“プロモーター序列第一位”里見蓮太郎の物語   作:秋ピザ

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1週間も掛かってすみません。投稿です。


心の底から先生に『死ね』って伝えたい

「フックッファッヒャッヒヒヒヒ……ついに完成したよ!蓮太郎くん!」

 

「なんか笑い方混ざりすぎてないか?」

 

手術開始から数時間後。

なんかティナに膝枕されつつウトウトしてたら気付けばマジで寝落ちしてて三時間以上経ってた。

んで、気付くと先生が不気味極まりないしやたら複数の笑い方が混ざった笑いを撒き散らしながら、赤いカーテンにスポットライトを当てていた。

なんでここにスポットライトと赤いカーテンがあるのかはさておくとして、つまりこれはお披露目会的な物なのだろう。先生なりの。

いくらお披露目会と言えどやるのが先生なのだから途中で嫌がらせみたいなのが入っててもおかしくはないな。

「ふむ……今何か私がこのお披露目に当たってなんらかの嫌がらせを準備しているのではと思われた気がするよ。心外だね」

 

……勘が珍しく鋭いな。先生。

言ってることは180度くらい間違ってるけど、少なくとも俺が先生による嫌がらせを予測していることは間違いないね。

これでも付き合いは長いし、とりあえず警戒しといて損はない。

俺は電磁波を飛ばし、先生が何を用意しているのかを事前に知ろうとする……が、カーテンの裏にアルミホイルでも張ったのか向こう側の状態が分からない。

 

対先生においてこれは大きな痛手だ……逆転する手段を考えておかないと。

そう考えてポケットの中身を確認する。

記憶が正しければここには対先生用の切り札が入っていた筈だ。

そう、それは白い粉。全人類がいまだに関係を断ち切れないアイツ……あえて英語表記に拘るならSolt、拘らないなら塩。それが対先生用の切り札だ。

先生は死体愛好者。それと結構様々な信仰にも詳しく、その中でも仏教及び神道の方面にはそっち系の専門家並の知識量がある。

いわく仏教、神道系は嫌いな教授がそれ関係の知識をひけらかしてくるもんだからそれをバカにするためだけに覚えたらしい。

それで専門家並の知識を得る訳だから、天才ってもんは恐ろしいよな。

まぁ、こう言うのを才能の無駄遣いと言うのだが。

まぁそれは置いといて、今は先生が懐から取り出した謎のボタンに注目しよう。

そこにはDANGERと書いてあるが、良いのか?危険なんだろ?

……いや、先生が危険なくらいで止まるような人じゃないのはおれも知ってるさ。

それに、本当に危険なら何かしらの準備をしているだろう。

だが電磁波で見る限りどこにも怪しいところは無いし、不自然に電磁波を防がれているところもない。だからきっと大丈夫だ。

しかし相手が先生という人類史上まれに見る天災であることから、いくら警戒しても足りないということは無いのだが。

 

なんたって随分と昔、先生は俺の体を(半分ほど欠損していたが)半分以上機械に変えてくれやがったことがあった。

あれは結構強かったが……とりあえず、その材料の強さの他に特筆するべき点は無かった。

しかしそれは当時も今も最強の対ガストレア金属であり……とりあえず、要約すると恐ろしいということだ。

話を戻そう。

 

先生は今、ボタンを持っている。しかも『危険』と英語で書かれた物をだ。

これを取るべきか、取らぬべきか。それが問題だ。

……まぁ、当然ながら取らないがね。

取ったところで意味が無いのは知ってる。先生のことだから予備を用意しているに違いないのも知っている。

なんたって白衣の裏に10個くらい似た形のものを見付けたからな。

まったく、用心深すぎるだろ先生。

 

どうせそんなに用意したって無駄なのにな。

電流を変に流してやるか強烈な磁力を浴びせるかすれば簡単に全部壊せるんだ。

まぁしかし、先生の備えはきっと俺対策では無いのだろうよ。

何故かって?そりゃあ簡単さ。

昔からの知り合いだから、先生の考えそうなことはなんとなく分かってるんだ。

きっとあれは無駄に凝った演出をするための物だろうさ。

一つ一つリモコンを分けてるのは訳が分からないが、きっとそうだそのはずだ。

俺は先生の懐にある謎のリモコンをサプライズ用だと思い込み、ひとまずあの少女がどうなったのかを見ることにした。

「さぁ蓮太郎くん、見たまえよ……これが私の最高傑作にして究極の義眼!【神々の義眼・改】だ!」

 

「いや、何故にんなもんやってんだよ先生……」

 

俺は、何故か目の治療の筈だったのに目を改造して(しかも先生に製作された改造人間では最終モデルだった俺のよりもかなり進化したと思われる)義眼にするとかアホだろ、天才と言われてるけどこれはアホだろ。

なにせあの義眼は力を使ってないと見えない。そして見えてる時は思考が加速されるから日常生活は難しい。

なんてことをしてるのやら。

しかし、そんなセリフは口から出る寸前で停止した。

先生がボタンを押したことで開いたカーテンの向こう側から現れた……誰?とでも言いたくなるような美少女に驚いたのだ。

「「……誰?」」

 

そして俺と少女の質問が重なる。

いやまぁ、コイツがあの盲目少女だってのは知ってるんだ。

しかしだな……手術前は髪の毛もこんな綺麗な色はしてなかったし全体的に健康とは言えない感じの風貌だった筈なのだが。

何をしたんだ先生。

「ククク……どうやら驚いているようだね。私も君を驚かすためだけにその子を徹底的に治した甲斐があったよ」

 

「治したって何をだ?」

 

俺は先生がこの少女を徹底的に改造した、ではなく徹底的に治した、と言ったところに微妙な違和感を覚えつつ、そう言った。

「私はね、今回この子の目を治すついでに髪を洗って点滴で若干栄養失調気味だったところに栄養を入れて呪われた子供たち特有の回復をしやすいようにし、服を見繕ったんだ」

 

へぇ。それでここまで見た目が変わるのか。

確かに完璧な作業だ。流石は先生、略してサスセン。

ただ……ちょっとだけ欠点はあるけどな。

 

ティナがなんか自分の場所を取られるか心配なのかさっきからしがみついて離れてくれない上にちょっとしがみつかれている場所がちょっと痛い。

この痛みはなんというかティナの嫉妬……?から来てるものだと考えれば辛くないしむしろ嬉しい類いの痛みなんだが、しかし痛い。

いや、なんか段々掴む力が強くなってきた。このままじゃ骨をバキッと折られかねないくらいに強くなってきた。

「あ、あの……ティナ?」

 

「なんですかおにーさん。私は別にポッと出の女におにーさんを取られないかと心配してたりなんてしてませんから、安心してください」

 

……ダメだこりゃ。ティナが完全に不機嫌だ。

はっきり言って会った頃から独占欲が強いタイプだってのは知ってたけど、このままじゃ不味いぞ。

最悪あの少女がマジで死ぬ。というか普通に消される。

どうすんだこれ……

 

俺は頭を抱え、何がなんだか分からない。といった具合の感情を表現するようなポーズを取った。

マジでどうにもならんが、とりあえずこのポーズになっときゃ何か良い方法が見つかるはずだ……

「蓮太郎くん、何やら落ち込んでいるところ悪いが、良いかね?」

 

「……なんだ」

 

「請求書だ」

 

……やっぱ性格悪いよな、先生って。

微妙に混乱が深まった思考の中、割と法外な端金を払えという請求書を渡され、俺は深く溜め息を吐くのであった。




……どうでも良いけれど物乞い少女の名前考えないとな。と思う今日この頃。
さて、どのタイミングで付けようか……

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