どうも三國志のシーラカンスです   作:呉蘭も良い
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遅くなって、大変申し訳ありません。
インフルって怖いね。
暫く寝込んでました。


歪みを作る者

「あれが陳留か……」

 

「やっと着いたー。 凪ちゃーん、もう疲れたの」

 

「いや、沙和……これからが本番なんだが」

 

「もう竹籠売るのめんどくさいの、真桜ちゃんもめんどうだよね?」

 

「そう言うてもなぁ、……全部売れへんかったら、邑の皆に合わせる顔がないやろ?」

 

「そうだぞ。 折角こんな遠くの街まで来たのだから、皆で協力してだな……」

 

「うぅ、……わかったのぉ」

 

「なんや最近は立派な州牧様が来たとかで治安も良うなっとるみたいやし、いろんな所から人も来とるからな。 気張って売り切らんと」

 

「……そうだ! 人が多い街なら、皆で手分けして売った方が良くないかな?」

 

「……うん、一理あるな」

 

「よっしゃ、じゃあ三人別れて一番売った奴が勝ちって事でええか? 負けた奴は晩飯奢りやで!」

 

「……はぁ、真桜、貴重な路銀を……」

 

「乗ったのぉー!」

 

「沙和まで……」

 

「二対一で可決やな。 凪もそれでええやろ?」

 

「……はぁ、仕方ない……なら夕方に門の所に集合だ」

 

「おーなのっ!」

 

「よっしゃ、晩飯はもろたでぇ!」

 

 

_____

 

 

良く晴れたある日、俺、姉さん、霊里、華琳さん、春蘭さん、秋蘭さんのこのメンバーで街の視察をする事になった。

 

何故このメンバーかと言うと、文若さんは城を空にする訳にもいかないので留守番、季衣と地理は今朝に山賊のアジトが判明したのでその討伐に行ったからだ。

 

「街も発展して来て、良い賑わい方ね」

 

「はっ、商人だけでなく、旅芸人も訪れる様になっている所を見ると、順調かと」

 

……順調、ねぇ。

大魔王ゾ○マじゃないけどさ、光ある所にはまた闇があるもんだ。

良い発展をした分だけ、どっかに皺寄せが行ってなきゃ良いけど。

まっ、その確認をする為に視察するんだけどね?

 

「さて、視察する場所は中央と右と左、それぞれの大きな道沿いを中心に、その近辺よ? さて、誰が何処を見て回りましょうか?」

 

「はいっ! はいはい! 華琳様! 私とそこの道を行きましょう!」

 

……言うと思った。

 

「じゃあ姉さん、俺とこっちの道行こうか?」

 

「ん、良いよ」

 

「ふむ、なら霊里、私とこちらの道に行かないか?」

 

「了解しました、秋蘭様」

 

俺達は直ぐ様二人一組を作り、残りの道に行くのを決めた。

 

「では見て回った後に、再び門の所に集合よ」

 

華琳さんの言葉に、俺達は解散して、それぞれ見て回る場所に向かって歩き始めた。

 

 

_____

 

 

俺と姉さんが見て回る事になった場所は、街の中央通りの方で、市場がメインだ。

と、言っても、市場の方は良く行くので、今更視察する事は無い。

だから、その裏手にある商店街と言える場所を先に視察する事にした。

 

「食事処ばっかだなぁ。 季衣ならここら辺に詳しいんだろうけど、……あ、あれ新店舗だ」

 

城での業務が多く、街に出るのは警邏の時くらいの俺はここらの店に入る機会は少なく、殆どの店を知ってるのに知らない状態だったりする。

 

……食べ歩きとかしてぇな。

 

「あっ、あっちの点心は美味しかったよ? そこの食事処も中々良かったなぁ」

 

「……なんで詳しいんだよ」

 

「いや、僕って自分で料理しないでしょ? それに君と違ってそこまで忙しい訳でもないからさ、ここら辺には良く来るんだよね。 地理ちゃんや霊里ちゃんとも来る機会は多いなぁ」

 

……くそぅ、くそぅ!

