トライアングル・フリート   作:アンギュラ

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お待たせ致しました。


キール騒乱編の続きとなります。


それではどうぞ


多面性激情舞踏会

   + + +

 

 

嫌な予感がする……

 

 

真冬の長年の経験は最悪な形で現実のものとなってしまった。

 

 

はれかぜに接舷した真冬が艦と艦の間を飛び越えてたと同時に聞こえた絶望の悲鳴が全てを物語っていたからだ。

 

 

 

「クソッ――!」

 

 

 

彼女が歯噛みしつつ甲板の人垣を掻き分けた先には――

 

 

 

 

「嘘だろ……納沙がっ!」

 

 

 

幸子の遺体、そして特殊部隊とシュルツの姿に彼女は全てを察した。

 

 

 

「てめぇらっ!」

 

「艦長!ダメです!」

 

 

 

平賀の制止も聞かず、真冬は行った。

 

 

どんな理由があろうとも即射殺などある筈もなく、況して仲間を害されたのだから当然だろう。

 

 

 

だが、真冬の行動はその場に居合わせたはれかぜクルーやブルマー隊員のヘイトが一気にウィルキアへと向かせてしまう事を意味している事を特殊部隊は知っている。

 

 

故に

 

 

「構え!」

 

 

多数の銃口が、真冬へと向けられた。

 

 

 

「待て」

 

 

シュルツは即座にフリッツへと目配せをすると、彼は素早く前へと飛び出して真冬の背後へと沈み込むように回り、直ぐ様腕を捉えて固定し制圧してしまう。

 

 

 

「なっ!てめっ――!」

 

 

 

冷静さん欠いて居たことを差し引いても、武装した海賊を一人で十分相手に出来る真冬があまりにも簡単に制圧されたことに一同は驚愕した。

 

 

 

「あなた¨程度¨では仮に俺を無力化出来たとしても、艦橋制圧を想定して訓練重ねた我が艦長を抑えるのは無理ですよ」

 

 

 

「チクショウ……」

 

 

彼女が取り押さえられた事で、場は一応に抑えられた様にも見えたが――

 

 

 

 

「グ……ググッ……」

 

 

 

「岬……?」

 

 

瞳の色が紅く代わった明乃が放つ威圧感が、場の空気を極限まで張り詰めさせていた。

 

 

 

「銃を下ろせ」

 

 

「しかし……」

 

 

「ググッ…グゥ…」

 

 

「ひっ!」

 

 

「何をしている!命令だ、早く下ろせ!」

 

 

 

シュルツの罵声が響き渡るも、特殊部隊はなかなか銃を下ろすことが出来ない。

 

 

 

当然であろう、目の前に敵意を秘めた虎が現れて、丸腰になれと言われる方が理不尽なのだ。

 

 

 

もしそれに従ったなら、もし少しでも目を離したなら――

 

 

 

間違いなく¨狩られる¨

 

 

 

 

そんな極限の緊張感のなか

 

 

 

「下ろしなさい」

 

 

 

「!!?」

 

 

フンディンから聞こえた穏やかな声に、部隊の視線が向く。

 

 

 

「真霜ねえ……?」

 

 

福内と共にフンディンから現れた彼女の存在に真冬は目を丸くする。

 

真霜はゆっくりと部隊へと足を進め、1度ゆっくり目を閉じて息を吸い込み――

 

 

 

「もう一度言うわよ。下ろしなさい

 

 

 

「!!!」

 

 

 

明乃とは明らかに違う圧。

 

 

そう、これは言わば母からの叱責に近いものであった。

 

 

絶対にして逆らい難い存在からの圧に、部隊は叱られた子供の様に銃を下ろして行く。

 

 

 

「そう、良い子ね」

 

 

 

状況は一変する。

 

 

彼女の存在によって、一同のヘイトが沈んで行くのは明らかだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ一人を除いては――

 

 

 

「ガッ……ググッ……」

 

 

 

明乃の耳には何も届いてはいなかった。

 

 

そして――

 

 

「な、なに?寒い……」

 

 

寒気だけではない。

 

 

実際に息は白くなり、辺りが霧に包まれて行く、そして思考が鈍くなる感覚に一同は混乱した。

 

 

 

「艦ちょ、岬さん!ダメ!

 

 

「ココチャ……寂シイ……」

 

 

「ああっ……!」

 

 

真白は――いや、彼女だけではない。

 

 

はれかぜクルー達は一様に強烈な孤独感が襲ってくるのを感じた。

 

 

「何なの!?ヤダこれ!寒い……」

 

 

 

はれかぜクルーは一様に腕を組んで座り込み、襲い来る孤独と憎しみに涙を流している。

 

 

 

(限界か……)

 

 

 

シュルツは一刻の猶予も無いこと感じていた。

 

 

そして――

 

 

「艦長?何をなさって――」

 

 

 

シュルツは明乃の方へ一歩づつ歩き出し、それに呼応するように明乃も足を進めた。

 

 

 

「岬艦長……」

 

 

「ココチャ……カゾク……」

 

 

 

二人の距離はどんどん詰まって行き――

 

 

カチャ!

