繋いだ手と手が 紡ぐもの   作:雪宮春夏

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メインとサブが逆転している……気付きながらも仕方ないと割り切っています、雪宮春夏です。
背後に注意しなくては、そろそろ他の小説のキャラから怒りの一撃を食らいそうな気がする……!(ガタブル)

さて、そんな戦々恐々しながらも、こちらもそろそろ原作とのズレが広がると思います。
何やら危ない雰囲気も多々ありますが、どうぞ楽しんで頂けたら幸いです。



一言

緑谷出久の復活によって見えてきたヒーロー殺しの個性。それは血液型の差違に影響を受けるという、ヒーロー殺し自身にも予期できない要素(ファクター)を含んだ使い方の難しいものだった。

「相当危ねぇ橋だが……そうだな」

出久の提案に同意する形で頷きながら、焦凍は出久と連れ立ち、ヒーロー殺しを見据える。

「二人で……守るぞ」

出久の送信した位置情報だけを頼りに駆けつけた焦凍は体育祭以降、密かに飯田のことを気にしていた。

それは焦凍自身の経験から、今の彼が恨み、辛みで動いている人間だと分かったからだ。

(そういう顔をした人間の視野が……どれほど狭まってしまうのかも知っていた……!)

それは、他ならない焦凍自身がそうだったからだ。体育祭の折、緑谷出久に()()()()をかけられるまで。

『君の力じゃないか!!』

……そのたった一言。

「止めてくれ……もう、僕は……」

涙を流しながら呟く飯田に、今の焦凍が言えることは、たった一言しかなかった。

それは、己自身が父親への復讐に捕らわれ、見えなくなっていたからこそ、言うことが出来る、一言。

「止めて欲しけりゃあ、立て!!」

張った氷の防壁を破り、ヒーロー殺しが向かってくる。それから目を逸らすことなく、焦凍は続けていた。

「なりてえもんちゃんと見ろ!!!」

 

「……やるじゃないか。ご老人」

足の裏から空気を噴出する個性で、相手取っていた敵を一撃で鎮めた高齢のヒーローを見ながら、エンデヴァーは、不満そうに鼻をならした。

彼が本来ならば管轄外であるはずの保須へ足を運んだのは、ヒーロー殺しを追った結果だった。

今までヒーロー殺しは必ず一つの街で複数の事件を起こしている。その傾向から、保須ではまだ犯行が起きる可能性があると判断したエンデヴァーが保須への出張という形をとったのだ。

しかし、目的のヒーロー殺しを探している間に、この正体不明の敵による街への襲撃を受け、その解決へと乗り出していたのである。

敵が完全に沈黙したのを確認し、さて拘束して引き渡すかと動こうとしたところで、エンデヴァーの目に向こうの建物、その更に向こう側から火の手が上がるのが感じられた。

あそこの方向には自分が行かない分、多めに相棒(サイドキック)を配置した地点に近い。

それにも関わらず苦戦している様な状況にエンデヴァーは顔を顰めた。

「揃いも揃って……ったく!」

舌打ち混じりにぼやくものの、それを予想もしていたのか、怒りの感情は少ない。

「全くせわしないな!取りあえずこいつを早く拘束して、警察に引き渡すぞ!!」

向こう側から派手な爆発があることもあってか、向こうの被害を気にしているらしい高齢のヒーローがこちらを急かしてくる。

それに対してエンデヴァーは、しばし考え込み……数十分前まで行動を共にしていた息子の様子を思い出した。

『江向通り四の二の十の細道。そっちが済むか、手の空いたプロがいたら応援頼む』

エンデヴァーの声を振り切った息子が残した言葉。

『友達がピンチかもしれねぇ』

子どもの単なる戯れ言で聞き流す事は現状では良策とは言えなかった。

現に一向に件の息子が戻ってこない状況も、疑惑に拍車をかけていた。

「そいつはうちの相棒(サイドキック)に任せろ。ご老人は今から言うアドレスへ向かってくれ」

笑みを浮かべることもなく、言い切るそれは、油断の欠片もない証で。

「あちらへの加勢はこのエンデヴァー一人で……事足りる」

絶対的な自信があるが故の提言だった。

 

「確認しろ!負傷者何人だ!?」

同時刻、火の手の上がる現場では、切羽詰まった女のヒーローの声が響いていた。

「ザ・フライを含め、五人近くが行動不能。敵はまだ二名とも健全だ!」

付近にいたヒーローの一人が現状を分析した声に、彼らは一様に顔を歪める。

「どんな化け物だ……!こいつらは!!」

圧倒的にヒーロー側が不利と思われる報告に、毒づいた所で現状が変わるわけではないと分かっていても、その言葉を止めることは出来なかった。

「負傷者は離れろ!またあの敵の攻撃が来るぞ!!」

大柄な緑色の炎を纏った敵の傍にいた男のヒーローが声を上げる。腕が二、三倍ほどの長さのある彼は大柄な敵の攻撃を受け流すように四方八方へ衝撃を逸らしているようだった。

