、尚も正確に砲撃や光学兵器を此方に放ってきた。

 

 

 

「っ……!」

 

 

 

これには真冬も驚愕してまう。

 

 

後ろで控えている笹井も表情が険しくなっていた。

 

 

 

一方のもえかもこの状況に疑問が湧く。

 

 

 

(こっちへの攻撃は御粗末そのもの、でもなぜ弁天に…もしかして!)

 

 

 

《内通者》

 

 

 

その存在が真っ先に浮かんだ。

 

 

 

敵に弁天の位置を正確に伝えるには、少なくとも自艦の位置を把握出来る立場にいる者でなければならない。

 

 

 

そしてそれは、同じブルーマーメイドの中にいる。

 

 

 

しかしそこで新たな疑問が湧く。

 

 

 

 

何故内通者は自らも危険に晒されかねない状況に身を置かねばならないのか…

 

 

 

 

だがもえか首を降ってその思考を心に仕舞い込む。

 

 

 

それは今、この場で追うべき内容ではない。

 

 

 

重要なのは、目の前の脅威を決して民衆に向かわせてはならないと言う事なのだ。

 

 

 

自分達がここで沈めば、北欧に展開している超兵器を倒したとしても、北極海へ駒を進める間に、ヨトゥンヘイムが欧州を蹂躙する事になるのは明白だった。

 

 

 

自分を含め、一人でも多くの犠牲を出してはならない。

 

 

それは、親友である明乃の心を引き裂く事に繋がるのだから…

 

 

 

「……!」

 

 

 

もえかは目を見開いて、駿河を見つめる。

 

 

 

ここで躓く訳にはいかないのである。

 

 

 

「タカオ!侵食魚雷装填!今のうちに実弾防御装甲をくり貫いて浸水を発生させよう!そうすればもうまともな攻撃は出来なくなる!」

 

 

 

「解ったわ!」

 

 

 

 

タカオは次々と侵食魚雷を駿河へと叩き込み、抉られた複数の穴から海水が絶え間なく侵入して彼の艦を傾けて行く。

 

 

 

先程よりも傾斜が大きくなり、超兵器による攻撃の手数が明らかに減って来ていた。

 

 

 

 

「分厚い装甲ね…でもこの数の侵食弾頭、耐えられる?」

 

 

 

 

幾多の攻撃をはね除け続けた装甲に侵食魚雷が次々と穴を開けて行く。

 

 

 

只し、撃ち尽くしてしまえば事実上ヨトゥンヘイムへの攻め手を失う事にも繋がってしまうのだが…。

 

 

 

『知名!退け!光子魚雷を奴に叩き込む!』

 

 

 

気づけば弁天が此方に回り込んできていた。

 

 

 

真冬の提言は尤もだが、もえかの表情は険しい。

 

 

 

「しかし電子撹乱ミサイルで通常の誘導兵器は使えません!どうやって…」

 

 

 

『決まってんだろ!噴進魚雷を使うんだ!』

 

 

 

「そんな…無茶です!これだけ辺りが荒れていたら弾道の計算も困難ですよ!?」

 

 

 

『誰に物を言ってやがる!俺達はいつだってこう言う状況の中で人を救って来たじゃねぇか!信じろ!今はそれしか言えねぇ!』

 

 

 

「…解りました。お願いします。タカオ!弁天を援護しよう!」

 

 

 

「了解!ほら、こっちよ!」

 

 

 

タカオから激しい弾幕が超兵器に殺到して行く。

 

 

 

「平賀!噴進魚雷の準備は良いか?」

 

 

「はい!いつでも撃てます!」

 

 

「風向きと距離を観測しろ。タカオが開いた穴に叩き込んでやる!」

 

 

 

観測員が超兵器と弁天の位置、そして戦闘の爆圧や潮流によって複雑に変化する風を読んで随時報告して行く。

 

 

 

「まだだ!しっかり見極めろよ!」

 

 

 

クルー達が全神経を集中させて機会を伺う中、対にその時は訪れる。

 

 

タカオ似よって兵装の大半を破壊された駿河の攻撃が一時的に停止し、更には海上に吹き荒れる風が減衰してきたのだ。

 

 

 

「艦長、今です!」

 

 

 

「噴進魚雷、攻撃始め!」

 

 

 

「噴進魚雷、発射始め!」

 

 

 

バシュウ!

