尚、今回の話と次の話は多重クロスと言う事でお願いします。
⊿ ⊿ ⊿
《いらっしゃいませ!》
とても大きな軍艦。
その艦橋の最上部でスポットライトを浴びている¨彼女¨は誰に向かうでもなくそう言った。
いや……
この場にいる¨誰しも¨と言うべきか。
暗めの灰色のガイド服を身に付け、鉛色の鈍く光る髪をきちんまとめ、同じく灰色をした瞳を持つ女性は辺りを見渡し、まるで演説でもするかのようにはっきりとした口調で続ける。
《申し遅れました…。私は当施設のオーナー兼案内役を務めております【アイン・クリッグシッフ】と申します》
軽く自己紹介をしたアインは手を腹部に当てて丁寧にお辞儀をする。
そしてその手を軽く胸元にポンと当てる。
《ここはあらゆる世界の狭間に位置する場所……そして数多の方達が唯一安らげる場所となっております。皆様はそれぞれの世界に於いて、多忙且つ苛烈な毎日を送っていらっしゃる事でしょう》
彼女は胸元に当てた手を前へと差し出し、満面の笑みでこう締め括った。
《今この時だけは全てを忘れ、¨心¨を存分に癒していって下さいませ。それでは皆様ごきげんよう……》
スポットライトが消えると同時に、彼女の姿もその宵闇に溶けて消えていった。
⊿ ⊿ ⊿
「おぉォ!」
「わぁぁぁ!」
周囲は凄まじい歓声に包まれていた。
明乃達はれかぜメンバーは思わず目を丸くして辺りを見渡す。
「か、艦長…すごい歓声ですね……」
「う、うん……でも皆楽しそうだね!」
「え、ええ……」
「どうしたの?シロちゃん浮かない顔してるね」
「そ、それはそうですよ!だってここドコなんですか?先日まであんな戦闘を繰り返して来たのに、なんで¨急にこんな訳の解らない所¨に来て……艦長は何も疑問に思わないんですか!?」
「………」
「答えてください!」
「皆楽しそうだね!」
「艦長ぉお!?現実逃避は止めてください!ここはどこなのか、そしてどうやって来たのか!それを明らかにしなければなりません!」
「そう、カッカッしなくても良いじゃん副長~ホラ♪アッチで買ってきた¨46㎝砲綿あめ¨食べなって!戦艦大和の砲身をイメージしてるんだって!」
「西崎さん!なにを満喫してるんだ!今はそれどころじゃ――」
「えぇ!?じゃあこっちの¨軍艦飴¨にする?リンゴ飴みたいに舐めると中から軍艦のおまけがでてくるんだぁ~☆」
「そう言う問題じゃ…って立石さんもカレーを貪るんじゃない!」
「うぃ…このカレー絶品♪」
真白は頭が痛くなってきていた。
当然であろう。
カーニバルの様に賑わう辺りには、見たことの無い格好をした人物や、何故か砲撃音すらも鳴り響いている。
そして彼女がぐるりと見渡して目に入ってくる光景は、まるで巨大で平坦な島の所々に煌々と賑わう幾つかのアトラクションらしき建物がそんざいし、回りには果ての見えない海に囲まれていた。
ヴィルヘルムスハーフェンでの戦いを終え、ブルーマーメイド連合の本部があるキールへ移動していた筈の彼女達は、¨気付くと¨ここに立っていたのだ。
混乱しない方がどうかしているのであろうが、真白の期待に反して皆は楽しんでいた。
しかし先程、彼女がおもむろに取り出した端末に表示された¨時間が一向に進む気配を見せず¨、また夜空に浮かぶ星の配置が全く異なっていた事から彼女は自分達が全く別の世界に迷い込んでしまったのではと懸念を抱かざるを得なかったわけだ。
勿論、異世界艦隊の¨全員¨で…。
「ハルハル!こっちに【軍艦すくい】があるよ!」
「ああ。楽しそうだな。キリシマもどうだ?」
「そんな事より腹ごしらえじゃないのか?こっちに【連装串焼き】があるぞ。ジュルリ……」
「艦長は何処か行かれるのですか?私はあちらにあるあらゆる異世界の海軍史が納められている図書館に行くのですが」
「僧は真面目だよなぁ~群像、それよりも【軍艦コロシアム】に行こうぜ!異世界のドンパチを見るのも経験だしな」
「えぇっ!?異世界の軍艦が装備してる機関の博物館の方が絶対良いじゃん!」
「私は【艦隊フィギュア】を見に行きたいです。フィギュアスケートみたいに艦隊が海の上で踊って、操縦技術や美しさを採点するらしいですよ?」
「………」
「群像?」
イオナが考え込む群像の顔を覗き込む。
彼はそんな彼女に笑顔を向けた。
「イオナ、君はどこに行きたい?」
「私は群像の艦……私の行き先は、あなたが決めて」
