一章を含めた、かなり前からの伏線を説明する回となります。
後半は、はれかぜ流血芝居を別視点から見た回想に成ります。
それではどうぞ
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スキズブラズニルのブリーフィングルームにて、はれかぜクルー全員が参加と言う異例の会議が開かれた。
これは、仮にも幸子を利用して事態を解決した事で、反発が起きるのを防ぐ狙いがあった訳だが、幸子の生存が確認された今、彼女達の心配は別な所にあった。
「会議を始める前に、納沙さんの過去に犯した罪についてだけど……」
ビクッと身体を震わせた幸子の身体を両側に座ったミーナと真白が優しく擦る。
「彼女の罪は現状¨問う事は出来ない¨わね。尤も、許される事ではないのだけれど」
「!」
目を丸くする一同に真霜は咳払いをして収める。
「余りに複雑で一言では説明出来ないのだけれど、彼女の一件には超兵器だけでなく、ブルーマーメイドが本来関与できない国家が絡んでいる事が大きいわ」
「国家……ですか?」
「そう、正直に言えば日本を達つ前段階で納沙さんの過去は解っていたわ。國枝宗一郎¨元総理大臣¨によってもたらされた情報によってね」
「!」
政治には余り関心のない明乃達ではあるが、学生時代に受けた社会の授業では必ずと言って良いほど名前が出てくる人物であった。
理由は、通信技術が発展しなかった現代において当時はばを利かせていた米国のロケットを応用した衛星が軌道に上手く乗らず不調だった事に目を着けた日本は、政府としては異例のイチ企業に介入出来る法案を可決して公金を適切に分配した事で技術開発が一気に進み、地震などの地殻変動や津波が多発する日本が独自に発展させた¨海上地震津波関知観測機器¨通称【TUNAMIブイ】を応用して、長距離通信ブイを洋上に多数浮かべる事で、世界中のネットワークを発展させる事業に成功した事によって、日本に莫大な利益をもたらしたのだった。
今回、國枝が吐露した幸子の不正についてだが、真霜の言う通り複雑に思惑が絡み合っていた。
その1つが、日本に巣食う軍再建を狙うタカ派の存在である。
現総理大臣である大湊が目の上のたんこぶとして警戒していたタカ派の先鋒 早稲田朋子であるが、彼女は所詮¨傀儡¨に過ぎず、真なる敵は連合与党幹事長であり党の重鎮 ¨安芸晋介¨なのであった。
かねてより軍再建を目論んでいた安芸にとって、ブルーマーメイドの存在は邪魔でしかない。
理由は、【海上安全委託協定】(国際連合加盟国はブルーマーメイドとその傘下にあるホワイトドルフィンに、¨領海での哨戒活動を委託し、その活動の一部費用を自国が負担する¨)を結ぶ必要があるからなのだ。
勿論、自国の軍や自衛隊は彼の組織が対応しきれない不足の事態が発生した場合のみ活動が認められるものの、組織的に完成しているブルーマーメイドは大概の事案を解決する上に、出番がなくとも軍艦建造や維持費は勿論かかる為、資源や貿易を他国に握られている日本には不可能な事であった。
そこで彼は、ブルーマーメイドの信頼を不祥事によって失墜させようと試みたのである。
「ちょっと待ってください!不祥事ってもしかして……」
「そうよ岬さん。RATtウイルス事件と海上要塞奪取事件は、裏で彼が手を引いていた疑いが高い」
「!!!」
彼女達が解決してきた事案が、まさか政府の要人によってもたらされた事実には驚愕するより他はない。
だが、そこに至るまでの経緯こそが今回の肝である事から彼女達は静かに真霜へと視線を向ける。
「続けるわよ?安芸幹事長がブルーマーメイド解散に向けて動いていたのは解ったわね?だけど、普通そんな妄想は夢物語で終わる筈なの」
そう、¨普通は¨だ。
幸か不幸か、安芸は次々と手札を獲得して行く事になる。
1つは明乃、そして平賀だ。
「平賀1等監査官は、15年前に沈没した遊覧船に乗っていた事が横須賀女子海洋学校長の調査によって判明したの。その後彼女は岬さんが一次保護されていた東北のとある山間部に、他の被害者と一緒に軟禁されていた」
「軟禁……ですか?」
「そうよ。政府がいくら調べても彼等の個人情報がまるで出てこなかった点、そして遊覧船の沈没理由が座礁ではなく未知の飛行する兵器による撃沈の可能性があった事。何よりも――」
真霜は一度間を開ける。
「被害者全員が岬さんと同じ¨少し先の未来が見える¨現象を発現していた事」
「なっ!!?」
一同は驚愕した。
この特異な現象は、明乃特有のものだと思っていたからである。
たが良く考えてみれば、明乃¨だけ¨と言うのも得心が行かないのも事実ではある。
「続けるわよ?この事件は公には出来ない。だけど、逆にそれが安芸幹事長の興味を引く結果になってしまったの」
自衛隊の地位確率を長年謳ってきた安芸は、当時防衛大臣を勤めた大湊の紹介を得ずともその人脈で事件の情報を得ていた。
