繋いだ手と手が 紡ぐもの   作:雪宮春夏

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どうもこんにちは。お気に入りが凄い数になってきて、笑うことが出来なくなりました。雪宮春夏です。
今回の話は多分最後まで呼んでみると、何やらいろいろ言いたい事が出て来るかもしれませんが、今は口を噤んでいて下さると有難いです。(苦笑)

それではどうぞ、ご覧下さい。


火の手は上がる

(飯田君……どうしたんだろう?)

甲府から新宿行きの新幹線の座席にて、出久はスマホを片手に首を傾げていた。今出久が見ているのは、自分が飯田天哉宛に出したメッセージの発着信の一覧画面。

飯田君宛に出したメッセージは既読がついているにも関わらず、その返信は書かれていない。

(飯田君……いつもは既読から三分以内には返事くれるのに……)

常とは違う彼の行為を疑問に思いつつも、ここで出久が出来ることは何もない。スマホをしまい、一息つこうとした時、ゴンと何かと車体がぶつかるかのような、鈍い衝撃音が伝わり……。

『お客様、座席にお捕まり下さい。……緊急停止します』

機械音と共に、新幹線が急停止した。……その時だった。

視界に映ったのは数席前の窓ガラスが砕け散る景色。

窓を砕いて新幹線の中に転がり込んだのは、一人のヒーローのようだった。

「ヒーロー!?」

「きゃぁぁぁぁ!!」

つい数分前までは静寂に包まれていた筈の車内が、あっという間に、騒乱に包まれる。

しかし騒ぎはそれだけに留まらなかった。

「危険だ!下がって!!」

ヒーローの切羽詰まった声に一般市民達が距離をとるのとほぼ同時に、ヒーローの激突によって割れてしまった窓ガラス、そしてその窓ガラスがはめ込まれていた壁ごと、ざっくりと、鋭利な爪で貫かれたのだ。

しかし、出久が目を見開いたのは、その後の光景だった。

本来ならば、砕け散るはずの壁は、破片一つ出さず、塵のように細かい粒になって、消えていったのだ。

ただの「爪」の個性ならばあり得ない事象に言葉を失う出久の目は、爪の先に煌々と灯る赤い炎を映していた。

(何だあれ!「爪」の個性じゃない!?あの炎……まさか……?!)

その時、出久の頭を過ぎったのは、USJを襲撃した敵連合。その中にいた、炎を両手に灯す青年。そして……それと容貌がよく似た、隣家の少年。

「小僧!お前は座っとけ!!」

突然の事に反応が遅れた出久の横を通り過ぎたグラントリノの声が遅れて響いた。

「グラントリノッ!?」

グラントリノは、出久が気付いた時には既に、大きな爪を炎で燃やす敵を連れて、車外へと飛びだしていた。

「グラントリノォ!!」

咄嗟に声を上げ、車内から外を確かめた出久が見たのは、あちらこちらから火の手が上がる街の様子で。

(この街……「保須」か!)

標識からそこが飯田君の職場体験先と気づき、出久の中にはいやな予感が広がっていく。

(飯田君……!)

いてもたってもいられず、出久は新幹線から飛びだしていた。

 

 

 

出久の乗る新幹線が謎の敵によって襲撃された頃、飯田天哉と、その受け入れ先となっていた、プロのヒーロー、ノーマルヒーロー「マニュアル」の元にも、騒ぎの音は届いていた。

「誰だ一体……こんな時期に馬鹿な奴だな」

この街一帯のヒーロー達は、現在皆ヒーロー殺しの登場により、厳戒態勢をとっていると、言って良い。

それを考慮することもせず、ことに及んだのだろう敵を揶揄しながらも、マニュアルは、自らの役目を果たすために、騒ぎの元へと向かおうとした。

「天哉君!現場行くよ!!」

背後を確認しなかった彼は、目の前の路地裏を鋭い視線で見つめる飯田天哉の姿に、最後まで気付くことは無かった。

 

新幹線から降りた出久は逃げる人の波に逆らう形で、騒ぎの中心に向かって進んでいた。

(炎の色は違っていたけど、あんな個性の持ち主がそう何人も一時期に何の関係性も無く現れるなんて考えづらい……!)

進むにつれて目尻していく人の数に現場がそう遠くないことを否が応でも意識する。

(その一人一人がもしあの青年と……「フレイア」と同じくらいの実力を持っているなら……)

出久の脳裏に蘇るのは、オールマイトの連擊で吹き飛ばされてさえ、炎の力で押し留まった敵の姿で。

(グラントリノどころか……この街が危ない!)

次いで脳裏を過ぎったのは、ここで職場体験をしているはずの友達の顔で。

(飯田君だって……!)

おそらく現場には既にこの街を拠点としている相当数のヒーローが集まっているだろう。土地勘も無く、力も無い出久では、まともにいたところで役に立つとは言いがたいかもしれない。

(僕はどう動けば良い?……どう動くのが最善だ!?)

