トライアングル・フリート   作:アンギュラ

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お疲れ様です。

今回も最後までお付き合い下されば幸いです。



それではどうぞ


心の闇は嗤う

   + + +

 

硫黄島への道すがら、明乃達は、スキズブラズニルを見学している。

 

 

案内は、シュルツの変わりに彼の副官であるクラウス・ヴェルナーが担当する事となった。

 

 

「ここはスキズブラズニルの大型ドックエリアで、様々な艦を格納しています」

 

 

「うわぁ~凄い‼」

 

 

はれかぜの面々は、様々な形状艦が一同に介した空間に驚愕した。

 

 

「あの甲板が平らな艦はなんですか?横須賀に来た超兵器もあのような艦が左右に有りましたが」

 

明乃の質問に対しヴェルナーは航空機の発艦機能があるであろう艦艇に視線を移した。

 

 

「あれは【航空母艦】通常¨空母¨と呼ばれています。そしてこの空母の名は【メアリースチュアートⅠ世】空を飛ぶ兵器、即ち¨航空機¨を発進させる滑走路を備えた艦です。あなた方の世界ではあまり馴染みの無い艦かもしれませんが、そういう意味ではそちらの航空戦艦【ペガサス】もそうでしょう。戦艦と空母のハイブリッド艦で、攻守共にバランスが取れた艦です」

 

 

「ではあの船が2つ横にくっついたような艦はなんですか?」

 

 

「あれは、【双胴戦艦】です。名は¨出雲¨。大和型戦艦2隻を元に建造しました。甲板の面積が広く多数の兵装を搭載でき、尚且つ転覆のリスクが少ないという利点がありますが、旋回性能はあまり良く無いのが欠点ですね…。」

 

 

「凄い…。ここまで技術力に違いがあるなんて…」

 

「そうかもしれませんね。しかし¨あちら¨の技術に比べたら…」

 

 

ヴェルナーは、視線をドックの一番端にある一隻の潜水艦に目を向けた。

 

 

 

蒼き鋼の潜水艦【伊號401】

 

 

 

近くで機関員と思われる作業服の女性が作業をしており、白衣を纏った大人の女性の姿をした大戦艦ヒュウガと銀色の髪を持つ少女の姿を持つ401のメンタルモデル¨イオナ¨も共に作業をしていた。

 

 

 

 

「イオナちゃぁーんちょっとお腹を開いて見せて~!」

 

 

「ん~。」

 

 

イオナが着ていたセーラー服を捲り上げてお腹を出す。

その直後…。

 

 

ガギン…グオォォン!

 

 

 

「!!!?」

 

 

 

その直後の光景に一同は、驚愕した。

 

 

無理もない、なんと潜水艦が¨展開¨したのだから。

 

 

展開した潜水艦内部から、円形状のものがクルクルと回転しながら押し出されてくる。

 

 

 

【超重力砲】

 

 

 

蒼き鋼が所有する最終兵器である。

 

 

「あちゃ~これは完全にいっちゃってるわ…」

 

 

超重力砲の様子を確認した機関員の女性が天を仰いでいる。

どうやら横須賀での発射の際に破損したらしい。

 

対するヒュウガは、何故か身体をクネらせ、息を荒げながらイオナへと抱き付いていた。

 

 

 

「お任せくださいお姉さま!この超重力砲は元々¨私の身体の一部¨です。すぐに直せますし、破損箇所の修繕や欠損した箇所は、いおりちゃんと相談しながらナノマテリアルをやりくりして必ずお姉さまを万全の状態にして差し上げますわ!」

 

 

 

「うん、私はこれからシステムチェックに入る。後はヒュウガといおりに任せる」

 

 

 

「いやぁぁん!お姉さまに任されてしまいましたわ~!」

 

 

「相変わらずねアンタは…ん?」

 

イオナを抱き締めて悶絶するヒュウガを呆れるような目で見ていた¨いおり¨と呼ばれていた女性は、明乃達の存在に気付いて駆け寄ってくる。

 

 

「あっ!ブルーマーメイドのメンバーさんですよね?こんにちは!私は¨四月一日いおり¨。この艦の機関長やってます。宜しくね!」

 

 

「あっ、はい!はれかぜ艦長の岬明乃です。この度はよろしくお願いしますいおりさん!しかし凄いですね。一体どうなってるんですか?」

 

 

「う~ん。実は私にもまだ解らない事は多いの。ただ、船体を構成している¨ナノマテリアル¨はとても貴重品だから人類側の部品を、代用できる箇所は人類の部品に置換してナノマテリアルを節約してるんだぁ。あと機関の¨重力子エンジン¨はイオナと協力しながら、人間の言語に翻訳して貰って何とか扱えているけど、エンジンの仕組み自体はまだブラックボックスって感じ」

