繋いだ手と手が 紡ぐもの   作:雪宮春夏

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プロット通りには中々進まない物です……書きたい通りにかけない。この計画性の無さよ……(泣き)
このズレが物語にどのように影響するかは全く未定なのだから、質が悪いと思います。雪宮春夏です。
まさかの連続投稿ですが、どうぞ大目に見てください。

2017/01/13 ご指摘を受けた誤字を修正しました。
ご指摘くださり、どうもありがとうございます。


解決

「あの人……俺に嘘教えたのか?!全然弱ってないじゃないか!!」

せわしなく首筋を掻きむしる死柄木を視界に収めながらも、オールマイトは空中に浮かぶ敵を警戒していた。

仮面を砕いた敵の表情は相手が空中にいるせいか、今ひとつ窺しれないが、それを抜きにしてもリアクションの一つも無いこの現状は違和感を覚える。

(命令がないから動かないのか……?いや、それにしても何かがおかしい……!)

その事に疑問を抱きながらも、オールマイトは、空中に留まる厄介な敵を操る主犯の男達に狙いを定めて、啖呵をきる。

己のこの姿を保てる時間は既に残り少ないが、飯田少年が呼びに走り、おそらく現在、急いでこちらに向かっているであろう同僚達への時間を少しでも稼ぐ為である。

「どうした?来ないのかな!?私をころすと言っていたが……」

ギロリと、睨むその気迫に、敵が怖じ気づくのが分かった。

「できるものならしてみろよ!」

一方、事の成り行きをただ見ていることしか出来なかった生徒達も、オールマイトの優勢に胸を撫で下ろしていた。

「どうやら……俺達の出る幕じゃねぇみたいだな」

「緑谷!ここは退いた方がいいぜ!却って人質とかにされたらまじぃし……」

懸命に説得しようとしてくる切島の視線が次いで空中……未だに橙色の炎を放出し、空中に留まり続ける得体の知れない敵に向いた。

「あいつも、いつまでもあそこでジッとしてくれているって保証はねぇんだ」

「空中を飛ぶって能力だけならそれほど脅威でもねぇが……もし大砲みたいにあそこから敵を狙い撃ちできる武器でも持っているんなら、面倒だな」

「いや、空中飛ぶってだけでも十分厄介だろうが!!」

警戒も露わに空中の敵を睨みつける切島に対して、鋭いのかいまいち判断の出来ない轟の注釈に、再び切島が切り返す。

そんな彼らのやりとりを尻目に、緑谷が感じたのは危機感だった。

(違う……!あれは、虚勢だ!!)

その根拠は土煙に隠れて目立たないが、オールマイトから変身が解けるときに出る蒸気が出ている事だ。

その事実は端から見ている出久よりもオールマイトの方がよほど分かっていた。

(いかん……!ぶっちゃけ、もう一ミリも動けんぞっ……!僅かに身じろぎするだけで、本当の姿(トゥルーフォーム)に戻ってしまう……!!)

そうまで追い詰められた原因は分かっている。あのフレイアという敵が予想以上に強すぎたのだ。

(しかし彼は見たところ、奴らの指示が無ければ身動きすらしない欠陥を持っていると見える!このまま、奴らを足止めする事が出来れば……!!)

「フレイアさえ使えれば……!あいつなら何も感じずに立ち向かえるのに……!!」

苛立ちも露わに首筋を掻きむしるが、死柄木も黒霧も空中にいるフレイアを動かすつもりはなかった。

……いや、出来なかったというのが正しいだろう。

「死柄木弔。落ち着いてください」

傍らに寄り添う黒霧が死柄木を宥め、打開策を示す。

「良く見れば、フレイアが与えたダメージは確実にオールマイトに現れている」

次いで黒霧は少し離れた位置にいる子どもを示した。

「子供らはどうやら棒立ちの様子。あと少しで救援は来ますでしょうが、フレイアが使えずとも、死柄木と私ならばまだチャンスはあるかと……」

淀みなく、言葉を紡ぐ黒霧に半ばのせられるように、死柄木は何度も繰り返し、頷いている。

「何より……ここまで追い詰めたフレイアの使い損になる……!」

一気に広がる黒霧と、それに隠れる様にかける死柄木。

表情には出さずとも、オールマイトは、救援よりも速く動いた敵の手にかかる覚悟を静かに固めかけた……その時。

 

(僕だけが知っている、秘密……………!!!!)