「そうだな……でも君は俺に航路を示してくれた。だから今回の行き先だけは、君に決めてほしいんだ」
「……」
「だめか?」
「……ここ」
彼女は手に持っていたパンフレットを指差す。
「【大和の丘】にある夜景の見える公園か。46cm砲を忠実に再現した砲身の上から眺める光景は正に絶景……ここに行きたいのか?」
「……うん」
灯りのせいなのか彼女の頬が心なしか赤く染まっているように見えた。
「ああ、じゃあ俺とイオナはそこへ――」
「「ちょっと待ったァァ!」」
タカオとヒュウガが血相を変えて二人へと駆け寄ってくる。
「か、かかっ、艦長と…ふふっ、二人きりだなんて…どう言うつもりよ401!」
「姉さまいけませんわ!姉さまの身体の細部をジックリと見聞するのは私の使命…いや、宿命ですわ!」
「ハルナ…やっちゃって……」
「了解した。全く…手間をかけさせてくれる」
いおりからの頼みにハルナが呆れたように二人の首根っこを掴んで引き摺った。
「うぐっ!?」
「イヤン♪」
「残念だが諦めろ。人間の言葉に¨野暮¨と言うものがある。タグの分類で類似するものから引用するなら¨空気を読め¨と言う事だ」
「嫌よ!私は艦長と…!」
「ウヒヒッ!イオナ姉さまぁん!」
「はぁ…やむを得んな……」
チ…チ……
「………」
「………」
暴れていた二人が急に人形の様に固まる。
「悪く思うな。蒔絵と一緒に出店を回らねばならんのでな。時間が惜しい……」
「ふむ…401からタカオとヒュウガのメンタルコアのキーコードを受け取っていたのか」
「ああ。一時間もすれば解けるだろうが、十分だろう」
「後でうるさいぞ?」
「構わん。その時は再凍結するまでだ。行くぞキリシマ」
「ああ。よぉし!肉を頬張るぞぉ~!」
「俺達も行こうぜ!」
「だねぇ~それじゃイオナも群像もゆっくり楽しんできてね!」
彼等を見送った二人は再び見詰め合う。
「行こうか」
「…うん」
二人はゆっくりと歩き出す。
一方のシュルツは、出店の立ち並ぶ通りを難しい表情を浮かべて歩いていた。
(ここは一体どこなのだ?博士の推測によれば、あらゆる時空の狭間に位置している異空間らしいとの事だったが……)
彼等が明乃達の世界へ移動する際には、謎の光と激しい振動が伴っていた。
しかし今回はなんの前触れもなく瞬きをしている間にここにいたのである。
(見たところ差し迫ったら危険は無いようだが念のため警戒は――)
「艦長~♪」
「ナギ少尉か。一体どうし……て!?」
振り返ったシュルツは思わず動揺していた。
金魚柄の浴衣を身に纏い、美少女のお面を頭に乗せ、手には46cm砲綿あめを持ったナギが立っていた。
「あっちで浴衣のレンタルをしてたんですよ。どうですか?」
ナギは浴衣の袖を持ってくるりと回って見せた後、期待の眼差しを彼に向けた。
(何を満喫してるんだ君は……)
シュルツは半目で彼女を見詰める。
しかし何も答えないのも申し訳ないと思い、彼は呆れたように言葉を繋いだ。
「あ、ああ。とても似合っている」
「え!ホントですか?え、エヘヘ〃〃」
頬を染める彼女から視線を外し、シュルツはその場を去ろうとする。
何故かは解らないが、早くこの場を離れるべきだと直感したのだ。
そして、その予想は見事に的中することとなる。
彼の行動を察知したナギは慌てて駆け寄り、シュルツの腕に自分の腕を絡めて上目使いで彼を直視した。
「ちょっ、ちょっと待ってください!あ、あのぅ艦長?もし、良ければですけど、このあと私と――」
「「「艦長!」」」
「チッ…!」
背後から駆け寄ってきた三人組を見たナギはとてつもなく不機嫌な表情で舌打ちをし、シュルツは猛烈な疲労感に襲われる。
彼の予想通り、三人組の正体は彼の副官を務めた者達であった。
「艦長、ここにおられましたか!早速ですが、艦長には私と異世界の軍艦が停泊している港を視察して頂きます!その後は異世界の軍艦に所属する艦長達と技術等の意見交換をして頂き、最後はやはり横須賀軍艦カレーを召し上がって頂いてから花――」
「却下」
「なな、なんとっ!?」
筑波は驚愕の表情を見せる。
だが意外なことに、最も驚愕していたのは言葉を発したシュルツ自身であったのだ。
(何故だ……とても建設的な意見だったと言うに、反射的に断ってしまった…いや、今思い返しても意見を覆そうとは思わない。私はどうしてしまったんだ?)