 

 

明乃はホルスターから拳銃を抜いてシュルツへと突き付ける。

 

 

 

「岬艦長……聞こえますか。岬艦長」

 

 

 

「シュルツ艦長!なにをっ!?」

 

 

 

淡々と事を進めてきたフリッツが初めて動揺を見せた。

 

 

シュルツは銃口前にしても尚、静かに語りかけながら明乃へと歩を進め――

 

 

トンッ!

 

 

そして遂に、銃口はシュルツの胸に押し当てられたのである。

 

 

 

「ドウシテ……ココチャン……サビシイ………」

 

 

 

「岬艦長、あなたは私を――」

 

 

 

シュルツは涙が滲む紅く濁った瞳を真っ直ぐ見つめた。

 

 

 

「¨殺したい¨ですか?」

 

 

 

その一瞬、はれかぜを揺らす波と潮風の音のみが響くこの空間に、彼等は二人にきりになったのだ。

 

 

 

「岬艦長、あなたにとって海とは何ですか?あなたにとって、仲間とは何ですか?あなたはその引き金を――」

 

 

 

「ガッ…アァ……あああっ!」

 

 

 

明乃の目に一瞬、光が灯るのをシュルツは感じた。

 

 

故に問うて試し、そして証明せねばならないのだ。

 

 

 

「引きますか?」

 

 

 

「あああっ!」

 

 

 

パァン!

 

 

静寂の中に響く銃声には、不思議な透明感と美しさがあった。

 

 

明乃は銃を持つ手を真上に挙げている。

 

 

 

「はぁ、はぁ……あっ!」

 

 

「岬艦長……」

 

 

 

シュルツは、銃を落とし崩れるように倒れて来る彼女の身体を抱き止める。

 

 

何故かは解らない。

 

 

 

だが、友人の命を奪う切っ掛けとなったシュルツの身体は暖いと明乃は感じたのだ。

 

 

まるで父に抱かれているかの様に――

 

 

 

 

「ひ、平賀さん!悪いけど岬さんを艦長室に連れていって頂戴!他の皆も、先ずは落ち着いて!」

 

 

 

 

二人のやり取りに硬直していた時間が動き出したかのように、真霜の声で一同がハッと我に帰る。

 

 

 

「岬さん!大丈夫!?」

 

 

「は、はい……」

 

 

 

平賀に抱えられ、明乃が艦内へ入って行くのと同時に、真霜は取り残されたはれかぜクルーへやブルマー隊員達へと向き直る。

 

 

 

 

理由はどうあれ、仲間を殺害された事による緊迫が解けた訳では無いからだ。

 

 

 

 

「説明を頂けますか?宗谷室長」

 

 

 

 

真白の表情やトーンは自分の姉に向けて行うものでは到底なかった。

 

 

無理もない

 

 

友人の殺害にブルーマーメイド本部や姉が関わっている事が明らかな状況で、信用しろと言われて従う方がどうかしているのだ。

 

しかし、真霜は表情1つ変えずに静かに言い放つ。

 

 

 

「では今から始めましょう。いいわね?」

 

 

 

 

 

   + + +

 

401のブリッジにて、群像達が事の顛末を観察していた。

 

 

『群像……』

 

 

「イオナか。ああ、モニタリングはしている。君は引続き待機してくれ。ハルナはどうだ?」

 

 

 

『見張り員は既に封じてある。¨細工¨の方も完了した。あとは――』

 

 

 

「¨時間¨だな。緊張が続いている。観測を続けてくれ。場合によっては潜伏中の静たちと協力して事態を鎮静化してくれ」

 

 

『了解した』

 

 

「タカオはどうだ?」

 

 

『全く……存在感消すとか、こんなの私のスタイルじゃないわよ』

 

 

「そう言うな。事態の制圧には失敗は許されないからな」

 

ブリッジには、いつになく緊迫した雰囲気が漂っていた。

 

 

スキズブラズニルにて作業を続けるヒュウガを除外しても、現在はいつもよりメンバー少ない。

 

イオナ ハルナ キリシマ そして静の姿が無かった。

 

 

 

「本当に上手くいくのか?」

 

 

「私も杏平に同意します。我々の姿が無いのは不自然だと取られかねません」

 

 

 

「僧の言う事も一理あるが、対人戦においても無敵なメンタルモデルが複数もいたのではかえって事態がややこしくなる。それに、そう悟らせない為の強襲だ。だから宜しく頼む」

 

 

 

 

『『了解』』

 

 

次に彼は、タブレット端末に写るいおりを呼び出す。

 

 

 

『はいハーイ?』

 

 

「いおり、そちらの様子はどうだ?」

 

 

『まぁこっちは落ち着いて来たって感じかな。機関も異常なーし』

 

 

 

「了解した。引続き頼む」

 

 

『ガッテンだよー!任せて!』

 

 

 

通信を終えた後も、ブリッジには張り詰めた空気が残留していた。

 