俺だけハブりやがって!

 

俺の嫉妬の視線に、姉さんは苦笑いしていた。

 

そんな風に二人で街を歩いていたら、ある露店の前で人だかりが出来ていた。

 

「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!」

 

そこに居たのは、露店商らしき女の子だった。 売っているのは、……竹籠?

 

……何も珍しくねぇ。

何を寄って見れと言うのだろうか?

 

よっぽどこの女の子の素晴らしい大きさの胸の方が見所あるわ。

ま、孫家で鍛えられた俺には意味無いけどな!

ここにいる他の男と違って、俺は胸に釘付けなんかにならんぞ!

 

「あれ? 曼成ちゃん?」

 

「んぁ?……おぉ! 威方さんやないですか! なんでここに居るんですか? 後、華佗の兄さんは?」

 

……知り合い?

曼成とか言うから、一瞬張曼成かと思ったぜ。

 

「今、僕はこの陳留で働いて居るんだよ。 曹 孟徳様って知ってるかな? その人の下で働いているんだ」

 

「知っとるも知っとる! 最近州牧になられた偉い人やないですか! へぇ~、威方さん凄い人に仕えとるんやなぁ。……で? そこの兄さんは?」

 

「この人の弟。 元倹だ」

 

何も間違っていないぞ?

説明してない事が多いだけでな。

 

「よろしゅう、元倹さん。 うちは() 曼成(まんせい)、好きに呼んでやぁ」

 

……おろ?

 

「ちなみに名は?」

 

「ん? (てん)やけど?」

 

ほぅほぅ、李典か。

うん、魏の名副将だな。

 

うーん、出来れば勧誘したいなぁ。

 

「それで? 家の姉さんとは何で知り合いに?」

 

「ほら、前に僕が折り畳み式の将棋盤を見せたろう? あれの制作者が曼成ちゃんなんだよ」

 

なんと!

あの技術の無駄遣いはこやつの仕業か!

マジで仲間にしたいなぁ。

 

「それで? 今日は竹籠売りかい?」

 

「せやねん。 邑の皆が一生懸命作ったのを売りに来てん。 どう? 威方さんも一つ買って行かへん?」

 

……断り辛い言い方しやがって。

 

「ははっ、良いよ。 知らない仲じゃないしね、一つ貰おうかな」

 

「毎度! いやぁ、助かりますわぁ」

 

「曼成さん、君は商人なのか? てっきりあんな将棋盤を作るくらいだから、技術屋かと思ったんだが?」

 

この手慣れた感じ、流石関西弁だと言いたい。

ってか関西弁とか今更突っ込まんぞ、昔から何度か聞いた事あるしな。

 

「あー、……ちゃうねん。 邑で暮らすなら何でもせなならんのよ。 個人的には技術屋とは思ってるで? けどこういう事もするっちゅうだけの話や」

 

……ふむ、成る程なぁ。

 

「あの将棋盤見て思ったけど、君良い腕してるよ。 興味があったら、孟徳様の下で技術屋として働かないか?」

 

「やぁ、そう言うてくれるのは嬉しいんですけどねぇ。……まぁ邑の事もあるし、連れも居るんで、ちょっと今は答えられへんなぁ」

 

だな。

ちょっと性急過ぎたか。

 

「ま、興味が沸いたら何時でも訪ねてくれ」

 

「うん、僕も曼成ちゃん達が来てくれたら嬉しいな」

 

「ははっ、凪達にも相談してみますわ」

 

そう言って、俺と姉さんは李典と別れた。

 

 

_____

 

 

そして門の前で華琳さん達と集合した。

 

……集合したのは良い。

 

「……何で皆して竹籠持ってるんですかね?」

 

何? 流行ってんの?

