なかなかメランコリー状態から脱却出来ないのでお口直しに超短編を挟んでみました。
もしよかったらどうぞ
真白の自室にて
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殴り合った二人は互いの手当てをしている。
「あの、知名さん…。殴ってしまってご免なさい…」
「ううん、いいの。先に手を出したのは私の方だし…」
「……」
「……」
二人の間に流れる気まずい沈黙。
それを最初に破ったのはもえかだった。
「やっぱり宗谷さんて、ミケちゃんの事…好き…なの?」
「なっ!!」
真白は突然の事に狼狽する。
しかし、もえかは容赦しなかった。
「解るよ。だってミケちゃんの隣にいるあなたの顔がとっても幸せそうだったから」
「なっ、違っ。私は艦長にそんな気持ちは…大体女同士だし…。そ、そう言う知名さんはど、ど、どうなんだ?」
「好きだよ」
「!!?」
即答が返ってくるとは思ってもみなかった真白はいよいよ参ってしまう。
「ふ、不純だ!女同士なんだぞ!」
「そうかな…私はそうは思わないよ?最初は大切な友達だったの。でも6年前の事件の時、ミケちゃんがあの重い扉を開いて私を光の中に引っ張り出してくれたあの時に私はミケちゃんに……」
頬を染めて、語るもえかに真白も思わず顔が熱くなるのを感じた。
「答えて」
はっとして前を向くと、すぐそこにもえかの顔があり、事態について行けない真白は思わず後ずさる。
しかし彼女はジリジリと近寄ってきて、真白は壁際に追い込まれてしまった。
終いには腰の上に股がられ、両手を壁に押さえ付けられてしまい、とうとう観念してしまった。
「き、嫌いでは…無い〃〃〃」
真白は真っ赤になって答えるが、もえかは呆れ顔をする。
「嫌いではないって……。ホント素直じゃないなぁ宗谷さんは。で?気持ちに気付いたのはいつ?」
「だ、だから違…」
「はいはい…分かったから。でも嫌いじゃなくなったきっかけとかはあるんでしょ?」
納得がいかないが、有無を言わさず迫られたら渋々でも口を開らくしかない。
「最初は、難破船の救助の時にちょっとモヤモヤして…決定的だったのは、シュペーの救出の時、私はシュペー救出の成功の労いの言葉を掛けた時、岬さんはボロボロの晴風言ってた。『晴風がこんなにボロボロに…』って。あぁ、この人はクルーだけじゃない、晴風という家も含めた皆を大切に思える人なんだって…。そう思った時、私の心のモヤモヤの正体が解ったの。私には無い優しい心を持ったこの人の事が……スキだって…。」
「やっぱり好きなんじゃない…」
「うわっ!違…。い、今のは…言葉のあやで…」
「ホント、素直じゃないなぁ宗谷さんは。でもそっか……。二人とも同じ人を好きになっちゃったんだね…。でも今は、そう言う状況じゃない。閉まっておかないといけない気持ちだと思う。でもいつかは…」
「するのか?告白」
「…うん。だってこの気持ちは、ミケちゃんがいたから生まれた気持ちだって思うの。だからきちんと伝えたい。ミケちゃんは少し困っちゃうかもしれないけど、きっと真剣に答えてくれる。そういう人だから…」
二人の間にしばし沈黙が流れる。
するともえが急に、真白の頭の後ろに手を伸ばした。
「?…体何を…。はっ…んっ……んん!?」
もえかは、突然真白に唇を重ねてきた。
真白は足をばたつかせて抵抗するが、もえかの唇の柔らかな感触と鼻に触れるもえかの花のような優しい髪の香りで何も考えられなくなる。
「ひっ…ちょっ!うむ…あっ…はぅ…ぃ。」
「んっ…はむ…。」
二人は唇を重ね合う、しかし我慢の限界を越えた真白がもえかを突き放した。
「むはっ!ハァハァ…。知名さん…どうしてこんな?」
真っ赤になりながら抗議する真白に、もえかは真剣な顔で答えた。
「ハァハァ…。せ、宣戦布告…かな」
「宣戦布告?」