 

 

(ここからは賭けの要素が強くなる。仕込みが幸をそうすればいいが……)

 

 

 

彼は心で呟きながら、再びモニターへと視線を向ける。

 

 

 

 

 

 

   + + +

 

 

「ほら岬さん、しっかりして」

 

 

 

「ありがとうございます平賀さん……」

 

 

ふらつく足取りで漸く自室へと戻った明乃は、ゆっくりベッドへて腰を下ろし、隣に座った平賀に背中を擦ってもらう。

 

 

 

気持ちの整理など付く筈もない。

 

 

苦楽を共にした幸子が信頼していたシュルツ達によって殺害されたのだから。

 

 

 

「どうしてココちゃんが――私、異世界の皆さんのこと信用してたのに……」

 

 

 

「解らないけど、真冬艦長は日本を出発した時点で、何やら監視されているって言ってわ。確か笹井って人がそう言う役割を持った人だから気を付けろって」

 

 

「でも信じられないんです。あの時のシュルツ艦長はなにか……辛そうで」

 

 

 

「あの人も軍人だから命令には逆らえない。でもそれが現実なんだとしたら――」

 

 

 

「超兵器を相手に共に戦ったから解るんです。どんな時だって犠牲をなくす事を第一に考えてる。千早艦長だってそう。必ず計画を密にたてる人だから」

 

 

 

「短い期間に、関係を縮めて来たのね。でもね岬さん、私も共に戦ったから解るの。彼等の事を私達は何も理解していないんじゃないかって」

 

 

 

「え?」

 

 

そうねぇ……

 

 

平賀は言葉を噛み締めるように言葉を紡ぐ。

 

 

 

「超兵器に対する立ち回りは見事だったし、私達の事を気にかけてくれたのは確かよ。でも、どこか他人事で冷たい感じもしたわ。全ての連絡が緊密だとも思わなかった」

 

 

 

「そんな……」

 

 

 

「だって、艦隊旗艦を急に弁天に代わって欲しいと言ったり、大戦艦ハルナが地中海に急派する事も事前に連絡は無かった。それは戦闘ログにも残ってるわ。私は、彼等はやはり他人なんだって思い知らされた気がしたの」

 

 

 

 

彼女の言う事は、至極もっともな話だ。

 

 

 

地中海での戦いはアドリブを要して各人のスタンドプレーを連携させたチームプレーによって成り立っていたのだから、命をかける状況としては些かずさんだった様にも思える。

 

合流が遅かった真冬や平賀からすれば、彼等は所詮、自分以外の世界になど関わりたく無かったのだと解釈されても無理はない。

 

 

だが、ヴェルナーや筑波の指導を直接受けた明乃からしてみれば得心が行かないのも確かなのだ。

 

 

――あれ?

 

 

そこで彼女はふと疑問に思う。

 

 

 

(何かが抜けてる気がする。確かに現状は異世界の皆を手放しで信用する事は出来ない。でも問題はソコなのかな……うん、やっぱり違う!問題なのは――)

 

 

 

 

明乃は虚空を見つめたながら、心の疑問を吐き出す。

 

 

「それでもおかしいです、やっぱり何故ココちゃんであるのかが解らない」

 

 

 

「それは、彼女が過去にハッカーとして政治関連の情報を暴露する活動をして居たのを邪推されたからなのかもしれないわね。例えば異世界の兵器情報を流出させようとしていたとか」

 

 

 

「それは……………………え?」

 

 

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

「では今から始めましょう。いいわね?」

 

 

 

真霜はそう言い放つと、普段はマチコの縄張り言っても差し支えない見張り台に視線を向けた。

 

 

 

 

「え?あなたは――」

 

 

 

真白は目を丸くする。

 

 

 

「ハルナさん!!?どうしてあなたがっ――」

 

 

 

「来たよ……」

 

 

 

見張り台からマチコを抱えてフワリと着地したハルナは、彼女をゆっくりと下ろして真白と向かい合う。

 

 

 

「あなたもグルだったのか……」

 

 

「私は――」

 

 

「違う!」

 

 

「野間さん!!?」

 

 

一同の視線は、幸子の遺体を青ざめながら見つめるマチコへと移される。

 

 

 

 

「なんで……なんでだ!いつからだ!いつからこの計画を知っていたんだ!」

 

 

 

マチコの怯える瞳が、虚ろな表情のまま固まる幸子から、隣に立っている¨白衣の少女¨へと向けられた。

 

 

 

「美波さんっ!」

 

 

 

「「えぇっ!!?」」

 

 

 

一同の驚愕の悲鳴にも全く動じず、美波はマチコの目をギロリとした瞳で見詰め返した。

 

 

 

 

 

 

   + + +

 

 

「どうしたの岬さん?」

 

 

 

「………」

 

 

二人の間に沈黙が流れた。

 

 

 

「き、気分でも悪くなってしまったかしら?ごめんない。納沙さんが亡くなった後なのにこんな話をして――」

 

 

 

「違うんです」

 

