今回の二話:出逢いその一はArcadia様で掲載している二話:出逢いの話を3つに分割してそれぞれ修正と書き足して載せる予定です。
ちなみにカリーヌの性格は記憶を無くした状態なので原作とは違い
普通の性格を設定しておりますが…カリーヌの事だからそのうち化けの皮が剥がれていくのも時間の問題ですね。
「何だ、いまの爆発は……あんな何もない樹海でどうして? 」
海上自衛隊所属のヘリコプターが某県にある樹海上空を特別単独飛行訓練のために飛行していると
数百メートル先の高度十メートルくらいの高さのところでいきなり爆発が起きたので、操縦士の平賀 海人1尉が確認のために現場に急行していた。
平賀 海人はヘリコプターを少し開けたところに着陸させると、爆発した場所へ急ぐのだった。
「なんでこんな場所に女が倒れているんだ? ……そんなことより今は救助が先だ! 」
平賀 海人は倒れている要救助者の妙齢の女性に声をかけていた。
「おい! だいじょうぶか……意識はないのか? 」
(なぜ、こんな場所に欧米人の若い女が倒れているんだ……訳は解らないが
頭部がケガをしているようだからヘリに乗せて、病院に連れていかなきゃならないな…)
平賀 海人は樹海にうら若き? しかも欧米系と思われる美女がケガをして倒れていることに
疑問を感じながらも手当を施すためにヘリコプターの扉をあけ、そっと中に運びいれると操縦席に座りヘリを離陸させていた。
「ほんとは富士の教導団基地が近いが…彼処は陸自で所属が違うし
手続きがイロイロ煩わしいからなぁ…少し遠いが、海自の厚木基地に運ぶほうが後々のことを考えると都合が良いだろう?
なにより厚木のほうが設備が整っているうえに、医師に腕の良いのがいるからなぁ」
平賀 海人、海自1尉はケガをしている謎の女性を自身の判断で海自の厚木基地へ搬送することを決めて所属部隊の上司に連絡して
そこから基地附属の海自の病院へ受け入れてくれるように、要請してもらって受諾の返事がきてようやく厚木基地にヘリを向かわせた。
数十分後、直接病院の駐車場にヘリコプターを降ろすと、そこには海人の上司と思われる海上自衛隊の佐官が一人と病院の医師と看護師数人が待機していた。
海人がヘリを着陸させてすぐに側面のドアをスライドして開けると
緊急医療患者の名前と身分不明の欧米人の女性を医師と看護師たちが診て、すぐさま診断するとストレッチャーに乗せて至急手術室へ運び込んでいった。
「おい、平賀1尉! お前という奴は…何回トラブルを持ち込めば気が済むんだ? 」
「は? ……岩瀬副司令。仰っている意味が本官には解りかねますが? 」
海人は怒りの表情をして自分に対して怒る上司を自覚をもってとぼけてみせていた。
「………平賀1尉…いつまで引きずるつもりだ。奥さんのことを…」
海人のプライベートのことを語る上司の岩瀬に対して……。
「綾子の事はいま関係ないだろ!! ………生意気なことを言いまして、申し訳ありません。岩瀬副司令……では自分は疲れていますので、このまま休息にはいらせて戴きます」
そう言うと海人は岩瀬副司令にみごとな敬礼をしてこの場を立ち去っていった。
「…バカなやつだ……このまま、奥さんのことを引きずったままだと何時かは取り返しがつかなくなって死ぬぞ…
まだ幼い子どもがいるというのに……これでは綾子さんも浮かばれないじゃないか……」
1年ほど前から独断専行に規律違反などの行為を繰り返す平賀海人に、忸怩たる思いでいる岩瀬副司令なのであった。
「クソ! ………何に対して怒っているんだ。岩瀬副司令の言葉に動揺するなんて俺らしくないぜ…」
厚木基地所属のヘリコプターパイロットたち専用の休憩室の壁を力いっぱい、おのれの拳で叩きつけながら自分の不甲斐ない心情を呟く海人。
壁を叩いた『ドゴォン』と轟く音に続き海人の部屋中に響きわたった怒声に周囲にいた
