このままの調子で進めれば良いけれど、どうなるかは本人にもよく分からないので(苦笑)他の作品とも折り合い付けながら頑張っていきたいと思います。
それではどうぞ、ご覧下さい。
「さて……では何から話すべきだろうか?
泰然自若。その言葉をその身で体現する男に、出久が感じたのは何だったのか。後から考えても出久にはよく分からなかった。
「約束しただろう?俺と
そう言いつつも微笑む男の背後に見えるのは、見渡す限りの大草原だった。
しかし、出久の記憶が正確ならば、ヒーロー殺しが警察によって逮捕された後、負傷していた出久、飯田、轟の三人は、そのまま保須総合病院に入院した筈である。
いきなりこのような大自然の中に放り出される理由がわからない。
そもそも目の前にいる男は一体何者なのか。
その答えが明かされないまま有耶無耶になっていた事に遅まきながらも出久は気づいた。
敵連合の一角であるフレイアを
突然出久達の目の前に現れた彼が正規のヒーローで無いのは一目瞭然で、更に周りの話によれば、警察が現場に来るまでのざわつきの中で彼は忽然と姿を消していたのだと言う。
入院してから眠りにつくまでの間に、周囲からそれとなく伝えられた内容を思い出して、自然と出久の警戒心が頭を出した。
彼らが出久にそのように、積極的に情報を伝えていたのは戦闘中に彼が出久に対してのみ気安い様子で話しかけていたからなのだが、それは出久の知るところではない。
「貴方は……」
警戒心から続く言葉を出久は紡ぐことが出来なかった。
ここはどこなのか。敵なのか味方なのか。そもそも本当のことを相手は話すのか。
何の情報も無い中で、自然とその口は重くなる。
「……まぁ、信じられないと思うのも無理はないな」
僅かに口を開きながら再び口を閉ざした出久は、いきなり本心を言い当てる形となった男に、目を丸くした。
「驚かせてしまったようだな。済まないが、そういう血筋なのだ。多少心臓には悪いかもしれないが、諦めて受け入れてくれ」
出久のような反応に慣れているのか、薄らと苦笑いを浮かべてた男は、「まずは座ろう」と、右手を指し示した。
「……へ?」
示された方に目を向けると、そこにはお洒落なカフェテリアの野外席のような白い長足の脚の円卓と二脚の椅子の姿が。さっきまでは無かったはずの姿に、出久は首を傾げていた。男の方に気をとられて気づいていなかっただけなのか。それとも他に理由かあるのか。
考え込む出久をどこか微笑ましそうに見つめながら、男は腰を降ろす。その男の様子に、座っても危険は無さそうだと判断して、出久もまた腰を降ろすと、男が突然居住まいを正した。
いきなり神妙な表情を作る男につられて、出久も背筋を伸ばす。両手を膝に置き、背筋を伸ばす姿はまるで面接試験に臨む受験生だ。
「まずは謝らせて欲しい。……非常時だったとは言え、お前の「炎」を無断で借用してしまい、本当に済まない事をした」
椅子に座ったまま、深々と頭を下げた男の潔い態度に出久は反応に戸惑った。
(……って、いうか)
「あの、炎って、何ですか?」
いや。出久とて、一般的な炎の意味は分かる。
しかし、男は出久の「炎」と言った。
爆豪と異なり、出久の個性に炎は出ない。父親から個性を受け継いでいれば口から火を吹けたのだろうが、残念ながら出久は生まれたとき、両親どちらの個性も引き継げずに、「無個性」として生まれてきた。
オールマイトに見いだされ、彼の個性である「ワン・フォー・オール」を継承したが、その効果は単純な身体増強でこれまた炎とは縁の無い個性である。
「あぁ、そうか……そこから始めた方が良かったな」
困惑顔の出久を見て、フムと頷いた男は改めて顔を上げ、出久と向き合った。
「「死ぬ気の炎」と、俺達は呼んでいる。命ある全てのものに、等しく存在する、生命力の事だ。その生命力は波動となって体内に流れていて、俺達の世界では、それをリングに覚悟として宿すことで戦う為の手段として用いていた」
「せ……生命力って!?」
あまりにも突拍子の無い話に、出久の声は裏返っていた。つまりこの男は、出久が気づかない内に出久の命を削っていたということだ。そこで出久は数時間前の戦いで、男が大量の炎でフレイアの炎を防いだときに急激に体の調子が悪化した事や、そもそも男が目の前に現れた直後、原因のわからない倦怠感に襲われていたことを思い出した。
「つまり俺の寿命が削れたって事ですか……?」
飯田や轟はおそらく疲労か何かだと言っていたのに、余りにも深刻になってしまった現状に、思わず泣きそうになる。
それに慌てて男が制止をかけてきた。
「いや!そのような事になるのは「命の炎」を燃やした時だけだ!死ぬ気の炎を多少消費した程度では精々気力や体力が一時的に落ちるだけだ。しっかりと休養を取れば、大事には至らない!!」
酷く慌てた様子の男に一瞬呆気にとられた出久は次にホッと安堵の吐息を吐き出して……ふとそれに思い当たり、冷や汗を浮かべた。
(あれ?……つまりその「命の炎」を使えば、そうなるって事だよね?)
