鎮守府のつくりかた   作:ななゆー

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お久しぶりです。あいかわらずのノロ更新ですが、遂に2章に入りました。


第2章 有明誠という人間
2-1さらば諭吉


有明を司令室まで案内し、用を終えた吹雪は先に司令室を後にした。

しかし、吹雪が司令室から出てくるタイミングを待っていた少女。ーーー電が彼女を呼び止める。

「ちょっと、いいのです?」

「電ちゃん..鈴谷ちゃんは?」

「損傷はないのですが、念のため精密点検をさせてるのです。無人島じゃできないので」

「そうなんだ。ちょっとエアコンが効きすぎてるわね。ここは少し()()から、屋上に行きましょ」

寒いーーー本当に寒いわけじゃない。偉い人達の隠語で良くない事を話したい時に使う。

「わかったのです」

電もその旨を理解し、吹雪の進む後に付いて行った。

 

 

   *   *   *   *   *

 

 

グアム分基地は艦娘関連施設など多くの施設を仮設で済ませているが、司令室などの重要施設は頑丈な米海軍庁舎の一部を間借りしている。

電たちはその屋上へと足を運んでいた。

庁舎の屋上からは穏やかな海が一望できる。

そんな風景を見て電は

「この辺はちょっと前に比べて随分と穏やかになったのですね」

と声を漏らした。グアム、サイパン周辺に艦娘艦隊が初めて足を踏み入れたのは、七年前。

それから三年の歳月を掛けて80%以上、海域を奪還した経緯があるからだ。

「で、なんであなたがこんな辺境にいるのか、本当の理由を教えて貰ってもいいのです?」

と電が問を投げかけた。

「ほっんと、あなたって鋭いわね」

吹雪は呆れ顔で答えた。

「鋭いもなにも、『(ふね)』である艦娘にも関わらず、海軍軍人でもある艦娘なんて両手で数えられる人数しかいないのです。そのなかでも、最高位の海軍少将である久美浜舞雪がこんな前線に来たら、誰もが疑うのです」

「まぁ、そうだよねー。でもね電ちゃん。()()()()()が私、初期組の吹雪だって知ってる人間も艦娘もそうそう居ないから。制服着て髪を下ろしたら、みんな吹雪だと気が付かないしね。それに私、電ちゃんにも教えた記憶ないんだけどなぁ〜」

「それはそれ。これはこれなのです!」

「いや、そんな笑顔で言われても..はぁしょうがない。まぁ、電ちゃんなら、話してもいいか」

「でっなんでこんな前線にいるのです?」

 

「・・・・内偵よ」

電の質問から少し間が空いてから、吹雪はボソッと吐き捨てた。

それを聞いた電の顔もいつもの笑顔から、真剣な物へと変わる。

「吹雪ちゃんがわざわざ出てくるってことは....アレですか?」

「そう。海軍指定特別機密事案第三号の調査中なの」

「誰が内偵対象なのです?」

「グアム分基地司令、海軍中佐清水神人」

「!?...そいつ、やばいのです?」

「いや、どうやら私が出る程でもなかったわ。でも、気は抜けないわ」

「と言うことは...また彼を..NDS情報武官である有明誠を使うのですか?」

「そうよ」

そして、また二人の会話に間が開く。

2人の周りには海から聴こえてくる風の音のみが音として存在してた。

しばらく無言の状態が続いたが、今度は痺れを切らした吹雪から先に電に話しかけた。

「あなたの気持ちもよくわかるわ。だから、人事操作して彼を前線に送り込むことによって、中央である市ヶ谷から遠ざけようとしたんでしょ?」

「・・・・」

「でもね、彼は海軍にとって必要不可欠なのよ。あの高い能力をもつ人材は絶対手放せないわ。これは私だけの考えじゃなくて、海軍中枢部の総意なのよ」

電はようやく閉ざした口を再び開けた。しかし、いつもと違う感情的な口調で。

「だからって、だからって、だからって、有明ちゃんを使い古していい理由にはならないのです」

「それでも彼ほどの人材を暇にさせておくほど、海軍には余裕が無いのよ。こんな事言える立場じゃ無いけれど、今回は私に免じて見逃してくれないかな?」

 

 

しばらく吹雪をにらみつけたのち、無言のまま電は扉を開き、屋上から立ち去った。

 

 

   *   *   *   *   *

 

 

