“プロモーター序列第一位”里見蓮太郎の物語   作:秋ピザ

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シリアスっぽいブラックコメディってのを書いてみたくなったので。
でもどんなノリにするべきが現在模索中なのでしばらくは色々安定しない可能性大。


神すらも墜とした男と、それを堕とした少女。
墜ちた英雄


なんか、ある日気付いたらマズいことになっていた。

俺が顔を隠してやっている悪事が正義の行動だかなんだか知らんが褒め称えられる形で新聞に乗ってしまったのだ。

これまでは誰も気にしないから堂々とやれたが、これでしばらくは手口を変える必要があるだろう……

というか、そもそもあまりに寂しくて悲しいからってイニシエーターでもなんでもなくて、親に捨てられたりなんだかんだで身寄りのなかったりそうでもなかったりする『呪われた子供たち』を回収しては精神がグズグズになるまで依存させて、人間として終わってると言ってもいいほど依存し合って生活しているのがそもそも間違ってるんだろうけどさ。

まぁ仕方ない。

 

かつては『英雄』『星墜とし』『雷神』とかなんだかんだ言われてた俺も気付けば17で、好きだった人もどこかへ消えて、家族以上に大切だった相棒も死んだ。

そして今じゃ預金生活状態、ねぇ。笑えねぇ冗談だぞコレ。

預金の桁が11桁くらいあるから使いきることは無いと思うが、英雄も墜ちたもんだと思う。

かつて相棒と共にゾディアックガストレアすら沈めた最強級のプロモーター、なんだけどねぇ。

今だってIISOさんの方から新たなイニシエーターとコンビを組み直さないかとお誘いが来るんだがどうにも気が乗らんし、そもそもガストレアをぶっ殺すことにすら情熱を抱けんようになってきた。

 

相棒を失ってすぐの頃、俺は荒れに荒れて……人間の暮らせるエリアを出て、ひたすらガストレアを殺して回っていたことがあった。

その時は半年ほど、1週間の内5日を外で暮らし、2日だけ休養と補給をして……という循環だったのは懐かしい思い出だ。

今となればあの頃は今よりかはまだマシだった気もするしな。

少なくとも被害者はあの頃の方が少ない。

でも良く考えれば色々な意味でまだ最近の方が心は安定しているし、なにより怒らなくなった。

他人に対して怒るという行動に虚無感を覚えるようになったとも言うが、怒らなくなった。

だってほら、今俺は……

「なぁティナ。流石に俺もこれまでに拾っていた人数が二桁を越えた辺りで流石に多いことは反省するけどさ……銃を向けるのだけはやめてくれるとありがたいのだけど」

 

銃を向けられちゃ居るけど、何も感じない。

恐怖を覚えないとかそういう話ではなく、恐怖も怒りも驚きも焦りも何もない。

ただこのまま撃たれたんじゃ死ぬんだろうなー。とかくらいしか思い浮かばない。

これが俺を蝕んでいる現状だ。

なんか恨みを抱えたは良いけど殺しすぎて自分が何やってんのか分からなくなって……で、気付けば色々虚無感が湧いてきて、でも寂しいから適当に浚っては精神を腐らせて依存させて、人間として終わったもの同士つまらない人生を過ごして時間を浪費している。

かつての俺からすれば考えられないに違いない。

あの時の荒れていた頃の俺も、かつて相棒や好きな人も生きていた頃の俺もきっとこう言うだろう『お前は里見蓮太郎じゃない』と。

里見蓮太郎は英雄だから皆を救ってしまえるし、実際に救う。

そして悪も正義も関係なく、守るんだ。

しかし今の俺はただ英雄として称えられていた時より異常に強くなった力で好きな奴だけを救うし、他は死のうが気にしない。

そして悪も正義も何もかも関係なく、気に入ったかどうかで守るかどうかを決定する。

まるで正反対だよ。別人のようだ。

「おにーさん。私は言いましたよね。おにーさんには私が居れば十分だって」

それにほら、今俺はこの子……ティナが何を言うのか、その言葉が何を意味するのか。そして彼女が何をやったのかを理解して尚、何も感じないんだ。

「ですから、私以外の『呪われた子供たち』は要りませんよね?なので皆殺してきました」

 