そして彼等の能力の事実を知った上で、兵器転用が出来ないかを模索したのである。
結果――
安芸は大湊に対して彼等の人権問題や、防衛省の事件隠ぺいを盾に保護集落への干渉を半ば強要する。
異世界とは言え彼等は日本人であったし、撃沈であった遊覧船の事件を公表ともなれば、國枝は表向き調査を開始せざるを得ないだろう。
だが、撃沈の犯人など事実上この世界に存在しない訳で、無闇に他国を疑えば日本への反発は必至であり、犯行を特定できなかった政府への批判も高まるが故、國枝はやむ無く安芸の考えを呑まざるを得なかった。
そして明乃達被害者は、科学者達によって半ば非合法かつ屈辱的な扱いを受ける事になるのだが、尊厳の観点から真霜はその事に関しては口に出す事は無かった。
話を戻そう――
結局の所、安芸の計画は彼等の能力を解析するには至らず、しかも被害者の大半が能力を失ってしまった事で頓挫するのだが、今度は被験者の中で年齢が低かった明乃と、当時16際だった平賀にのみ特筆した能力が残っていた所に彼は目をつけた。
「まぁこれはブラウン博士と鏑木さんの推測なのだけれど、超兵器の意思がより干渉しやすいのは、取り分け闘争本能が強い人物と精神構造が確定していない子供だと言う推論を元としているわね」
この話は飽くまで推論の域を出ない訳だが、今は重要ではない。
平賀自身への取り調べの結果、安芸は幼児だった明乃ではなく、平賀に目を向けて接触を謀っていたことが判明。
そこで、ブルーマーメイドへ彼女を潜り込ませる為に徹底的に教育を施して経歴を捏造し、政府の推奨と言う名目で横須賀女子海洋学校へ転入させた。
本人の口から多くは語られてはいないものの、短期間で海洋学校に必要な知識や技術を習得して航洋艦長を勤めている事から、極めて優秀な人物であると推測されるが、晴れてブルーマーメイドの道に進んだ平賀は、その後も定期面談にてブルーマーメイドの内情を安芸へと流していた。
しかし、ブルーマーメイドは中々信頼を損なう様な不祥事など起こすわけもない。
安芸は極めて苛立った。
そこで彼は彼女達の能力と昆虫の脳に寄生して自分の住処となる水辺に誘導し、入水自殺をさせるハリガネムシと言う寄生虫にヒントを得た。
不祥事を起こさないなら、無理矢理¨起こさせて¨しまえば良いと考えたのである。
彼は、明乃達を玩具にして狂った科学者達を使って徹底的に寄生虫や菌類の研究を進めさせる。
そうして出来上がったのがRATtウィルスであったのだ。
だがここで、安芸の予想だにしない事態が発生する。
不審な動きを見せていた安芸を大湊が警視庁公安部に内定調査をさせている事が判明し、彼は泣く泣く全ての研究資料とウィルスに感染したネズミを潜水艇に入れて海へと沈め、証拠の隠滅を謀ったのである。
だが、彼の不幸は続く。
彼が潜水艇を沈めた場所は船舶が中々近寄らない海底火山が活発な西ノ島周辺ではあったが、まさか直後に新島が出来上がる程の爆発的噴火と地殻変動による海底の隆起によって潜水艇が再び顔を出すとは考えていなかったのだ。
ブルーマーメイドから西ノ島に打ち上げられた潜水艇を調査をする許可申請が成された事を知った安芸の心中は言うまでも無いだろう。
たが、ここで予期せぬ事態が起こる。
実は潜水艇自体を発見したのは、火山活動が終息に向かい実弾発砲を兼ねた演習場所に適していた西ノ島に横須賀女子海洋学校の生徒達が訪れていたのである。
火山活動に潜水艇が巻き込まれ遭難したと勘違いした教員と生徒達は、ブルーマーメイドへの連絡の後に島へと上陸して潜水艇の蓋を開けてしまったのである。
ブルーマーメイドが寄越した潜水艇の報告はその時のものであり、感染したネズミに接触した生徒伝いにウイルスが拡散して暴走する事態と発展した。
これがいわゆるRATtウイルス事件なのである。
実弾を持った艦艇の暴走は国民にとってはもちろん看過出来ないものの、未来ある生徒のをブルーマーメイドが容赦なく沈めたと言うシナリオは安芸にとって非常に都合が良かった。
そこで彼は、遅刻によって難を逃れた晴風が教育艦¨さるしま¨を誤って沈没させてしまった件を、生徒達が企てたテロによる¨撃沈¨と全くの誤情報をブルーマーメイドに流布し、¨最悪の手段¨と成得ても国民や周辺諸国、そして周辺船舶を守る上で¨最善¨の行動をとって欲しいと要請したのだった。
明乃の周りに、情報を集めた幸子の存在や生え抜きのクルー達を集めたのも、両成敗で亡き者でできると言うわけだ。
この機会を逃すべきでは無いと考えた彼は、海上自衛隊に秘密裏に接触して誤情報を伝え、訓練の名目で舞鶴校からイ201を借り受けた海上自衛隊に晴風撃沈を命ずる。
結果として彼等は、晴風の気転によって無用な殺戮をせずに済んだ訳だが、安芸にとっては彼女達に罪を被せる事は失敗したのである。
