【日本海軍の階級】
(士官・将官)海軍大将、海軍中将、海軍少将、海軍准将
(士官・佐官)海軍大佐、海軍中佐、海軍少佐
(士官・尉官)海軍大尉、海軍中尉、海軍少尉
(准士官)海軍准尉
(下士官)海曹長、一等海曹、二等海曹、三等海曹 (兵)海兵長、一等海兵、二等海兵
(法定定員外)海軍兵候補生(三等海兵相当)
HONDAS660という車をご存知だろうか?
だが、この車もうひとつ特徴があり、それはスポーツカーながらに『軽』自動車でもある点だ。その車体は他のスポーツカーと並んだ時に隠れてしまうほどの小ささ。
全長約3.4m、全高も約1.2m。
この車をひと目見て昨年、即購入した1人の海軍士官はルームシェア仲間の3人から共に『こいつ、車までロリ買いやがった、このロリコンめ』と呆れられていた。
その海軍士官の名はーーーー言わずしても分かるだろう。
* * * * *
助手席に鈴谷をのせた有明の愛車S660は黄色いボディを輝かせながら、首都高速9号線を辰巳JCTへ向けて(安全な速度で)爆走している。
「ひょ〜やばーい!チョー気持ちいい!海を航行してる時とはまた違う感覚だよ〜!」
鈴谷はアゲアゲなテンションで首都高速ドライブを楽しんでいる。
下田商会で商談を終らせた有明と鈴谷は有明の提案で鈴谷の私服を買いに行くこととなった。
艦娘学校とポーンペイで缶詰だった鈴谷はオサレな服屋に行ったことがなく、制服と海軍支給の服しか持っておらず私服を持っていないのだ。
そこで有明は二回も裸を見てしまった謝罪の意も込めて、鈴谷に服を贈ることにしたのである。
二人がやってきたのは東京の臨海部にそびえ立つ大型商業施設『アーバンドック ららぽーと豊洲』。
その名の通りちょっと前までそこはドック、つまり
有明は鈴谷を連れて女性向けの洋服店を数店回り、マネキン人形が着飾っていたおすすめのコーデや店員さんに見立ててもらった物を片っ端から買い漁った。
買い物を始めた最初の頃は
「どっどうかな・・・司令。似合ってる?」
「おっおう、似合ってるぞ」
的なうぶいやり取りもあったが、今や鈴谷は店員と有明の着せ替え人形と化している。
鈴谷は「こっちの組み合わせもいいんじゃないでしょうか〜」とやたらテンションの高い店員にコロコロ衣装を替えられ、有明も「おぉー似合ってる!かわいいな〜。これも貰おうか」と二つ返事で即買い。
ハイスピードで散財していく。
そう、有明は『親バカ』ならず『艦娘バカ』な一面を持っているのだ。
有明の場合、艦娘の研究をするにつれて壮絶な過去や艦娘ゆえの苦悩など、色々なことを知り『艦娘バカ』となってしまった。
実は第五研究室から追い出されたのは一度、艦娘から距離を置いたほうがいいのではという配慮によるものだったりするのだ(実際は幕張提督嫌われているので転属後すぐに窓際部署・補給係に追いやられ、また艦娘である電と一緒に仕事をすることになったが)。
結局持ち帰れないほど購入してしまったので、服は宅配サービスで秋葉原のシェアハウスまで運んでもらい鈴谷は今まで着ていた制服から購入した服の中で1番気に入った(有明が特にかわいいと言ってくれた)白系のトップスにブラウンチェックの長めのフレアスカートとベレー帽を被った春仕様お嬢様コーデへ衣替え。
二人は服を買うという第一目標を達成したので、お腹を満たしに海を眺めながら食事を楽しめるフードコートへ向うことにした。
その道中で有明は大きいほうのトイレへ行きたくなったので、鈴谷に待っててもらい腹を抱えながらトイレ駆け込んで行った。
するとどうだろうか。
童顔JK風の顔立ち、日本ではまずお目にかかることのないアクアマリン色のつやのある髪、そしていつもの制服だと着痩せしているのであまり意識が向かないが、鈴谷は重巡系ではトップクラスのメロンをお持ちなのである。
それが白いトップスでさらに強調されているのだ。
そんな可愛い子が1人で突っ立ていたら、待っている未来はただ一つ。