 

「でも、それをここまでこなせるなんてやっぱり凄いですよ!」

 

 

「えへへ…そうかなぁ」

 

 

「なぁなぁ、麻侖にも今度その重力子エンジンって奴を見せちぁくれねぇか?この機会だから是非見てみてぇんだ!」

 

 

「うん、いいよ!いつでも遊びに来て!一人だけブリッジから離れてるから、なかなか喋る人がいなくってさぁ~」

 

 

明乃達は安堵した。いおりはサバサバした性格で、とても話し安そうな人物だと思ったからだ。

 

麻侖に於いては、既に未知のエンジンの事で頭が一杯になっている。

 

 

 

 

「お~い、いおり!頼まれた部品持ってきたぜぇ!」

 

 

彼女達が声の方向に視線を向けると、401から日焼けした肌とドレッドヘアが特徴的な男が何やら部品の入った箱を手に此方に歩いてくる。

 

いおりは、彼に笑顔で手を振ると、明乃達に彼を紹介した。

 

 

「おっ!サンキュー杏平!。あっ紹介するわ。こいつは砲雷長の橿原杏平。砲雷撃に関してはピカイチだけどそれ以外はてんでダメなバカなんだ」

 

 

「おいおい…。バカってこたぁねぇだろ」

 

 

 

彼女は、不機嫌そうに抗議をする彼をハイハイとあしらっている。

 

彼女の対応に半ば呆れつつも、杏平は明乃達へと向き直り、装着していた色付きのゴーグルを外して視線を向けてきた。

 

 

「それよりアンタらは確か…」

 

 

「は、はい。はれかぜ艦長の岬明乃です!」

 

 

「へぇ、あんたが…。俺は橿原杏平。401の砲雷長をやってる。まぁ~よろしくな」

 

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

 

 

気だるげな表情を見せる杏兵は徐に手を差し出してくる。明乃は慌てて手を出して二人は握手を交わす、いおりとは異なり、少し警戒の色も見え隠れする彼の反応に明乃の表情も少しぎこちない。

 

 

そんな二人の様子に痺れを切らした芽衣が口火を切った。

 

 

「あっ、あの!あなたが撃ったんですか?先日のそのぅ…潜水艦がバァ!って開いてドカァーン!撃つやつ!」

 

 

「うぃ!とても……興味……ある!!」

 

 

芽衣と志摩が杏兵に詰め寄る。

どうやら超重力砲の事が気になって仕方がないようだ。

 

 

杏平は彼女達の反応に、少し困ったように頭をかく。

 

 

「ん?あぁ…超重力砲の事か?生憎あれは俺じゃない。アレの制御はイオナみたいにメンタルモデルの連中にしか出来ねぇからな」

 

 

「そうなんだ…」

 

 

「そんなガッカリした顔しなさんなって。まぁ潜水艦だから攻撃は魚雷中心だけどよ。誘導パターンや起爆タイミングとか意外に深いぜ?それにヒュウガの話じゃ、硫黄島に着けば、重巡洋艦タカオの船体の復元の目処が立つらしいから、もしかすると、水上兵器も撃つ機会があるかもしれねぇし、そん時に解らねぇ事がありぁ答えられる範囲で答えっからよろしく頼むぜ」

 

 

「えっ!撃つの?撃っちゃうの?やったー!」

 

 

「うぃ!うぃ!」

 

¨撃つ¨言葉に飛び跳ねて喜びを露にする彼女達に杏平首を傾げつつ、口の橋を吊り上げた。

 

すると、

 

 

 

「もう!杏平ったら鼻の下伸ばさないの!」

 

「ぐ!?イタタ!やめっ…いおり!引っ張んなって!」

 

 

 

 

いおりは頬を膨らませて、杏平の耳を思い切り引っ張り、悲鳴を上げる彼を見た明乃が慌てて話題を切り出した。

 

 

 

「あっあの、他にはメンバーの方はいらっしゃるんですか?」

 

 

 

「ん?あとは副長の織部僧くん。マスクを被った人だから直ぐ解るよ。あとは八月一日静ちゃん。ソナー担当で眼鏡をかけた美人さんなんだよ。正規メンバーこのくらいかなぁ。刑部蒔絵ちゃんと、霧の艦隊のハルナとキリシマ、そこにいるヒュウガとなし崩し的着いてきたタカオは後の合流組。まぁ半分くらいは人間じゃないけど、賑やかで楽しいよ」

 

 

「まぁ、それは同じソナーとしてお話してみたいですわね」

 

「うむ、私も副長としての話を伺ってみたいものだ」

 

 

「通信についての技術は何か有りますか?」

 

 