多数の休憩中のパイロットたちが何事だと思い一斉に見つめてきたから、流石にその視線に煩わしさを感じた海人は休憩室を出ていった。
「……さっき助けたあの女性は助かったのかな…生きていてくれると良いんだが……
顔かたちやスタイルは全く違うが…何ていうか、纏っている雰囲気が綾子によく似ている感じがしたなぁ…
それに綾子が生きていたら丁度あの年齢だからかも知れないのか…気になってしょうがない…」
廊下に出て屋上へ向かう間、海人は先ほど自分が樹海で救助した頭部にケガを負った女性が
いまは亡き妻に見た感じが、全体の雰囲気がそっくりだった事を思い出して彼女の無事を願っていた。
数時間後、上司をとおして救助した欧米人の女性の手術が成功した連絡がはいって喜ぶ姿の海人がいた。
身元不明の欧米人と思える女性が海上自衛隊附属の病院へ運びこまれ、緊急手術が施されて3日が経ったころ。その彼女がようやく意識を取り戻したのは特別病室のベッドの上であった。
(…此処は…いったい…どこなの…)
ようやく3日ぶりに目覚めたカリーヌはすこし上体を起こしてまわりを見渡すと、ベッドの横にパイプ椅子に座っている。
歳のころは30前後くらいの背の高さは180を超えていると思われる髪型は短めで顔つきは精悍、海自の制服のうえからでも解るくらいの
中肉の引き締まった筋肉質の身体をした男が優しげなまなざしで自分を見つめていることが解った。
「ようやく、目が覚めたようだね」
平賀 海人は穏やかな声を目覚めて間もないカリーヌにかけていた。
「……あの、貴方はどなたで、此処はどこなのですか? 」
カリーヌは意識を取り戻したばかりで、いま自身がおかれた状況が全く解らなかったから
目の前にいる優しい瞳をした男性に訊ねてみた。
「あなたは3日まえに富士の樹海である爆発に巻き込まれ、頭部にケガをして倒れていたところを自分が発見して
海上自衛隊の厚木基地附属のこの病院へ運んで、医師が治療をほどこしてその後この病室のベッドに先ほどまで眠っていたんだ」
カリーヌのごく普通の質問に海人は簡単にこの3日まえに、樹海でのカリーヌを助けたことからいま目覚める前までの仔細を説明する。
「……ところどころ意味の解らない事もありますが……でも、貴方が私を助けてくださったのは理解できました。
ありがとうございます…あの、命の恩人のあなたのお名前をぜひとも教えてくれませんか」
カリーヌが命を助けてくれた海人の名を教えてほしいと真摯な表情で述べる。
「いや俺はあなたをこの病院へ運んだだけで、手術して助けた者は担当の医師だよ…」
海人はただ義務を果たしただけにすぎないと、カリーヌに説明するのだったが……。
「もちろん医師の方が助けてくれた事には感謝しております……でも、倒れていた私を見つけてこの病院へ連れてきてくださった、あなたは私にとっては命の恩人なんです。
あなたが見つけてくださらなければ、いま此処でこうして話すことは無かったでしょうから…もう一度言わせてください。ありがとうございます」
カリーヌの先ほどからの自分に対する称賛の言葉にこの男にしては珍しく照れて顔を赤くしていた。
「………俺とはしてはいろいろ訂正してほしいところなんだが……いまは止めとこう…話がそれて失礼したかな…自分の名前を教えてほしいと言っていたねぇ……ひらが、平賀 海人。海上自衛隊に所属している階級は1尉であります。ところであなたのお名前をお聞かせ願えませんか」
カリーヌに自身の名を教えると決めた後すぐに、平賀 海人はパイプ椅子から立ち上がって背筋をピンと伸ばし
それはみごとな敬礼をしながらフルネーム及び所属組織と階級を述べた後、間髪いれずカリーヌの名前を訊ねていた。
「私の名前は…名前は………カリーヌ…歳は…30歳…………これしか、解らない…どこの生まれで、何処に住んでいたのか……なにも…思い出せない………なぜなの? 」
