オリジナル処女作。あまり期待するべからず。
皆さんにこれから見ていただく世界は、私共の技術不足故、少しばかり皆さんに不自由があると思います。そちらはお客様からの貴重な意見として今後の活動に反映させていきたいと考えております。どうがご協力お願い致します。
それでは…アップルティーでも片手にゆったりしながら、ややしばらくお付き合いくださいませ……。
ぼーっと、窓の外を眺めてみる。
雲一つ無い。吸い込まれそうな…晴天。
キラキラと透き通るような海。
遠くに小さく元いた街が視界に入った。
もうここには戻らない。僕はあの人に会いに…
がたんごとんとテンポよく揺れる車内。どこか心地よい揺れに、つい重くなってしまうまぶたをこすり、もう1度窓の外を覗く。
島が、近づいてくる。
電光表示が目的地を示す。
徐々にスピードを緩めた電車は、そのまま静かに止まり、そしてゆっくりと…ドアが開く。
直射日光の照らす眩い光に立ち止まったその瞬間、目の前にキラリと銀色の反射光が映り。
ーーー世界が、闇に染まった。
これは、あついあつい夏のお話。
そこは、小さな箱の中。
…小さなと言うと少し違うか。
僕の背がせいぜい1.5mも無いほど。
それより少し小さい位の……箱だ。
鉄格子でできた、箱。
細身の僕には重すぎるほどの枷。
鎖で繋がれた手足。
今日もまた、あいつがやってくる。
褒美と言っては僕を沈める。
あいつが来る時はただ黙ってじっとしていないといけない。
定刻が近くなると、真っ暗闇だった箱の中に、柔らかい光が差す。
元を辿って上を見上げる。
鉄格子から見える景色はいつも変わらない。
長いススキの陰と、月。
今日はいちだんと明るく見えた月に、意味も無く手を伸ばしてみる。
ガタン、という大きな揺れに、直後。
ーーー世界が、闇に染まった。
これは、煩くて静かな秋のお話。
野を駆ける兎を、捕まえては刺す。
視界に入るのは真っ白な世界を汚す鮮血。
穢らわしい。
この山には僕以外にも人間がいた。
火薬と鉛玉を使って同じ事をする奴等だ。
僕は生きるために狩りをする。奴等は何のためかと聞いてみれば、「金のためだ」と言った。
穢らわしい。
目の前に飛び跳ねる兎が1匹。
捕ろうと手を伸ばす。
視界の端に動くものの影が見えた。
ーーー世界が、闇に染まった。
これは、寒く雪の降る冬のお話。
……これが
僕の末路、行く末。
1度目の夏は駅から逃げてきた通り魔によって刺され、秋は人身売買という裏取引で買取手となったとある男によって頭を叩き割られ。冬は至って簡単、近くに居た猟師に野生動物と勘違いされ、撃たれた。
まぁ、野生動物とそう変わらない生活をしていたもんだから文句も言えないのだけれどね。
その後も繰り返された。傑作は……4度目の春、だったかな。工事現場の足場が崩れ、通行人であった僕の頭に落下。そのまま生き埋めさ。
何回も何回も、死を体験した。
どうして繰り返すのか?……君は何か勘違いをしているようだ。
確かに全部僕だと言った。でも……
誰も全部が同じ人だとは言っていないだろう?
人は死んでしまってはもう戻れないんだよ。
それは君もよく理解しているだろう?道徳なんかでよく言われるじゃないか。「命を大切に」ってね。
そう……命は大切にしなきゃいけないものなんだよ。
さて、雑談が長引いてしまった。君はまだ僕についてくるかい?それとも……恐怖のあまり今ここで逃げ出すかい?
…あはっ、そんな怖い顔するなよ、どっちでも僕は構わないからさ。今のはジョークだよ?
……そう、ついてくるんだね。後悔はしない選択を、ね。
……おっと、申し遅れてしまって申し訳ないね。
僕は怜。レンだよ。まぁ、好きに呼ぶといい。
人間じゃぁ無いよ?立派な"死神"さ。
他人に恨まれた人。死にたいと願った人。そんなお客様を死に引きずり込むのが僕の仕事。
前者は面白いよ、「死にたくない、助けてくれ」なんてさ、なっさけない声出しちゃって……ふふ、自分の罪の重さをそこでやっと思い知るんだ。
後者は……なんだか感謝されたり、納得いかなさそうな顔で涙を流したり。イマイチぱっとしないんだよね。
僕ももうそろそろこんなお仕事嫌になってきてるんだ。だって、さっきも言っただろう?死の苦しみを何回も味わわなきゃいけない。
なんて、お客様に愚痴をこぼしていてもしょうがないね。
全てのお客様には、全部1から説明しているんだ。こうやってね。
君はどんな反応を見せてくれるのかな……?泣き喚くかい?酷い形相で僕を恨むかい?それとも、笑顔で感謝するかい?
……楽しみにしてますよ?"お客様"。
それでは……またのご利用をお待ちしています。
…The moment of death is right there.