 

 

 

 

弁天から白い煙を揚げて、光子弾頭を搭載した噴進魚雷が発射された。

 

 

 

駿河は直ぐ様バルカン砲や小型の光学兵器をそれに向ける。

 

 

しかし、

 

 

 

ボォン!

 

 

「させるわけないでしょ!」

 

 

タカオは空かさずレーザーで駿河の迎撃装置を破壊して援護する。

 

 

その間、噴進魚雷は一直線に超兵器に向かって飛翔し、弾頭の先端を切り離した。

 

 

カチャン…。

 

 

 

通常の噴進魚雷とは異なり、パラシュートを取り付けていない光子弾頭は、切り離された惰性のままタカオが開けた超兵器側面の穴へと向かう。

 

 

 

 

「行けぇ!」

 

 

 

真冬はまるで祈るかの様に叫び、クルー達も固唾を飲んで事態を見守っていた。

 

 

 

そして遂に…

 

 

 

ガゴン!

 

 

 

光子弾頭弾は駿河の内部への突入に成功した。

 

 

「起爆するぞ!超兵器から距離を取れ!」

 

 

 

弁天とタカオは、全力でその場から離れて行く。

 

 

 

その直後、後方から眩い光と轟音が鳴り響く。

 

 

 

皮肉な事に、外部からの攻撃を一切受け付けていなかった駿河の実弾防御装甲は、キリシマの電撃による弾薬の誘爆や光子弾頭がもたらす猛烈な爆圧を全ての内部へと押し込めてしまっていた。

 

 

 

駿河の内部は、襲い掛かるとてつもない圧力と高熱の蹂躙に引っ掻き回され、最も堅牢に守られている筈の超兵器機関周囲の装甲すらも平然とブチ抜かれてしまう。

 

 

 

そして、機関の対消滅とそれに伴う破滅的な爆発が比較的脆弱な甲板に向かって押し上げられ、一瞬駿河の甲板が大きく膨張すると、轟音を撒き散らして弾け飛んだのだった。

 

 

 

「やった…」

 

 

 

誰が呟いたのかは解らない。

 

 

しかし、その言葉が真冬を含めた一同の緊張をほどいてしまっていたのだ。

 

 

 

『宗谷艦長!全力で防壁を展開してください!…来ます!』

 

 

 

「何…だ!?」

 

 

 

クルー達は急いで防壁の展開と脱出に掛かる。

 

それと同時に、辺りがあり得ないほどの強い光に覆われていった。

 

 

 

   + + + 

 

 

《汝ラガ再ビ間見エルハ朝日ニ非ズ。宵闇ニ光レル我ガ断罪ノ閃光ト知レ…》

 

 

 

ボォオオン!

 

 

ヨトゥンヘイムは周囲に対して光学兵器や反物質ビーム砲を撒き散らした。

 

 

 

 

辺りが眩い光と爆圧に包まれ、異世界艦隊の面々が悲鳴を上げる。

 

 

 

 

 

「ぐっ…被害の確認を急げ!」

 

 

「やはり厄介ですな…発射迄の間隔が狭すぎます」

 

 

 

反物質ビーム砲や光子榴弾砲は、その威力の凄まじさとは対照的に装置自体は単装の30cm砲程度の大きさでしかない。

 

 

勿論、通常艦艇に比べればそれでも十分大きいのだが、超兵器クラスの艦艇に取ってはまるで苦にはならないだろう。

 

 

よって巨大レールガンとは異なり、¨複数¨存在する殲滅兵器を異世界艦隊は相手どらなくてらならないのだ。

 

 

 

 

『すまねぇ…』

 

 

 

「宗谷艦長!?どうされましたか?もしや被弾でも…」

 

 

 

『いや、防壁は展開して被弾は免れたが、対応が少し遅れた…。閃光と轟音で目と耳をやられた連中が複数いる』

 

 

 

「操艦は可能ですか!?」

 

 

 

『今は俺が舵輪を握ってる』

 

 

 

「至急ここから離れて下さい!留まるのは自殺行為だ!」

 

 

 

『ああ…解ったよ』

 

 

 

真冬は思いの他素直に引き下がった。

 

 