「¨量子通信¨ってのがあるかな。ヒュウガがイオナの修理を終えたら。人類用の小型通信機を開発量産してくれるらしいから、その時ヒュウガに聞いてみて」

 

 

「量子通信?なんか凄そう……」

 

 

いおりは杏平の耳を引っ張りつつ、クルーの紹介をする。

 

 

彼女達は異世界の面々の未知の技術に興味津々だった。

 

 

 

そこへ険しい表情のヴェルナーが進み出る。

 

 

 

「やはり、あなた方は我々の理解の外に位置しているようだ…。シュルツ艦長からの提案なのですが、硫黄島でブルーマーメイドの方々への艦の説明や、演習が一通り終わりましたら、互いの連携のために、親睦や情報交換の場を設けたいとお考えです。また改めて千早艦長に通達しますが、そちらからも千早艦長に話をして頂くと幸いなのですが、可能ですか?」

 

 

「解りました伝えておきます!」

 

 

いおりは笑顔で返事を返すと、整備のため杏平を強引に引っ張って401へ戻って行き、ヴェルナーは、次なる航空機格納庫へと彼女達を案内した。

 

 

 

 

 

「こちらが航空機です。近くで見るのは初めてですよね?」

 

 

「え、ええ…」

 

明乃達は、表情を曇らせた。航空機を見るとどうしてもあの時の事を思い出してしまうのだ。

 

芽衣に至っては、志摩の後に隠れるようにして、震えており、それを見たヴェルナーは少し焦った様子を見せる。

 

 

 

 

「申し訳ありません。怖がらせるつもりはなかったのですが…無理もありません。航空機とのファーストコンタクトがアレでは…。しかし今後の戦略上どうしても必要なものです。実は硫黄島での演習の際に、どういうものなのか体験して頂こうと思っています」

 

 

「えっ?これ乗れるんですか?」

 

 

 

芽衣は恐る恐る航空機を見据える。

 

 

「ええ。あなた方の世界では有人の飛翔体は存在しないのでしたね。新たな戦術を編み出す上でも、あなた方には是非一度体感して頂きたい」

 

 

「解りました。検討しておきます」

 

「よろしくお願いします」

 

明乃の返事にヴェルナーはすこし安心したように頭を下げた。

 

 

 

それと同時にスキズブラズニルが速度を落とし艦が揺れるのを一同は感じた。 

 

 

 

 

「硫黄島に到着したようです。もう夕暮れですし、今日は自艦の部屋で休息を取ってください。演習は明日の朝0500時に開始とします」

 

 

「はい!あの、今日はありがとうございました」

 

「いえこちらこそ。明日からよろしくお願いします」

 

お辞儀をして去って行くヴェルナー敬礼を返し、明乃は一同へと向き直る。

 

 

 

「戻ろっか」

 

 

一行ははれかぜに戻り、自室で荷物の整理を済ませ、床に着く事となった…。

 

 

 

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

 

その夜

 

明乃は眠る事ができず、ベッドを抜け出し、スキズブラズニルの屋外にいた。

 

不安な気持ちになった時は、潮風に当たりながら海を見ると少し気持ちが落ち着いく。

 

少し歩くと、そこには一人の少年がいた。

 

 

(千早艦長?どうしてここに…)

 

群像は、一人で海を見ている。その表情は今まで明乃が見たことがないとても穏やかなものであった。

 

 

「岬艦長?」

 

「あっ、その…。ごめんなさい!。覗くつもりはなかったのですが……」

 

「いえ…構いません。それよりどうかされたんですか?自室で休んでいるものかと」

 

 

「あの…えっと…何か眠れなくて…。え、えへへ」

 

 

「やっぱりまだ、不安ですか?」

 

 

「うっ…少しは…」

 

明乃は図星を疲れて狼狽えてしまう。

そんな彼女に群像は優しい笑顔を向けた。

 

 

 

「実は俺もなんです」

 

「え?」

 

「意外でしたか?」

 

「あっ、えーと…はい」

 

 

明乃の反応に群像は少し困ったように笑う。

 

 

「初めてなんです。こうしてゆっくりと外洋の海を見るのは」

 

 

「初めて?」

 

 

「ええ、俺の世界では、霧の艦隊の影響で人類は外洋に出られない。港も、外洋との間に防壁がありました。海に出れば、いつ襲撃されてもおかしくないのでいつも潜航してましたしね…。俺にとって海はとても狭いものなのですよ。ゆっくりと海を見ることが出来る。これは俺の理想なんです」

 

 

「理想…ですか?」

 

 

「そうです。霧と和解して戦争を終わらせる事が出来れば、誰しもがこの風景を見ることが出来る」

 

 

「霧を¨打ち倒す¨ではなく?」

 