そこで彼は平賀を当該海域へ向かわせ、晴風の動向と共にウイルスに感染した学生艦達を葬る隙をリークするよう指示し、機雷原を通るルートを選択させる、パンデミックを狙って比叡をトラック諸島へ向かわせる、国際問題への発展を狙ってシュペーを意図的に晴風と交戦するよう誘導するなどの策を労するも、またしても晴風やもえか、そして真冬達ブルーマーメイドによって計画は失敗。
最終的には、美波によるワクチンの開発と晴風の活躍によって事態は収束を迎えた訳だが、怒りが頂点に達した安芸は、とうとう超えてはならない一線を越えて行く。
そう、海賊などの海上テロ組織に意図的に情報を流した事により発生した、海上要塞並びに海上プラント¨同時多発奪取事件¨に繋がったのである。
度重なる事件の多発によって、一次は極東ブルーマーメイドの――ひいてはブルーマーメイド全体の信頼は一時的に下がったものの、女性ならでは柔軟な発想によって直ぐ様画期的なルール変更が成された上、ウイルス事件その物はブルーマーメイド以前に日本が研究開発していた可能性を指摘され各国から厳しい目が向けられた事で、効果を発揮できずに終わったのだった。
彼の最後の抵抗は、晴風クルーを各地へと散らすよう圧力をかける事位だろう。
「あ、あのう。話は理解できました。ただその……」
「あら、ご免なさい。少し話がズレてしまったわね。いいわ、戻しましょう。まぁつまり、納沙さんの件は政治介入に当たる可能性があるから私達も迂闊には関与できないって事なの。ただ最初に言ったのだけれど、それで納沙さんの過去を消すことは出来ないわ。だから処分として―――」
¨処分¨と言う言葉に幸子の身体が再び震えた。
「ブルーマーメイド情報調査隊の内部に新たに新設を目指す。【兵器開発調査分室】に所属して貰うわ」
「え?」
真霜の口ぶりからして、彼女の拘束や懲戒処分で無いことは確かなのだが、彼女達の頭には再び疑問の文字が浮かぶ。
――続けるわよ?
その疑問は承知の上で真霜は続けた。
「これから先、航空機や超兵器の存在を知った人類は、必ずそれを求めて行く。残念だけどそれは止められない。けど、ルールを作って抑制して行く事は可能よ。故にブルーマーメイド本部は、情報収集能力に長けた人材を使って各国の物資の流れを把握し、兵器開発の情報をいち早く掴む必要がある事は急務なのよ。それには、デジタル化が進む昨今、それに特化した存在がどうしても必要になる」
「それがココちゃんですか?」
「そうよ。納沙さんの主計部としての能力や情報処理能力は失うのは惜しいわ。国家の事は国家に任せるとして、こちらが手を出せないなら、納沙さんの能力を十分生かしてもバチは当たらないでしょ?」
「それじゃっ!」
「ええ。納沙さんは超兵器討伐と事後処理が終わるまであなた達と一緒よ。勿論、その後は働いて貰うけどね」
ウインクをして見せた真霜の表情に一同は安堵の表情を見せる時、会議室の扉が開かれ、ある男が入ってきた。
大日本帝国¨陸軍¨の制服を着た30代前半の優男風のその男の胸には多数の勲章か光る。
「あ、あの。その方は?」
「紹介するわ、今回の作戦を¨立案¨した水戸吉鷹帝国陸軍¨中将¨よ。」
「……え?」
そう、彼女達が最も知りたい事は、偽装とは言え友人の死と言うショッキングな事態を巻き起こした経緯なのだ。
水戸ははれかぜクルーに静かに一礼して着席し、ゆっくりとした口調で語り出す。
「初めましてですね。今回の一連の作戦についてご説明致します」
「ちょっと待ってよ!」
「クロちゃん!?」
場に響いた痛烈な叫びは洋美からのものだった。
「ココちゃんと美波さんを利用してさ、岬さんを危険に晒しておいて謝罪の一つも無いワケ!?そんなの納得できないし、そんなあなたの話を信じろって言うのはムシが良すぎるわよ!」
彼女の言う事は至極もっともであり、最も一般大衆が叫ぶ内容であろう。
だが、水戸自身はこの考えを至極危険と考えている。
【朝三暮四】と言う言葉をご存じだろうか。
サルに朝3つのエサを与え、夕方4つ与えると宣言したところサルは激怒し、朝4つ暮3つ与えると発言を撤回したところ喜んだと言うものだ。
これは人間とサルとの違いを表した話だと言われている。
いつ食べ物が手に入るか解らない野生の生き物は、目の前にあれば食べてしまうのが定石であろう。
しかし人間は、長期的観点から食べ物を少しずつ食べたり蓄えたりする訳だ。
つまり上記の話から、サルは同じ数だけエサを貰えるにも関わらず、朝の時の自分と夕方の自分を同一化出来ていない事がわかる。
即ち、時間的観念が希薄で目先を優先する思考は、人間よりも動物に近しいと言える。
彼女達の年齢と、比較的自由を謳歌してきた環境では致し方の無い事ではあるが、戦争で翻弄された人間達を見てきた水戸にとっては、内心看過は出来ないのだろう。
自分の気持ちを抑えきれない衝動が時には安易に奪い合い独占し、果てには強力な兵器による侵略を選択させるのだから。
