“プロモーター序列第一位”里見蓮太郎の物語   作:秋ピザ

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最近サブタイのネタが尽きてきたので段々本編と深い関わりがなくなってきてまする。
あと、ティナちゃん参上の回でする。


英雄と言えど人である

スコーピオンとの交戦が開始してからとうに1時間近くが経過していた。

いや、まぁその時間の中には一応あの仮面野郎との戦闘の時間も含まれてはいるから純粋にスコーピオンと戦った時間はまだ30分と少しってところだろうが、とにかく1時間も戦っているのだ、俺は。

たしかティナを待ち初めてから10分以上が経過しているような気もするが、恐らくティナはスコーピオンを足止めするための準備をしているのだろう。

前にティナに完全に任せてステージIVと戦わせたことがあったが、その時もいくつかの重機関銃を同時に動かして蜂の巣にしていたし、きっと今回もそれを使おうとしているのだろう。

だったらそれを信じて待つのみだ。

時間ならいくらでも稼ごう。だからティナには万全の状態で来てもらいたい。

もう俺だけの力で殺しきるのは難しいと分かっている。だからティナの力を借りる。

元々単独でも世界で二桁に入るランクの民警だったティナなら、ここで少しの間時間を稼ぐことなど造作もないだろう。

あとはその時間で限界までチャージして殺害する。それは規定路線であり、もう決定している。

覆す気はないしそれ以外に倒す方法はほとんどないだろう。

まぁ、それこそ核をバンバン撃ちまくって完全に焼き尽くせば倒せるんだろうがな。それじゃ実質俺のフルチャージを当てる以外の方法がないに等しいということになる。

 

つまり、ティナが来た時がお前の最後だ、スコーピオン。

俺はそう高らかに宣言しつつ、スコーピオンの攻撃を回避する。

滑らかに、それでいて素早く、完璧に。

一瞬の遅れが命取りだし、少しでも乱れたらそこに当たるかもしれない。

だから俺は決してミスをしない。失敗しない。

意地でもこの攻撃に当たってやるわけにはいかないんだ……ティナが来るまではな。

そんなことを考えつつ体を動かし、右へ、左へ、あるいは上に跳んだり伏せたりと忙しく動き続ける。

スコーピオンの攻撃はいまだ種類にして4つのまま変わっちゃいないが、しかしそのどれもが俺を一撃で葬れることに変わりはない。故に油断は許されない。

スコーピオンが右の鋏で俺を消し飛ばそうとしてくるのでそれを牽制と減速のために超電子砲を当てながら回避し、俺は考える。

次にコイツはどんな動きをする?

どんな予備動作で、どんなクセで、どんなパターンで。

その全てを読み続けることでコイツに対処するのだ。

 

しかし、その思考の間にもスコーピオンは決して攻撃の手を緩めない。そのため常に回避をし続けなければならないが、そんなことなど関係無い。

避けるだけならいくらでも出来る。

それに、今の俺にはいつまで耐えきればいいと言う明確な時間が存在する。

ティナが来るまで。俺の相棒がやって来るまでの間だけを耐えきればいいのだ。

そうすればティナがスコーピオンを足止めしてくれるから安心してチャージ出来、フルチャージして放つ攻撃であればいくらコイツでもただではいられらない………筈だ。

もしかしたらコイツを一撃で葬るのは無理かもしれないな。

なんたってキャンサーの時は………時は………しまった、あのときどうやって倒したかまったく覚えてねぇや。一度ゾディアックを倒した時の記憶が思い出せればスコーピオン戦の助けになってくれるかと思ったんだが。

まぁ、思い出せないならわざわざこの場所で思い出す必要は無いな。記憶をたどる作業はいつやっても構わない訳だし、幸いにして今の俺は昔のように家計がカツカツって訳じゃない。

だったら、コイツを倒してからのんびりと、その記憶を掬い出す作業をするとしよう………出来れば優先度高めで。

 

俺は自らの思考にキリを付け、スコーピオンの動作を完全に分析することに集中する。

鋏による打撃、尻尾による刺突+酸の追撃、あるいは鋏と酸のコンビネーション攻撃。

その三種類の攻撃に時々酸の連射や鋏による切断なんてのも混ざってくるが、大体その三つさえ完璧に避けられればある程度安定して戦闘が出来ることは理解している。

あとはある程度こちらから行動を制御してやれば、時間を稼ぐのはさほど難しいことじゃない。

まぁその三つの攻撃を避けるのが難しいんだけどな。

速度もサイズも正確さも通常のガストレアの比じゃない。

それに加えて………

「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」

 

時々とはいえ、本能に任せたと思われる力任せの攻撃があるってのがまた面倒だ。

それなりにパターン化された攻撃なら会費は容易いのだが、力任せの攻撃はどう来るかが読みにくいもんだから回避が容易じゃない。

いくら人類最強名乗ってたってこちとら人間だ。

んな本能でやってる攻撃なんざ読めたもんじゃない。

ん?だったらどうするのかって?

