「のぉ提督よ、一つ聞いても良いかの?」
「ん? 何だ利根」
「お主は一体何をしておるのじゃ?」
「あ? 見て分かんねーか? 弓に弦張ってんだよ」
「いやそんな物は理解しておるわ! 我輩が聞きたいのは何で真昼間っからお主は工廠に引き篭もって弓なんぞを工作しとるのかと聞いておるのじゃ!」
「あん? んなモン狩りする為の道具が必要だからに決まってんじゃねーか、お前はアレか? これ見てえっと……クマノンだっけか? アイツが言いそうな感じでバイオリンを弾く為に弓作っているんですのよホホホみたいなボケた事を言い出したりすんのか?」
「それ本人に言ったらぶっ飛ばされるぞお主……て言うかじゃ、我輩が言いたいのは何で海軍の提督ともあろう者が、狩りだの何だのと言うて弓をこしらえておるのかって事なのじゃが」
「いやお前狩りしないとどうなるか分かってんの?」
「……どうなるのじゃ」
「食卓からお肉が消えて、野菜とお魚オンリーになっちまうじゃねーか、分かってんのか?」
「ああうん、お主はもうここに居る限り自給自足が当たり前という思考がデフォになっていると言うのは充分理解したぞ……」
「まぁそんな訳で豊かな食卓の為に俺は努力してるんだ」
「ああまぁお主の何と言うか間違った方向にひん曲がった努力は取り敢えず置いておくとしてじゃ、そんな物今更作らなくても既にここにはボウガンとか色々あるじゃろ? 何で今更弓なんぞ作っておるのじゃ」
「バッカお前ボウガンと弓一緒にするんじゃねーよ」
「……何が違うというのじゃ」
「基本的にこの弓とボウガンの弦は同じ張力で張っている」
「ふむ、それで?」
「でと、そうなった場合弦を張る本体の大きさは当然弓の方がデカくなる訳だ」
「ああまぁ確かにの」
「で、物理の法則に従うと、同じ張力で弦を張った場合、本体のデカい方がより威力が増し、また射程距離が伸びるって寸法だ」
「なんでお主はそう偏った部分で学術的なんじゃ、と言うかボウガンより飛距離とか威力が増したらどうじゃと言うんじゃ」
「お前俺の話聞いてた? 飛距離が伸びればそれだけ獲物を遠くから狙える、そうなったら安定してお肉の供給が出来る、な?」
「な? じゃないわっ! 何で海軍提督がそんな狩人染みた思考で食卓の改善を全力で行っておるのじゃ! おかしかろ立場的に!」
「まぁそうカリカリすんなよ、この弓は食卓のお肉を安定供給させるだけじゃなくてよ、ちゃんと軍事的利用も考えて作ってんだぞ」
「ほぉ? お肉と軍事的な利用目的を混ぜるとか、どうすればそんなおかしな思考になるのかはこの際どうでもいいとしてじゃ、その軍事利用とはどういった物なのじゃ?」
「お前ラ○ボーって知ってるか?」
「ああそう言えばお主昨日そんなDVD見ておったな……って言うかアレか? 弓矢の先にドリルっぽい何かを装着して、ヘリでも落すとか言わんじゃろうの?」
「既にその辺りはピエトロが解決済みだ」
「何でも妖精が絡めば解決するみたいな流れはどうなのじゃ! むしろ弓でヘリ落すとか普通の人間は真面目に考えんぞ!」
「妖精じゃねーよ、ピエトロだっつってんだろ!」
「どこの世界に身長10cm程の人間がおると言うのじゃ! 明らかに生物的な面でおかしかろ!」
「ここに居るじゃネーか!」
「あーもー分かった分かった、もうそこのは工廠のバイトでピエトロ君でいいわまったく! それでじゃ提督よ」
「何だよ?」
「何ぞお主宛に舞鶴鎮守府からお便りが届いておったぞ、ほら」
「舞鶴ぅ? 何で舞鶴からウチに便りが来んだよ」
「我輩に聞かれても分かる筈はなかろ」
「……あーなになに? ん? 何だこりゃ?」
「何が書いておったのじゃ?」
「あ? いや何か知んねーんだけど、舞鶴の提督が俺に果たし状送ってきやがった」
「は? 何じゃと? どういう事じゃ?」
「知らねーよ、何かいつかの決着を付けるとかなんとか書いてんな、なんだこりゃ?」
「えっと……輪島博隆とあるが、お主この人物に心当たりは?」
「うん? 誰だそれ? 知らねーけど」
「……本当に知らんのか?」
「ああ知らねー、どこかの誰かと俺の事間違えたんじゃねーの? 取り敢えずんなモン縁起悪いから捨てといてくれ」
「ふむ、まぁお主が知らんと言うなら仕方ない……っておい提督よ」
「ああ? 何だよこっちは忙しいんだって」
「あの壁に立て掛けておるクソでっかい物体は何なのじゃ?」
「ん? あああれか、ってお前あれ見て分かんねぇのか? ガン○ンスじゃねーか」
「ガ○ランスぅ? 何でモ○ハンの武器が工廠に転がっておるのじゃ?」
「いや弓だとイノシシとか鹿辺りは何とかなるけどよ、熊とかだとちょっと威力足んねーし、ドリルくっ付けたら爆発しちまってお肉台無しになるからよ」
「どんだけお肉に拘っとるのじゃお主は! むしろそんなモン使わんでもお主なら熊程度丸太で一撃ではないか!」
「はぁ? お前何言ってんの?
