“プロモーター序列第一位”里見蓮太郎の物語   作:秋ピザ

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1週間ぴったりで完成。
まぁしかし……いつもよりコメディ色強めです。
いや、実際将監&夏世ペアは原作で『よくある民警の関係』という名のシリアス係だった分若干コメディさせてるんですがね。

それにしてもやりすぎだろとか思ったら感想で愚痴ってください(策士)。


番外編:“IP序列3009位”伊熊将監の物語

夏世とのある意味衝撃的な出会いから数ヶ月。新入りだった俺も、どんな時でも余分ストレスがなく戦えているのが良いのかそれともあえて俺が前に出て夏世が援護する逆転スタイルが良いのか、今ではIP序列が四桁になるほどの大躍進を遂げ、所属している民警事務所では期待の若手とか呼ばれるし僅かながらファンというか……お得意様的な警察関係者も出来る程度には、活躍している。

しかしそんな華々しい活躍の傍ら表に出ない場所では初めて出会った時のごとく夏世を殴って日頃のストレスを解消しつつ快楽に溺れている……まぁアレだな、はっきり言って人間としては三流とかそれどころじゃない底辺クラスのクソ野郎であることは理解しているさ。

だがよ、その殴られる対象、つまりサンドバッグ代わりになっている夏世が殴る度に物凄く嬉しそうにしてもっともっととねだって来るんなら……仕方ないよな?

殴っている方である俺も俺で嬉々として受け入れているから責任を一切感じない訳じゃあないが。

 

……さて、今日はそんな俺の休日を紹介するとしよう。

定休日はシフト制なので月水金。週休三日制な上に休みの日がちょうど普通の奴にとっての平日だからレジャーに出掛けてもいいし普段は超長い行列の出来るような店に行ってもいい。

あるいは親子連れだと特になる場所を巡って大笑いしてやるのも……いい、らしいな。

だがしかし、俺の休日の過ごし方はこうだ。

まず朝。金がもったいないということで同じベッドで寝ている俺たちは普段通り6時くらいに揃って目覚めて……寝惚けた状態で眠気覚ましにと促されるままに夏世を殴る。

この時少々手加減を忘れるどころか脱力状態から放つ拳であるため少々いつもより威力が高くなってしまうが、夏世はそれでも喜んで殴られるから問題ない。

そして朝食。基本は夏世が作り、気が向いたときだけ俺が作る。最初は俺が作ろうとしたのだが明らかに下手だったし、夏世いわく『殴ってもらってるお礼』だそうだ。

まったくもって訳が分からないな。だが正直ありがたいし、都合が良いから作らせている。

それに、これが案外美味いんだ。レシピ通り完璧に作っただけらしいが……俺がレシピ通りに作ってもこうはならないだろう、と断言出来るほど美味い。

なにか特殊な作り方でもしてるのか?と聞いたら『愛ですよ』とか言われて割とマジな方の拳が飛んだが。

 

でもって、飯を食ったあとは腹ごなしに少し訓練(とは名ばかりで俺が殴るだけ)して、適当なテレビを見てしばらく時間を潰し、午前十時ほどに突然どこかに行こうと言い出すのだ。無論俺が。

そんでもってそこから出掛けてフラフラして、売られた喧嘩は買って、飯食って気分次第で帰ったり帰らなかったりして、結局帰って、そのあとは飯になるまで殴ったりグータラしたり……とにかく好き勝手やってる感じだ。

まぁ、こんなんだとガストレアが現れる前の中年男性の1日は大体こんな感じだってのを聞いた時のそれみたいだから少し変な気分だがな。

ちなみにこれでも俺はまだ20代前半だから中年とか言うなよ?言ったら夏世を殴ってるお陰で最近人体のどこを殴れば効率的に痛めつけられるのか理解できるようになってきた俺が、全力で痛みと苦しみを与えるパンチをお見舞いしてやるからな。

「あの、将監さん」

 

無駄にここ最近のことを考えていたところ、不意に夏世が後ろから声をかけてきた。

コイツの場合用件は大抵今日の飯か殴ってくれかあとは極稀になんか重い話だが……

この雰囲気だと重い話のパターンだろうか?