 

「そうです。今や霧はメンタルモデルを持った知的生命体です。対話が可能であれば講和を結び、停戦を実現出来る可能性がある。戦争をするよりも犠牲者を少なくすることが出来ると考えています」

 

 

「!」

 

 

明乃は目を見開いた。

 

頭には、出航前日にシュルツが言っていた言葉がよぎる。

 

 

《もっと、私が上手く考えていれば、犠牲は少なかったのではないかと考えない日はありません…》

 

 

(シュルツ艦長も千早艦長も、犠牲をどれだけ少なくするか、そもそもどう犠牲を出さないかを考えてる。それに比べて私は、犠牲が出るのを怖がってばかりで、犠牲が出なくなる方法なんて考えてもいなかった…)

 

明乃の心は前を向き始める

仲間を死なせない方法を、家族を守る方法を考える。この事が何より重要な課題だった。

 

 

 

「温暖な気候とは言え夜は冷えます。中に戻りましょうか」

 

「ええ、そうですね!」

 

明乃と群像は、二人で屋内に戻ることにした。

 

その途中に、二人はもう一人の艦長と鉢合わせをする。

 

 

「おや?お二人ともこんな時間にどうされました?」

 

「シュルツ艦長…。あの、ちょっと海が見たくて…」

 

明乃は無断で歩き回っていたのを咎められるのかと、後ろめたそうに答える。

しかしシュルツは、特に咎める事もなかった。

 

「そうでしたか。明日は早いですし。休息をとられた方が良いですよ。それでは、私はこれで…」

 

 

「あの!シュルツ艦長はどちらに行かれるのですか?」

 

明乃は、何やら急いでいる様子のシュルツの事が気になった。

 

 

 

 

 

「あぁ、ブラウン博士から、超兵器に関する事で呼び出されたんですよ。恐らく重要な何かを掴んだのでしょう」

 

 

 

 

群像は急に険しい顔になる。明乃も急に張り詰めた空気が気になり。シュルツに申し出た。

 

 

「あの、もしよければ、同席しても宜しいですか?」

 

「構いませんよ。いずれ報告して、情報を共有しようと思っていましたから。千早艦長はどうされますか?」

 

 

「俺も同席させて頂きます」

 

 

「解りました。では参りましょう」

 

 

 

二人はシュルツ後に続いて歩き出す。

 

 

  + + +

 

 

スキズブラズニル

 

ブリーフィングルーム

 

3人は中に入る。

 

部屋には、博士の他に複数の人物がいた。

 

鏑木美波・大戦艦ヒュウガ・大戦艦ハルナそして刑部蒔絵だった。

 

 

「ご苦労様です。ブラウン博士。何か成果があったのですか?」

 

 

シュルツの言葉に、沈痛な面持ちで博士が口を開く。

 

 

「はい…実は超兵器に関して驚愕の事実が判明したのです」

 

 

「驚愕の事実とは?」

 

 

「実は、横須賀に現れた超兵器は¨無人¨であった可能性が出てきたのです」

 

 

「何ですって!!?」

 

 

明乃とシュルツは衝撃を受ける。群像だけは、険しい表情のまま耳を傾けていた。

 

 

「無人とはつまり、誰かが何らかの方法で遠隔操作していたと言うことですか?」

 

 

「いえ、文字通り無人です。つまり、超兵器は¨自らの意思¨で攻撃してきたと言うことになりますね」

 

 

「そんな、バカな…」

 

 

頭を抱えるシュルツに、金髪をツインテールにして、ブカブカの黒いコートを羽織った姿の大戦艦ハルナのメンタルモデルが答える。

 

 

「ほぼ間違いないだろう。敵艦には、生態反応が全く感じられなかった。それに、遠隔操作を行う為の電波の類いも検知されていない」

 

 

「だが、どうやってあの状況で?」

 

 

「我々霧のスキャニング能力はお前達人類の物とは比べ物にならない。大戦艦級ともなれば尚更だ。それにあの場にはヒュウガもいた。大戦艦級が二隻いて同様の結果に至っているのだから間違いないだろう。信用できなければ、横須賀での救助活動の時を思い出してみれば解る。私達はあの時、各種センサーを用いて、瓦礫の何処に生存者がいるかを正確に検知し救助している。でなければ、今頃あそこにいた人間はとっくに機能を停止させていた筈だ」

 

 

「………」

 

シュルツはハルナの言葉に半信半疑の顔で絶句する。そこに今まで、黙っていた群像が口を開いた。

 

 

「という事は、あの超兵器は霧。つまりお前達と同類と考えた方が良いと言う事か?」

 

 

群像の問いにヒュウガが口を開く。

 

 