一般論と言う無意識の凶器が場に漂う中、水戸が見たものは明乃のオーシャンブルーの瞳である。
そこには、確かな過去 現在 未来を内包していた。
「クロちゃん。取り敢えず最後まで話を聞いてみよう」
「でも岬さんだってあんな目に――」
「お願い……」
何故かは解らない。
ただ、その一言に重みを感じた洋美はゆっくりと席に腰を降ろすのだった。
「申し訳ありません水戸中将。ご説明をお願いします」
「解りました。全てお話しするとお約束致します」
▽ ▽ ▽
この一件を語る上で、水戸の事を無視することは出来ないだろう。
水戸吉鷹
彼は元々一介の軍人に過ぎなかった。
しかし彼が唯一他者と異なる点が一つだけ存在する。
それは、カルト宗教と化していた当時の日本に於いて、国策や作戦について¨疑問¨を持ち続けた事にある。
離島での戦闘の際は、米国を中心とした連合軍の猛攻の最中にゲリラ戦を展開していた訳だが、潜伏の最中に、彼は自身の部下達に戦争する意義についての疑問や、国家に対する本音を自身の権限で発言する事を許可していた。
結果として、彼の部隊は驚異的な戦果と生存率を誇って本土帰還を果たすわけだが、彼らを待ち受けたのは、誹謗中傷だった。
名誉の戦死どころか、おめおめと生き残るとは帝国軍人の恥!
何で私の息子でなくこんな卑怯者が生きているのかっ!お前が死ねっ!
彼等は祖国が勝利を謳いつつ、その実は死に取り憑かれた¨一億総死にたがり集団¨と化していた異常性に気付くのである。
しかし、日本はそうして若き命を無駄に散らせたツケを直ぐに支払う羽目になるのである。
本土空襲の激化と特攻によって、多くの人員を失った軍上層部は、今更ながらに馬鹿げた一直線の突撃よりも緻密な情報収集に赴きを置き始めたのである。
そこで白羽の矢がたったのが、大佐に昇進していた水戸であった。
軍は彼に中野にある学校を与え、諜報戦や破壊工作に特化した部隊を指導する様指示を下した。
だが、軍の推薦で集まった兵士達に話を聞いた水戸は心底落胆する事になる。
国の為に命を尽くす所存!などと言う者を一から教育している猶予などある筈が無いからだ。
入校者を一度全て別部隊へと異動させた水戸は、一般大学卒者や商社マンなどから集めだした。
潜入において、軍人臭さはかえって邪魔であると判断したからだ。
かつての部下達に指導させたのは、諜報や破壊工作に必要な技術や生存術のみであり、規律は愚か、外国語の習得や天皇制の是非を含めた言論の自由を認め、服装も長髪や軍服の禁止、会話の相手も軍人ではなく一般社会の広いジャンルの者である事を厳命した。
立派な軍服で道を歩く事がステータスであった当時、生徒達の落胆は相当なものであった訳だが、自由の亡い国での自由は彼らにとって徐々に甘美な事となって行く事になる。
そして、国内外に散った彼等がもたらした情報によって漸く本来の軍の基盤が出来つつ有るのを確信した水戸が取った最後の行動とは――
「何!!?水戸が¨自決¨しただと!!?」
「はっ!戦火が苛烈を極める中、最前線で敵を撃滅して果てる事が叶わぬ恥は堪え難き屈辱。最早私に出来る事はこれしかないと……遺書も見つかっております」
「なんと……」
彼は自らの存在を殺したのだった。
彼のもたらす情報が有益であった為か、二階級特進で中将とはなったものの、彼の懸念は別な所に存在した。
諜報活動によって米国が新型爆弾を開発した事や、ドイツの陥落の可能性を知った水戸は日本の敗戦を確信。
敵国に厄介な諜報部隊が軍と共にあれば、軍の解散と同じく解体は免れ無いだろう。
それはこれからの日本が世界に置いてきぼりを喰らい、列強に隷属しなければならない事と同義だった。
それを阻止するため、自身の死と共に部隊を表向き解散させて軍と切り離したのだ。
案の定、日本は敗戦して米国によって軍の解体が噂され始めた。
だがその頃からだ。
彼は軍の上層部がウィルキアの軍属と頻繁に会っていた事が判明すると同時に、国王暗殺のクーデターと世界への宣戦布告に撃って出る事が明らかになる。
彼は、敗戦直後から諜報部隊の仲間入りを果たした笹井に国内の情報を集めさせ、海軍大将の君塚を中心にウィルキアに同調する動きがあると掴んだ。
だが、その時は既に遅かったのだ。
クーデターは成功し、撤退を余儀なくされたシュルツ一行は日本へと助けを求めた結果、君塚によって拘束されてしまう。
水戸は直ぐに筑波の盟友である天城大佐に事を伝え、シュルツ一行を救出すると同時に部下の一部を残して解放軍に同行する道を選んだのだった。
その後、目覚ましい活躍を見せるシュルツと対照的に、水戸はフリッツを含めた陸軍出身者をエージェントとして鍛え上げ、超兵器の調査や破壊工作を展開してするなどの裏方て徹して行く事になる。
ここで漸く、舞台は現代に戻る。