「その兵器だの狩猟道具だのお主の中の常識で話を進めるのはヤメんか! お主の常識は大概一般的な非常識じゃとそろそろ理解をせいっ!」
「あーもー何でそんなにヒートアップしてんのか分かんねーけどさ、結局お前肉食うの? 食わねーの?」
「どうして色々回って最後はお肉の話に軟着陸するのじゃ! 肉から離れんか!」
「お前こんなド田舎でお肉の存在無くなったら何を基準に生きてけばいいんだよっ!」
「じゃからここは海軍拠点であって、狩人小屋では無いと言うておろーが! 何で基準が肉に設定されておるのじゃ!」
「いやお前ウチが海軍だからって毎食魚って考えは安易じゃねーのか? 何だ誰かに洗脳でもされてんのか?」
「我輩今一お主の何と言うか考えの基準が理解出来んのじゃが…… て言うか、ここは海軍の拠点であってじゃな……」
「ああそうだな、だからちゃんと防衛用の色々も作ってあんだろ、ほらそこのとか」
「……そこ? どれじゃ?」
「ほらそこの地面に埋め込んである」
「ん? 何じゃこの不自然に地面に埋め込んでおる溝は」
「あーそこの横のレバー引いてみ?」
「レバー? この意味ありげに地面にぶっ刺さっておる棒はレバーじゃったのか? ってうーわ、何じゃこの地面から生えてきたデッカイ……のう提督よ?」
「ん? 何だよ?」
「これは……このカタパルトは……」
「ああお前MS用のカタパルトとか、岩射出するアレとかは違うっつってたろ?」
「……言うたの」
「んで二次大戦ん時のカタパルトがどうとか言ってたろ」
「……確かに言うたの」
「んであーそっちかって思ってな、資料読んで作ってみた、火薬式カタパルト、呉式2号5型だ」
「ああうん……確かにこれは我輩も見覚えのあるカタパルトじゃが、のう提督よ……」
「ん? 何だ?」
「このクソでっかいカタパルトの、これはどうやって使うのじゃ?」
「あ? んなモンお前が一番分かってんじゃねぇのか? ほらそこに乗ってだな、レバー引いてだな」
「待つのじゃ、もしかせんでもコレは我輩を射出するカタパルトという事かの?」
「え? それ以外にどう使うってんだよ」
「お主はバカか!? 確かにコレは我輩が知ってるカタパルトじゃが、我輩がいつも言うておるカタパルトはコレじゃなくて艤装についておる水上偵察機とかを射出する物じゃ!」
「ん? ああそれちゃんと水上偵察機も射出できるぞ?」
「そうじゃなくて! 我輩がカタパルトに乗って射出されるのではなくて! 我輩がカタパルトを装備して水上偵察機を射出するのじゃ!」
「え? いやお前それサイズ的に無理なんじゃねーの?」
「誰が1/1スケールのカタパルトを装備すると言うたのじゃ! そんなの考えんでも分かるじゃろ!」
「あーこれスケールダウンしろって事?」
「……当たり前じゃ、こんなデッカイのどうやって運用すると言うのじゃ」
「言われてみりゃ確かにこれデカ過ぎだよなぁ、んー……なぁ利根よ」
「何じゃ?」
「お前体重どんくらいあんだよ?」
「……何でそんな事聞くのじゃ」
「いや、ほら耐荷重量ちゃんと計算しねーと、どこまでスケールダウン出来るかって計算ができねーじゃねーか」
「だから我輩を射出するという考えから離れんか!」
「後コレは必須だから渡しとくわ、絆創膏」
「絆創膏? って……これは何に使用するのじゃ?」
「あ? そりゃ何も張ってねーとほら、飛んでる時ヒラヒラの中丸見えになっちまうだろ? 資材頼むのに先輩んとこに連絡したらよ、射出する時のバランスって大切らしいし、少しでも重量が軽い方がいいって事でよ、ついでに剥がす時もガムテより毛の被害が少ないだろうって事でそいつが鋼材と一緒に送られて来たんだが」
「サブロオオオォォォォォォォオオオオオ!!」