「うん、今回の戦いでは仲間だけど、ミケちゃん個人については別。私、宗谷さんにだって負けないよ」
「私は別に勝ち負けとかそんなんじゃ…」
「じゃぁミケちゃんは私が……。いいよね?」
「ダメだ!そそ、そんな…認めない!」
「認めない?何であなたに許可を受ける必要があるの?ミケちゃんが認めちゃえば全て済む話だよ」
「認めなものは認めない!だって岬さん隣に居るのは私!……あっ」
それを聞いたもえかはイタズラっぽく笑う
「漸く私に本当の気持ちと感情を出してくれたね。解ってたんだ…あなたが私のこと避けてるの」
「う…」
図星を突かれた事に真白は狼狽える。
実際、真白はもえかの事を少し苦手としてきた。
明乃と同じ艦長であり、幼馴染みで成績は優秀。
だが、明乃と彼女は決定的な違いがある。
明乃は表情や言葉から心が見える。それとは対照的にもえかにはそれが無い。
いつも冷静で動じることの無いもえかの姿を、真白は明乃とは対象に少し冷たいと思っていたのだ。
しかし、次のもえかの言葉に真白は目を見開く。
「でもありがとう宗谷さん。本音で話してくれて。これで私達、恋のライバル以前に、友達だね。」
その優しい表情は、真白のよく知る明乃の顔と少し似ている気がした。
自覚はあったのだ。自分が本当に彼女が苦手な理由、それは嫉妬だ。
今も6年前も、明乃の中に彼女は居続ける。
自分とは違い、完璧な彼女が明乃の心の隣にいる。
真白にはそれが耐えられなかった。
先程のシャワー室でのやり取りにしても、本音をぶつけ合い自分と彼女の関係を改善することが、後の戦いでの明乃の為になるだろうと彼女なりに考えての事だったのだろう。
(ホント、敵わないな…)
でも悪い気はしなかった。
自分の良いところを見つけ出して伸ばしてくれる明乃とは反対に、彼女は自分の弱い所に入り込み、真正面から向き合ってくれる。
真白の中でもえかの存在は、最早真の友達と言えるものになるだろう。
だから、真白は手を差し出した。
「うん。こちらこそありがとう…」
二人は硬く握手を交わす。
「そうだ、宗谷さん。さっき西崎さんから言われていたんだけど、艦橋で明日の演習の作戦会議をしようって提案があったの。私は敵方だからあまり助言は出来ないけどね。宗谷さんはどうする?」
「勿論行く!明日を勝ち取るために!」
「うん、それじゃ着替えてくるね。後で一緒に行こうね」
「あっ待って!」
「どうしたの?」
「私、知名さんに負けない!いつか、心も岬さんの隣にいられるように頑張る!だからあなたにだけは絶対負けない!」
「そっか……うん。それじゃまた後で」
真白の言葉にもえかは少しピクッと肩を震わせ、でも笑顔で部屋を出ていく。
一人になった真白は、急にさっきまでの自分ともえかのやり取りを思い出す。
そして、
「うわぁぁぁぁ!私、知名さんに岬さんをす、す、スキって……。それに知名さんとキ、キ、キスまで〃〃〃。」
そこまで言って真白は、顔を真っ赤にして頭を抱え床をのたうち回った。
彼女のトラウマはきっとしばらく続くことになるだろう。
一つの太陽をめぐる二つの月の話はいつか平和の日を取り戻すまで、机の引き出しの中で少し長い眠りに着く。
お付き合い頂きありがとうございます。
次回で演習終わりです。
ストーリー的には演習が終わった時点で、第一章の半分位でしょうか。
次の投稿は来年になるでしょうし、来年は奴等も出てきます。
またいつかお会い致しましょう。
それでは良いお年を‼
とらふり!
真白
「次回の演習もきつそうだな…」
もえか
「実は聞いちゃったの…明日の演習は矯正ギブスを装着しての訓練だって…」
真白
「なんだと?そんなものを装着したら艦長の体がムキムキのカチカチに…」
もえか
「倉庫に忍び込みましょう!そしてギブスを破壊するの!」
真白
「珍しく気が合うな…。よし、いくぞ!」