 

 

「何が違うの?」

 

 

 

「あの――」

 

 

 

   + + +

 

 

 

「答えてくれ美波さん!いつからこの計画を知っていた!?それにコレはなんだ!」

 

 

 

「………」

 

 

 

「コレは、この死体はっ――」

 

 

 

普段はクールで感情を表情として出さないマチコであるが、この時ばかりは叫ばずにはいられなかった。

 

 

 

「¨納沙さんじゃない¨じゃないか!」

 

 

 

「な、なに!!?」

 

 

 

真白は事態に付いて行く事が困難になっていた。

 

 

 

最早、目の前の遺体が幸子でないとしたら一体なんなのだ等と思考すること自体が間違っているのかもしれない。

 

 

たが、少なくとも当初より冷えた頭には疑問が湧いていたのも事実だろう。

 

 

(―――)

 

 

真白は一連の流れを思い返す。

 

 

 

暗がりならともかく、サーチライトで照らされた甲板では、倒れているのが幸子だと見分ける事は簡単であったし、銃弾の貫通箇所から見て即死である事も明白であった。

 

 

であるにも関わらずだ、美波は駆け寄ろうとした明乃を普段は出さない大声を上げてまで静止させた上で、一同の面前で眼球や脈まで取って見せたのである。

 

 

更にだ

 

 

≪最悪だな≫

 

 

無論、¨医者¨である美波が発する¨最悪¨とは¨死¨と同義であるものの、彼女は幸子の死を¨明言¨した訳ではなかった。

 

 

(なんだこの状況は……いや考えろ!)

 

 

 

目を閉じた真白は、思考のエンジンを再稼働させて一連の全てを思い浮かべた。

 

 

・内通者が存在したと言う¨新事実¨

 

 

・それは幸子だった

 

 

・その幸子は、存在を危惧したウィルキアと蒼き鋼、そしてブルーマーメイド上層部の関与によって射殺

 

 

・美波が彼女の死を対外的に印象付ける行動を取っていた

 

 

・騒ぎを関知した月黄泉から乗り込んだブルマー部隊とはれかぜクルーが特殊部隊と対峙

 

 

・明乃の暴走と舞台からの退場

 

 

・幸子の遺体がニセ物だったのではとの疑惑

 

 

 

これ等の事実の中で、少なくとも美波から答えを聞く以外にない事を除くと、答えは一つしか思い浮かばなかった。

 

 

 

「まだ――状況は終わっていない?」

 

 

「………」

 

 

真白が青ざめた顔を美波に向けても、彼女は見開かれた目をマチコに向けたまま、ポケットに突っ込まれた手をゆっくりと引き抜く動作を見せた。

 

 

「――っ!」

 

 

真白やマチコを含め、事情知らない一同は一斉に身構えた。

 

 

 

「「………」」

 

 

無意識に堅く握られたシュルツと群像の拳には汗がジトリと滲む。

 

 

   + + +

 

 

 

「どうして、平賀さんが、ココちゃんが過去にハッカーだったと知ってるんですか?ココちゃんの過去はさっき通信で初めて聞きました。口調とタイミングからして、それがシュルツ艦長達に明らかになったのはつい最近の筈なのに平賀さんは――」

 

 

カチャ………

 

 

「平賀さ――」

 

 

「どうして気付いちゃうのかなぁ……」

 

 

 

明乃のこめかみには、銃が突き付けられていた。

 

 

 

 

   + + +

 

 

 

「美波さん止めるんだ!」

 

 

 

真白な叫びにも美波は動じずに手を抜き出す。

 

 

「美波さ―――!」

 

 

ピピピッ!

 

 

アラーム音のような音がする機器をシュルツへと突き出した美波は、マチコから視線を離し――

 

 

「検知した」

 

 

 

「「――!」」

 

 

彼女がそう発した瞬間、シュルツと群像の瞳が大きく開かれた。

 

 

 

「「釣れた!」」

 

 

 

状況は再び息を吹き返した様に動き出した。

 

 

 

「突入を開始しろ!物音を立てずに艦長室約20m手前にて待機、メンタルモデルからの報告を待て!絶対に危害を加えるな!」

 

 

「はっ!」

 

 

先程まで真冬を取り押さえていたフリッツを含め、特殊部隊達ははれかぜ艦内へと突入して行く。

 

 

 

「えっ、えっ!?なにっ!?どうなってんの!?」

 

 

 

完全に置いてけぼりを食らったはれかぜクルー達が慌てふためく中、真白は退場した明乃を代弁するが如くシュルツへと詰め寄る。

 

 

 

「今度こそ、ご説明頂けますね?シュルツ艦長」

 

 

 

「無論です。ただ大前提として、状況は逼迫しています。詳しい説明は事態の収束を持ってと言う事で宜しいですか?」

 

 

 

「解りました。ただ、納沙さんの件に関しては、いまご説明頂かなくてはなりません」

 

 

 

「……解りました。大戦艦ハルナ、お願いします」

 

 

「了解した」

 

 