「似て非なるモノって感じね…。確かに無人で自分の意思で攻撃を行う。ここまでは霧と一緒。それは否定できないわ」

 

 

「では、異なる部分とは?」

 

 

「そうねぇ。まず一点目は材質かしら。超兵器の構成物質の中に、ナノマテリアルは一切使われていなかったわ。要するに一般的な船舶と同様の部品が使われていると言う事。武装に於いても、タナトニウム反応が検出されてないし、通常の弾頭兵器を使用しているわね。二点めは私達はアドミラリティ・コードによって対地攻撃は禁じられている。アイツは優先的に地上を攻撃していたように見えた。私達はあくまで兵器だから命令に無いことは出来ないし。極めつけは、コア」

 

「コア?」

 

「そう。ブラウン博士に超兵器の心臓部、通称¨超兵器機関¨の写真を見せて貰ったわ。これよ」

 

ヒュウガが群像に超兵器機関の写真を渡す。

 

そこには、巨大で何とも形容し難いものが写っていた。

 

 

「これが、機関?」

 

 

「ね?、全く違うでしょ?だって私達のコアは…」

 

そう言うと、ヒュウガは手を自分の胸付近に当てる。

すると、ヒュウガの中から、手のひらの上に乗るくらいのサイズの球体が出現した。

 

 

「こーんなに小さいしね」

 

群像は写真とヒュウガのコアを見て納得する。

 

それを見た博士は、さらに続けた。

 

 

「かつてクーデターの首謀者であるヴァイセンベルガーが行った世界への宣戦布告の際、彼はこう言っていました。我々は世界を統治する¨力を手に入れた¨と。私は、超兵器が帝国によって製作されたのではなく、異世界から移動してきた彼等を、偶然ヴァイセンベルガーが手に入れたのではないかと考えたんです。根拠としては、あの巨体を誰にも知られずに造るなど不可能に近いですからね。超兵器達が異世界から来たのだと考えると全ての辻褄が合います」

 

 

「超兵器が異世界からの来訪者とは…。まるでファンタジー小説の話のようだ」

 

 

「でも現に私達は時空を移動し、異世界にいる。これが何よりの証明では有りませんか?」

 

「確かにそうですね…。新たな懸案事項として頭に入れておいた方が良さそうです」

 

 

「さらに此方をご覧ください」

 

 

博士はシュルツに端末を渡した。

 

 

「これは…」

 

「ええ、ブルーマーメイドから提供された。各国を襲撃したという超兵器です。いくつか気になる点が出てきませんか?」

 

 

「高出力の超兵器が少ないように思われますが…」

 

「そうです。特に光学兵器や波動・重力兵器を多用する超兵器や、気象すら変えてしまう超兵器等の姿が極端に少ない。また欧州に現れた超巨大レーザー戦艦も、攻撃は艦砲やミサイルが中心だったそうです」

 

 

「では、ムスペルヘイムの場合はどう考えます?あれは、普通にレーザーを撃って来ましたが?」

 

 

「ムスペルヘイムには重力砲が装備されています。しかし、横須賀では使用されていません。それに艦載機に関しても、低出力のプロペラ機でしたし。撤退も呆気なかった」

 

 

「確かに…」

 

 

「それに起因しているのかは解りませんが。我々がこの世界に着いた日、世界で同時多発的に攻撃を行った後に超兵器は目立った行動を起こしていません。これは私の推測なのですが…超兵器は今、何らかの理由で調整、又は補給中の為に動きが鈍くなっているのではないかと推測します。それも高出力の超兵器ほど調整に時間を要するのではないかと」

 

「成る程…それでは、超兵器を叩くなら今がチャンスだと?」

 

「それがそうとも言えません…」

 

 

 

今後の戦いに一筋の光が見えてきたシュルツにブラウン博士は釘を刺し、新たな画像をシュルツに提示する。

 

それを見たシュルツは青ざめてしまった。

 

 

「なんてことだ…」

 

 

「お気付きになりましたか。そうです、今回超兵器は¨艦隊を組んで¨行動しています。我々の世界では見られなかった行動です」

 

 

「確かに…。私達の世界では、帝国の通常艦隊が大量に存在し、その旗艦として超兵器が一隻いると言う構図が一般的でしたね」

 

 

「ええ、まぁ例外もありますが、せいぜい随伴する超兵器は高速巡洋艦か潜航型位でしたから。このように、旗艦クラスが纏まって艦隊を組むなどあり得なかったことです」

 

「厄介だな……」

 

シュルツは険しい表情を隠せなかった。

 

明乃は知らない単語が混じっている事もあり、まだ本当の意味で二人の会話の深刻性を理解できていなかった。

 

だが次のハルナの問いに対する回答で顔が青ざめてしまう。

 