数にして総勢十人ほどの連続殺人。その言葉に多少背筋が冷えたりはするが、まぁ別になんとも思えない。

どうせこの子が殺してしまったのは俺が悪いんだろうし、何より他の子たちの存在を認めさせられなかった俺の落ち度だ。何故かそう冷静に考えている俺すら存在している。

 

そもそも、ティナは出自が特殊過ぎて馴染めなかったのかもしれないがな。

一人だけ体を改造されていて、BMIによるサポートも受ければ超人的な狙撃を行えるという能力の高さ。

そして四六時中俺から離れないくらいに依存しきっている精神。

確かにあまり多くの人間とは馴染めないだろうし、そもそも俺を独占したいティナからすれば周りの子たちは邪魔でしかなかっただろう。

……うわぁ、やはり当分他の子を拾ってくるのは自重した方が良いなこれは。

まぁ、一応ティナには注意しておかないと。殺人はよくない。

盗みも暴力も違法なこともなんでも許容出来てしまうほどにイカれきった俺ではあるが、殺人だけはダメだと思っている。

だからそれは伝えておこう。。

「なぁティナ?殺人は本当にダメと言っただろう?巷に溢れるクソヤロウどもに全員流して目も当てられない状態にする程度ならともかく、自分で殺しちゃうなんてよくない。人が人を殺すのは禁忌……とまでは言わないけどさ。してはならないことなんだよ」

 

「でも、そうしないとおにーさんは私のものにならないです」

 

「それなら、当分の間はティナとずっと一緒にいるよ。それでいいかい?」

 

俺は感情もなにも伴わないまま、若干義務的にティナの殺人を咎めた。

別に他人が殺人をするのはどうでも良いんだがね、身内と俺自身はダメだって自分で決めてるんだ。

 

理由か?まぁ簡単なことだ、相棒の遺言だよ。

相棒が死ぬ間際に、人を殺すことだけはするなって言ったんだよ。

だから俺は、人殺しだけは決してやらない。

どんなに怒ってても死ぬ直前のギリギリで生かす。それだけは俺の譲れないポリシーだ。

それがあるから、俺は身内が人間を殺すことが大嫌いだ。

いや、流石に目の前で知らんやつが同じく知らんやつを殺してるくらいじゃ反応はしないが……な?

今は誰よりも俺の近くにいて、その上誰よりも俺に依存してくれているティナが人を殺すのは少々個人的ポリシーに反する。

だから俺はティナが人を殺さないようにする必要がある。

つまりは要求の通り当分ベタベタにくっついて過ごさないといけないってことさ。

まぁ、苦痛じゃないんだが、そこまでいい気分ではないよ。ずっと一緒と言うのは多少なれどクるものがある。

「……じゃあ、絶対に離れないでくださいね?離れたら何をしてでも捕まえますから」

 

「了解……っていきなりだなこりゃ」

 

ティナは絶対に離れるなと事実上脅迫みたいなものを言うと、一秒と空けずに流れるような動作で俺の背中にしがみついた。

これは本当に離れそうにないだろう。

前にも同じことがあったのだが、その時は丸1日の間は俺が少しでも剥がそうとするとパニックを起こすような有り様だった。

どんな外道なことでも出来る自信がある俺とはいえ、身内の、それも女で、さらに子供が泣いてるとあっちゃ放っておけないんだわ。悲しいことに男の性ってやつでさ。

……なんだって?ロリコン?いやいや、そういうのとはまた違うさ。ただちょっと身内に甘いだけと言ってくれた方が助かるよ。

「おにーさん……」

 

それに、俺がもしロリコンなら……

ティナの所業は到底受け入れられなかったと思う。

なんたって、幼女ばかり10人近くを殺したんだから。

つまり俺はロリコンではない!ハイ論破!

 

……って、何してんだか。




補則……原作との相違点
・蟹座のゾディアックが欠番でなく討伐されている。
・延珠、木更死亡。
・蓮太郎大幅強化。
・ティナちゃんが最初から仲間。
ちなみに強化の内容は数話以内に明かす予定。

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