カリーヌが爆発によってうけた後頭部へのケガが原因なのかは、いまの時点ではまだ解らないのだったが
名前と年齢以外の全ての記憶を失ったことは事実のようであった。
「……何も思い出せないのは頭部のケガが原因なのかは精密検査をしてみないと
いまの時点ではなんとも言えないが、傷が影響していることは間違いなさそうだと思うが……
それが一時的なのか…それとも長期間におよぶのかは、まだ何とも解らないしなぁ……こればかりは医師がいろいろ調べて判断するしかないようだ…」
平賀 海人の淡々とした言葉に、カリーヌは不安を感じていたからなのか、きれいな表情が少しくもって俯いていた。
「これは済まない…カリーヌさん。あなたを不安にさしてしまって…だが、まだ記憶がこのままの状態とは限らないし
案外すぐ戻る可能性も有ると思うんだ……だから…そんなに落ち込まないでほしい…」
海人は自身の何気ない言動でおちこませたカリーヌに、マズイ事を言ってしまったと思い
すぐにフォローの言葉を放ったが、あまり上手くいったとは到底思えない。
(あぁ、俺ってやつは何時もこうなんだ…落ち込んで心身ともに弱っている女性に気のきいたセリフの1つも言ってあげることもできないからなぁ……バカでデリカシーの欠片もないしなぁ……
亡くなった妻の綾子にも、よくこれで怒らせていたっけ……なつかしいけど……本当にバカだよな、俺は…)
海人は落ち込むカリーヌに気のきいた言葉の1つすら上手く言えなくて心の中で、反省すべき事をいろいろ考えていた。
「…ふふふ……海人さんて、やさしい方なんですね。こんな見ず知らずの氏素性の解らない女に安心する言葉をかけてくださるなんて……私が悪い女だったらどうするんですか? 」
自分の事を卑下する言葉を吐きながらも、先ほどと違って少し微笑みをうかべた顔で
見つめてくるカリーヌに海人は、いま心の中である1つの思いを感じていた。
(俺はいま目の前にいるこの女を見ていると、すごくきれいだと思っている…それに今すぐ抱きしめたいと男の本能が湧いてくるのは、認めたくないが…どうやらカリーヌに惚れたみたいだ……)
(なぜかは解らないけど、さっきから目の前の海人さんを見ていると胸の奥がドキドキして熱く心を焦がすのはどうしてなの? )
いま心の奥底で海人とカリーヌのふたりはお互いどちらも特別に意識しあっているとは、まさか思ってもいなかったはず……現時点では。
しばらく二人の間に静寂が流れていましたが、ふいに海人が自身の左腕につけている海自支給の特製腕時計をみた後、すぐにイスから立ち上がっていた。
「休憩時間が終るようだから今日はこれで失礼するけど、明日また来るからその時は水と果物でも差し入れにもってきます」
「今日は見舞いにきてくださり。ありがとうございます」
カリーヌにお礼の言葉を述べられて、恥ずかしいのか足早に海人は病室を出っていった。
海人が退室したあと、すぐに担当医と看護師がきて後頭部の傷口の症状を診察して更にいろいろな検査をするために持ち込んだモノで各種の事を終えると
まだ夕食まで時間があったようなので、カリーヌはゆっくりと個室と思われる病室を隅々まで見てみると
すぐ横にあるいろいろな物を置くキャスター付の台の上に手鏡がおいてあったから、それを手にとり自身に向けて見てしまうのであった。
「…こ、これが今の私の姿だというの…………」
カリーヌは手鏡で確認した自分の姿を見て絶句する。
(記憶を無くす前に着ていた寝間着とはなにかが全く違う感じがするのは何故かしら……
それに頭に巻かれている白い布のせいで確めようがないけど…頭部がスウスウする感じからして
髪がすごく短くなっているか、もしくは全部無くなっているみたいだわ……)
カリーヌの想像どおり、後頭部に入り込んだ爆発物の破片を取り除くために
仕方ないとはいえ、見事なほどの膝先まであったピンク・ブロンドの髪を全て切り落としていた。