シュルツは自身の心を疑う。
だが、何故か今は仕事をする気にまるでなれなかったのである。
呆気にとられる筑波を隙を突いて今度は、グレーの浴衣を着込んだヴェルナーが前へと踏み出した。
「せ、せんぱ…いや、艦長!向こうにこの島を一望できる遊覧飛行場があるんです!飛行船も多数ありまして貸しきりも可能だそうです。も、もし良ければ二人で空からの花――」
「却下だ!」
「なっ……!」
有無を言わさない言動にヴェルナーは奈落の底に突き落とされた様な表情を浮かべる。
対するシュルツの脳裏には疑問が溢れ出していた。
(やはりだ。まるでやる気が起きない……)
「あ、あのぅ……」
「………」
シュルツは最早諦めていた。こうなれば話を聞かざるを得ない状況なのは明白であったからだ。
黒地に赤い紅花の刺繍が入った浴衣を着込んだ博士は顔を真っ赤に紅潮させ、潤んだ瞳でシュルツの前へと進み出る。
「か、艦長…この後向こうで艦砲を使用した打ち上げ花火が有るそうなんですが、いっ…一緒にご覧になって頂けませんかっ!」
「………」
「あ、あのぅ!」
彼は葛藤していた。
どういう理由かは解らないが、博士はいつも掛けている筈の眼鏡を外して髪を纏め上げており、普段は軍服と白衣で決して見ることの出来ない首もとの肩甲骨やうなじが、彼女の色香を存分に高めていたからだ。
そして……
「……っ!」
この表情である。
大人びた外見とは異なるまるで純粋な少女の様な潤んだ瞳と切なげ表情は、シュルツでなくとも世の男性を魅了し尽くしてしまうに違いない。
しかし――
「誠に遺憾ながら、丁重にお断りさせて頂きます」
「うっ……!」
勿論彼にとっては願ってもない提案だったのだ。
だが彼女は仮にも¨外国の軍に所属する士官¨であり、他国の軍に籍を置くシュルツが個人的に男女の関係になったと誤解される事は後に甚大な問題を引き起こしかねない。
故に、他国籍である彼女がウィルキアの士官であるシュルツに¨二人きり¨等と発言した時点で、既に答えは確定していたのであった。
愕然とする博士を余所に、ナギは再び彼に腕を絡め、勝ち誇ったような表情を浮かべた。
「ふふ~ん♪残念でしたね皆さん!艦長はこれから私と――」
「いや、ないぞ?」
「えぇ!!?」
ナギは思わず飛び退く。
(軍内部での後の士気を鑑みれば、異性といること自体が不要な誤解を招きかねん……)
彼は呆れた表情を浮かべた。
だが見事にフラれた四人は、¨悪い意味¨で彼の予想以上に骨のある人物であったらしい。
「なっ…博士!狡いですぅ!私も艦長と¨二人きりで¨艦砲花火を見ようと思ってたのにぃ!スイカも準備してたんですよ?」
「残念ですがナギ少尉。口に出したのは私が先です!ですからここは譲れません!」
「ここは年長者に譲るべきですぞ!」
「違う!先輩と一番付き合いの長い僕が、先輩と空の花火観賞をするんです!」
(はぁ…本来なら全員懲罰房行きと言いたいのだが……)
心の中で深いため息を付いたらシュルツは、¨奥の手¨を使う決意を固める。
「解りました。お引き受け致しましょう」
「「「「本当ですか艦ちょ――」」」」
「但し!私も身体が複数有るわけではありませんからね。条件を提示させて頂きます」
「条件…ですか?」
「はい。パンフレットによると、軍艦コロシアムにて、【艦隊バトルロイヤル】が行われているそうなのです」
「確か、自分が指揮官となって艦隊を率いて戦う競技ですよね?指揮技術の披露を目的するものですが、それが何か?」
「そうですね。皆さんにはこれに参加していただき、優勝または脱落順番が最も後になった方とのお約束を果たさせて頂く……如何ですか?」
「…………」
四人は顔を見合わせる。
正直賭けの要素が強いことだけは確かであるが……
「解りました。絶体副長達には負けませんよ!」
「腕が鳴りますわい!」
「艦長経験者である僕が必ず勝ってみせます!」
「皆さんの指揮パターンは分析済みです。適切に行動すれば私にも十分勝機は有ります!」