俺は内容をロクに分かってもいないが読んでいるフリをしていた雑誌を置き顔を向ける。

それを確認すると、夏世はこれまで気にもしていなかったようなことを口にした。

「今更なんですけど……将監さんはなんで私を迷いなく殴ってくれるんですか?」

 

そう、俺が何故コイツを迷いなく思いっきり殴れるのか。

確かに、物凄く謎だろうさ。

なんせこの見た目でも俺は週刊少年ジャ○プを毎週欠かさずに買う程度には普通の感覚を持ち合わせているし、売られた喧嘩は買っても自分から喧嘩を売ることはない。

つまり見た目に似合わず至って平凡な感覚を持ち合わせているってことだ。

 

だがそれなら何故、夏世を容赦なく殴れるのか。

その答えは……至ってシンプルだ。

「知らん。お前を殴ると気分が良くなるが俺にも分からん」

 

そう、俺にも分からない。

正直なところ元々ケンカはそこそこ好きだったしケンカのあとは気分がよくなる位にはバトルジャンキー的な資質も持っていた。

しかし俺はそれでも一部の『奪われた世代(自称するのも変だから自分では言わんが俺も入っている)』のようにガキを殴って楽しむ趣味はない。

しかし実際問題、毎日のように夏世を殴って快楽を得ていることには一切のフィクションがない。

理由は分からない。

もしかしたら単純に嬉々として殴られる相手が居るからかもしれない。

あるいは殴っても文句1つ言わないサンドバッグ代わりに殴れる都合のいい相手だからかもしれない。

あとは俺が元来ガキを殴って楽しむ奇特な性癖の持ち主って可能性もあるし、俺が一目惚れしていてその照れ隠し的にやっている可能性もある。

自分自身でも分からないのさ。

……だからこれだけは迷いなく、確証を持って言える。

何度も言うようで申し訳ないが、分からんとな。

「むしろ俺はお前が嬉々として殴られる方が理解できん」

 

なので何故迷いなく殴れるのか分からない俺は話を逸らすために質問に質問で返した。

何故夏世は嬉々として俺に殴られるのか。それ自体がそれなりに気になっていたのもある程度は理由に含まれるがな。

「私ですか?」

 

……さて、どんなトチ狂った答えが来るのやら。

正直このご時世だから『昔から殴られ続けてきたから』くらいの答えは想定しておいても損はないよな……

「……だって殴ってくれるってことは私を認識して、触れてくれているって事ですよね?だからです」

 

しかし返ってきたのは予想外なレベルで要領を得ない答え。

回答にもなっていないが……また随分と変な答えだなオイ。

認識して触れるなんて普通のことだろうに。

今時の奪われた世代だってこんなガキを完全に一切認識せずに過ごすなんて出来ないし……いや、大概は悪い意味でだが。

 

俺は夏世の言った意味が分からず、問い詰めた。

あまり話したくはなさそうだったが、少し強引な手を使ったらすぐに話し始めてくれた。

その際コイツはそんなに殴られるのが好きなのかと呆れたが……

「私、産まれてこの方家族にも他人にも完全に居ないものとして扱われてきたんですよ」

 

夏世が話した思ったよりもかなり深刻で真剣な話のせいでその呆れも吹っ飛んだ。

どうやらコイツ、俺がさっき自分の脳内でどうやっても無理だと結論付けたことをずっと実践されてきたらしい。

なるほど、そりゃさっきみたいなことを言うわけだ。

「それでIISOにイニシエーターとして引き取ってもらって、ようやく自分の名前を知ったんですけど、そこではずっと番号で管理されてたから私を私と認識してもらえなくて……初めて私を見てくれたのが、将監さんなんです」

 

……それにしても重い。

この話は重すぎるから横綱級の話題とでも命名してやりたいくらいに重い。

家族にも他人にも認識されず、IISOでも自分を自分として認識されず、俺が初めてコイツをコイツと認識した?

ある意味すげぇとすら思えるよ。人がここまで人を無視できるなんて。

いわゆる時代の被害者って奴なのか……コイツ。

そう思うとただのマゾヒストには見えなくなってきた。

なんというか色々黒い。時代が黒い。

巷では民警のことを、バラニウムが黒いからと『世界一真っ黒な職業』だなんて言ってたらしいが……それが笑えないジョークにすら思えるな……

「あと、IISOに引き取って貰うまでに自転車とぶつかったことがあるんですけど、不思議と痛いのが気持ちよかったのもありますね」

 

「俺の感傷を返せ」

 

……前言撤回。

ダメだコイツただのマゾヒストだ早くなんとかしろ。

俺はそう思いながらも、珍しく感傷に浸っていた自分が恥ずかしくなって照れ隠しのように夏世を殴るのであった。

 




夏世ちゃんドM化の要因は他人からの執拗な無視が原因……かと思いきや半分くらい本人の性癖でしたオチ。
サイテー!とか感想に書き込んでも良いのよ?

ちなみに次回はIP序列が1000番台になる予定でする。
分かりやすく言うと番外編ラスト……かもしれないしそうじゃないかもしれない。
そんな話です。
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