 

「しかし、横須賀の超兵器が本調子ではないとして、実際はどのようなものなんだ?」

 

「正直に言えば別物でしょう。実弾を防御する重力場。通称¨防御重力場¨の出力もお世辞にも強いと言うものではありません。それに先程も言いましたが、ムスペルヘイムは重力砲を使用しなかった。もし、使用されていたら、私達は愚か横須賀の街そのものが、地図から消滅していた可能性すらありましたから」

 

 

「そんな!」

 

 

明乃は悲鳴にも似た叫び声を上げる。

 

 

「この間の襲撃でも対処出来なかったのに、さらに強力な超兵器が大勢やって来るなんて、そんなことになったら。私達はどうすれば…」

 

 

混乱する明乃にブラウン博士は近寄って、手を握った。

 

「どうか落ち着いてください岬艦長。こう考えてみてはどうでしょうか。一隻ずつバラバラに行動されて都市を同時多発的に攻撃されるよりは、一ヶ所に纏まって行動してくれた方が、此方としては対処しやすい。違いますか?」

 

 

「確かに…そうです。ごめんなさい、取り乱してしまって……」

 

 

「良いのですよ。私達だって、完全不安を払拭出来ている訳では無いのですから」

 

ブラウン博士は優しい笑顔で明乃の手を擦ってくれた。

それを見たシュルツは、群像に視線を送る。

 

群像もその視線からシュルツの意思を汲み取ったように頷く。

それを確認するとシュルツは切り出した。

 

「まぁ、これで大まかな方針が決まりそうです。話も大体片付きましたし、明日も早い。今日はここで解散としましょう。群像艦長。岬艦長を送って頂けますか?」

 

 

「了解しました。それと蒔絵。君も一緒に戻ろう。もう何時間も休んでないだろう?」

 

 

「ううん、私は余裕だよ!」

 

 

蒔絵と呼ばれた少女は、まだまだやる気ではあったが…。

 

「蒔絵…。無理は禁物だ。それに薬も飲んでないのだろう?」

 

「あっすっかり忘れてた!。ごめんね…ハルハル…」

 

 

 

 

刑部蒔絵は、デザインチャイルドと呼ばれる人工的に作られた人類だった。

 

蒔絵の産みの親である刑部藤十郎博士は霧に対抗しうる兵器を開発するため、人類を凌駕する知能をもった生物を産み出す研究をしていた。そして生まれたのが蒔絵だ。

 

蒔絵は刑部博士の期待に答え、霧を打ち破る兵器、通称¨振動弾頭兵器¨を開発した張本人でもある。

しかし、その人知を越えた知能と引き換えに、蒔絵の体はとても脆いものであった。

 

定期的に体の調子を整える役割を持つ酵素等をサプリメントから摂取しなければならず、怠れば体調を崩してしまうのだ。

 

 

ハルナは謝る蒔絵の頭を優しく撫る。

 

 

「いいんだ。だから今日は、戻って休んでくれ」

 

 

「うん!分かった。でもハルハルは一緒に来ないの?」

 

 

「私も、皆と少し話したら戻るよ。なに、蒔絵が食事を終える頃には戻るさ」

 

 

「分かった!食事が終わったら、一緒にお風呂に入ろうね!」

 

「ああ」

 

そして、蒔絵は群像達と部屋を後にする。

 

 

それを確認して、シュルツが口を開いた。

 

 

「ふぅ……。やはり、世界観の違いから必然的に彼女の精神的な負担は我々の比ではないようですね」

 

 

「そうですね。私も先程はああ言いましたが、超兵器の艦隊は打ち破る事ができれば戦況は一気に我々に傾きます。しかし一度負ければ……」

 

 

「超兵器に対抗する力を持ち合わせていないこの世界は滅びる……ですか?」

 

 

「その通りです。まぁそうさせない為に私達がいるわけですが」

 

 

「そうですね、ところで博士、私をここに呼んだのは、超兵器についての報告と我々の新しい兵器についてとの事でしたが?」

 

 

「ええ、それに関しては、そこにいる鏑木女史とハルナ・ヒュウガに聞いて頂ければと」

 

ブラウン博士が視線を送る。

 

代表してヒュウガが頷いた。

 

 

「では、始めるわね。私達が今回開発を進めている兵器は、電子撹乱ミサイルよ」

 

 

「電子撹乱ミサイル?」

 

 

 

「そう、対象となる超兵器の動力か攻撃を麻痺させることが出来るの」

 

 

「どういう仕組みなんです?」

 

 

「それは私から説明しよう」

 

 

美波が前に進み出た。

 

 