小笠原海戦の後、取り分けブルーマーメイドの別動隊が合流した後に超兵器に動きがあった事から、内通者の可能性を疑ったシュルツは、ガルトナーを通じて水戸に調査を依頼し、蒼き鋼の協力を得ながら事を進めた。
部隊を西と東に分散させたのも、絞り込みを進める一環であったのだ。
ところが、察しの良い真冬によって事が露呈しかけ、ハワイの一件の後に真霜によって問い詰められたエドワードが概要を伝える事となる。
そして、度重なる超兵器との戦いの結果、西側の笹井からフリッツに容疑者数名のリストが送られてきた。
ある程度位の高い人物に超兵器が干渉しやすい兆候を踏まえ、真冬を除いた艦橋の者のリストが提供される。
真冬を除外したのは、犯人が明乃と同様の能力者なら、出自が同じである可能性が高く、過去に整合性が取れない人物である筈だからだ。
水戸はそのリストを真霜に提供し、彼女はそこから彼女達の過去に着いての調査を開始。
この時点で既に、異世界艦隊はヴィルヘルムスハーフェンを出航しており、総旗艦直衛艦との相対を控えていた真霜は内心焦りを抱いていた。
しかし、キール到着直後に國枝の助言から独自に調査を開始していた真雪から、平賀に関する情報が提供された事で事態は一気に動き出す。
水戸は、明乃と同様に少し先の未来が見えるであろう平賀を捕らえる手段を考えなければならなかったのだ。
そこでもう一度資料に目を通した水戸のが捉えた名前こそが納沙幸子だったのである。
國枝の証言とヒュウガの裏付け捜査の結果、幸子はかつてハッカーとして活動していた経緯がある事、そして安芸の指示によってブルーマーメイドの内情を知っている平賀自身に幸子を脅迫して入試の成績操作をさせていた事が通話記録から判明。
そこから平賀確保に向けて、あらゆる可能性のピースを繋げる作業を驚異的な早さで組み上げた水戸は作戦をシュルツや群像、そして真霜やもえかに伝えたのだった。
そして作戦の決行――
「お~い!ハルナと言ったか?済まんが儂をはれかぜに連れて行ってくれんかのぅ!もっとあ奴等と話をしたいのじゃ!」
甲板をうろついていたミーナに声を掛けられたハルナは、はれかぜに向かう口実として彼女を利用する事を考え、実行に移す。
「ああ、構わん」
「すまんのぅ。お礼に今度、また美味しいブルストを蒔絵に食べさせてやるからな」
「了解した……」
笑顔で手を振るミーナを尻目に、ハルナはゆっくりと視線を上に向ける。
「む……」
そこにはマチコが此方を見据えているのが見えた。
(先ずは一人か……)
ハルナは驚異的な跳躍力で見張り台に一瞬で移動した。
「どうしたんだ?ハルナさん……」
「いや……悪いが拘束させて貰うぞ」
「!!?」
格闘のプロでもあるマチコは無機質である筈のハルナの瞳から攻撃の意思を感じた。
更に――
「フンディン?なんで――」
視野の広さだけでなく、聴力も優れた彼女の瞳に、一切の灯りを付けずに接近するフンディンの姿を捉えた事で事態の深刻さを察知したマチコは動いた。
「艦長、フンディンが此方に接近してきます!ただ……」
『野間さんどうしたの?』
「フンディンは全ての灯りを消しています!砲も此方に……あ゛っ!」
マチコはハルナによって完全に押さえ込まれてしまう。
「じっとしていろ。ケガをさせたくはない」
ハルナの脇に抱えられ、口を抑えられたマチコには最早どうする事も出来なかった。
対するハルナは、飽くまでも無機質に見張り台から下を見つめている。
「見張りを制圧した。突入を開始しろ」
「!!?」
マチコは401から出てきたイオナやタカオ、そしてもえかや静の存在に目を丸くした。
彼女達はあらかじめ艦長室やその周辺に潜伏して平賀を拘束するつもりだったのだ。
それは、本性を表した平賀が周囲を巻き込む抵抗や逃走を阻止する狙いが有るのだが……
ここで疑問が生じる。
どうやって平賀を艦長室に誘導するかだ。
ここで漸く幸子の存在が重要になってくる。
水戸は普段の業務や、定期的に行われる休息の時間を利用して部下達にブルーマーメイドの隊員達と積極的に交流させ、その人物の性分を事細かく報告させていた。
プロファイリングを行い導き出された結論から、彼女は周囲の目を気にするタイプであり、自身の過去への罪悪感を打ち明けられずにいると推測、シュルツに敢えてその情報を暴露して、あたかも幸子が犯人であるかのように仕立て上げ、はれかぜを動揺させるよう仕向けさせた。
案の定、艦内はパニックに陥り、その隙に幸子は飛び出したのだった。
勿論、この行動も彼は折り込み済みである。
彼女が晴風クラス存続に一人奔走した過去から、友人を失う事に恐怖を抱くであろう彼女は、はれかぜに掛けられた誤解を解き、特殊部隊を説得しに来るだろうと分析していたからだ。
幸子は涙を流しながら艦内を駆けていた。
(私の過去、知られちゃった。きっと皆わたしを嫌いに……ううん、それでもいい!皆が酷い目に逢う位ならっ!)
