提督と利根さん、とか。   作:zero-45

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むいかめ

 

「のぉ提督よ」

 

「何だ利根」

 

「この……凄まじく豪華絢爛なおせち料理なのじゃが……」

 

「おう、材料費0円、ここ周辺で採取できるブツで仕上げた力作だが、それがどうかしたか?」

 

「ほ……ほう? 魚介系は漁協のバイトで賄ったとしてじゃ、このカズノコとかどうしたのじゃ? ニシンはこの辺りでは取れんと言っておったじゃろ?」

 

「ああそれ適当な魚卵を寄せて例のウコンで着色してみた、歯応えを再現するのには苦労したが、そのお陰で本物と遜色の無い出来の逸品に仕上がったぜ」

 

「……このハムとかは?」

 

「猪肉」

 

「この昆布巻きは……」

 

「海に潜って採ってきた、中に巻いてあんのは錦鯉」

 

「そこで錦鯉か!? 何でそこで妥協したのじゃ!? 他に幾らでも海の幸があったであろ!?」

 

「ああ、その辺りはついうっかり全部カマボコに化けたから仕方なくな」

 

「力作過ぎるじゃろ!? 我輩完璧な物を見てこんな突っ込み入れるのは初めてじゃぞ!」

 

「ついでに物々交換で大量に大豆も仕入れておいたからな、そこにある雑煮の味噌は自作だったりする」

 

「遂に発酵食品にまで手を出しおったか…… しかし味噌仕立ての雑煮か、提督は関西の出かの?」

 

「まぁな、本当は白味噌と行きたいところだったんだが材料が揃わなかった、その代わりこれからは納豆も食卓に上がるし醤油もあるしで色々捗る予定だぜ?」

 

「着々と食生活が充実していくのは良いのだが、提督よ」

 

「何だ利根」

 

「色々力を入れる部分が間違ってはおらんか? 肝心の鎮守府設備が増築したハ○ジの部屋で止まっているようじゃが……」

 

「ああそっちね、大丈夫だ、既に手は打ってある」

 

「何じゃと?」

 

「ほら年末に対空兵装を設置するっつってただろ?」

 

「……言うてたの」

 

「既にそれは竣工を終えている、後は試射して性能を確認するだけだ」

 

「待て、待て待て、対空兵装とな? あの時お主が言うておったのは確かカタパルトとかでは無かったか?」

 

「おう、まあそれなんだがほれ、そこにあるレバーを引いてみろ」

 

「この壁にぶっ刺さっておる不自然な棒はレバーじゃったのか!? て言うか我輩物凄く嫌な予感しかせんのじゃが……」

 

「まぁそう言わずに引いてみろって、カタパルト職人のお前を唸らす為に徹夜で仕上げたんだからよ」

 

「何じゃそのカタパルト職人て! ったくこれかの……ってうーわ! 何じゃアレは! 崖の斜面から色々原始兵器が生えてきおったぞ!」

 

「エレベーターの構造を色々研究してみたんだがな、麓に放置されてた2t車を利用すれば、その自重+積載限界の総重量5tまでのブツを利用してエレベーターの加重管理ができる事が判明した」

 

「ちょっと待てぇい! 5t懸架が可能なエレベータて、重量計算上可能かも知れんが木製エレベーターの強度が持たんではないか!? 色々おかしいぞ!?」

 

「海軍特殊工作部隊に居た時の経験を生かして工夫をしてみた、計算上10t位なら余裕の設計だから5t程度の兵装なら強度的には何も問題は無いぞ?」

 

「どうしてその経験をこんな無駄な物につぎ込んでおるのじゃお主は!? むしろカタパルト(投石器)とかバリスタ(大型弩砲)でどうやって深海棲艦の艦載機を落すと言うのじゃ!? アレは攻城兵器であって防空兵器ではないぞ! お主分かっておるのか!?」

 

「いやそこはほれ、カタパルト職人であるお前の手腕次第って事でだな」

 

「無茶振りにも程があるわっ! 第一我輩の使うカタパルトは石の塊とか先の尖った丸太を射出するアレとは違うからな! 理解しとるのかお主は!」

 