 

チ…チ……

 

 

 

 

「え?えっ、ちょ、マジ!?えっ?」

 

 

 

何やら、真白の背後でクルー達の動揺の声が広がる。

 

 

 

「一体どうし……な、なに!!?」

 

 

 

真白を含めたクルー達は皆、仰け反る様に後ずさりをしてしまう。

 

 

 

 

 

   + + +

 

 

「平賀さ――」

 

 

「動かないで!」

 

 

「あ゛っ!ぇ゛えう゛っ!!」

 

 

 

幸子の死と自らの暴走、更には平賀の突然の襲撃によって消耗したのだろう。

 

腕の関節を決められ、口の中に銃口をねじり込まれるも、明乃はろくに抵抗すら出来ないでいた。

 

 

 

そんな彼女に、平賀は今まで見せたことの無い歪んだ笑顔を向ける。

 

 

 

「ごめんなさい。でも岬さんが私をこうさせたのよ」

 

 

平賀は、自身と明乃の手錠を彼女の後ろ手かけ、そして乱暴に彼女の身体を仰向けにして互いの顔を近付け―――

 

 

 

「んっ…えぅ……んぅ」

 

 

「!!!?」

 

 

 

平賀のヌメリを帯びた舌が明乃の頬をゆっくり這いずり回る。

 

 

 

 

「フフっ……私と¨同じ¨世界の味がする」

 

 

 

「お、同じ世界?」

 

 

「そう……同じ世界。あなたなら解るでしょ?」

 

 

「!」

 

 

 

そう、明乃だからこそ彼女の言葉の意味が解るのだ。

 

 

 

平賀は、自身と明乃が¨同じ世界¨から来たと主張していた。

それは同時に、両親を失ったあの時に平賀も同じ船に乗っていた事も意味しているが、彼女にはにわかに信じがたい話である事も確かだ。

 

ところが――

 

 

 

「知らなかった?そうよね。小さかったもんね。あんなに泣き叫んじゃって……両親を失ったばかりだから周りなんて気に出来ないもんね」

 

 

 

「!!!」

 

 

 

否応なしに、あの光景を思い出してしまう。

 

 

しかしそれよりも、今となっては明乃自身しか知り得ない場景を言い当てた平賀の言葉に驚愕を覚えた。

 

 

 

(平賀さんはあの場所で見ていた?もしかして私の乗っていたボート――ううん、多分ほかの救命ボートから見ていた?)

 

 

 

平賀の過去についての疑問は尽きない、だが凶暴性を隠さない歪んだ笑顔を向けてくる彼女の話を悠長に聞ける状況でない事も確かだった。

 

 

 

このままでは平賀は、間違いなく銃の引き金を引くと思ったからである。

 

 

 

「ングッ!ングッ!!」

 

 

 

「暴れないで貰える?うっかり撃っちゃうかも――チッ!」

 

 

 

何故かは解らない。

 

 

 

しかし平賀は急に辺りを見渡すと、急に怒りと憎悪を帯びた表情を浮かべたのだった。

 

 

 

   + + +

 

 

後ずさりをした彼女達の視線の先には――

 

 

 

「ひぃいいい!」

 

 

 

鈴にとってはいつもの反応だが、この時ばかりは皆が同じ反応となる。

 

 

 

無理もない。

 

 

 

死んだ筈の幸子の遺体が、まるでエビの様に反り返って¨立ち上がった¨のだから。

 

 

 

 

「うそ、でしょ?生きて――いや、でも」

 

 

 

 

幸子の額には、¨銃弾が貫通した穴¨が空いていた。

 

 

 

「アッ――ア゛ア゛ア゛――」

 

 

 

「「イヤァアアア!」」

 

 

 

不気味な呻き声を上げて不自然な動きを見せた幸子に、彼女達の心が遂に限界を迎えたのだ。

 

 

騒然とする現場を呆れた様子で見つめている真霜は、ハルナに懇願する。

 

 

 

「大戦艦ハルナ、¨やり過ぎ¨です」

 

 

 

「むっ……私は401より経験値が少ない。治療に関わっていたから¨人体を再現¨する事は可能だが、動作や発声に関しては未だに馴れん」

 

 

 

「ちょちょっ、ちょっと待って下さい!再現!!?じゃあコレは――」

 

 

 

「ああ、私のナノマテリアルで作った¨イミテーション¨だ」

 

 

 

「な、何!!?では本物の納沙さんはどこにいるんだ!?」

 

 

「うむ、キリシマが401に連れていった。今は機関室にて保護している。呼び出したい処だが、それは事態を収拾してからでも遅くはない。証拠が欲しいなら――」

 

 

 

 

チ…チ……

 

 

 

スプラッタ映画に出てきそうな不気味な存在が、銀色の砂となってハルナのコートへと吸い込まれて行く。

 

 

 

 

「も、もう、何がなんだか付いて行けない……」

 

 

 

 

その場にヘタリ込んだ真白を余所に、真霜は真剣な表情でシュルツを見つめる。

 

 

「本当に頼めるの?」

 

 

「信じてくれと言うしか今は申せません」

 

 

「解ったわ。あなた方を信じる。必ず成功させて」

 

 

 

 

 

 

   + + +

 

平賀はとにかく苛立っていた。

 

 

「ほんと、邪魔ばかりっ!」

 

 

 

ヴォン!