「ねぇねぇ、おねぇちゃん1人?今暇なの?一緒に遊びに行かない?」
チャラい男3人組がナンパをしてきたのだ。
きっと外国人と勘違いして、絶好のカモだと考えたのだろう。
ガラの悪い奴らからのいやつ的な迫り方に、鈴谷は怖くなって声を出せなくなってしまっていた。
そうこうしている間にもチャラい3人組は
「ね〜遊びに行こうよ〜!あっご飯まだなの?俺、いい店知ってるんだよね」
と言いながら鈴谷にボディタッチをするなど、馴れ馴れしく迫ってくる。
だが、鈴谷は体を思うように動かせない。
「・・・た・・・たすけて」
辛うじて掠れそうな声で鈴谷がその言葉を捻り出したその言葉を無視し、男達は鈴谷を連れ去ろうと強引に迫り寄るーーーーーーが、トントンと男達3人組内の1人が肩を叩かれ
「ーーーー君たち、今すぐどこかへ消えなさい」
と低く且つ怒りのこもった声色で話しかけられる。
チャラい男3人組に声をかけたのは大きいほうのトイレから帰ってきた有明。
彼は魂の抜けたような詰めたい目線で男らに警告した。
もちろんそんなもので男らは引き下がる訳がなく、むしろ有明の言い方に腹が立ったようで
「あぁ誰だテメ、しゃしゃり出てくるんじゃねぇよ。喧嘩売ってんのか?3対1でやるか?あ?」
と食ってかかり、有明の胸ぐら掴んで今にも殴りかかりそうな雰囲気となった。
有明は「はぁ」と小さいため息をつきながら
「一応、君たちのことを心配して言ったんだけどねぇ」
と前置きをして男らに告げる。
「お前らを殺るのは、私ではない。ーーーー鈴谷」
有明は鈴谷ほうを向き、ひと間空けてから冷たい声で
「艤装の展開を許可する。但し、火器類その他一切の兵装は使用禁止。現時刻を持って正当防衛行動を開始し、必要最低限の武力行使にて敵を制圧せよ」
胸ぐらを掴んでるチャラい男が
「アァ?何ブツブツ言ってんだよ」と言ったーーーーいや、言いかけていたが、男はそのセリフを言い終える前に腕をものすごい力で有明の胸ぐらからひっぱかされ、そのまま前にバランスを崩した際に背中からねじ伏せられ顔面から地面に打ち付けられる。
男をねじ伏せたのはもちろん、鈴谷。
ただし、可愛らしい私服を身に纏う鈴谷ではなく艦娘ーーーー航空巡洋艦の鈴谷の艤装と制服を身につけた彼女の本当の姿。
「了解だよ、司令」
そう言って鈴谷は残りの二人もいとも容易く片付ける。
焦って抵抗しようとした男らはかえって変に力を入れることになり、艦娘化した鈴谷にとって彼らを制圧することは蟻を踏みつけるよりも簡単なことだった。
「司令、終わったよ」
「・・・・」
有明は返事はせずにうなづいて了解の意を返したのだった。
* * * * *
個体差はあれど艦娘は制服を纏い、艤装を展開している間は『兵器』としての性能を発揮する為に通常の人間が持つ精神状態とはかけ離れた心を持つ。
敵を沈めても恐怖を感じないし、自分の体がボロボロにやられても心が折れずに敵に立ち向かえる。痛覚だって痛みを感じない訳では無いが、麻痺寸前レベルまで強制的に強化されるのだ。
また装備展開をすると力にも変化が現れる。
艦だったころの姿を想像させるようなパワフルさを持ち、某毛利探偵事務所の女子高生のように電柱を折るなんて朝飯前だ。
ただ、艦娘は艦であり兵器。
艦娘にいくら意思があろうと指揮者の命令が無ければ動くことができない。
命令がないと艤装を展開しようと思っても展開できない仕組みになっている(原因不明)。
だから、有明はナンパ男に捕まっている鈴谷に艤装を展開し制圧するように命令した。
ただ、その命令は個性豊かな娘を戦闘兵器へと変えてしまう。
先程の鈴谷の状態では恐怖心を無くしてあげるために仕方がない面もあったが、有明は個性豊かな艦娘を戦闘兵器へ変えてしまう『命令』を出す度に、軍人としてでは無く人間として自分を殴り倒したい気分になるのだった。
* * * * *
鈴谷が制圧したナンパ男達は有明の通報で駆けつけた、警視庁の警察官(に扮した海軍警察隊艦娘担当官)が連行して行った。
