どうも三國志のシーラカンスです   作:呉蘭も良い
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なんとか休みの間に一話アップ出来ました。

オリジナルな設定がありますが、ご了承下さい。


虎が可愛い事を確認した今日この頃

さて、呉郡の賊も粗方片付いて来て、次で最後の大詰めの段階まで来た。

 

その間、俺もそこそこ奮戦して戦場って奴に慣れてきた。

……いや、わかりやすく言おう。

俺も人殺しに慣れた。

 

最初こそ雪蓮の馬鹿野郎のせいで無我夢中だったが、一度やったら慣れたのか次からはあまり何も考えずに効率良く殲滅する方法とかを普通に考えていた。

 

ふん、所詮この世は弱肉強食、強ければ生き、弱ければ死ぬだけよ。

 

と、若干どこぞの包帯ミイラ人斬りの様な思考に俺もなってきたわけだ。

 

いや別に悪い事をしたり、殺しが楽しい訳では無いけども。

 

そんな事より困った事がある。

あの説教以来、俺に対する回りの態度がおかしい事だ。

 

雪蓮はもう問題無い。

一時は俺に気を使っていたりしたが、それも直ぐに元に戻った。

 

問題は兵士だ。

 

何やらこいつらは俺が恐ろしい人物か何かと勘違いしているようで、俺の近くに来ると凄くビクビクする。

 

……屈強な男達に怯えられる俺の気持ちにもなって頂きたい。

 

軽く耳に挟んだが、どうやら俺は“守護鬼(しゅごき)”と呼ばれているらしい。

 

……何だよ守護鬼って、どう見ても可愛いプリティーな十二歳の少年だろうが。

 

後から聞いた話、どうやら俺の戦の様子と雪蓮への説教からそう呼ばれる様になったらしい。

 

……恥ずかしいから止めろと、声を大にして言いたい。

 

 

_____

 

 

「蒼夜、少し困った事が起こった。」

 

行軍を中断して一時休憩をしている最中に冥琳が俺の所に来て、そんな事を言い出した。

 

「どったの? また雪蓮が何かやらかした?」

 

「どうしてそこで雪蓮が出てくる?……いや、良い何も言うな。」

 

まぁ彼女は前科が沢山ありますからねぇ。

 

「実は次の賊の事だが、その賊が少し変でな? お前の意見を聞こうと思った訳だ。」

 

「別に俺で良けりゃ構わんけど、あまり期待すんなよ?」

 

浅知恵の廖化とは私の事です。

 

「うむ、次の相手は長江近辺の邑を根城している江賊でな? 数は二百程度と少し多いくらいで問題は無いのだが、奴等はどうも賊らしくは無いのだ。」

 

「ごめん、話が見えない。 どゆこと?」

 

「あぁ、今までの賊は近隣の邑を襲ったりとわかりやすい悪事を働いて討伐するに何も問題無かった訳だが、この江賊はそういう事は一切行っていないようだ。」

 

んん?

 

「……それって賊なの? 一体何を以て賊と言われている訳?」

 

「奴等は長江を行き来する商船を護衛する変わりに金を取っているらしい。 これは私達の許可無くして行っている事だが、実際に他の賊からその商船を守ったりもしている。 だから感謝される事もあれば、うっとおしがられて、賊扱いされる事もある。 一応は分類的に強盗扱いとも言える。」

 

め、めんどくせぇ。

 

「聞けばこの江賊は文台様が健在している頃から存在しているらしくてな? 恐らくだが、文台様も暗黙の了解をしていたのではないかと思われる。」

 

「えぇ? じゃあもうこっちも暗黙の了解したら?」

 

「それも考えたが一応賊扱いされているし、雪蓮の為にも後一つ功が欲しい所でもある。 とは言え近隣からもそこそこ評判の良い奴等でな、こちらで討伐して人心が離れるのも避けたい。 そこで私に案が無い訳ではないが、お前の意見を聞こうと思ってな。」

 

いやいや、軍師はあんたでしょ?

自分で決めなよ。

って言うか、雪蓮と決めろよ。

 

「あー、んー、……もうその江賊を孫家で取り込んだ方が良いんじゃない? んで、賊は解散したとか言って功績にすれば良いでしょ。」

 

俺のその言葉に冥琳は待ってましたと言わんばかりに笑顔で頷いた。

 

……つまりここまでは予想通りな訳か。

嫌な予感が。

 

「うむ、私もその案で行こうと考えていた。 そこで、その江賊相手に交渉しに行こうと思うのだが……」

 

いゃぁー! 待って! その先は言わないで!

 

「……お前も、来てくれるよな?」

 

「……ハイ。」

 

冥琳の顔には拒否権なんて存在しなかった。

 

 

_____

 

 

ドナドナの気分ってこうなのかな?