いや、今まで数多くの現場を見てきた真冬だからこその判断なのだろう。

 

 

 

疲労を抜きにしたとしても、万全の状態でないクルーを抱えつつ任務を確実に遂行するのは不可能に近い。

況して艦隊行動ともなれば尚更だ。

 

 

 

「おい!状況はどうだ!?」

 

 

「艦内温度上昇中!機関室に至っては50℃近くに達しています!」

 

 

 

「恐らく、あの攻撃の影響で海水が熱せられちまったのか?この海域から距離を取る。少しでも海水温の低いところに移動しないとまずい!」

 

 

 

「は、はい!」

 

 

 

弁天は転舵して、グツグツと煮立つ戦闘海域から離れて行く。

 

 

 

 

「正直痛いですな…統括旗艦の撃沈には一隻でも多くの手が必要ですから」

 

 

 

「彼等は軍人ではありません。甘いと仰られるかもしれませんが、この世界の住民に極限の戦闘を強いるのはシュルツ艦長の意に反するかと思います」

 

 

 

矛盾しているとは思う。

 

 

 

極限と言うならば、彼女達は既にその戦闘を半ば強いられているのだ。

 

 

 

それでも尚、ヴェルナーは¨今は¨その時ではないと考えていた。

 

 

 

(どちらにせよ、北極海の一隻が残ってしまえば事態は好転しない…。彼女達はその時まで生き長らえなければならない。そして願わくば、その先の未来に語り継いで行かねばならない。この悪夢の様な惨劇を今度は人の手で繰り返さぬように…)

 

 

 

彼は破壊を撒き散らす漆黒の超兵器を見据える。

 

 

 

弁天程ではないにしろ、メアリースチュアートの艦内温度も煮えたぎる海によって上昇しており、乗員の苦痛もピークに達しつつある。

 

 

 

彼等にしても、これ以上戦闘を長引かせる訳にはいかなかった。

 

 

 

 

「何か手は無いのか…」

 

 

 

こちらの戦略はある程度使用し既に既存の作戦を講じる余裕すらもな中、そこへ通信機から声が飛び込んでくる。

 

 

 

『仮説があります』

 

 

 

「知名艦長!?」

 

 

 

『少しだけ攻撃の手を緩めて下さい!』

 

 

 

「何故です。敵に反物質ビーム砲の使用を赦してしまう!」

 

 

 

『それが狙いです』

 

 

 

「は?」

 

 

 

意味が解らなかった。

 

 

 

戦闘開始直後から場を支配し続けたヨトゥンヘイムの…しかも本体からの攻撃を受けて只で済む筈がないだけに、もえかの言がいかに受け入れ難いものであるのかは言うまでもないだろう。

 

 

 

だが、彼女の雰囲気は気が触れているとは言いがたい。

 

 

この戦闘に於いてのもえかの思考は、以前に超兵器と戦闘経験が在るが故に固定概念に縛られしまっているウィルキアの思考を、意図も簡単に追い抜いてしまっていた。

 

 

 

故に彼は決断を下す。

 

 

 

「…解りました。で、どの様な内容なのです?」

 

 

 

『ハルナさんがこれからメアリースチュアートの迎撃システムに侵入して、一部に兵装を遠隔操作します。後は信じてもらうしか…』

 

 

 

 

「解りました。状況が打開できるのなら、私は自分の無知を許容し、あなた方に従います!」

 

 

 

『ありがとうございます』

 

 

 

もえかは、安堵の表情を空かさず真剣なものに変え、通信機を握り締める。

 

 

 

「ハルナさん!」

 

 

 

『言われるまでもない。蒔絵が待っているからな。それに私は、蒔絵に再び兵器を造らせる切っ掛けを作った奴等を不愉快に感じている…それも物凄くな』

 

 

 

「うん。此方はタカオに任せる。そっちはキリシマとメアリースチュアートをお願い」

 

 

 

『了解した』

 

 

 

3隻は暴れ狂うヨトゥンヘイムへの攻撃の手を気取られないよう慎重に緩めて行く。

 

 

 

かつて人類を数ヶ月で海洋から駆逐した霧の艦艇と、対超兵器に特化した装備を有するウィルキアの艦艇を持ってしても、ヨトゥンヘイムには未だ致命的な外傷を与えられてはいない。