 

 

「う゛っ……」

 

 

「アグッ!う、そ……?」

 

 

 

二人以外はいないと思われていた部屋のすみから、突然イオナとタカオが現れて倒れてくる。

 

 

 

 

 

「クラインフィールドを使って光を曲げ、背景に隠れていたのね。それにっ――!」

 

 

 

平賀はなぜか明乃に突き付けていた銃を投げ捨て、太ももに忍ばせていたナイフを彼女の首に突き付け、もう一本のナイフを扉の方向へと投げつけた。

 

 

 

次の瞬間――

 

 

「え゛っ!?」

 

 

「静さんっ!あ゛っ!」

 

 

 

 

まるで¨知っていた¨かのように開かれた扉から突入してきた、特殊部隊仕様の出で立ちにポップなドクロマークが描かれたフルフェイスヘルメットを被った静の肩にナイフが突き刺さり、勢いで後ろに吹っ飛んだ身体がもえかに激突し、二人は折り重なる様に倒れ込む。

 

 

 

「モカちゃん!」

 

 

「へぇ~バレちゃってたんだ……どうやって知ったのかは解らないけど。今は二人だけの時間よ。邪魔しないでくれるかしら?」

 

 

「うっ……タカオ、イオナさん!はやくミケちゃんを!」

 

 

「コアの稼働率25%以下に低下……」

 

 

「だ、だめ!感情プログラムがエラーを……撒き散らして……コアが上手く作動しない……」

 

 

 

 

 

理由は解らないが、少なくともメンタルモデルの二人は無力化されてしまい、静においても肩に受けたナイフの激痛で身動きが取れなかった。

 

 

 

「もえかさん…わ、私のナイフを抜いてくだ、さい……」

 

 

「解りました!」

 

 

ズチュ――!

 

 

「ぐっ、あぁアア!」

 

 

耳をつんざく悲鳴に折れかける心に檄を飛ばしてもえかは立ち上がる。

 

 

 

 

明乃が――家族がまだいきているのだ。

 

 

(諦めない!)

 

 

 

もえかはイオナに向かって叫んだ。

 

 

 

「イオナさん¨時間¨は!?」

 

 

 

「さ、3分17秒……」

 

 

 

「!!」

 

 

 

その言葉を聞いた瞬間、平賀は初めて動揺した様に見えた。

 

無論、もえかがその隙を見逃す筈もない。

 

 

「了解!千早艦長ぉっ!」

 

 

群像は既に動いていた。

 

 

 

「聞こえたな?ハルナ、開始してくれ。あとは知名艦長に任せるしかない」

 

 

『了解した』

 

 

 

チ…チ…チ……

 

 

「このっ!みんなみんなわ、私の邪魔ばかり――な、に!?」

 

 

彼女が一体何を察知したのかは解らないが、先程までの余裕などは微塵も感じられない。

 

 

 

 

「――っ!」

 

 

 

もえかは行った。

 

 

 

平賀は明乃を突き飛ばすと、ナイフを片手にもえかへと向かう。

 

 

 

「見えてるわよ。知名さん」

 

 

「避けられな――」

 

 

 

「させ、ないっ!」

 

 

 

もえかの挙動を読み、組み付かれる前に腹部を狙った彼女の凶激をタカオがクラインフィールドで防いでいた。

 

 

その間、平賀が怯んだ拍子に、彼女は体勢を低くして一気に背後へと回り込んで腕を取る構えとなる。

 

 

 

「見えてるって言ったでしょう!」

 

 

「あ゛ぐぅ……」

 

 

平賀の肘鉄がもえかの顔面にまともに入り込み、彼女は後ろへと倒れ込んだ。

 

 

 

「もうお仕舞いに゛ぃ!?」

 

 

 

静も黙ってはいなかった。

 

 

平賀が防弾チョッキを警戒して、装甲のない肩を狙ったが、結果としては足を殺さなかった事が幸いしたようだ。

 

 

 

静の足をすくう蹴りを食らった平賀も、もえか同様に後ろに倒れ込んだ。

 

 

 

「許サナイ!!もう少しだったのに、もう少しだったのにぃ!!」

 

 

錯乱した平賀の凶刃が静に迫る。

 

 

 

「エラーにかかる演算リソースを15%カット。余剰リソースを脚力及び腕力に添加……」

 

 

 

「――っ!」

 

 

 

 

イオナは、敢えてコアのエラー除去を一瞬停止させ、残りの演算を四肢を動かす事に回し、静を目にも止まらぬ速さで救出した。

 

 

「ぬぁあ!」

 

「ちっ――!」

 

 

 