「天哉くーん!!」

細い小道から開け、視界が一気に鮮明になった出久の耳に、知った名前を呼ぶ声が聞こえた。

見るとそこには、飯田の受け入れ先となっているはずのノーマルヒーロー、マニュアルの姿が。

しかし出久の足を止めさせたのはそれだけが理由では無い。目の前に広がる本来ならばあり得ない光景に、出久は声を失った。

(何だ……!これは……!?)

横転した大型バス。強い衝撃によってねじ切れたようなガードレール。ある者は血を流し、ある者は昏倒し、倒れるプロヒーローの人々。

そして、彼らをなぎ倒し、眩いばかりの炎を迸らせる二匹の敵。

「何でこんな時に限ってどっか行っちゃうんだよ!!」

困惑した様子で、飯田君を探しているのは、マニュアルだった。

「ほら邪魔だよ!下がって!!警察の避難誘導に従いな!!」

一匹の敵を相手取っている女のヒーローが、出久の姿に気付いて声を上げる。それに反射的に謝り、出久は思考を回し続けた。

(飯田君がどこかへ行った?おかしいだろ!?こんな事件を目の前にして……)

幾つもの可能性が出久の頭の中で浮かんでは消える。

「保須」。そこに現れた敵連合と繫がる「フレイア」に酷似した敵。飯田君。

それらから出久はある可能性に行き着いてしまった。

(まさか……!)

その真偽を確かめるため、出久はその場を離れ、一人走りだした。

 

虚ろな瞳で眼下に広がる火の手の上がりつつある街を「フレイア」と呼ばれる青年は一人、見下ろしていた。

死柄木達に伝えられていない先生による改良点。その大きな変化には「フレイア」という個体に存在する自我を僅かに残してあるというのが上げられる。

その理由は今回のような外の有象無象を牽引する立場にこれからつく機会が増えるであろうと言う可能性。

更にオールマイトのような単体で強いヒーローを相手取る場合、()()()()()()本来の才能を生かす為には、多少の自我があった方がその力を発動させやすいと言った点にある。最もそれには相応のリスクも生まれることは考慮すべきだろう。

小さな変化で言えば、彼に()()()()炎を更に30%の増加……つまり、前回の三割増の注入を受けたことだ。つまりは「真黒」と呼ばれる子どもが常時持つ炎から更に60%の割合に相当する量の炎を上乗せして注入されているという事である。

これは単純に炎切れを起こさない十分な量を検討した結果と言っても良い。

今回の指示ではヒーローとの戦闘は命じてはいないが、もしもということもある。今回あえて仮面をつけずに容貌を曝させたのはいくつかの理由があるが、それもここで話すほど重要な事では無いだろう。

さてここまで説明したものの、今ここで虚ろな視線を揺らしながら上空にいる彼にとっては、実はその総てが問題にはならないものだ。

なぜなら彼が注視すべきはただ、この街で起きる騒ぎが、彼の向こう……そこにいる死柄木達に届かないようにすること、それのみであるからである 。

そうまで断言できるのは、偏に今の彼にはそこまで深く……具体的な思考能力が無いからだ。

「自我が僅かに残っている」ことと、完全な思考能力を持つことは全く次元の異なる問題と言って良い。

与えられた命令を疑わず、自らの意志で実行する。

それだけが敵連合に今の彼が求められている事だった。

 

その眼下では今、一つの戦いに決着がつけられようとしていた。

「じゃあな……正しき社会のための、供物……」

相手の個性によって動きを封じられた体の上に馬乗りにされ、飯田天哉はヒーロー殺しに刀で貫かれようとしていた。

「黙れ…黙れ、黙れ!だまれぇっ!!」

あたかも最後の悪あがきのように、志半ばで倒れた兄の、そして兄の仇を討てずに倒れた己の悔いを言葉とするように、飯田は叫んでいた。

「何を言ったって!お前はっ!!」

それは唯一の事実。

「兄を傷つけた犯罪者だっ!!!」

その言葉に相手は応えなかった。

己の首が胴体から離れる。

それを覚悟し目を閉ざした飯田の頬に、僅かに風が当たった気がした。

不自然に錘が消えた感覚に、恐る恐ると目を開けた飯田は、そこで数日前に別れた級友を見た。

「緑谷……君?」

都合の良い幻でも見ているのかと思った。平気なふりをして、彼らに何も言うことが出来なかった己を悔いていてからこそ尚更に。しかしこちらの囁くような問いかけに、彼……緑谷出久は不敵な笑みで答えてくれた。

(たす)けに来たよ。飯田君!」

 




またまた3000字代……。すいません。小出し小出しになっている自覚はありますが、続けて書ける気がしません(単なる我が儘)
ここで書き始めて改めて、分かり易く文を書く事は結構難しいと思い始めています。

まぁ、私的な悩みもここまでで、次はどちらの視点からかなぁと自分でも考えつつ、いつもと同じような言葉で締めようと思います。

ここまでお読み下さり、ありがとうございました。次も読んで下されば嬉しいです。

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