 

 

誰しもがもえかの仮説に賭けていた。

 

 

 

(お願い!これが通らないと手詰まりになる…)

 

 

 

彼女は祈るように事態を見詰めた。

 

 

 

 

   + + + 

 

 

「ハルナ、本当に大丈夫なのか?」

 

 

「奴等のデータは既に蓄積済みだ。発射速度から見ても対応は可能だろう」

 

 

 

チ…チ…

 

 

 

「メアリースチュアートのシステム掌握完了。これで兵装の一部を遠隔操作出来る。キリシマ、主砲のレーザーアクティブターレットを¨通常砲弾¨を発射出来るように切り替えろ」

 

 

 

 

「了解」

 

 

 

チ…チ…ガゴン!

 

 

展開したような形状が特徴のキリシマのレーザー主砲が元の形状へと変化した。

 

 

 

 

「後は奴の発射兆候を観察して弾道を計算を行うだけだ。キリシマ、私のコアとの同期を開始しろ。お前はそれを元に、お前とメアリースチュアートの火器管制を同時進行…敵を一気に叩く」

 

 

 

 

「確か反物質ビーム砲には、ビーム自体を保護する¨真空の膜¨の様な物が在るらしいな」

 

 

 

 

「ああ…正確には¨あらゆる物質を取り除いた真空地帯¨と言うべきだが…。反物質を使う性質上、アレは発射前に射線上の素粒子を除去しなければならない。その際の気流の変化と、今まで観測していたアレを発射するタイミングを重ね合わせて対応する」

 

 

 

「成る程な…。しかし良く考え付いたものだ。人間に気流の変化など肉眼で観察出来るわけでも無いだろうに」

 

 

 

「いや、恐らくは反物質と言う部分のみに着眼して思い付いたんだろうが……頃合いの様だ。行くぞキリシマ」

 

 

 

「了解。千早群像にやられた時はお前に付き合って貰ったんだ。今度は私が付き合うよ…ハルナ!」

 

 

 

「ああ…頼む」

 

 

 

 

(「頼む」…か。そんなこと言う奴じゃ無かったのにな)

 

 

 

キリシマは思わず口許に笑みを浮かべてしまう。

 

 

ハルナは姉妹艦の中でも取り分け感情起伏に乏し艦であった。

 

 

人間の¨言葉集め¨が趣味と言う個性はあったものの、それはどこか機械的であり、人形が無理矢理人間の真似事をしている様にしか見えなかったからだ。

 

 

 

彼女を変えたのは間違いなく蒔絵だろう。

 

 

 

そしてそれは、霧がメンタルモデルを得た本来の目的なのだろうとキリシマは考える。

 

 

 

【人間の思考を経て戦術を得とくする】

 

 

 

建て前としてはそうなのだろうが、実際問題それを真に得るためには、敵であり観察対象でもある人間との¨直接的な交流¨が必要不可欠になってくるだろう。

 

 

しかしそうなれば、感情の移入によって本来の命令が疎外されるリスクが生まれてくるのだ。

 

 

 

総旗艦たるヤマトがこの様にお粗末な案を提示するとは考えにくい。

 

 

だとするなら、彼女達がメンタルモデルを得た理由は…

 

 

 

 

(総旗艦はただ、今まで駆逐の対象でしかなかった人間と¨交流¨して欲しかっただけだったりしてな…いや)

 

 

 

 

キリシマはコアに浮かんでくる思考を排除する。

 

 

現段階での主目標は別にあるのだ。

 

 

彼女は、ハルナからリアルタイムで送られてくる情報を元に自らの砲身とメアリースチュアートの兵装の矛先をヨトゥンヘイムへと向ける。

 

 

 

チ…チ…

 

 

 

そしてタカオからの準備完了の報も同時に受け取った彼女は、その時を狙って意識を集中させていった。

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

ヂ…

 

 

 

「来た!もえか!」

 

 

 

 

タカオの叫びは、全ての要因が整った事を意味していた。

 

 

 

もえかは、空かさず彼女に対して発射の合図を飛ばす。

 

 

 

ボォン!ボォン!

