“プロモーター序列第一位”里見蓮太郎の物語   作:秋ピザ

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4日ぶり更新。
半ニート的にはそこそこ早い方です。



訪問者、死すべし、慈悲はない(ただしギリギリで死なない)

自宅前に素性不明の男数名。

そして家の中には大事な大事なティナと、その次くらいに大事な或守、あと割とどうでもいいけど端金がたくさんある。

そんでもって電磁波で確認する限り自宅前の男たちは明らかに自衛とかそういうレベルじゃない装備が散見される。強盗だろうか。

……いや、強盗よりもっとタチの悪いものかもしれない。

少し出力を変えて細部まで見てみると服装が全く同じで、違いが肩の辺りの模様以外に見受けられない。

揃った服装、物騒な装備、肩の模様が違う。

その三要素はいずれも結び付けて考えるには少し分かりにくいだろう。

揃った服装は制服と考えても、物騒な装備が必要な職業なんて今時ありふれてる。それに肩の模様が違うことに至っては単純にデザイン変更があったで済ませることもできるだろう。

だが俺は知っている。この服のデザインを。そして、この服を着た男たちの雇い主を。

……聖天子だ。

肩の模様が違う制服とはつまり自衛隊の制服の階級章のことだし、自衛隊員なら物騒な装備をしていてもおかしくない。

制服に装備ってのはちぐはぐな気もするがまぁそれでもある程度辻褄は合うだろう。

そんでもって自衛隊員ってことまで分かったらあとはちょっと細かいところまで確認してやれば……あぁ。

簡単に所属が判明した。

 

自衛隊が俺のところに来る要件と言えば途方もなく強いガストレア(ステージIV~V)来て手に負えないか、あるいは聖天子が無茶ぶりして俺を連れていこうとしているかくらいしかない。

そしてガストレアについては情報も入ってないし……そもそも強いガストレアが来たら一部の人間から俺のところに受ける気はないにせよ依頼が来るからな、それで簡単に分かる。

つまりこれは聖天子の差し金、俺を連れていこうとする悪意によるものなのだ。

だから絶対に対応しない。意地でも対応しない。むしろお帰り頂こう。

具体的には玄関前に強烈な磁力を発生させて銃を持っている限り入れなくしつつ、室内でうっかり身内の人間が掛からないようにと停止させておいたトラップを遠隔で起動する。

これで止まれば楽なんだが。

まぁ期待はしないでおこう。これはあくまで保険に過ぎない。

お帰り頂くための方策はここからだ。

俺はティナに膝枕されたまま電磁波で周辺に存在しているバイクなどをいくつか探してみた。

自転車七台、自動車三台(自費購入1台不法駐車2台)そしてバイクが一台。

……とりあえず不法駐車のやつを使おう。

幸いにしてその車はハイブリッド車だから強引にエンジンを動かして操ることは造作もない。

でもって車のコントロールを奪ったら挑発するかのようにクラクションを数回鳴らして発進させる。

もちろんそんなことをすれば訪問者たちは俺が車で逃げ出したのか、という疑問が頭に浮かぶだろう。

もちろんそんなことはないのだが、やはり可能性としては捨てきれないので少し思案することになるに違いない。

あとはそんな風に思案している間にポケットから適当な弾丸を取り出して磁力で家の外まで飛ばしてから、車を動かした先の方にあった廃墟を辛うじて支えている柱を穿ち、廃墟ごと破壊する。

よし、これで流石に男たちも様子見に動いてくれるに違いない……違いない……違い、ない……たぶん。頼むから動けよ。少しくらい様子見に行けよ。

 

しかし、そんな切実な願いも虚しく男たちは我が家の呼び鈴を鳴らそうとしている。

しかも残り二人は銃まで構えてやがるぜ。民間人に対していきなり銃口を向けるとか自衛隊のプライドねぇのかよ。ただし俺が民間人に入るかどうかは一旦置いておく。

……ひとまず家の前の男たちが扉を破って突入してくる素振りを見せたら即座に気絶させるとしよう。

俺はそう決定して、男たちの動向を注視する。

まず呼び鈴を鳴らし、俺が出てくるのを期待しているが……無論出ていかない。

そして乱暴にドアをノックするが、やはり出ていく訳もない。

ノックが足で行う乱暴なものになっても、決して出ていかない。

今度はなんとかドアを破ろうとタックルするようになったが、あのドアは戦車でも持ってこない限り破れないような強靭なドアなので破ることができる訳がない。

だから無視だ無視。あっちがショットガンで強引にドアを破るか、窓を割って侵入しようとするまでは面倒だから無視してやるとしよう。

それに、俺ほどの人間であればたとえどんな状況であろうとティナに甘やかされる心地よさを十二分に味わうことが出来るからなんの問題もない……

「ひぃ……」

 