静を刺そうとしたナイフが無情に空を斬って床へと突き立てられ折れた隙に、もえかが平賀の身体を後ろから羽交い締めにする。

 

 

 

「知名艦長!大丈夫ですか!」

 

 

 

「フリッツ、さん!」

 

 

フリッツ達特殊部隊が突入してくる。

 

 

 

「フリッツさん!もうすぐです!まずミケちゃんを救出しっ――!」

 

 

「ユルサナイ……」

 

 

 

「グゥええっ――!?」

 

 

ドスッと言う鈍い音が響き、もえかの溝おちに平賀の肘が完全に入り、彼女は悶絶して床に転がった。

 

 

「ドイツモ コイツモ ミンナ許サナイ!」

 

 

 

「チッ!振り出しか!お前達、迂闊に動くなよ!」

 

「はっ!」

 

 

 

折れたナイフの残りを明乃の首へ突き付けた平賀に、場は膠着状態へと移行したかに見えが、彼女の表情には焦りと悔しさ、それにも増して憎しみが溢れていたのだった。

 

 

 

「平賀倫子1等監察官、貴女ならもう¨お分かり¨の筈です。武器を棄てて投降を……」

 

 

 

「うるさい!私はっ………あ゛え゛??」

 

 

 

平賀の様子が急変した。

 

 

 

「かっ…あ……がっ…はっ……かがぁあ!」

 

 

急に呼吸がままならなくなった彼女は自分の喉を抑えて絶望のうめきを上げながらのたうち回る。

 

 

 

「今だ!確保しろっ!」

 

 

「はっ!」

 

 

 

隊員達は一斉に平賀へと飛び掛かる。

 

 

 

「ギ……カッ……」

 

 

 

「ぐわっ!」

 

「クソッ!何処にそんな余力が!」

 

 

 

目は充血し、口から涎をボタボタと垂らしながらも、彼女は決死の抵抗を続ける。

 

 

たが、それも束の間の事であった。

 

 

 

 

「ひっ……あっ……」

 

 

酸素を失った脚から力が抜け、その場に倒れ込んだ平賀を隊員が捕縛し拘束し終えた瞬間に、もえかは通信機に向かって叫ぶ。

 

 

 

「千早艦長!対象を拘束しました!大戦艦ハルナへの命令を解除して下さい!このままじゃ平賀さんがっ!」

 

 

 

『了解しました。ハルナ!』

 

 

『命令の解除を確認した』

 

 

チ…チ……

 

 

「カハァ……ハァハァ……」

 

 

 

何かつかえでも取れたかの様に平賀の呼吸が再開され、そしてそのまま意識を失う。

 

 

 

「平賀さん!」

 

 

「大丈夫よ もえか。バイタルは安定してる」

 

 

 

「タカオ……」

 

 

彼女の気絶によって、エラーを除去したタカオはもえかを支える。

 

 

負傷した静においても、命に別状は無いようだった。

 

 

 

「ミケちゃん!」

 

 

 

もえかは明乃へと駆け寄り手錠を外す。

 

 

 

「ミケちゃん?」

 

 

 

「………」

 

 

彼女は震えていた。

 

 

友人の死に続いてこの状況なのだ。肉体的にも精神的にも限界を迎えてしまうのは無理もない。

 

 

だが、もえかは伝えねばならなかった。でなければ明乃は本当に壊れてしまうと感じたからだ。

 

 

 

「ミケちゃん良く聞いて!会わせたい人がいるのもう少しだけ頑張って!」

 

 

「会わせたい……人?」

 

 

 

「うん、どうしても会わなくちゃいけないの」

 

 

「解った……」

 

 

もえかは明乃を支えて、艦長室を後にする。

 

 

 

 

 

  + + +

 

 

はれかぜ甲板には、不安げなクルー達がいた。

 

 

「副長、艦長大丈夫かなぁ……」

 

 

「今は信じるしかないが……か、艦長!」

 

 

真白の叫びに一同の視線が明乃へと向けられた。

 

 

「みんなゴメン……心配かけちゃったね」

 

 

 

「そんな事ねぇってんでぃ!それよりも……なっ」

 

 

「ああ、艦長も揃ったし、そろそろお願いできますか?」

 

 

「了解した。すぐ連絡する」

 

 

 

ハルナは401に通信し、ハッチが開かれる。

 

 

 

「え?うそ……」

 

 

事情を知らない明乃だけでなく、半信半疑だった一同も目を見開いた。

 

 

 

 

「あ、あの……」

 

 

 

「!!!」

 

 

 

そこに現れたのは、目に涙を沢山浮かべた幸子だった。

 

 

 

「ココ、ちゃ……ココちゃん?」

 

 

「は、はい……」

 

 

「本当にココちゃん?」

 

 

「はい、ホンモノ……です」

 

 

 

(ふぅ、面倒臭いな)

 

 

チ…チ…

 

 

 

ハルナは、はれかぜと401の間にクラインフィールドの桟橋を構築する。

 

 

 

「ココちゃん、ココちゃん!」

 

 

 

「はい!」

 

 

 

