もう一話分がほぼ出来てるんで明日投稿します。
そんなわけで、いつもより短い本編、どーぞ。
時間稼ぎと言うものは基本的に難しいこととされる。
それこそ相手が強くても弱くても難易度が上がるクソ仕様だ。
なんせ相手が弱すぎりゃこっちは一撃も喰らわせてやることが出来ないから相手に時間稼ぎだと悟らせずに時間を稼ぐのが難しいし、強すぎりゃこっちがやられる。
理想的な状況は同じ程度の戦力が揃っているとき、だろうか。
例えば……今みたいに。
「チッ……並列エレキアロー!」
俺はスコーピオンの攻撃を質量を持った電撃によって少し減速させながら回避する。
手は抜けないし一瞬たりとも気が抜けない。一撃でも喰らえば決まってしまう、そんな戦い。
そこで時間稼ぎをするのは難しい筈だが……幸いにして俺にはそもそも受けずに避けることができる速度がある。
だから、ティナが来るまで延々と、延々と避け続けるのだ。
攻撃のことは考えずにただただ回避に重点を置いていれば自然と余裕は生まれるし、そしてその余裕は俺に精神的な持久力を与えてくれる。
元々人は余裕の無いときほど失敗しやすいものだ。ゆえに余裕を保つことで失敗を防ぐのは実に利にかなった行為であると言えよう。
事実余裕を持って回避に徹している今の方が疲れないしスコーピオンの攻撃も回避しやすい。
攻撃に意識を回していた時は2つのことを同時に考えていたせいもあって思考ソースはカツカツも良いところだったのが今は別のことを考えることすらできている。
例えばスコーピオンが何かしら特殊な行動をとった時の対処法を考えたり……あるいは攻撃のパターンを探したり。
そしてそれによってスコーピオンを詳しく知り、さらなる余裕を作り出し、その余裕でより詳しく分析する。
それを繰り返し続けることで、俺はいずれコイツを完全に圧倒することが出来るようになるだろう。
それがいつになるかは知らん。
それこそ俺のスタミナが切れる寸前になるほど先かも知れんし、案外すぐそこに迫っているかもしれない。
しかしその繰り返しは現在、順調にスコーピオンに対する際の余裕を生み出し続けていることからも考えられる通り、やはりそれほど遠くはないに違いない。
「GYAAAAAA!!!」
そんなことを考えていると、突然スコーピオンが新たな攻撃を繰り出してきた。
確か……一部の毒蛇は毒液を飛ばして相手を倒すと聞いたが、それに近いのだろうか。
スコーピオンの尻尾から強烈な酸が放出され、俺に向かって飛んできた。
「……っ!」
咄嗟に避けるが、速度がかなりあったため完全に避けきることはできず衣服の端を少し掠めてしまい、酸に触れた部分が溶解する。
そして残りの酸は……うへぇ。
スコーピオンから目を離すことは出来ないために電磁波で確認したが、どうやらあの酸は俺の服をすこし溶かしたあとすぐに地面に大穴を空けたようだ。
その大きさは直径がおよそ2mほど、深さは0.7m。酸は全て気化したようだ。念のため穴の周囲には近付かないで置く方が得策だな……
俺は瞬時に酸攻撃への対策を考えると、次あれを出されたらどう対応するかを考える。
まず予備動作を見て避けるのは不可能に近いだろう。
アレはどうやらほぼノーモーションから撃てるようだし、そんな攻撃を予測するのは体内の状況でも見れなきゃ無理だろう。よってその線は諦める。
じゃあ……撃たれたあとに避ける方法だ。
これは案外難しいものじゃない。
常に電磁波を張っておけばそのコースを大体予想できるし、向きさえ分かれば瞬間的に自分の体を電気で強制的に動かして避けられる。
まぁその代わり負荷はとんでもないことになるのだが……そこは我慢するしかないだろう。
俺はひとまずの方針を我慢する。に決定すると、すぐにその方針に反する行動を行った。
「とりあえず喰らっとけ……超電磁砲・狙撃ver!」
それは超電磁砲による狙撃。
我慢だなんだと言いながらいきなり攻撃するのも変なものだが、しかしこれには意味がある。俺が狙った場所にな。
そう、その場所とはつまり……尻尾の先端、しかも酸を撃った穴の部分だ。
さっきの大穴から考えてもそれなりの量を撃ったのは間違いないし、だったら酸を撃つ穴も最低限狙える程度には大きいんじゃないか、とも思った。
だが、これが通常の狙撃なら恐らく当たることは絶対にありえなかっただろう。
なにせ普段は狙撃なんぞせずにただ接近して一撃で終わらせてるやつにそんなことが出来るわけがないからな。
しかし不可能を可能にするトリックはないわけじゃない。
それが磁力だ。
俺は狙撃の瞬間にスコーピオンの尻尾の先に強烈な磁力を発生させて弾丸を誘導した。
それによって超電磁砲は微妙に軌道を修正されつつ、狙い違えず命中したのだ。
まぁ、ズルと言われたら反論できないんだがな。いや戦いにズルも卑怯もないのだが。
そんなことを考えていた矢先、不意にスコーピオンが咆吼した。
「GA………GRAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」
……っと、どうやらスコーピオンは自慢の尻尾を潰されて大層お怒りみたいだな。
ティナが来るまで耐えるのには変更なしとして……それまでどう避け続けることにしようかね。
俺はまだ隠し玉を持っていると思われるスコーピオンの一挙手一投足に気を払いつつ、更に戦闘へ集中するのであった。
最近ようやく例の盲目の子の名前やら設定やらを決め終わった。
……分かりやすくいうと原作じゃありえない設定が出来上がった。
まだしばらくは使わない設定だろうが……うん。