(掛かったな……)
シュルツは彼等の心中を熟知していた。
故に必ず提案に乗ってくると確信していたのである。
「待っていてください艦長!必ず御一緒にスイカを食べながら花火を見ましょう!」
「ふんっ!まだまだ若い者になど負けはせんわい!」
「あぁ…見える!勝利の果てにある美酒が……」
「あ、あのっ!約束…ですからね?〃〃」
不毛な言い争いに終始しながら去って行く四人を見ながら、残されたシュルツは再びため息を漏らす。
最早、ここが何処であるのかもどうでも良くなっていた。
「はぁ…大和の丘にある【艦橋バー】で呑むとするか……たまには仕事を離れて一人で過ごすのも大事だろう」
彼はゆっくりとした歩調で歩みだした。
⊿ ⊿ ⊿
ここは出店の立ち並ぶ通りだ。
日本の縁日で良く見かける者や、西洋風のお洒落な者まで様々である。
異世界艦隊の面々の一部はこの通りで食べ歩きをしていた。
「ほら珊瑚、口に¨ソノブイ饅頭¨のあんこがついてるよ!」
「ムガッ!?優衣……自分で拭けるから大丈夫!それより今度は¨砲弾たこ焼き¨を食べよう。口に頬張るのがやっとらしいよ」
「もう、私だって飴細工で軍艦を造ってるお店に行きたいのに……」
「まぁまぁ~とにかく食べないと色々見て回れないよ。私も異世界の軍艦技術館に言ってみたいしね」
「仕方ないわね…けど、次たべたら私の用事を先にしてよ?」
「解ってるさ。あっ、そう言えばはれかぜの皆はどうしているんだい?」
「自由に過ごしているみたいだけど、殆どの主計部はこの出店を中心に散策しているみたい。異世界の軍艦料理を調べたいんだって。鏑木さんだけは、軍医療に関する講演を見に行ったようだけど」
優衣がそこまで言い終えた時だった。
「あっ!藤田さんだ。お~い!」
「あれは……伊良子さん?杵崎さん達も…料理を調査がてら食べ歩きかしら?」
「うん、そうだよ!美味しい物が多くてついつい食べ過ぎちゃった…エヘヘ〃〃」
「¨鯛の軍艦盛り¨とか美味しかったね~!プリプリしてて、ほんのり甘みもあってとっても新鮮だったよ。あ~でも艦内の保存環境を考えるとやっぱり加熱しないと駄目かなぁ……」
「わたしは¨大鑑巨砲ビーフシチュー¨が絶品だったかな~でもどちらかと言うと、凄くおっきい牛肉のシチュー掛けみたいな感じだったけど、お肉がとっても柔らかくて美味しいの!」
「伊良子さんはやっぱり和食系?」
「そうだねぇ。今でもやっぱりカレー以外の洋食は苦手だけど、6年前からドイツの子達と連絡を取り合いながら練習してるよ~」
「そうなんだ、努力家だよね!」
「エヘヘ〃〃」
「お~いミカン!」
「あれ?ミーちゃん?それに……」
「〃〃〃」
「テアさん!浴衣に着替えたんだね!可愛い!」
ミーナとテアが、彼女達の下へとやって来る。
ミーナは黒地に赤の直線が入った旧ドイツ海軍の紋章に似せたデザインの浴衣を、テアが白地に鷲の紋様が入った浴衣を着ている。
テアは浴衣姿が恥ずかしいのか、頬を染めてミーナの後ろに隠れるように佇んでいる。
「欧州の他の娘達はどうしたの?」
「うむ!それぞれ興味があるアトラクションを見に行ったぞ!儂らはこれから食べ歩きをして――」
「ちょっと待ったぁああ!」
「ココちゃん!?」
後ろから息を切らせて走ってくる浴衣姿の幸子の姿が見えた。
「はぁ…はぁ……み、ミーちゃんはこれから私と軍艦の甲板で繰り広げられる仁義の無い演劇を見る予定なんですっ!」
「いや、ミーナは私と屋台の軍艦料理を食べ歩く予定だ!」
「演劇です!」
「食べ歩きだ!」
「ん?何を言っとるんじゃ二人とも。¨3人¨で食べ歩きをした後に演劇を見ると言わなかったか?」
(う、浮気者……)
二人は怪訝な表情を浮かべつつも、やがて顔を見合わせて笑顔になり、ミーナと共に人混みへと消えて行った。
その様子を微笑ましく見送った美甘は、優衣の方へと顔を向ける。