「これからはお前の上司になる。よろしく」

グアム分基地司令清水神人はこう高らかに言い放った。

「おっと、いきなりでしたね。あまりに嬉しかったものでつい舞い上がってしまいました。失礼。キチンとあなた宛ての新しい辞令を読まなくてはいけませんね」

ニンマリしながら、封筒を手にした清水はその中身を取り出し、辞令を読み出した。

「通達。貴隊の報告に基づき、ポーンペイ島に拠点設置工事が可能と判断された。

よってポーンペイ先遣隊をポーンペイ派遣隊に昇格する。拠点の整備・防衛に務めよ。

また、ポーンペイ派遣隊司令指揮下に第一艦隊を設立する。

これに伴い防衛担当艦として、駆逐艦 睦月(高雄基地所属)・駆逐艦 霞(横須賀艦娘学校所属)を配属する。

なお常設部隊に変更となったため、貴隊の管轄は横須賀鎮守府直属からグアム分基地に移管される。以上」

辞令を有明に手渡し、感慨深げに深呼吸をした清水はそれに続き、口調を変えこう言い放った。

「・・・つまり、君はこれから私の部下となるのだ!!私はこの日をいつも夢見ていた。

海軍大学校時代、何度も何度もお前みたいなクソ人間に出し抜かれて、この優秀な私が次席に甘んじる日々。

どんなに、どんなに、どんなにこの日を...君の上に立つ日を待ちわびたか!」

独りでハイテンションなっている清水。だが、有明はノーリアクションだ。ここまで大袈裟にやられるのはまれだが、嫌われ者の有明はこういった事態に慣れている。

それどころか、どうでもいいとすら思っている。

なぜなら今、彼の頭の中にあるのは『間宮のfreeWi-Fiを使ってログボ!ログボ!』というネットが無人島によって鎖されていた中毒者の禁断症状に支配されていたから。

「・・・派遣隊昇格の命、承知しました。用はそれだけです、上司殿?」

「あ??..ああ。...まぁ下がっていいぞ」

有明が悔しがるだろうと期待していた清水は、あまりにも普通の対応に呆気に取られながら、退出を促した。

そして、

「では、失礼します」

と有明は笑顔で司令室を出ていった。

 

 

 

   *   *   *   *   *

 

 

鈴谷の入渠、電の用事、有明の辞令。そして、防衛省への最終報告書提出。

各々の用事を終わらした一行は、吹雪とともに間宮へと足を運んでいた。

「なんでも頼んでいいぞ!間宮は社員食堂みたいなもんだから、商品みんな原価販売でやすいからな!」

約3週間インターネットから隔離されていた有明は、間宮のfreeWi-Fiによって水を得た魚のようなテンションで、懐が緩んでいるようだ。

「ホントに?なんでもいいの?じゃあ...これにする!」

鈴谷は目をキラキラと輝かせながら、『赤城専用!バケツパフェDX PREMIUM 3980円』を指していた。大量の生クリームと色々な味のアイス、フルーツがふんだんに使用されているそれは、パフェというか丼物だった。

だが、今のフィーバー状態の有明には痛くも痒くもない!

「あぁ頼んでいいぞ!吹雪も奢るぞ!」

「えっ!ホントですか!じゃあ、このチーズケーキセットでお願いします!」

吹雪の頼んだ『チーズケーキセット 800円』は可愛らしいチーズケーキに高級紅茶がセットの至極の逸品。

こんないいものを800円で提供できるのは、海軍だからであろう。

そして注文は電の番。だが、彼女の持っているメニューだけなぜか『黒い』。

その黒いメニューには金文字で『裏メニュー』と記してある。

それを確認した有明は察知した有明は、すぐにフィーバータイムを強制終了。

『ゴホン(流石にそれはやめてください)』と咳払いで電とコンタクトを取るが、電はそれを着拒。コンタクトに構わず裏メニューのデザートページを開く。

有明の額からは汗がダラダラ吹き出し始めた。

彼は1度だけ舞鶴の間宮タウンで、あの黒いメニューを見た事がある。

やれ懐石やら、フレンチコースなんかが掲載されていてランチの癖に万超はザラ。中には6桁もあったとか。

その当時は『やっぱり、舞鶴のような鎮守府は客人も多いから接待用にちゃんとしたものも用意してるんだな』とか軽く考えていたが、まさかこんな前線にもあったとは。

さすがの有明でも動揺を隠せない。

そんな有明を1ミリも気にせず、電は

「この栗テリーヌがいいのです〜♪」

と無邪気に店員のお姉さんに注文していた。

「ちょっと、そこの電さんや」

「なんだい、有明司令さんや」

「そのテリーヌいくらするのかね?」

「気にしすぎなのです〜。さすがにデザートひと皿はそんな高くないのです。たったお札1枚なのです〜」

「はぁ、たった英世1人かか。良かった。そうだよな、たかがデザートひと皿だもんな」

「諭吉ひとりなのです〜」

「諭吉ィィィィ。お前はいい奴だったァァ。なぜ、デザートひと皿で諭吉が旅立たなきゃならんのだぁぁ」

「えっとですね、このテリーヌは京都は福知山の足立音衛門製で、仕入れ代と特別輸送費がかかるのでこの価格なのです♪」

「なんっだと...」

そして運ばれてきたテリーヌを一口づつ試食した一行はその驚異の美味しさに舌を溶かし、あと2皿も追加注文して堪能したそうな。

「うっうっ。くそ。美味しいじゃねぇか。でも、このテリーヌのせいで財布のHPがまじやばだよ。しょうがねぇ、ちとATM行ってくるわ」

そして有明は防衛省共済組合のATMまでダッシュすることとなった。

 