明乃が推測した通り、内通の件と幸子の件は全く別の案件だ。
だが、自身の過去のせいではれかぜ全体が疑われていると誤解した幸子は、その誤解を解くために自らの危険を省みずに奔走していた。
(護らなきゃ!家族を護らなきゃ!)
彼女は嬉しかった。
自分の過去を知って尚も、彼女達は自分を信じてくれていたからだ。
そんな彼女達には、現在射殺もやむ無しとの命令が出ている。
(そんな事、させないっ!真実を!真実を伝えないと!私は――)
彼女は甲板の扉を勢い良く開き、フリッツに銃口を向けられる事になる。
「動くな」
「ふ、フリッツさん?わ、私――」
「悪いが時間がないんだ。死んでくれ」
「え?」
「拘束で済むのなら、始めからやっている。俺達が今ここにいる理由くらい察しがつくだろう?」
「そんなっ!い、いやっ!私はまだ――」
その時ハルナは既に動いていた。
マチコをクラインフィールドで拘束した彼女は、跳躍な後に幸子を拘束する。
下手に動かれて銃弾に当ってしまっては元もこもない。
「ぐっ、動けなっ――は、ハルナさん!?どうしてっ!」
「抵抗するな。状況がややこしくなる」
「大戦艦ハルナ。時間がない。早くイミテーションをっ!」
「了解した……」
チ…チ……
「うそ、でしょ?どうして――」
突如として背後から現れた自分に幸子はいよいよ混乱してしまう。
「心拍数の上昇を確認――現状を理解できていないのか?まぁいい、キリシマ」
「――ああ」
元の姿に戻ったキリシマがいつの間にか姿を見せていた。
「機関室に保護しろとの命令だ。あとはお前といおりが居れば事足りるだろう」
「了解したが、内通者の確保には私が出向いた方が良かったのではないか?」
「この者の保護が大前提だからな。お前なら確実と判断したのだろう」
「解ったよ?それ、じゃっ――!」
「え、えぇっ――!?」
キリシマは幸子を抱えて401へと跳躍して行く。
「では始めて貰おうか」
「解りました……」
パァン!パァン!
数発の銃声の後に、イミテーションの幸子が甲板に倒れる。
(―――!)
一部始終を目撃していたマチコは混乱していた。
何故、この様な茶番を演出するのか理由が解らなかったからだが、何より驚いたのは、銃声の後に彼女が現れた事だった。
「一応、データ通りに再現はしてみたがこれで良いか?」
「ああ……」
現れたのは美波であった。
この作戦の肝は、囮である幸子が死亡したと印象付ける事にある。
その為にはイミテーションが偽物であると悟られる訳にはいかない訳だが、見た目を偽装したとしても医者の目を完璧に誤魔化せる程精巧に人体の再現するのは容易ではない。
よって、あらかじめ美波にのみ作戦の全容を伝え、まず初めに死体に触れて死亡を宣言させる必要があったのだ。
「ミナミ、アケノ達が来る。一度隠れていろ」
明乃の接近に気付いたハルナに促されて、彼女は身を潜めた。
そして、察しの良い明乃が死体に触れる前に声を上げ、イミテーションに触れたのである。
この後の美波の表情から、作戦に反対したのは言うまでもないだろう。
医者として虚偽の診断を下し、一同の心に傷を付ける行為は勿論、イミテーションとは言え友人が射殺されると言う状況を造り出すなど認められる訳もない。
結果として、死者を出さない為との文言に折れた訳だが、そこは医者としての彼女のプライドだったのであろう。
結果として彼女は、幸子の死亡を¨宣言していない¨
発言は「最悪だな……」だけなのだ。
この発言の選択は、医者としての最悪がイコール死との印象をはれかぜクルーに与えたものの、本心は平賀を拘束するにしても、もっと最善策があったのではないか、この方法は¨最悪だ¨と言う彼女の抗議の意味も含まれていた訳だ。
更にはだ。
その¨最悪¨には明乃の暴走も含まれている。
シュルツの懸念した¨賭けの要素¨とは、正にそこに集約されていたのである。
「ああああっ!」
「てめぇら何をっ……なっ!」
明乃の絶望した悲鳴と同じくして、真冬達が現場に到着し役者が揃った。
察しの良い真冬が、事態に気付く事は折り込み済みだったが、故に甲板のやり取りを平賀に目撃される可能性は十分にあった。
故に、あらかじめ見張りの配置を決めて周知し、401をはれかぜの右舷に配置、少し離れた月黄泉は必然的にはれかぜの左舷からの接近となるが、そこにはれかぜより一回り大きいフンディンを割り込む様に横付けする事で、手品の死角を作って幸子を保護したのだ。
ここまでのお膳立ては完璧だった。
たがここで、予想外の出来事が起こる。
暴走した明乃を抑える役目はハルナが負う筈たったが、シュルツが自ら彼女の前へと無防備な身体を近付けたのだ。
場の空気は一瞬で凍り付く。
