七人の魔術師、七騎の英霊、その中に彼はイレギュラーとして混ざった。しかし彼は変わらない。振るえ腕、振るえ脚、全ては主が命ずるままに。信念、誇り、全ては自身の為に。願いはあるのかと問われればこう答えるだろう――自身で掴みとる、と。

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元々にじファンに投稿していたものを移転したものです

当時携帯で書いていたものなので少し修正加えましたが、違和感は多少あるかと思います


Fate/stay bravo

 諸君は【聖杯戦争】、というものを御存知だろうか?

 ……聞いてはみたものの、この話を覗いたということは知らないはすが無いと思う、故に知っていると仮定して話すとしよう。

 だがまぁ、居るかもしれない知らないであろう人のために一応ザックリと簡略かつ省略的に説明するとしようか。何、矛盾している? 仕方ないさ、そういうこともある。だから気にするな、ほら説明いくぞ。

 

 手にした者の願いを叶えるという【聖杯】なるものがある、その聖杯を実現させる為には一つの儀式が必要だ。

 聖杯に選ばれた七人の魔術師はマスターとなり、七騎の使い魔であるサーヴァントと契約して、自らが聖杯を得るに相応しい事を証明することが必要となる。

 つまり、マスターは他のマスターをぬっ殺して自身こそが最強、リアルアタイってばさいきょーね!というのを示さなければならないのだ。ガッデム。

 例え前知識が無くとも、察しの良い方ならもう理解しただろう。この儀式が、【聖杯】を求める行い全てが―――【聖杯戦争】と呼ばれているのだ。

 

 これで知識はOK?

 まぁ実際は色々と複雑怪奇な事情とかなんやらがあるんだが、後は各々調べてくれ。先生からの宿題だ、ぷれぜんとふぉーゆーだ。え、いらない? マジで?

 ……では、いい加減に本題に入るとしよう。ぶっちゃけてしまえばあれだ、ありがちな話だが本来とは違う英雄が喚ばれたというやつだ。

 だが勘違いしないでほしい、これで喚び出されたのは語り役である私ではない。

 喚ばれたのは一人の男、信念が為に生きた優しく厳しい男だ。英雄であるか否かは知らない、そもそも彼の出てくる話では彼は主人公ではなかったし死にもしなかったのだから。

 ……だが素質でいえば―――器だったと言える。

 

 

 その戦いは、彼にしてみれば望まざるものだった。

 別に【聖杯】に願いたいことなんぞ欠片も、それこそ一ミクロンもありはしない、願い自体があってもそれは自身で掴み取るのが彼だ。

 そもそも今回の【聖杯戦争】はどういうわけか魔術師(マスター)の子供の割合が高い。それは彼という優しい人間には厳しい、厳しすぎる。

 護る為に戦ってきた彼には酷と言えよう。

 しかし彼に選択権は無い、喚ばれてしまった以上彼は戦わなくてはいけないのだ。

 ……いや、訂正しよう。護りきらねばならないのだ、とある門を。英雄を相手に、英雄として。

 

「ヘッ、どこの英雄だが知らねぇが――面白そうだ!!」

 槍の英霊、ランサー。

 最速とされる英霊が振るう朱い槍を避けることはせず、彼はただ殴り受け止める。ただひたすらに護る為に。

 

「何故石にならない……!?」

 騎兵の英霊、ライダー。

 彼女の魔眼を受けて尚、彼は君臨し続ける。ただひたすらに護る為に。

 

「――■■■―■■!!」

 狂戦士の英霊、バーサーカー。

 他を圧倒する暴力的な一撃さえ防ぎ、そして肉体より繰り出す体技のみでそれを退ける。ただひたすらに護る為に。

 

「クッ……ただ護るだけの存在が、ここまで厄介とはな……!!」

 弓兵の英霊、アーチャー。

 そのクラスであるにも関わらず弓を放たずに襲いかかるは無限の剣、しかし彼は退かず叩き伏せる。ただひたすらに護る為に。

 

「貴方の誇りは認めよう、ガーディアン……しかし―――私にも譲れないものがある!!」

 剣の英霊、セイバー。

 最優と称されるに相応しいその能力、剣技、だがやはり彼は立ち塞がり戦う。ただひたすらに護る為に。

 

「退くならば追わん、だが向かってくるというなら―――潰すのもやむを得ん」

 守護者の英霊、ガーディアン。本来喚ばれることはない彼だが、喚ばれた以上は主の命に従い門の前に立つ。ただひたすらに護る為に。

 

 護ることを貫く、彼のその出で立ちはまさに異様。

 身を纏う外套、帽子、手袋までしている為素顔どころか全身が隠れきっている。情報を与えては厳しい戦いとなるのを考えれば、成る程正しいとも言えよう。

 しかし実際に彼にそんな思惑があったかは分からない。外套等は彼の宝具によるものだし、時折彼は何も考えていないような言動をするからだ。

 それも、かなり真面目なシリアス顔で。

 

「貴方は何故そんな格好をしているのかしら?」

 魔術の英霊、キャスター。

 サーヴァントでありながらマスターの資格を持つ彼女は、自身のサーヴァントである彼に問う。

 しかしながら、答えは分かりきっている。彼女が以前真名を聞いた時にされた返答であり、彼の口癖でもある言葉であろう。

「これは俺の宝具だからな、それに身の守りを固めて損は無い」

 正しいが、質問の返答としては些か正しくない。少し苦笑しながらキャスターは聞き直した。

「……そうじゃなくて、何故常時敵が居ないときもそのままなのかってことよ」

「そんなことは決まっている。何故なら」

 彼は恐ろしく強い、恐ろしくだ。鍛え上げられた肉体は正しく武器、否それ以上。

 腕を振るえば海が割れ、蹴りを放てば流星が如く。

 それほどの実力者にも関わらず彼の真名を知るものは少ない、主たるキャスターさえ知ったのは召喚して幾日か経ってからだ。理由は彼が名乗らないから。

 何故かって? 何故なら

 

「そのほうがカッコいいから!!」

 ―――だそうだ。

 

 彼の真名は『防人 衛』、クラスはイレギュラーたる守護者(ガーディアン)

 人呼んで―――キャプテンブラボー。

 最硬にして最強たるサーヴァントである。

 

 ―――聖杯? 生憎と酒は飲まないんだが。

 ―――その杯じゃないわよ……。

 

『Fate/stay bravo』




キャスタールートの匂いがしないでもないけど普通にキャスターはマスターとうふふ


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