「そうなのか? てかそんなにカリカリしてるとストレスマッハで豊胸体操の効果が落ちるぞ、落ち着け、な、これでも食って落ち着け」

 

「どうしてお主が風呂でしておる我輩の日課を知っておるのじゃ!? 別に夢見る事は何も罪ではあるまい! ……ったく、む、これはモンブランではないか、これは……美味じゃの、流石にけーきを食うと気分が高揚するのじゃ」

 

「そうかそうか、ちなみにソレな、栗はおせちの栗きんとんに化けちまったから裏で拾ったドングリで代用してみた、好評だったならなによりだ」

 

「ドングリとな!? むしろ何故そんな物でけーきを作ろうとするのじゃ!?」

 

「仕方ねーだろ、いつもケーキケーキ煩いから生地は作っておいたんだけど、おせちに没頭しちまってソイツを忘れてたから仕方なくだな」

 

「……色々言いたい事はあるが、我輩のリクエストを聞く為の努力という事ならしかたあるまい、今回は素直に礼を言うておくぞ……」

 

「それとな利根」

 

「何じゃ?」

 

「風呂入ってる時何だその……おっぱい音頭ってのアレ? もっとボリューム下げて歌った方がいいぞ? こっちまで丸聞こえだからな」

 

「このタイミングでそれを言うか!? もっとこう、注意隆起するなら別なタイミングとかあるじゃろうが!」

 

「うるせーよ! 毎晩能天気なチチ音頭聞かされてどうしたモンかって悩まされるこっちの身にもなってみろってんだ!」

 

「チチ音頭言うな! て言うか悩んだ挙句にポロリとカミングアウトとかどんだけデリカシーが欠如しておるのじゃお主は……ったく、ああそれと提督よ」

 

「んだよ」

 

「色々スルーしておるがな、あの原始兵器群はどっちを向いておる?」

 

「あ? んなもん対深海棲艦兵器なんだから海に決まってるだろうが」

 

「そうかそうか、それであれの射程距離は如何ほどの物なのじゃ?」

 

「ん~? そうさな、一部車のスクラップを流用して強化済みだからざっと1000mってとこか」

 

「丸太を1kmも飛ばすとか色々ぶっ飛んでおるの…… では射出した丸太や岩は海まで届かんと?」

 

「まぁそうなるな、でも防空兵装だから敵艦載機への迎撃能力があればいいワケだし、別に海まで届かなくてもいいだろ?」

 

「そして射出した岩は集落に着弾し、丸太が民家に突き刺さると」

 

「……あ」

 

「あ、じゃ無いわ! いつも言うておろ……何でもかんでも考え無しに作るで無いと」

 

「何てこった……じゃあの対空兵装は全て作り直しだというのか」

 

「作り直さんでも良いわっ! 撤去じゃ撤去、何で防衛拠点が民間の家屋を倒壊させる危険性がある兵装を備える必要があるのじゃ!」

 

「くっそ……なら防空に関しては第二計画案を推し進めるしかないと言うのか……」

 

「……何じゃその第二計画案とは」

 

「いや、単純に航空機を何とか入手なり開発してお前に装備させるという案なんだがな」

 

「ふむ? いきなりまともな話になったの、そうじゃな……それも一つの解決策ではあるが、残念ながら我輩には水上機しか装備出来んし搭載数も少ないからの、どちらかと言うと砲の能力を上げるか三式弾を実装する方が現実的かも知れんの」

 

「あ? 水上機ぃ? 何言ってんだお前?」

 

「何って我輩は航空巡洋艦じゃぞ、空母の様に艦載機運用は出来んのは知っておろ?」

 

「え? ツルペタでフルフラットな艦娘ってそれ利用して艦載機を離発着できるんじゃねーのか? ほら、それ用の衣装もお前用に仕立て直ししてたんだが……」

 

「何じゃその狂った理論の航空機運用法は、しかもこれは……龍驤の制服ではないのか?」

 

「ああ、それ先輩が『お利根さん用にどうぞ』って」

 

「サブロオォォォォォォォォォ!」


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