皆は駆け出していた。

 

一斉に401に飛び移り、皆で幸子を囲むように抱き締めた。

 

 

 

「ココちゃああん!」

 

 

「心配させやがって!」

 

 

「今日は一杯ごちそう作るからね!」

 

 

「はい、はい!……はいっ!」

 

 

 

先程までの凍るような寒さなど忘れて、彼女達は抱き合った。

 

 

 

体温も涙も、みな暖かい

 

 

 

それを確かめるように、互いに生きていると確認し合う様に彼女達は抱き合った。

 

 

目を細めて、その様子を見ていた真霜は、表情を元に戻してシュルツへと向けた。

 

 

「ふぅ……一段落ね。さて、これから説明が大変よ?」

 

 

「無論、承知しております。スキズブラズニルの会議室を開けておきましたので、そこで説明を。はれかぜは――」

 

 

 

そこまで言うと、シュルツは幸子を囲う彼女達へと視線を向けた。

 

 

 

「もう少しだけあのままにしてあげて頂戴。あの娘達の絆はふかいから……」

 

 

 

「ご心配なく、フンディンの要員にはれかぜを操縦させます。皆さんは食堂で休んで頂いてかまいません」

 

 

「準備が良いのね。食えない人だわ」

 

 

「貴女ほどではありませんよ」

 

 

「……」

「……」

 

 

 

二人の沈黙の間も、幸子を囲む歓喜の声は鳴り止まなかった。

 

 

 

「ねぇ……どうして¨あんな事¨をしたの?岬さんがああなる事は折り込み済みだった。だからあの場面は大戦艦ハルナが岬さんを抑える手はずだったのになぜ?」

 

 

 

「あの方は――いや、岬艦長や彼女を支える皆さんの絆。それは決して破壊されるものでは無いと信じていたからです。そして、それは証明された」

 

 

 

「………」

 

 

「あの方は最期の瞬間まで¨家族¨を救う事を諦めないでしょう。私とは違う……強い方だ」

 

 

 

「あなたもよ」

 

 

「私も?」

 

 

「きっと岬さんにとってあなたも、そして千早艦長達も、もうずっと前から家族なのよ。だから撃てなかった」

 

 

 

「買い被りですよ。そう、買い被りです……」

 

 

 

シュルツは笑顔と涙で覆われた彼女達に背を向けて、ゆっくりフンディンへと帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 




お付き合い頂きありがとうございました。


と言う訳で、前話のタイトル通り、全てはお芝居だったと言う事ですが、ここに来て
真犯人とココちゃんの生存が確定致しました。

なお、ニセ幸子のナノマテリアルイミテーションは、漫画版原作アルペジオで、401を奪取しに来た陸軍に対して群像が実際に行った偽装工作で、そこからの輸入となります。

一方で、説明しきれていない謎があったのも事実でしょう。

次回は今回の一件の説明と言う形にさせて頂きます。



追伸として、活動報告に私の超兵器に取り入れた構成等を書いてみましたのでご参考までに……



それではまたいつか





















とらふり!



真冬
「根性ぉぉぉお!」



福内
「あ~あ、荒ぶっちゃったわ。絶対自分より倫子が目立ったからよコレ……」



平賀
「そんな事言われても、コレは随分前に決まっていた事なのよ!?」


福内
「まぁね……でも、納得出来ないんじゃない?弁天は活躍できないし、艦が代わってこれからって時にコレでしょ?同級生だからこそ悔しいのよ」



平賀
「そんなものかしら……」



真冬
「平賀、テメェ……」


平賀
「あっ、この顔はまずいわね……」


福内
「悪いけど、わたし知らないわよ?」



真冬
「平賀!テメェ、何で俺より公式設定が多いんだ!目立つのは、トップは俺だ!それをお前……根性ぉぉぉ!」



平賀
「ヒイィイ!真冬さん!ちょっ、やめっ!違う違う!ソコ違うからぁあ!」


福内
(始まったわね……じゃあ私はこの辺で――)



真冬
「待て福内、どこへ行くつもりだ?」


福内
「……トイレです」


真冬
「嘘を付くなぁああ!」



福内
「ヒィイ!どうして私までっ!」


真冬
「同僚の責任は連帯責任だぁああ!」



福内
「もうやだ……いっつも倫子のやらかした不始末のとばっちりを、あっっああっ!や、やめぇえええ!」


真冬
「学生時代みたいに一晩中可愛がってやる!覚悟しろぉぉぉ!」



平賀
「諦めなよ典子。こうなったら収まるまで止まらな――キィイイイッ!」



福内
「埋め合わせは絶対して貰うからね倫こぉぉぉん!」


真冬
「ふはははっ!根性ぉぉぉ!」


ヴェルナー
「騒がしいですね。一体何を――なっ〃〃〃何をしてるんですか真冬艦長!」



真冬
「見たな……」


ヴェルナー
「見てません。私はこれにて失礼――」


真冬
「お前も道連れだぁあああ!」


ヴェルナー
「せ、センパぁああい!」

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