が、しかし。

スラム育ちでこういう荒っぽい客に慣れていなかったのか、俺の足に抱き付いている或守が男たちのタックルによってドアの方から響いてくるドゴン!という音になにか思うところでもあるのか泣き出したことで、少々状況が変化した。

俺の中での男たちの扱いが、ただの荒っぽい客から、身内を泣かせたクズどもにランクダウンする。

……よし、このまま男たちにはさっさと丁重にお帰りいただくこととしよう。

「ティナ、或守、ちょっと面倒な客を片付けてくるから一分くらい待っててくれ」

 

俺は少々名残惜しいながらも起き上がると、軽く伸びをしてそう言った。

あんなクズどもなら一分でも余りすぎるほどだろう。

或守を泣かせるようなクズだからな、うん。

アイツの遺言があるから決して殺したりはしないが死ぬよりも惨いことをしちゃダメなんて言われてないし、今回は一分で戻れるくらいの時間で最大限の苦しみを与えてやることにしようか。

部屋を出て階段を降り、玄関で靴を履き、俺はまずドアに触れる。

ここまでやれば何をやるかは分かるだろう?

 

そうだ、電流を流してやるんだよ。

もちろん死なないし気絶もしないが恐ろしく痛みを感じるちょうどいい塩梅の電流をな。

これで気絶するようならば面白味がないが、まぁ大丈夫だろう。

俺が電流を流し始めた直後、ドア越しでもよく聞き取れるほどの大きさで男の悲鳴が聞こえた。

電磁波で確認してみると男はちょうどドアの前で悶絶しており、登場して踏みつけるには素晴らしく整った位置と言えるほどだ。

つまりこれはもう家から出て姿を表してやってもいい頃合いと言うことだ。

「……やぁこんにちは、公権力の皆さん」

 

俺はドアを開き、通ってすぐのところに居る男の頭を靴の踵で踏んだ。

「それじゃ突然だが、お前らの罪を今から読み上げ、俺と言う名のルールによって裁かせてもらう。異論反論は認めない」

 

そして登場と同時に、少し張った声で三人の男たちにそう宣言し、その罪を一方的に読み上げ始める。

「その1、俺の家のドアを破ろうとしたこと。その2、或守を泣かせたこと。そして……」

 

そこで一旦切って呼吸を整え、この男たちの最大の罪と、それらの罪に対する罰を宣言する。

「その3、俺からティナと或守と過ごす幸せな時間を僅かとはいえ奪ったことだ!よってお前たち全員、お仕置きだ!」

俺はその叫びと同時に自らの肉体へ電流を流して強化を開始し、そして目にも止まらぬ速さで近寄って呼吸をすることすら困難で、しかもそれだけではなく、喰らった対象に少しの間帯電するようにした電撃を喰らわせる。

死なない程度に痛めつけるための電撃だ。

「「「ア゙ァア゙ァァァア゙ア゙ァア゙ア゙ア゙ァア゙!?」」」

 

……もちろん、死なないだけで死ぬよりもっと痛くて辛くて堪らないようなシロモノだが。

だから男たちは叫ぶ。叫んだ程度でその痛みが消える訳はないのに。

だがまぁ、コイツらの悲鳴で家の仲の二人に不快な思いをさせるわけにはいかないから止めさせてもらうとしよう。

俺は悲鳴を上げ続ける男に近付いて頭を鷲掴みにし、精密な操作で脳のある分野に干渉する。

その瞬間、男は口を開けて悶絶素振りをしながらも悲鳴だけは上げなくなった。

うむ、我ながら神対応だぜ。

大事な大事な二人のために三人の発声能力をしばらくの間とはいえ容赦なく奪えるってすごいことだよ、何が凄いのかは知らないけれども。

……多分凄いのはクズ力だろうけどな。

そんなことを考えつつも、次なる対応の一手を考える。

制限時間の一分が来るまでに出来ること、その中で一番相手の戦意を削げるもの。

それは簡単だ。

俺は無言で悶絶する男たちの制服を掴み、電気でブーストした身体能力を使って服を引き裂きつつ、持っていた銃が弾丸を空中に発生させた磁力で操って取り出し、体を持ち上げる。

でもって持ち上げた体が落ちないように支えつつ……高速で死なない程度に射出する。

うむ、我ながら完璧な流れだよ。まさに流れるような動きつてやつだな。

このまま残る二人も始末してしまうとしよう。

 

俺は、悪魔のような笑みを浮かべて残りの男たちへと近付いていくのであった。


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