全員が甘味を食べ終わって、お茶を飲みながらのまったりタイムに突入する。

「そのバケツパフェよく食ったな、鈴谷」

「まぁね〜。それより、この後の詳しい行動予定はどうなってんの?」

「あっ私から説明しますね〜」

鈴谷の質問には吹雪が応答した。

「みなさん、IDカードは持ってますよね?」

有明達は縦に首を降る。

「みなさんのIDで全て予約を済ませてるので、今夜は有明大尉が士官宿舎、艦娘の2人は艦娘宿舎に受付でカードを見せるだけで泊まれます。翌日は明朝、〇八〇〇時に出発予定の厚木行C-1輸送機で本土に向かってください。こちらもカードを見せるだけで搭乗できるようになってます」

「その後は休暇か?」

有明が真剣に質問する。彼にとって休暇は大変重要だから(積みゲー消費しないといけないからね!)。

「ええ。休暇です。1週間ゆっくり休んでください。その後は先ほど大尉に通達された辞令どうりです」

「そうか、了解した」

「では、私はこれで。まだ仕事が山積みですから、戻ります。有明大尉、ご馳走様でした」

そう礼を伝えながら、吹雪は独りで先に間宮を後にした。

「ふぅ。じゃあ、俺達も宿舎に向かうか。辞令の内容とかは歩きながら話すよ」

「わかったのです!」「はーい」

そして、3人は席を立つかと思いきや電が

「手を合わそるのです!」

と促し「ご馳走様でした」と挨拶した。それに続き鈴谷と有明も

「「ご馳走様でした」」

と挨拶する。

電は無人島での活動はチームワークが大切だからといい、初日にこの給食式挨拶を導入。以来、ポーンペイ先遣隊の伝統?となったらしい。

 

 

 

   *   *   *   *   *

 

 

 

有明は宿舎に向かう道すがら

・1週間休んだらまたポーンペイに行く

・今度は派遣隊になる

・ポーンペイ防衛用の艦隊ができて、睦月と霞が仲間に加わる

・ポーンペイに小さいながら、派遣隊用の建物ができる

ことを伝えた。

そして間宮から5分ほど歩いたところで、有明は電・鈴谷と別々の宿へ向かうため「また明日」と言って別れた。

有明は今日の宿『日本海軍グアム分基地士官宿舎』に到着した。士官宿舎と言っても、基地の隊員ではない士官達のための宿舎で、30室ぐらいある部屋はほとんどガラガラ状態に見る。

受付のおばちゃんにIDカードを見せてながら

「こんばんは、有明大尉です」

と話しかけると

「お疲れ様です。お待ちしておりました。こちらがお部屋の鍵になります。二階エレベーター前の203号室です」

と鍵を貰った。

どの基地の宿舎もこのやり取りで終わりなので、有明が部屋に部屋に向かおうとすると、おばちゃんが呼び止めてきた

「有明大尉お待ちください。あなたが到着したら、電話してほしいとの言伝を受けていますので、今からおかけしてよろしいですか?」

「はぁ、俺にですか?」

「はい、なんでも至急電らしいです」

といっておばちゃんは固定電話のダイアルをメモを見ながら回した。ダイアルが完了すると、受話器を有明に渡す。

「プルルルルルルン、プルルルルルルン」と発信音のあとに「もしもし?」と相手先が電話に出た。

「有明ですが?」

「あっ班長ですか!!宿舎に到着したんですね!お疲れ様ですー」

「その声は、境か?」

「はい、境です!」

「何の用だよ?こんな、南の島にいる奴に。てかもう班長じゃないし」

「いや、俺の班長は有明中尉ただ1人っす!」

「悪いな、今は有明大尉なんだ。しかも、現班長はお前だ。ちゃんと仕事しろっ。で、本当に何の用だよ」

「はは、手厳しい。えっと海軍幕僚長より命令です。『帰国次第NDSに出頭せよ』と」

 

 

 




ラブコメじゃないやん、鎮守府作ってないやんとお思いのみなさん、今しばらくお待ちください。
今回も、ルームメイトが出てきませんでしたが、もうすぐ、もうすぐ出てくると思います。こちらもお待ちください。ごめんなさい。

と謝罪を済ましたところで...
いきなりですが、私...《次のコミケに出ます!》
小説ではなく、漫画で私はそのシナリオで参加なのですが金剛物の王道ラブコメです。(ちゃんとラブコメしてるよ!)
サークルスペースは【1日目 東 P-22a】『にじいろ』でお待ちしています!
こちらの詳しい情報は決まり次第、活動報告にてお知らせします。

次回の更新ですが、夏コミ後になります。夏コミ前に一次創作の1話をUP予定です。そちらもよろしくお願いします。m(*_ _)m
でわでわ、熱中症には気をつけてお過ごしください。
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