思い浮かべた想像があまりにも恐ろしかったので、それ以上考えることを止め、数時間前の戦いに意識を向ける。
「つまりあの時貴方が使っていた炎は、全部俺の持っていた生命力だったんですね?……でも、死ぬ気の炎なんて、聞いたこともないんですけど」
ついつい、いつもの癖でノートにメモを取ろうとするが、考えて見ればここにはノートも鉛筆も……。
「あったぁ?!」
確かに、さっきまで何も置かれていなかったはずの円卓の上には何故かノートが置かれている。しかも背表紙には「将来の為の……」と、それが僕の愛用の品であることをしっかりと示している。
「な……なんで?!まさか、僕の拉致と共に家から……じゃない、グラントリノの事務所から盗んできたんですか!?」
動揺から少しばかり支離滅裂になっている自覚はあったが、出久は止まることは出来ない。取りあえず、気を落ち着かせる為にも余白のページに男の話から得た知識を書き留めていく。
「別にお前は拉致したわけではないし、このノートも盗んだわけでは無い」
性急な様子でノートに書き付ける出久を、向かいの椅子に座って眺める男が釈明のように言葉を続ける。
「ここはお前の精神世界……心の中だ。現実のお前は今も病室のベットの上で眠っている。俺はお前の炎を使わなければ現実に干渉することは出来ないからな。お前は今、夢を見ているようなものなのだ」
「夢、夢か……成る程。じゃあここにあるノートも書いた内容も現実には反映されないって事だな。あれ?でもじゃあこの人は何なんだ?僕の夢の産物にしては……」
「俺は
出久のブツブツ考察を律儀に聞き取っていたのか、男は出久の質問に答えてくる。成る程と再び頷いた出久は再び男の言葉を反芻して……。
「それって……幽霊ってこと?」
「有り体に言えばそうだな」
恐る恐ると尋ねた出久に、何の気負いも無く言い切った男はどうした?と首を傾げている。
(幽霊にしては、人間味あり過ぎるんだけど……)
若しくは、生前の性格が、このようなものだったのかも知れない
そう己に言い聞かせながら、出久はある疑問を覚えた。
「それでどうして……僕に取り憑いているんですか?知り合いだったのなら、フレイア……貴方のいう、えーと……」
何とか疑問を口にしようとしたが、彼の言い放った外国語が分からずにつまってしまう。
(あれ?外国語と言えば、この人。俺のことも似たような言葉で何やら言っていたような……)
内心で必死に思い出そうとする出久には気づかないのか、男は目を瞬いて軽く頷く。
「
最後は何故か問い返された出久は思わず動きが止まった。出久としてはまずは、その言葉の意味が分からないのだが、違うのかと首を傾げる男はやはりどこかズレていた。
「えっと……まず、その呼び名は何なんですか?」
「何とは……継承の順番だが?俺は
訳が分からないと首を傾げる男、
(それに、僕とフレイアには接点無いはずだ。継承って、一体……。……っ!)
『九人目の継承者がこんな湿った男とは』
職場体験にグラントリノの事務所を訪れたその当日、グラントリノ本人から言われた言葉を思い出して、出久は血の気が引くのを感じた。
(この人……ワン・フォー・オールの事を知っているのか!?)
オールマイトに絶対に他者に知られてはならないと言われた秘密。
今まで前例の無い「譲渡する個性」の存在を知れば、奪おうという輩が出ることは必死。
出久の安全を守るためにもと、言われていた言葉を思い出す。
(いや、でも一番目の継承者って……つまり、譲渡をする前の最初の持ち主!?でも……)
頭の中でグルグルと回りかけていた思考のままに、出久は言葉を飛ばしていた。
「待って下さい!俺は、フレイアにこの個性を渡す気はありません!」
この男……
たとえあったとしても、相手は敵連合の一角、フレイア。以前のUSJの戦いでは相澤先生を始め、多くのクラスメートも危険に晒し、今回の戦いでも自分達を殺そうとした。決してこの個性を譲渡するわけにはいかない。
強い睨みで
「個性?……なぜこの世界固有の力の名称が出て来るのだ?」
首を傾げられた出久も訳も分からずに目を点にする。もしや出久の思い違いで彼の言う継承云々と、あの個性は全く関係ないのだろうか。もしそうなら、逆に尋ねられてはまずい情報を渡してしまったかもしれない。さっきまでとは違う理由で顔を青ざめていた出久の耳に、「あぁ」と、どこか納得したような声音が返ってきた。
「成る程。この世界では「個性」として伝わっているのだな」
「……はい?」
「そうだな。考えて見ればあの時、お前の意識はここに非ずな状態だったのだから説明し直すのが礼儀というものだ」
一人納得する
(いや、夢の中なんだから、聞くだけ無駄か)
コポコポと音をたてて注がれる色は黄みがかった琥珀色をしていた。
出久は紅茶の銘柄には詳しくないのでその茶葉の種類までは分からないが。
「さて改めて自己紹介からしよう。俺は
「……はい?……はいっ?!」
ただ聞き役に徹していた出久だが、それでも与えられたその情報を聞き返していた。
「べ……別の世界っ!?それに、縦の時間軸って、一体……!!」
「……取りあえず、更に詳しい説明が必要なようだな」
先の長くなりそうな説明会に、どこか憂鬱なように溜息をつく
しかしその会話が進まない要因に己の下手な説明も一役買っていることに、彼はまだ気づいている様子は無かった。
ほぼ説明のみに終わりました。
登場人物が僅か二人という……この作品の一話当たりの中では最少人数ではないかと思います(苦笑)
次回も説明が主ですが、出久達以外にも色々出したいなぁとは思っています。
それではここまでおつきあい下さり、ありがとうございました。