目をアイマスクの様な布で覆われた敵は、唸り声を上げながら苛ついているかのように足踏みを繰り返し、その度に地面が地響きを立てている。

「離れて下さい!俺の個性なら閉じ込められるかもしれない!」

水かきの様な形状の手から液体を出現させながら呼びかけるマニュアルの声に、そのヒーローは首を振る。

「危険だ!あいつの炎は鉄骨やコンクリートでも貫いてる!!」

「しかしこのままでは街に被害が広がる一方ですよ!?」

意見の対立で、つい声を荒らげる中、更に二人、コスチュームの似通った二人のヒーローが、援軍として駆けつけた。

「争っている場合か!来るぞ!?」

 

一方近い場所にいたもう一人の敵は、大きな翼を羽ばたかせながら、青い炎を振りまいていた。

「取り囲め!いいか、決して一人になるなよ!!」

数人の男達で連携して相手にしているようだが、飛行能力を有しているせいか、中々一所に追い込む事が出来ない。

(どちらも八方塞がりか……他に打開策は無いのか……?)

正体不明の二人の敵には連携と呼ばれるものが見られないのが救いだが、弱点らしきものもよく分からない個性にやりにくい事この上ない。

(ここにいるヒーローだけでは手に負えないか!……援軍がくるのを待つしか無い!!)

援軍、そう考えながらも彼らが思い浮かべた相手は一様に、自分達のヒーロー事務所の所長にして、日本ではオールマイトに次ぐNo.2と呼ばれる男の姿だった。

保須は首都と比べては栄えているとはいえ、ヒーローは少ない。粗方のヒーローは既にこの敵の相手に出尽くしているといってもいい現状だろう。

「エンデヴァーさんが来るまで時間を稼げ!誰もやられるなよ!!」

誰からとも無く、そんな激励を発していた。

それが彼らの限界だった。

 

ヒーロー達による奮闘が続く現場を漫然とした様子で眺めていた一人の青年がいた。

(エン……デヴァー……)

耳にした言葉に意識を向けると、まるで最初から知っていたかのように答えが浮かび上がる。国内の中でNo.2の実力を持つヒーロー。死柄木達が殺そうとする、オールマイトの次に強い相手。

(あいつらじゃ……勝てない)

己の意識の中にあるエンデヴァーの戦闘データと、フレイズと命名された戦闘兵器の戦闘データを比較して、青年はそう結論づけ、困惑した。

(このままではフレイズが暴れられない。……それは死柄木の命令に反する。しかし俺が暴れてはならない。それは死柄木の命令に反する)

そこまで思考した結果、青年は途方に暮れたと言っても良かった。

彼自身には自覚は無いだろうが、彼の主である先生は、彼の自我こそ残したが、その判断能力はあくまで死柄木の命令によって左右されるというもの。

言うなればこの状況は、命令の中に抜け道を作ってしまった死柄木の落ち度と言っても良かった。

己の思考が不完全である自覚も無いまま、青年の思考は続く。

(エンデヴァーをフレイズの元へ行かせるわけには行かない。しかし俺がエンデヴァーの相手をすることもできない。ならば……どうする……どう……)

深く、深く、深く……思案の中へ潜り続けていた青年の頭に、ふとそれは過ぎった。

言葉にするのは難しい感覚。

エンデヴァーや、フレイズの戦闘データを見つけた時とは似て非なるもの。

文字か、映像か。それさえも判断できないまま、青年はそれを声に出していた。

「……ヒーロー殺し」

出した言葉を、その人物を認識するかのように、二度、三度と目を瞬かせる。

(そうだ。ヒーロー殺しとエンデヴァーを当ててしまえば良い。ヒーロー殺しの言う真贋のどちらかはともかく、足止めぐらいの役には立つはずだ)

次いで暴れているフレイズ達から目を離し、保須の街全体を見渡すように目線を流し、青年は頷いた。

(どちらも……()()()

エンデヴァーとヒーロー殺し。

青年にも分からないが、何故か二人がどこにいるのか、漠然とした方向が分かった。

ならば後は、二人が鉢合うように誘導すれば良い……。

(ここからなら……エンデヴァーが近い……)

一先ずの方針を定め、青年はフワリと、たっていた建物から跳躍した。

無意識に、体中に薄く炎を巡らせる。

誰にも気付かれる事無く、青年……「フレイア」はエンデヴァーの元へ向かっていった。

 




次は流石に2月になると思います。
それではまた機会があればよろしくおねがいします。
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