 

現在、俺は冥琳に連れられて江賊の根城にしている邑に向かっている。

 

一応交渉人兼護衛って事らしい。

 

もうめんどくさいから交渉の席に着いたら、冥琳の後ろに黙って立ってよう。

 

と俺が売られて行く子牛の気持ちになっていたら、目的の邑が見えて来た。

 

どうやらこの邑が例の江賊が拠点としている場所らしい。

 

一応前以てこの邑に人を派遣して交渉の席を設けて貰ったが、実際に目の前にして、やっぱテメーら殺すってなったらどうしよう?

 

俺一人で冥琳を守りきる事が出来るだろうか?

って言うか、これ俺の命も危ないよね?

 

そう俺がネガティブ思考に陥っていたら、ついに邑の前に着いてしまった。

 

……今からでも遅くない、引き返そうぜ冥琳?

 

俺が帰りたい気持ちで一杯の中、邑の前で俺達の到着を待っていた屈強な男に冥琳は挨拶されて邑の中へと案内されていた。

 

俺も急いでその後を追い、最早後戻りが出来ない状況だと悟った。

 

 

_____

 

 

俺と冥琳が屈強な男に案内された場所は、この邑で一番大きな屋敷……とまでは行かなくとも、中々大きい建物だった。

 

……賊のくせにまぁまぁ良い所に住んでるじゃねぇか。

 

その建物の恐らく客間であろう場所で待たされている間、部屋を眺めながら俺はすっかり諦めの境地に達していた。

 

……ここで一気に武装した奴等が入ってきたら死ぬな。

 

俺は心の中で必死に交渉でお願いします、と相手に祈っていた。

 

「……お待たせして申し訳ありません。」

 

来た!

と思い、俺は直ぐに部屋へと入って来た人物を見た。

 

この江賊の頭目であろうその人物は、帯剣こそしているが、他に護衛等を連れている訳でも無く、純粋にこの交渉の席に着いてくれるらしい。

 

その事にほっと一安心するが、それ以上に俺はある衝撃に襲われた。

 

……その頭目が俺とさして年齢が変わらないであろう女の子だったのだ。

 

いや、いやいや、……まぁ確かに冥琳達が女性である事を考えたら、そう言う事もあるかもしれん。

 

でも、賊だよ? 江賊だよ?

 

……一体この子はどんな人生歩んでいるんだよ。

ちょっと、ベリーハード過ぎない?

 

俺達の目の前に現れた頭目であろう女の子は、目付きこそ恐いが、身長は俺とそう変わらず、肌を健康的に焼いており、髪をお団子に纏めて、何と言うか、賊と言われなければ気付かないのでは無いかと思う様な風貌をしていた。

 

ギン!

 

ひぇっ!

に、睨まれた!

 

俺は一瞬、もの凄い目力でこの女の子に睨まれた。

その迫力は先日に出会った虎の比では無く、誇張無しに一瞬身体が強張って動けなかった程だ。

 

……やべぇよ。

こいつ若くして賊の頭目に成っただけあるわ。

多分戦ったら俺より強いかもしれん。

 

……冥琳は怖く無いのだろうか?

正直、俺は結構一杯一杯なんだが。

 

俺が背中に凄い汗をかいてる中、この女の子の挨拶が始まった。

 

「ほ、本日は我が邑へようこそおいでくださいました。 わ、私は、この邑の者を纏めている、姓を(かん)、名を(ねい)、字を興覇(こうは)と、も、申す者です。」

 

……あれ?

……もしかして緊張してる?

 

って、違う! 違う!

こいつ甘寧かよ!

……そういや甘寧って元は賊だったっけ?

……道理で迫力ある筈だわ。

 

「あぁ、私は此度貴殿等と交渉する為に孫家の名代として参った周 公瑾だ。 よろしく頼む。」

 

わぁ、堂々と名乗って、冥琳格好いい。

あ、俺も名乗らなきゃ。

 

「同じく、交渉する為にやって参りました、廖 元倹と申します。」

 

「そ、孫家の周 公瑾様のご、ご高名は常々、そ、そちらの元倹殿の名もまた聞き及んでおります。 こ、こちこそ、よろしくお願いいたします。」

 

あ、やっぱ緊張してるのか。

さっきのは睨まれたんじゃなくて、純粋に緊張して目に力が入っただけか。

……それにしてもすげー怖かった。

虎以上の迫力を持つ女の子に初めて出会ったわ。

 

……と思ったが、そうでも無かった。

夏候惇とか曹操もあの時の雰囲気は穏やかだったのに、謎の迫力があったわ。

……後は戦闘中の雪蓮とか雪蓮とか雪蓮とか。

 

いやでも流石将来の大将軍、甘寧の名は伊達では無かった。

俺みたいな、なんちゃって大将軍とは訳が違うね。

 

って言うか、俺の名前が知れ渡ってるってどういう事?

もしかして俺の本でも持っているのだろうか?

……な訳無いよな?

 

どういう事だってばよ?

 




という訳で、甘寧さんを江賊と表現させて頂きました。
まぁ本当は全然違うんですけどね?

-追記-
紅なのか江なのか
誤字報告で両方来ちゃったので、もう江で統一しようかと思います。







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