一方、制圧した側の鈴谷はいつもの制服姿で今にも泣きそうな顔をしている。
それはナンパ男が怖かったからではない。
先程まで着ていた1番気に入っていた服が装備を展開(艦娘へ変身)したことにより、
実は装備展開は下着姿でやらないと、変身した際に変身前の服を消してしまう。
その為、通常は自室や更衣室で装備展開をするのだ。
「しれい・・・ごめんね・・・せっかく買ってくれたのに」
「気にするな。服は他にもたくさん買ったし、生きていればこの先、もっと良いものにも巡り会える。それよりも怖い思いをさせたな、ごめんな鈴谷」
「でも!でも!かわいいって言って貰えたあの服が・・・」
「そんなに気にするなって。服より鈴谷の方が大事だから」
「それでも!」
「いいから、今日は帰るぞ?」
「・・・・うん」
それから無言で帰路についた二人だったが、秋葉ハウスに到着してから、有明は鈴谷を元気づけようと「ゲームを一緒にやらないか?」と勧め、今までそんな物に触ったことの無かった鈴谷はドハマりし、毎晩徹夜上等でスイッチだのプレステだのを二人で遊んでいたので、こっぴどく暁子に怒られたそうな。
一週間の休暇では怖い思いもしたが、全体的に見ればたくさん服も買ってもえてゲームの楽しさも知れて鈴谷にとってはひと春の思い出となったと言っても過言ではないほどいい経験となった。
また、この徹夜上等ゲームでゲームの沼に浸かった鈴谷はのちのポーンペイ鎮守府のゲーム同好会部長になるのだが、これはもうちょっと未来のお話。
* * * * *
1週間の休みがあけ、出勤日となった有明・電・鈴谷は再び海軍厚木航空基地へと集結した。
3人は厚木基地の総務の人に案内されながら、庁舎内を移動している。
「電、青森の姫希は大丈夫だったか?」
「全く大した事無かったのです〜。もともと艦娘時代からおっちょこちょいな性格だけど丈夫な体が取り柄だった姉なので」
「そうか、それは良かった」
しばらく歩くと総務の人がある部屋前で足を止め
「有明大尉、電さん、鈴谷さんこちらの部屋です」
と告げながらドアを開けた。
そのドアの先にいたのは、これから仲間となる軍人と艦娘。
そこまで広い部屋では無いが、演台があり、何列かに別れて椅子が並べられていて、これから式典が行われるのはこの様子を見れば誰でも分かるだろう。
これから行われるのはポーンペイ派遣隊の発足・出発式典。
有明率いるポーンペイ隊は派遣隊という常設部隊となったため、その発足と出発式が慣例通りここ厚木航空基地で執り行われる。
やはり、こういったことをきっちりやるのも海軍の伝統であろう。
式典が行われる部屋では椅子の前に全員が起立をし、室内なので脱帽してるため頭を10度下げる敬礼で有明を出迎える。
有明が「座っていいよ」と声をかけると室内にいた全員が一斉に着席し、背筋を伸ばした。
これぞ軍隊と言った感じだ。
電と鈴谷は敬礼をしてきた人達と同じ列の空いていたパイプ椅子に着席し、有明は総務の人の先導で演台横の椅子に着席する。
演台横には2席用意されており、一席が厚木航空基地司令用、もう1つが有明用だ。
既に厚木航空基地司令は着席しており、部屋に入る有明顔を見ると睨みを効かせている。
司令の名は海軍少将、幕張将太郎。日本海軍東部方面艦隊厚木航空群の指揮官で、あの横須賀鎮守府提督の弟でもありる。
パイロット上りの将校で、艦娘の存在やその艦載機などを得体の知れないモノとして毛嫌いしている。
無論それを研究している有明も大嫌いだ。
総務の人が司会席に移動し「只今より、ポーンペイ派遣隊発足・出発式を始めさせていただきます」を開始した。
式自体はフォーマット通りに執り行われる為、特に問題なく淡々と進行する。
「では、これより任命を行います。有明隊長は演台へお進み下さい。隊員は私が役職と名を呼びましたら、演台へ進み任命書の受領をお願いします」