 

無我夢中で、動いたのは出久だった。

 

「な……緑谷!?」

振り返って遙か後方にいた出久に、切島が声を上げ。

(速い……!)

その速さに、死柄木は目を見開いた。

一方、双方に驚愕を与えた出久は、間に合いかけはしたものの、足に走る激痛に、制御に失敗したことを悟る。

(さっきは上手くいったのに……!それでも……!!)

己の負傷よりも、現状を打開できうる可能性を見いだすことを優先し、それ故に出久は歓喜に震えた。

「オールマイトから……離れろ!!」

この間、僅か数秒にも満たない時間。しかし、その決断はあまりにも早かった。

(させるかよ……!!)

ついこの前まで一般市民だった筈の子ども。

彼らによって悉く計画を狂わされていく事への苛立ち、怒り。降り積もったそれらをぶつける様に、死柄木はそれを命じた。

()()!!()()()()!!!」

 

ドズン……!

 

橙色の炎を散らしながら、堕ちていく敵の姿に、最初に喜色を浮かべたのは誰だったか。

「来たか!!」

オールマイトの言葉に答えるかのように、甲高い声がその場に響き渡った。

「ゴメンよみんな……遅くなったね」

入り口付近にいたお茶子がその面々を見つめ、安堵と共に言葉を零す。

「飯田君……!」

「1ーAクラス委員長。飯田天哉!!」

それは、形勢逆転の合図。

「ただいま戻りました!!」

そこに集う多くのヒーローの姿を視界に収め、死柄木は唇を噛んだ。

 

 

あの後、先生達の応戦も空しく、ワープの個性によって、橙色の炎を使う敵を含む、三人の敵は取り逃がしてしまった。

あの後すぐに本当の姿(トゥルーフォーム)に戻ってしまったオールマイトと共に、怪我をしていた出久も保健室行きとなった。

「おそらく、私はまた活動限界が早まっただろう……一時間位はまだ欲しい所だが……」

しかし、それは悔やんでもどうにもならない事という事実は零したオールマイトが一番知っていたのだろう。

心配そうに見つめる出久に、敢えて明るい調子で返し、ベットの上に身を起こした。

「失礼します」

そんな掛け合いをしている間に、保健室に一人の人物が入ってくる。

帽子を取ったその人物は、オールマイトの秘されている筈の姿を前に、平然と彼と認識した。

「塚内君!君もこっちに来てたのか!!」

本当の姿(トゥルーフォーム)で平然と会話する彼に思わず出久の方が問いかけていた。

「あぁ!大丈夫さ!……何故って!?」

その次に重ねられた言葉に、思わず相手の方が笑いながら突っ込んでしまうほどだ。

「彼は最も仲良しの警察、塚内直正くんだからさ!!」

「ははっ、なんだ?その紹介」

そのまま政官の職務として事情を聞こうとする塚内を制し、オールマイトが問うたのは、同僚と生徒達の安否だった。

その様子に慣れているように溜息をついて、塚内はその無事を知らせる。

「三人のヒーローが身を挺していなければ、生徒らも無事じゃあすまなかっただろうな」

そう締めくくる塚内に、オールマイトは、否と返した。

「生徒らもまた戦い、身を挺した!!」

あまりにも早い実戦。それを生き残り、その恐怖を早くに知ったその経験は、必ずやプラスに働くと。

「敵も馬鹿なことをした!!」

オールマイトが浮かべたのは、誇らしげな笑みだった。

1ーA(このクラス)は強いヒーローになるぞ!」

塚内に向けて、念を押すようにポージングを決めるオールマイトに、塚内もまた、同意するように微笑んだ。

「私はそう……確信しているよ」

 