水戸からすれば、軽率だと言える彼の行動。
だが、彼は今だからこそ彼女を試さねばならなかったのだ。
幾度となく彼女の心をすり減らせた悪魔の意思。
その闇の中で彼女を繋ぎ止める最後の希望とは――
【家族】
そうだ。
シュルツは明乃を試したのではない。
数ヶ月の間のような薄っぺらい関係の自身ではなく、積み上げられてきたはれかぜクルー達の絆を信じたのだった。
結果、彼は賭けに勝つ事と成る訳だが、肝心なのは平賀拘束を控えたこれからなのだ。
真霜は、冷静さを欠いている事を理由に、はれかぜクルーと真冬を平賀から分離し、さりげなく明乃を艦長室へ誘導する事に成功する。
恐らく平賀は、出自が同じ明乃に対して何らかのアクションを取る筈だが、ここで二つ目の賭けが出現する。
平賀の未来透視能力が一体どのくらい先まで見えるのかだ。
仮に突入しても、その行為事態が先に知られてしまえば、平賀は躊躇なく引き金を引きかねない。
故に、先に潜伏していたイオナとタカオは、平賀の確保だけでなく、限り無く理想値に近い近似値を割り出す必要があったのだ。
「かっ!あがっ!?」
平賀が、明乃の口へ銃口をねじり込むのを見た群像は、¨その時¨が近い事を確信していた。
そして――
「暴れないで貰える?うっかり撃っちゃうかも――チッ!ほんと、邪魔ばかりっ!」
(え?今こっちを見っ――)
一瞬、平賀と彼女達の視線が交錯したように感じた次の瞬間――
ヴォン!
「う゛っ……」
「アグッ!う、そ……?」
何故か、コアの感情プログラムを司るヶ所に膨大な負荷が掛かった二人はその場に倒れ込む。
「クラインフィールドを使って光を曲げ、背景に隠れていたのね。それにっ――!」
平賀はなぜか明乃に突き付けていた銃を投げ捨て、太ももに忍ばせていたナイフを彼女の首に突き付け、もう一本のナイフを扉の方向へと投げつけ――
「え゛っ!?」
「静さんっ!あ゛っ!」
タイミング良く開いた扉から突入してきた静にナイフを当てた。
平賀はこの時、未来を見ていたのであるが、その時に引き金を引いていた。
しかし、銃は¨発砲しなかった¨のだ。
理由は、シュルツと明乃に一同の視線が集まっていた最中に、ハルナが気付かれない様にナノマテリアルを銃口に詰め込んでいたことにある。
「来たっ!観測結果まだかっ!」
〔演算が間に合わ……ない〕
イオナはコアへのジャミングが酷く、演算処理を適切に行う事が出来ない。
「干渉が働いているのか?ヒュウガ、タカオだけでは演算が間に合わないかもしれない。君もイオナな演算バックアップを頼む」
「姉さまの為ならっ!」
チ…チ…
〔401、私の演算を使いなさい!〕
〔タカオ……〕
〔早くっ!〕
〔了解……〕
チ…チ…… ヂッ!
鬱陶しい程のエラーを掻き分けてイオナがコアをフル回転させたと同時にもえかの叫び声が響く。
「イオナさん時間は!?」
「さ、3分17秒……」
「了解!千早艦長ぉっ!」
(な、にっ!?何故その事をっ!)
平賀は、自らの透視時間を言い当てた彼等の真意を即座に理解した。
¨しているが故に¨解らなかった。
いかに、部隊を投入したところで、行動を先読みしてまえば肉弾戦で負けはしない
メンタルモデルも封じた
あとは明乃を人質にでもしてしまえば――
「――!!?」
そこまで考えた時、自身が見ている未来の自分に異変が起こる。
未来の彼女は、突如として苦しそうに喉を押さえてのたうち回り、更には視界が急に暗転し始めたのだった。
(何故!!?どうして見えな――)
「やぁ!」
「チッ!」
解っている。もえか達の執拗な妨害は明らかに時間稼ぎだった。
しかし、何故時間を稼がなければならないのかが解らず、平賀が焦りを覚えた。
(どうしてっ!どうして邪魔するの!?私はっ――)
苛立ちと共に息が上がってくるのを平賀は感じていた。
何度見返しても、暗転する未来は覆らない。
「このっ!みんなみんなわ、私の邪魔ばかり――な゛っ!?」
気付いた
気付いたしまった
本来、訓練を受けた平賀がこんなにも早く息が上がる筈がないのだ。
喉元付近が、ジワジワと締め付けられる様な錯覚を覚え、吸い込んだ息が、まるでフィルターにでも阻まれているが如く肺へ入って行かない。
「カッ、カッ?!はぁあ゛っ……」
息苦しさに手足が痺れ、目を開けているのに辺りが暗くなる。
「知名艦長!大丈夫ですか!」
「フリッツさん!もうすぐです!まずミケちゃんを救出しっ――!」
「ユルサナイ……ドイツモ コイツモ ミンナ許サナイ!」
彼女はどうしても明乃に問い質さねばならなかった。
だが事が露見した以上、最早彼女を亡き者とするより他は手段が無かったのだ。
(後悔スルガイイ ソシテ味ワエ 無二ノ存在ガ喪失スル絶望ヲ!)