「なんかミーちゃん達の話を聞いたら何か食べたくなっちゃったね!」
「そうね、私達も何か屋台で食べましょうか」
「さっき見たんだけど、クラスターポップコーンなんてどうかな?一粒一粒味が違うんだって!」
「二人とも私の砲弾たこ焼も忘れないでくれよ?」
「解ったわよ!それじゃ行きましょうか!」
「「は~い!」」
ミカン達は、満面の笑みで行だした。
⊿ ⊿ ⊿
辺りには轟音が響き渡っていた。
「ヤッホ~♪また命中!」
「こっちも命中だよ~♪」
砲雷班のメンバーは、射的に興じていた。
もっとも、ここにある物が普通の射的な訳がない。
砲や機銃、そして魚雷を用いた本格的な射的なのだ。
数百メートルから数キロメートル離れた標的(賞品の巨大なレプリカ)に向かって攻撃して破壊する事に成功すれば賞品を頂けると言うシステムなのだ。
見事に数キロメートル先の可愛い巨大なイルカのオブジェをブチ抜いた光は、景品のイルカのぬいぐるみをゲットしてはしゃいでいる。
他のメンバーも、抱えきれない程の景品を手に笑顔であった。
そんな彼女達とは対照的に……
「艦長、どこに行ってしまったんだ……」
真白ともえかは、はぐれてしまった明乃を探していた。
そこへ……
「もう!折角艦長と二人きりになれるチャンスだったのにぃ!ハルナの奴……覚えてなさい!」
「ああ姉さま!どこにいらっしゃるの?ヒュウガは、堪えきれなくなりそうですわ!」
ハルナによって一時的に行動を凍結されていたタカオとヒュウガが歩いてきた。
「ヒュウガ!あんたのセンサーで二人を見つけられないの!?」
「無理ね。ここでは何故か私達のセンサーがまるで機能しないのよ。あんただって試してみたんでしょ?」
「うぅっ……そうだけど」
「ああ、姉さま……こんな事なら姉さまのコアにバックドアを仕掛けていれば良かったわ」
「あ、あのう……」
「ん?ああ、あなたはれかぜの……どうしたのかしら?」
「はい、私達の艦長を知りませんか?はぐれてしまって……」
「残念だけど力にはなれそうにないわね」
「そうですか……どうする?もう少し艦長探すか?……知名さん?どうしたんだ、難しい顔をして」
「ねぇ宗谷さん、ミケちゃん探すの止めない?」
「何!?こんな訳の解らない所で艦長を一人にする訳にはいかないだろう!」
「何故かは解らないけど危険は無いとおもうよ。皆の表情を見てれば解るもの。心から楽しそうにしてる」
「だが――!」
「もしかすると、ここは¨そう言う場所¨なのかもしれない。解るの、幼馴染みだし、何よりも艦長だから……」
「あっ……」
真白は明乃がはぐれたのではない事に気付いた。
勿論その理由も……
「無力だな……私達は」
「そうだね。でも今のミケちゃんには必要な時間なのかもしれない。超兵器が現れてからずーっと¨艦長¨だったから……」
二人は暫く俯くも直ぐに顔を上げた。
「こうしていても仕方がないな、知名さんたまには一緒に歩いて話さないか?聞きたい事が一杯あるんだ」
「うん、わたしも。ねぇタカオ、折角だから皆で一緒に出店を回ろう?」
「はぁ!?何で私がアンタ達と一緒にいなきゃなんないのよ!」
「ははぁーん!この場所に付いて何か気付いたみたいね。解った!あなた達と同行させてもらうわ。この世界についての考察も聞きたいしね♪」
「ちょっ、ヒュウガまで……あぁ!もう!解ったわよ!私も行くわ!でも言っておくけど、本当は艦長と一緒が良かったの!女子だけでこう言うとこ回るのが憧れてた訳じゃ……ないし〃〃」
「はいはいっ!それじゃ行こう!」
「そうだな!」
「フフッ……姉さま、何かお土産を持って行けば私にご褒美をくださるかしら♪楽しみだわぁ~ゾクゾク~♪」
「ホラ!タカオも行くよ!似合いそうな浴衣を見つけてあげる。気に入ったらアーカイブして千早艦長に見せてあげればきっと喜ぶよ」
「えっ!?本当に!?わ、解ったわ!連れていって!」
(((チョロいなぁ……)))
四人は、人で賑わう大通へと向かって行くのだった。