そりゃあ対処法は簡単だな。

本能に任せた攻撃ってのは大体、スコーピオンが危険を感じたからやってきてるもんだ。

だからこちらから相手にナメさせるために『マトモな戦闘職の人間なら絶対にやらない』攻撃をしてやれば良いんだ。それこそ露骨なまでにな。

相手が下手に頭が良いせいでその攻撃からこっちを少しだけバカと思ってくれることだろう。

それが付け入るべきところだ。敵の油断を誘う、それだけで時間稼ぎには役立つからな。

裏を返せば、それくらいしか付け入って楽を出来るところがないということなんだが。

 

俺は自嘲しつつも、スコーピオンに対して無駄弾を撃って油断を誘う作業を続行しようとする………そんなとき、不意に携帯の着信音が響いた。

来たか?

ひとまずスコーピオンから離れないことには電話に出ることすら難しいため、大きくバックステップしつつ威力高めの超電磁砲を撃って怯ませて隠れ、そこで通話ボタンを押す。

『遅れてすみません、おにーさん。少し足止めをするための準備をしていたら手間取ってしまいまして』

 

電話口から聞こえてきたのは、期待していた通りティナの声だった。

どうやら俺がチャージを完了させるまでスコーピオンを足止めするための準備をしていたらしいな。

流石はティナ、抜け目がない。

「いや、そこまで遅れてない。まだまだ余裕だわ」

 

俺はティナの言葉に強がって返しつつ、少しだけ口角を上げた。

俺は戦闘の中で笑うタイプの人間じゃないはずなんだけどな。ティナが来てくれたんだと思うとどうしても無意識に笑みを隠しきれなくなってしまう。

『どう考えても躱しきれていない攻撃があるのに?』

 

「………気にするなよ、そこは」

 

『でもそんなおにーさんも可愛いですよ?』

 

「そりゃ嬉しいな」

 

そんなやりとりを数度繰り返したのちに、通話を終了する。

まだ少しティナと話していたいなーとか思わない訳じゃないが、このまま話してたらティナを連れてここから逃げて大阪エリアにでも逃げた方が賢明だよな、なんて思いついてしまう気がしたんだ。

実際今思いついちまったし。タッチの差で俺が通話を終了する方が早くて良かったと心から思う。

あれ、なんだか目から汗が………じゃない涙が………

しかもすげー今自分が情けなさすぎて泣けてきた感じの涙が………

あれか、俺にもまだ常識的な良心が残っていたとでもいうのか。

平日の真昼間から幼女に甘えてるとかいうクレイジーサイコロリコンな俺にそんなものがあるとか、奇跡かっての………さて、もうそろそろふざけるのは真面目にやりますかね(大嘘)。

なんかティナがきて真面目なムードが一気に吹っ飛んじまったが、いい加減真面目にチャージを開始しないとヤバい。

具体的にはスコーピオンにもうそろそろ発見されてしまいそうだ、という意味で。

だからここからは本当に本気で、真面目に、真剣にやろう。

俺はチャージを開始した。

………まぁ、チャージといってもやり方には難しいところはない。俺は通常時神経への情報伝達に使っている生体電流を生み出すのと同じ原理でちょっとした電流(と、言っても常人のそれの数百倍から数千倍の電圧だが)ひたすらに増幅して、大体雷に等しいかそれ以上くらいになったところで体外に放出して攻撃する。

その方法を行って増幅した電気だけが質量を持った電撃として使えるのだ。

で、今回はいつも雷程度の威力で使っていた電撃をさらに増幅して電圧を雷のそれの2乗………大体10億の2乗、1000京Vにする。

で、そのためにいつもはそれほど多く循環させていないところを、何百、何千、下手すりゃ何億回かに渡って循環させ………一気に放つ。

あるいはその瞬間に一気に接近して射程がほぼ0の電磁砲として使用する、ってところだな。

恐らくティナの命を考えると外すことは許されないから射程の長い前者になるだろうが、一応念のために電磁砲として使うことも考えておくとしよう。

 




スコーピオン戦があと2、3話で……終わればいいなぁ、くらいまで来ました。
このままじゃ二巻(ただし九割以上オリジナルにするしかない)の内容で70話くらいまでいく気がしてます。
なんせ一巻の内容ですでに20話と少しに達していて、ほぼオリジナルになる二巻だと恐らく長くなるので……
なんというかテンポが遅すぎる気がするんですが、どうなんですかねぇ?

まぁそれはともかくとして、書き溜めはこれしか無かったので次回投稿は恐らく5~7日後くらいになるかと思われます。そんだけです。

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