「私は6年前からあるウィルスの研究をしている。そのウィルスは有機生命体に取りつく事によって増殖し、異常な電流や電磁波を発生させる事が分かっている。ブラウン博士の話では超兵器機関は粉々になっても稼働し続けまるで生き物のようであったと聞いた。それなら、このウィルスも超兵器機関に対して効果がある可能性は高いと推察したんだ。ウィルスに感染した超兵器機関は只でさえ強力なエネルギーを制御しきれず暴走、自壊する」

 

 

「しかし、暴走状態の超兵器はかなり危険です。かつて私達は、超兵器を暴走させてしまったことがあります。暴走した彼らの攻撃はそれまでの比ではなかった」

 

 

「対策としては。この兵器は低出力の超兵器にのみ使用しない事を徹底するしかない。これは私が開発した電子撹乱ミサイルαの場合だ」

 

 

「αと言うことは、βがあると?」

 

 

「次は私が説明する番ね」

 

 

ヒュウガは片眼鏡にカチッと直して話し始めた。

 

 

「電子撹乱ミサイルβは霧のジャミングシステムを応用しているわ。着弾と同時に強力なジャミング波で敵の照準機器に一時的に麻痺させて砲撃精度を落とす。欠点としては、ジャミング波が強すぎて近くにいる味方の照準装置や通信にも異常をきたしてしまうわ。使うときは、よっぽど距離が離れているときね。もし至近距離で使う際は、そのあとの攻撃はアナログで目標に照準を合わせるしかないわね。つまり動力に作用する方がα、攻撃に作用する方がβと言ったところかしら」

 

 

「諸刃の剣と言ったところですね」

 

 

「そうね、使い時は限定されるし、何より超兵器機関周辺の装甲はかなり分厚いみたいだから。その突破法についても議論の余地有りって感じかしら」

 

 

「解りました。状況が状況ですし。何も無いよりは、希望が持てそうです。引き続きお願いします」

 

 

「分かったわ。また何か分かったら報告するわね」

 

 

シュルツはブリーフィングルームを後にした。

 

 

  + + +

 

 

明乃・群像・蒔絵は、はれかぜの前に戻ってきている。

 

「着きましたね。岬艦長、今日はゆっくり休んでください」

 

 

 

「はい。今日は色々ありがとうございます千早艦長」

 

 

 

「いいえ、俺は何も…」

 

 

 

「そんなことないです!。千早艦長やシュルツ艦長は、私なんかより断然艦長らしいです。私、ホントいつもダメダメですし」

 

 

「そんなこと有りません。俺達の世界では、皆が必死で、とても他人を思いやる余裕のある人はいなかった。俺からすれば、あなたの様な人はとても眩しく見えてしまうのですよ」

 

 

「そんな〃〃〃〃」

 

「だから、これからどんなことがあっても、どんなに辛くても、その優しい心を消して失わないでください」

 

 

「千早艦長…」

 

 

「では戻ります。お休みなさい」

 

 

「は、はい!お休みなさい。蒔絵ちゃんもおやすみ」

 

 

「うん!おねえちゃんもおやすみなさい!!」

 

 

 

明乃は、群像と蒔絵を見送る。

 

 

(優しい心を失わないで…か。うん!きっと私でも出来ることがある。明日から頑張らないと!)

 

 

明乃は決意を新たに自室へと戻っていった。

 

   + + +

 

 

スキズブラズニル屋外

 

シュルツはブリーフィングルームからの帰りに海を見ている。

 

 

(ふぅ、最近色々あって落ち着いて海を見る機会なんて無かったな……)

 

 

シュルツもまた、心の整理をつけるときは、海を見る習慣があった。

そこへ一人の人物が声をかけてくる。

 

 

「シュルツ艦長!」

 

 

「ん?ナギ少尉か。何だ?」

 

 

ナギは、ウィルキア艦隊の通信員であり、副長不在の際は副長代理を務める、若冠23歳にして、とても優秀な女性であった。

 

 

 

「ブラウン博士達からの報告はどうだったのかと…」

 

 

「我々にとって、あまり芳しいものではなかったな…」

 

 

「そうでしたか……。あっ、あの艦長。コーヒーを持ってきたんです。如何…ですか?」

 

 

「ん?ああ、頂くよ」

 

 

ナギ少尉はポットに入れてきたコーヒーをシュルツに注いで手渡す。

 

一口飲むと、温かくそしてほろ苦いコーヒーが、疲れた身体に滲みてくる。シュルツは息をついてからナギに優しい視線を向けた。

 

 

 

「ありがとうナギ少尉。美味しいよ」

 

 

「ほ、ホントですか?嬉しいです!」

 

 

シュルツの言葉に少し顔を赤くし、まるで太陽のような笑顔で喜ぶナギに、シュルツの顔もこれまでの険しさが少し和らぐ。

 