折れたナイフの残りを明乃の首へ突き付けた平賀に、場は膠着状態へと移行する。
「チッ!振り出しか!お前達、迂闊に動くなよ!平賀倫子1等監察官、貴女ならもう¨お分かり¨の筈です。武器を棄てて投降を……」
「うるさい!私はっ………あ゛え゛??」
しかし、彼女の抵抗はもはや無意味であった。
「かっ…あ……がっ…はっ……かがぁあ!」
「今だ!確保しろっ!」
朦朧とする平賀を拘束したのを確認したもえかは作戦の終了を確信した。
故に、平賀に掛けられた枷は必要ない。
「千早艦長!対象を拘束しました!大戦艦ハルナへの命令を解除して下さい!このままじゃ平賀さんがっ!」
『了解しました。ハルナ!』
『命令の解除を確認した』
チ…チ……
「カハァ……ハァハァ……」
漸く息が肺に供給され、彼女の身体から力が抜けて行く。
実はハルナが仕込んでいたのは銃口の細工だけではない。
明乃の暴走は端から想定されており、全員の意識が彼女へと向いたあの時、銃口だけでなく平賀の肺の入り口へナノマテリアルを一粒ずつゆっくり侵入させ、彼女の透視時間を確認の後に、ジワジワと気道を塞ぎ、もえかと静に格闘戦をさせて運動量を上げ、彼女の血中酸素濃度を低下させて動きを鈍らせ、更に酸欠による視界の暗転によって透視を無効化する事に成功した。
少ない情報の中から、最重要保護対象を警護する役割と手品の仕込みを行う大役、そしてあらゆる不足の事態に対応しうるバックアップに大戦艦をあてがい、平賀な干渉に巻き込まれないよう敢えて突入させず、通常コアより演算能力の高いデュアルコアを有するイオナの演算をバックアップと補佐すべくタカオを同行させた。
群像の人選は見事的中したのである。
▽ ▽ ▽
「ここまでが、作戦の全てです」
「………」
作戦の全てが語り、辺りを見渡した水戸は、平賀の動機を除いた一同の気持ちは概ね¨理解¨に達したと判断できた。
残るは、明乃が今回の作戦に何を感じ、結論を出すかだが――
カタンッ……
今まで静観していた明乃が席を立ち一同の視線が彼女へと向けられて行く。
お付き合い頂きありがとうございます。
鋼鉄シリーズで話だけは出てくるエージェントですが、それを統括する人物がいるだろうとの事で、初期より構想にあった人物を史実にあった陸軍中野学校や二俣分校を参考に水戸と言う人物を作ってみました。
それで、真犯人は平賀さんだった訳ですが、犯人に仕立てようと思った理由を説明させて頂きます。
一章の最終話、内通者がいる可能性を示唆した辺りで浮かびました。
正直、福内さんとどちらにするか悩んだんですが……
漫画や公式での経歴からミケちゃんとの共通点がある程度認めらる為だったんですね。
明乃
性格は少し天然
よく艦を飛び出す
スキッパー操作が上手い
平賀
性格はおっとり
にも関わらずスキッパーの国際レースS1の優勝経験がある
学生時代は艦長で、よく持ち場を飛び出して無茶をした
更に、漫画版はいふりで平賀さんって艦長と良く似た人だったらしいよと言う台詞がある
以上の点から独自解釈で設定を組んでおりました。
ココちゃんは、彼女から目を外させる為のブラフですね。
やはり内通者をバラしたくありませんでしたので……
今回の作戦は、手品の視線や心理を突く手法に着目して考えました。
水戸が登場人物達の性格を的確に把握し、役割や舞台で踊る役者達の動きをアドリブから台本にのせる。
ウィルキア登場人物を引き立て、蒼き鋼が舞台の裏方で仕掛けを動かす。
正に舞台であった訳です。
イ201については、原作アニメでいきなり実弾の魚雷を発射したり、潜水艦内部の描写が不自然なまでになく、更にはなから撃沈が目的であるかのような動きがあったので入れてみました。
さぁ……
こうして小説を書くにあたってですが、海を題材にした作品は、何故か未来予知に近い事案をフィクションや戦争に隠して扱ってる事が多いなとつくづく感じました。
鋼鉄シリーズ
津波を含めた天変地異
一国の戦力や兵器の独占
アルペジオ
国同士の行き交いが低下する事での経済崩壊と国家の衰退
温暖化による海面上昇
はいふり
ウイルス
人の行き交いの活発化(原作アニメではトラック諸島)等により起きるパンデミック
テロ(劇場版)
国際組織とイチ国家の思惑の相違
こんな感じですが、原作の先生方が一体何を伝えようとしているのか、その我々に取っては少しチクリとくる痛烈なメッセージを読み解きつつ、私の拙い作品にのせられたらなと思っております。
次回まで今しばらくお待ち下さい。