 

 

 

3隻の艦からほぼ同時に砲弾が発射される。

 

 

 

しかし、通常砲弾のみで超兵器に致命的な損傷を与えるのは不可能に近い事は今までの経験からは明らかであり、ゆえに彼女が何故通常弾を使用する選択をしたのかはウィルキアの面々でなくとも不可解に思うだろう。

 

 

 

だがもえかは、何も¨砲弾で¨超兵器を損傷させようと等とは思っていなかった。

 

 

 

 

それらが向かう先に有るのは、発射寸前の反物質ビーム砲。

 

 

 

 

そして激しい光を放つそれから、破滅的な威力を誇るビームが伸びて砲弾と接触した時、事態は動いた。

 

 

 

ゴォォオオオン!

 

 

 

炸裂した砲弾の爆風が真空地帯を破り、更に発射口から放たれたばかりのビームが砲弾と触れた事により対消滅反応が超兵器のすぐ側で発生したのだ。

 

 

 

超兵器の周辺はビーム発射に伴う断続的な対消滅反応によって凄まじい熱に覆われ、海水があっという間に蒸発して行く。

 

 

 

「やったのか?」

 

 

 

ヴェルナーは思わず呟いた。

 

 

しかし…

 

 

 

「ちょ、超兵器反応いまだ消失せず!ヨトゥンヘイムは健在です!」

 

 

 

「くっ…!」

 

 

 

一同が悔しさを滲ませるなか、水蒸気が晴れて超兵器が姿を現す。

 

 

夜の闇に、高熱で紅に染まった化け物が姿を見せた。

 

 

 

「ひっ!」

 

 

 

「アレだけの攻撃を受けてまだ立ちはだかるのか…化け物め!」

 

 

 

 

確かにシチリア島を介していた為、ヨトゥンヘイムとの直接的な戦闘は他の超兵器よりも短い。

 

 

しかし、撃ち込まれた兵器はどれも高威力を誇り、尚且つ反物質ビーム砲を複数暴発させたにも関わらず、相手は轟沈するどころか未だに黒煙を上げつつ鎮座している。

 

 

 

だが…

 

 

 

ボォオン!

 

 

 

 

ヨトゥンヘイムの甲板の一部が艦内部から爆発したのだ。

 

 

 

超兵器周辺は燃焼によって酸素を奪い尽くされていた。更に、高温により熱せられた超兵器内部では至る所で不完全燃焼が発生する。

 

 

それらが、艦が動いたことで攻撃の際に出来た複数の穴から取り込まれた酸素と急激に反応し、一酸化炭素に結合して二酸化炭素を発生させる過程で生まれた熱が爆発的に拡散してヨトゥンヘイムの内部を引っ掻き回していたのである。

 

 

 

 

「防御重力場で爆風の一部を外部へと逃がしいますが、我々の攻撃は利いております。砲は恐らく使用不能、残るは光学兵器のみ。艦長、攻めるなら今です!」

 

 

 

「一斉射撃!奴に隙を与えるな!」

 

 

 

3隻は一斉に攻撃を再開、ハルナは超音波振動魚雷を放って相手の動きを封じ様と試みる。

 

 

 

魚雷は複雑な軌道で迎撃を回避しヨトゥンヘイムの懐で炸裂、至る所に穿たれた穴から炎を吹き出しつつ強力な怪力線を四方に撒き散らしていた巨大な船体が気泡によって傾いた。

 

 

 

しかし相手は、奇跡的に難を逃れた残りの反物質ビーム砲を自損覚悟で自身の周囲に容赦無く叩き込み、猛烈な爆圧によって気泡が消滅させたヨトゥンヘイムは状態を呆気なく復帰させてしまった。

 

 

彼の艦は理解しているのだ。

 

 

足を奪われれば容赦無く超重力砲が放たれることを…。

 

 

 

「あ゛ぁあ!」

 

 

「あぐっ…!」

 

 

 

敵の攻撃による恐ろしい爆風が辺りを荒らし回り、各艦からは悲鳴が響き渡った。

 

 

 

(何て執念なんだ…私達の世界ですら、あのような状態で超兵器は戦闘などしていなかったと言うのに!)