しかし、彼は表情を直ぐ様元に戻した。

 

 

「明日からはまた、君達を危険な航海に連れて行ねばならない。本当に申し訳なく思っている…。だが、超兵器が時空を移動し、再び猛威を奮っている。それは同時に、我々の世界にも再び超兵器が現れる可能性を浮上させているのだ。だから今度こそ、我々は超兵器を完全にこの世から消滅させ、後世への憂いを絶たねばならない。ナギ少尉…私の勝手にいつも付き合って貰ってすまないが。今度も私に付いてきてくれるか?」

 

 

「はい!勿論です!どこまでも艦長に付いていきます!」

 

シュルツは、ナギの返事に頷きを返す。

最早彼の心に迷いはなかった。

 

 

「明日は早い、ナギ少尉も速く戻って休め」

 

 

「はい!、艦長もどうかご無理なさらずに休んでくださいね」

 

 

「ああ、そうさせてもらうよ。あっ…それと、コーヒー美味しかったよ。良かったらまた淹れてくれ」

 

 

「はい!いつでも!」

 

ナギは嬉しそうに笑って、戻っていった。

彼女を見送ったシュルツは再び海に目を向ける。

 

 

そこには、昼間とは売って変わって、美しい星空と穏やかな海が広がっていた。

 

 

   + + +

 

 

 

群像達がブリーフィングルームにいた頃

 

イオナはブリッジで一人システムチェックを行っている。

 

しかし…。

 

 

(ここは…。どこ?私は確か、システムチェックを行っていたはず……)

 

彼女は闇の中にいた。

上も下も、前後も左右もない闇の中に。

 

 

(概念伝達空間?いや少し違う…。じぁここは一体…)

 

 

イオナの言う概念伝達空間とは、メンタルモデル同士が物理的な距離を無視し、仮想空間で会話できるというシステムであり、庭園内のティータイムを楽しめる東屋をイメージしたデザインの仮想空間となっていた。

 

しかし目の前に広がるのは…闇。

 

 

通常、感覚器官を持たない彼女達メンタルモデルであるが、イオナはこの空間を、とても冷たく不快だと感じていた。

 

何より彼女を不快にさせているのは、ここに来てから感じている、夥しい視線。

 

とにかくそこら中から感じる視線が、イオナの身体に刺さり、イオナはメンタルモデルを持って初めて¨不安¨という概念を得た。

 

 

「誰?誰か居るの!?」

 

イオナは叫んだが、闇は答えない。

 

(群像……)

 

イオナは自分の艦長の事を強く思った。

その時!

 

 

《我等ハ、破壊ニヨッテ、世界ヲ平和ニ統治セントス…。ソレガ我ラ兵器ニ与エラレシ勅命……》

 

 

「!!!?」

 

 

突如頭の中に直接話し掛けて来るような、とても低い声が聞こえた。

 

イオナは状況が全く理解できない。不安とエラーで今にもどうにかなってしまいそうだった。

 

故に彼女は必死に叫ぶ。

 

自分の艦になれと言ってくれた、一人の少年の名を。

それは必死に、何度も、声が掠れても。

 

 

「群像! 群像! 群像! 私は一人に…。なりたくない! 群像!」

 

 

 

目を開くと、いつもの401のブリッジにいた。

 

 

(ここは、いつもの?)

 

「システム再チェック……異常なし…」

 

イオナはシステムの再チェックを行ったが、何も異常は見つからない。

 

 

(何か、何かとても嫌な事があった気がする…)

 

イオナはあの空間での出来事を覚えていなかった。すると

 

「!?」

 

 

イオナの頬を一筋の雫が流れる。

 

 

(これ…は、涙?それにこの気持ちは…何…?)

 

 

イオナの宝石の様に美しい瞳からは、次々と涙が溢れる。

 

 

そう、メンタルモデルイオナは泣いていた。そして、手を胸に当てて彼の名を呼んぶ。

 

 

「群像…」

 

なぜかは解らない。

 

でもイオナは今、堪らなく群像に側に居て欲しかった。

 




お付き合い頂きありがとうございました。

なんかミケちゃんがメランコリーな感じになってきてしまいました。

どうしよう………。

あとUAがいつの間にか1000突破してました。ありがたいと同時に完全にビビってます。

こんな感じですが今後も宜しくお願い申し上げます。


何はともあれ、次回は硫黄島訓練編です。今しばらくお待ち下さい。

ではまたいつか



















とらふり!




群像
「メンタルモデルは睡眠を摂らないんだろう?イオナはいつも何をして過ごしてるんだ?」




イオナ
「ヒミツ…なの(群像の寝顔を眺めることなんて言えない…)」


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