繋いだ手と手が 紡ぐもの   作:雪宮春夏

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……もう少し長くした方が良かったかも知れない。
一度読み返してみて真面目にそう思いました、雪宮春夏です。
読み応えが……!
いや、でもの本編みたいにかなりの分量にする気は多分ないので、これが妥当でしょうか?(苦笑)



爆豪の職場体験 その②

「全くめんどくせーなぁ。……何でガキの世話なんざ俺がしなきゃいけねぇんだよ。バァロォ」

引き合わされた男は炎のように赤い髪をぐしゃぐしゃとかき上げながら、眠たげな目でこちらを見つめている。

「……この人、ヒーローなんすか?」

ここまで案内してくれた入江と言う事務員へ問いかければ、彼は空笑いをこぼしながら、頷いてくる。

「“怪力フレイヤー“「炎剛丸(えんごうまる)」。このフィオーレヒーロー事務所の四人のサイドキックの一人で、持ち前の超人的な体力と四肢の丈夫さ、何よりも体からマグマを噴き出す個性を使って、人命救助と敵退治双方で活躍している、この事務所一番の稼ぎ頭さ」

しかし丁寧な説明に反して、その当人がとる行動はどう考えてもヒーローと言うよりはそこらの浮浪者である。

「あぁっ……もう面倒臭ぇ……所長は何でガキなんか取ったんですか?何で教育係が俺なんすか?手加減なんて性に合わないこと苦手なんすけど」

がに股状態でしゃがみ込み、溜息を吐きながら頭を掻くその姿に、自然と爆豪の視線も険しさを増す。

「嘗めてんのか……テメェ!!」

突き刺さるかと感じられる程の鋭い気配に動じもせず、欠伸を溢すヒーロー炎剛丸(えんごうまる)の姿は爆豪の導火線に油は注げど火消しとはならない。

「ぶっ飛ばす!」

怒鳴り声と共に飛びだした爆豪を、事務員である入江が止めるのは無理な話であった。

咄嗟に足を踏み出そうとした彼を片手で制して、炎剛丸(えんごうまる)はゆっくりとした動作で立ち上がり。

「面倒くせぇなあ。おい」

軽口と共に手首を掴み、爆豪の突撃を止めた。

「なっ……!?」

BOM、BOMと小刻みな爆発は起きるものの、それらは炎剛丸(えんごうまる)の横数メートルに固定された手首……その先の掌から起こるもの。抑えている炎剛丸(えんごうまる)に届く筈がない。

「ここまで弱くて良く俺に売ったもんだなぁ……喧嘩」

ジロリと向けられた視線に歯を食いしばった爆豪が睨みつける。

ぶんと、振るうように炎剛丸(えんごうまる)に投げ出され、それを僅かな爆発の空圧だけで姿勢を整え、爆豪はそのまま炎剛丸(えんごうまる)へ駆けだした。

狙うなら先手必勝。己よりも遙かに強い相手だと見抜いたからこそ、爆豪に手加減の言葉は無かった。

それ位は投げた時から炎剛丸(えんごうまる)も分かっていたのだろう。事務方の正一を手振りで下がらせ……ニッと正一に笑いかけた。

「手ぇ出すなよ?入江。俺が教育係だってんなら」

その直後、炎剛丸(えんごうまる)の体から大量の蒸気が噴き出した。

「俺の好きにやらせて貰う」

ニヤリと笑みを浮かべた顔だけで無く、体中の皮膚がまるで炎症を起こしているかのように赤く染まっていく。それは、それほどにまで彼の体内温度が上昇し、体内に貯蓄するマグマが造られている証。

はぁっと、吐き出した吐息すら湯気に近いものになっている事実に、己の戦闘準備が整ったことを確かめ、炎剛丸(えんごうまる)は笑った。

「……ここは耐熱性においては国内においてもかなりのもんだってお墨付きの場所だ……全力でやり合おうぜ!」

 

ヒーロー名炎剛丸(えんごうまる)……仲間内ではザクロと呼ばれている彼の体験生いびりに背を向けて、訓練室から逃げた入江はキリキリとした胃の痛みと共に後悔に襲われていた。

(職場体験なんて……許可するんじゃ無かったかもしれない!)

新人教育など無関心と言って良い白蘭が指名を入れたいと言った時点で妙だとは思っていたのだ。

しかし彼が白蘭の思惑の全容を知ったときには彼は既に所定の用紙に名前を書いて雄英に送ってしまっていた。

(あの人達絶対、育てようって気は無いだろ!)

いや、むしろその気概をへし折ろう位には思っているのかもしれない。そう考えながら正一はガクリと肩を落とした。いや、考えてみれば分かることだ。

フィオーレヒーロー事務所には良くも悪くも超一級のヒーローしかいない。よく言えば最強軍団だが、言い方を変えれば加減が出来ない面々の集まりであり、下手に弱い敵では、逆に命の危険に晒してしまう結果となることもあるのだ。

(少なくともザクロ……彼は間違いなく出来ない方だ。出動だって救助要員がほとんどだもん)

だいたい爆破の個性を持つ爆豪相手に上位種に位置するプロヒーローを訓練相手に宛がう時点で白蘭は鬼畜としか言えない。

(ここは他の相棒……その中の拘束に特化した種子系統の個性の彼ならこっちもここまで心配しなくて済むのに)

はぁと零す溜息にまで悲壮感が漂うのだから今の正一の精神状態は相当と言って良かった。

「あれぇ?正一。こんな所でどうしたの?」

「か……(かなで)さん」

そこにいたのはちょうど正一が脳裏に浮かべていた相棒の一人で、水難救助、及び水中戦闘の専門家(エキスパート)、ヒーロー名「ブルーベルン」こと、涼代 奏(すずしろ かなで)だった。身長150と、小柄な体で一見するとヒョロヒョロとしているように見えるが、そこは単に着やせしているだけであり、雑誌片手に素足という、何とも子供染みた格好ではあるものの、その目は忙しなく周囲を見回し……得心したようにクスッと笑い声をたてた。

「やっぱりびゃくらん。容赦ないね」

それは何に対しての言葉か。一瞬口に出そうになった問いかけを敢えて正一は呑み込んだ。

正一はヒーローではなく、当然「個性使用許可証」も所持していない。

共同経営者であるが、それは事務作業が苦手な白蘭が何とか事務所を回せる人材として正一に目をつけたに過ぎないのだ。

(小学、中学と白蘭さんとは同じクラスで仲も良かったから、向こうも誘っただけなのに、……ヒーローの育成にまで口を出すのはお門違いなのかな?)

胸中を過ぎった躊躇い。しかし次の瞬間、扉の向こうから響いた強い衝撃で咄嗟に正一は踵を返していた。

(ダメだ!口出さないと本当に死人がでるっ!!)

「ザクロさん!」

内向きの名前で呼びかけながら扉を開けた先には、子どもの形に凹んだ壁と。

「うおっ!」

「死ねクソがぁ!!!」

断続的な爆発音を響かせながら鬼の形相で殴りかかる少年と、それをするりと交わしながら軽い動作で手首を掴み……重力の動きに従い床に押しつける、プロヒーローの姿があった。

「楽しそう!ねぇねぇ!次私もその子と遊んで良い!?」

ひょこりと正一の背後から顔を出した少女には年相応とも呼べる笑みしかなく。

「ちっ!うるせぇのが来やがったな……」

舌打ちするザクロは忌々しげに吐き捨てた。

 

 

 




予定ではこの番外編後数話続く予定です。
閑章が終わるまでには終わらせたいと思いますが……どうなることか。
それではまた、次の機会にお会いしましょう。
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