……竹籠ブームって何だよ。

 

「今朝、部屋の籠の底が抜けているのに気付いてな……」

 

「ふふっ、秋蘭の事だから気になって仕方なかったのでしょう?」

 

あぁ、成る程。

秋蘭さんらしいな。

 

「春蘭さんは? 何か中に色々入っているみたいですけど?」

 

「うむ、季衣や地理にお土産を買ってやろうと思ってな? そこで竹籠を買って中に入れたのだ」

 

へぇ、律儀だなぁ。

 

……俺は一瞬そう思ったが、そこに文若さんの名前が無い事に気付き、少し悲しくなった。

 

……今度、ドライフルーツでも差し入れしてやろう。

 

「そう言う貴方達も竹籠を持っているじゃない? 何か理由でもあったのかしら?」

 

「この竹籠を売っていたのが、姉さんの知り合いでしてね? それで知り合いのよしみで買っただけですよ」

 

こうして理由を話すと、一番しょうもない理由なのは俺達だな。

 

俺達がそんな風に、少し雑談をしていると、急に横から声がかけられた。

 

「……そこのお主……」

 

「……誰?」

 

声をかけられた方を見ると、そこにはあからさまに怪しい占い師がいた。

 

その占い師は華琳さんに向かって強い口調で言う。

 

「そこのお主、……強い相が見えるの。 希にすら見た事の無い、強い強い相じゃ」

 

「何が見えるか言ってご覧なさい」

 

華琳さんがそう言うと、春蘭さんや秋蘭さんが諌めようとする。

だが華琳さんはそれを一喝して、占い師に続きを促す。

 

「力の有る相じゃ。 兵を従え、知を尊び、……お主が持つは、この国を満たし、繁らせ栄えさせる事の出来る強い相。 この国にとって、稀代の名臣となる相じゃ……」

 

…………。

 

「ほほぅ、良く解っているじゃないか」

 

「……国に、それだけの器があれば……じゃがの」

 

……。

 

「……どういう事だ?」

 

「お主の力、今の弱った国の器には収まりきらぬ。 その野心、留まるを知らず。……あふれた野心は、国を犯し、野を侵し、……いずれこの国の歴史に名を残す程の類い希なる奸雄となるであろう」

 

……治世の能臣、乱世の奸雄、か。

曹操に対する有名な評価だな。

って事はこの占い師は許劭か?

……まぁそこはどうでも良いか。

 

「貴様! 華琳様を愚弄するか!」

 

「秋蘭、お止めなさい」

 

「しかし、華琳様……」

 

秋蘭さんも、華琳さんが関わると冷静じゃなくなるねぇ。

 

「ふっ、乱世の奸雄大いに結構。 その程度の覚悟も無い様では、この乱れた世に覇を唱える等出来はしない、そういう事でしょう?」

 

そういう事だね。

覇王を名乗るんだ。

そんなん今更過ぎる。

 

「……それからそこのお主」

 

ん、俺か?

 

「お主自身が大局を変える事はあり得ぬであろう。 しかし、お主に関わる者は、良くも悪くも少しずつ変化が生じておる。 それら小さな歪みは全て合わせて大きな歪みとなり、結末を大きく変える事となる。……だが、それが主の望む結末になるとは限らぬ、くれぐれも人との接触は用心なされよ」

 

……もう遅い。

この時代の重要人物には結構会ってしまっている。

 

「俺自身に大局を変える力が無いなら、そこの力ある人物に変えて貰うさ。……ほらよ、礼だ」

 

廖化にそんな力が無い事なんて今更だろう。

そんな鍵を握る人物じゃないのは、俺が嫌と言う程、良く知っている。

 

だから華琳さんなんだ。

この時代屈指の英雄にして、時代の鍵を握る人物の一人。

 

この人には、これから先を託すに足る。

俺に平穏と安寧をもたらす為に、働いて貰わねばならない。

その為に、俺はここに来たのだから。

 




主人公は周りに影響を与える者です。
ですが、主人公一人でどうこうは出来ません。

それが、この作品の主人公の本質です。







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