有明は言われた通り国旗と軍旗にお辞儀敬礼し、演台へと進む。
この『任命』の題目でやる事は演台にあらかじめ用意されている役職・階級・名前が入った任命書を有明が卒業式の校長のように手渡ししていく。
総務の人が準備が整ったのを確認し、名前を読み上げはじめる。
「ポーンペイ派遣隊副司令兼艦娘整備長 海軍少尉
「はいっ」と威勢のいい返事をし、演台へ進んでいくのはポーンペイ隊2人目の士官にして叩き上げのおじさん、宮津少尉。年齢は40過ぎたくらいで少し肌が黒めの海軍魂がこもってそうな男性だ。
「ポーンペイ派遣隊庶務 海兵長
次に演台へ向かったのは身長ミドル、頭髪ミドルヘアの女性軍人、宅野紗愛。主に事務全般を仕事とする庶務に任命された。
「ポーンペイ派遣隊付連絡官 海軍曹長
着任軍人のトリを飾るのは連絡官という何するのか分からない(少なくともポーンペイ派遣隊規模では絶対いらない)役職の宮古まい。もちろん、彼女は本当の海軍軍人では無く、清水グアム分基地司令調査のためNDSが送り込んできたエージェントだろうと有明はすぐに理解した。
続いて、艦娘の任命。
「ポーンペイ派遣隊司令室付 教育担当艦兼事務 駆逐艦 電」
「ポーンペイ派遣隊 艦娘第一艦隊旗艦 航空巡洋艦 鈴谷」
最初にいつもの二人が任命され、続いて新任の艦が任命される。
「ポーンペイ派遣隊 艦娘防衛艦隊 駆逐艦 睦月」
「ハイ!」
元気いっぱいに演台に向かったのは、茶色と赤色が混ざったような美しい髪と目を持つ、幼めな少女の姿をした駆逐艦睦月。艦として建造された当時は強靭な魚雷を搭載したことにより駆逐艦の戦闘力を底上げした睦月型、そのネームドシップである睦月は艦娘になってもその能力を遺憾無く発揮している。
しかも、ポーンペイ派遣隊に着任した彼女は台湾からの前線帰りで経験も豊富。既に改二となっており凛々しい顔つきへと成長し、紺色のパーカーを着用している。
在台湾日本海軍・高雄基地からの転属で艦娘レベルは74。
「ポーンペイ派遣隊 艦娘防衛艦隊 駆逐艦 霞」
「ハイっ」
ちょっと緊張で顔をこわばせながらも、胸張って演台へ進んで行ったのは駆逐艦霞。小学生の制服の様な衣服を制服とする彼女は横須賀艦娘学校を卒業したばかりの新米艦娘。艦娘レベルは23。
「以上、士官1名、下士官2名、艦娘4隻が任命されました。続きまして隊長訓示。有明海軍大尉、お願い致します。」
隊員達が一斉に立ち上がり、登壇している有明へと視線を注ぐ。
有明は隊員達を見渡し、真剣な面持ちで訓示する。
「諸君、これから行く場所は前線の先であり、これから前線となる場所だ」
「現状、多大なる艦娘達の努力と現場で奮闘する貴官らの働きによって未だ大部分が未知の敵である深海棲艦に対して徐々に優勢な状況へと好転している」
「だが依然、北アメリカとの最短航路上の太平洋は敵の攻撃が激しく航路の安定化は見通しが立たない」
「ミクロネシアはそんな情勢下においてオセアニアやアメリカ大陸との海上輸送において防衛上極めて重要な防衛拠点になる事は間違え無いと言えるだろう」
「よって本派遣隊はその為の前線基地構築を主任務とる訳だが、将来的にはそこを軸とした更なる前身が望まれる」
「故に諸君らには深海棲艦から世界を救う為の軸・・・詰まる所、
横須賀地方隊グアム分基地ポーンペイ派遣隊
司令 海軍大尉 有明誠」
お久しぶりです。
9月投稿はどこえいったやら・・・
りゅうおうのおしごとのあいちゃん達が高校生になった二次創作を書きたいなと思っているななゆーです。
夏コミに続き冬コミにも来てくださった方、ありがとうございました。
C95で頒布しました霞&電ちゃんメインの四コマ漫画「ど田舎鎮守府物語」はDL版も用意中ですので、ご興味ございましたら私のTwitter( @nanairo7yu )のフォローお願いします!
作者の為の用語集(2.5章)を挟んだのち、次回は第3章へと突入します。
次は久しぶりに戦闘シーンがあるかも?