その後、邪魔にならないように丁寧に頭部全体をそりあげてツルツルにしていたので今のカリーヌは包帯を外すと殆ど髪がない状態になっていた。
勿論、切り落としたピンク・ブロンドの髪を使用して至急ウィッグ(カツラ)を製作中でありました。
カリーヌは今の自分の頭の状態を予想して軽くめまいをおこしそうになって、ベッドに横になろうと思い身体を沈めようとして
手鏡を元の位置に置こうとしてふと、台を見てみるとそこには長さ10㎝くらいの細い木で出来ている棒が1つ置かれていた。
「…これは何なのかしら……でも 、この棒が大切な物だと思えてならないわ…」
台に置かれている小さな棒からなにかを感じとったカリーヌが、思いきって右手で掴んでみると
その瞬間、身体全体に微弱な電流のようなモノが流込みカリーヌの頭の中にいろいろな呪文と思わしき知識が奔流するみたいに流込んでいた。
「『ライト! 』」
とカリーヌが右手にもった10㎝の長さの細い木の棒をライトと呪文を唱え振ると
棒の先がまばゆく光輝きだした。
「何なの…これは……いま私がしたことなのは…間違いないわね…」
自身で呪文を唱えておきながら、まるで未知の事象をみるような感じかたになっていたカリーヌは少しその力に戸惑っていた。
「『レビテーション』」
と今度はさっきとは違う呪文を唱えるとカリーヌの身体がふわ~と軽いかんじになってベッドの上から約50㎝くらいの高さまで浮き上がっていた。
「あぁ、今度のは身体を空中に浮かべる呪文のようね……」
しばらくしてカリーヌは頭の中にある未知の知識を使って、レビテーションの魔法を終えた。
「他にもいろんな呪文が頭に思いうかぶけど、心の奥底からそれらの呪文を唱えると大変なことになると危険を報せてくるようねぇ……
でも、この呪文は使用しても大丈夫みたいだから…使ってみようかしら? 」
たぶん使っても良いようだと判断したカリーヌは杖を構えてある呪文を唱えだしていた。
「『ユビキタス・デル・ウィンデ』」
カリーヌが呪文を唱え終えるといきなり分身して、本体と合わせると5人のカリーヌが病室に現れた。
「…何なのよ…これは…私が5人になったわ…分身じゃないようねぇ……さっきから頭の中に魔法の知識が湧いてくるみたいで、何でも解るわ…
この魔法は風の偏在と呼ぶようね……そう、距離に関係なく本人の意思の力に比例するのね………
うそっ!? 1つ1つが意思と力を持っているというの? ………こんな力なんて私はイ・ラ・ナ・イ……」
カリーヌは自身がもっている魔法と呼ばれる未知の力に恐怖を感じて杖を手放し、床に落とすとカリーヌの偏在四体が霧散したように消え失せた。
自身の力に恐怖を覚えたカリーヌはベッドに横たわると、すぐに布団を被ってうち震えていた。
衝撃の事実が解って数時間がすぎていった。その間に看護師が食事をトレーに載せて運んできたのですが
その夕食には殆ど手をつけず、水分補給のために飲むヨーグルトを飲んだだけであった。
カリーヌは布団の中でこれからの事に関していろいろ考えていた。
(私にこんな魔法のような力がある事をみんなが知ったら、きっと恐れられてしまうわ…
この化物と呼ばれ嫌われるわね……何故このような力が私にあるの…嫌! こんな力なんか欲しくないのに……
海人さんは私が魔法を使えると知ったら、どう思うのかしら…やっぱり化物呼ばわりするの……それとも……)
カリーヌはそれ以上考えると怖くなって思考を止めてしまう。でもカリーヌは心の奥底では海人なら魔法を怖がることはしないで
自分の全てを受け入れてくれるように感じて、深い眠りにつくのでした。
続く。
カリーヌの頭を丸坊主にしたのは頭部の手術をするためには、必要な処置としてやむ無くしたことなので
けっして作者の趣味ではないとここに宣言します。
ではまた次回、三話:出逢いその二で逢いましょう。