 

 

 

 

どの様に強力な兵器であっても、内部で器機を操作する人間が恐怖により投降または死に絶えてしまえばそれはただの鉄屑でしかない。

 

 

故に彼等の世界に於いては、一隻の超兵器にこれ程長期間戦闘する事はまれであった。

 

 

 

しかし相手が無人で動いている以上、戦闘の終了は必然的に超兵器の徹底的な破壊を以てしか成し得ないのである。

 

 

 

(補給の時間を短縮したツケか…弾薬も残り少ない。果たして奴を完全に破壊出来るのか?)

 

 

 

ヴェルナー額には汗が滲み、心には焦りと苛立ちが募って行く。

 

 

その時だった。

 

 

 

『俺達を…』

 

 

 

「!!?」

 

 

 

『忘れんじゃ…ねぇえ!』

 

 

 

ボォン!

 

 

 

ヨトゥンヘイムに砲弾が直撃して爆煙が立ち上った。

 

 

彼の視線の先には、撤退していった筈の弁天が此方に向かって来るのが目に入る。

 

 

 

 

「宗谷艦長!」

 

 

 

『最後の光子弾頭だ!ブチ込んで奴を止める!』

 

 

 

「しかし…!」

 

 

 

そんなことを大っぴらに発言してしまえば内通者に…

 

 

そこまで言いかけて彼は言葉を飲み込む。

 

 

 

(あの方はそんな迂闊な事はしない…だとすれば)

 

 

 

ヨトゥンヘイムに弁天の光子弾頭の発射が筒抜けになっていると仮定するなら、当然反物質ビーム砲で対処してくるだろ。

 

 

であるなら…

 

 

 

(先程と同様にビームを船体付近で対消滅させる方法を使えと言うことか!)

 

 

 

真冬の意図を感じたヴェルナーがハルナへと通信を繋ごうとした時、彼等より先にタカオから通信が入ってきた。

 

 

 

 

『ヴェルナー艦長。そちらの兵器の遠隔操作をハルナではなく此方で請け負います。メアリースチュアートは、牽制してください!』

 

 

 

 

「では大戦艦ハルナは…」

 

 

 

『超重力砲を使います!』

 

 

「!」

 

 

 

ヴェルナーは沸き上がる焦りを何とか封じ込める。

 

 

ここで仕損じれば戦闘が泥沼化し、犠牲が発生しかねないからだ。

 

 

 

 

バシュ!バシュ!

 

 

 

弁天から光子弾頭が放たれる。

 

 

 

 

これから始まる事態の行く末で、明日を迎える者が決まるのだ。

 

 

 

この場にいる誰もが、それを掴む為に極限の緊張を胸に抱くのだった。

 

 




お付き合い頂き有り難うございます。


次回は、欧州解放前哨戦編の完結と、物語の折り返しになる新編への突入となります。



次回まで今しばらくお待ち下さい。




























とらふり!  1/144ちょうへいきふりいと



荒覇吐
「お疲れ様。」



駿河
「手厚いお出迎え…誠に恐悦至極!また不精な姉上がいつもお世話になっております事…私駿河!心より感謝申しあげ奉りまするぅ~!」



荒覇吐
「あ、そ、そうなの?わざわざ丁寧にありがとう…それにしてもあなたは播磨と違って随分和風なのね。」




駿河
「恐れながら…我が姉は【超大鑑巨砲主義】に執り憑かれる余り、肝心の和の心を失念してしまっている様で御座いましてな…。一対一の砲撃戦も美学なれど、策を労し、時に守って引く事もまた兵法であることを忘れては成らぬとあれ程申し上げたと言うのに…なんと嘆かわしい!あぁ嘆かわしい~!」



荒覇吐
「で、でもあいつちゃんと艦隊旗艦やってたわよ?色々立ち回って敵を翻弄してたみたいだし。」



駿河
「………。」



荒覇吐
「あ、あのう…駿河?」



駿河
「えぃやぁあ!本来であるならばあなた様が艦隊旗艦を御受ける所、寛大なる御心によって姉上にお譲り戴きたる事実は明白!その恩情にこの駿河、なんと言葉に表したら良いか、ああ…良いかぁあ~!」




荒覇吐
(やりづらい…これならまだ播磨の方がマシね…。それにしても駿河の播磨に対する評価低くない?スペックを見ると前世界の約5倍…一隻で国家の1/3は相手出来るって思ってたんだけど…まぁこれも姉妹愛って奴なのかもね…。私の妹も元気してるかしら…。)
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