ある一件のバー。そこに広がった黒い穴……ワープホールから出てきた死柄木は、数発の銃弾を受けていた。

「両腕打たれた……!完敗だ……!!」

屈辱にか、体を震わす死柄木の傍らに、黒霧は回収したフレイアを横たわらせた。

砕けた仮面のしたはまだ幼さを残す子どもの顔。その息は苦しげに荒く、目の焦点も合ってはいない。小さな燻りに近い炎が、額に灯っているが、それは消え入りそうに掠れている。

「フレイアの()()()も足りなかった。手下は瞬殺だ……子どもも強かった……」

ギリと、悔しげに唇を噛みしめ、死柄木が唸った先にあったのは、テレビ画面だった。

「平和の象徴は健在だった……!話が違うぞ!先生っ……!!」

『違わないよ』

テレビ画面から聞こえてきたのは、年老いた男の声。フレイアの持ち主であり、死柄木にフレイアを貸し与えた先生のものだった。

『ただ……見通しが甘かったね』

『ふむ。嘗めすぎたな。敵連合何ていうチープな団体名で良かったわい』

先生と声をかけ合う存在は、その相手を知る者がいれば、ドクターと呼ばれていただろう男のものだったが、それを死柄木は知る由もない。

ギリギリと歯ぎしりする死柄木をよそに、テレビ画面の向こう側にいる声達は、黒霧に会話の矛先を変える。

『フレイアの調子は大丈夫そうかい?こちらも他にスペアは手に入らなそうでね。そう簡単に壊して貰っても困るのだが』

それに対して黒霧は淀みなく答えた。

「単なる炎切れです。必要最低量を注入して、薬の効果が切れさえすれば問題ないのでしょう?」

『あぁ。それだけなら、何度も実験を重ねているから心配は要らないだろう……しかし、30%も注入しているのに、短時間で切れるとは……平和の象徴を嘗めすぎたかな。もう少し、注入量を増やすべきだろうか……』

黒霧と二人に、画面越しに思案する彼らをさして気にする風もなく聞いていた死柄木がふと、何かを思い出したかのように口を開けた。

「フレイアも、確かに早かったが、もう一人、オールマイト並みの早さを持つ子どもがいたな……」

目障りなガキだったと、思う。ヒーロー達の到着がもう少し遅ければ、フレイアに殺させる事が出来たはずなのに。

「へぇ……」

それに対して、先生の言葉は興味を持ったのかさえ分からない曖昧なものだった。

『悔やんだって仕方がない!今回だって無駄ではなかったはずだ。精鋭を集めよう!じっくりと時間をかけて……!』

テレビ画面の反対側、死柄木の背後では、黒霧が鉄製の注射器をフレイアの腕に刺しているところだった。

『我々は自由に動けない!だから君のような“シンボル“が必要なんだ』

注射器のピストンが進むごとに、燻っていた炎が煌々と燃え上がっていく。しかし、それとは逆に、体の方はサラサラと崩れるように形が歪んでいった。

『死柄木弔!! 次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!』

テレビ画面越しの声援に答えるかのように、死柄木は歪な笑みを浮かべる。

その背後で、フレイアがいたはずの場所には、彼の青年を更に幼くしたような顔立ちの、中学生ほどの幼い少年が横たわっていた。

 

その少年、吊空 真黒(つりそら まくろ)は己に起きた出来事を何も知ることなく、眠り続けている。

この出来事が後に彼にどのような影響を及ぼすのか、それはまだ誰にも分かるものではなかった。

 




氷出し、炎出し、空中を飛ぶ。……これで無個性って、ヒーローからしたら眉唾物ですよね……?
間違いじゃないから質悪いけど……!

ともあれ、これにてUSJ襲撃編は終了です。
なんとか一期分は消化した……!と内心安堵しております……。
次回からは体育祭編ですが……何話分かなぁ?
取りあえず興味があったら、また読んでください。
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