恋姫†無双外史   作:変なおっさん

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平原での日々④

 平原に戻って来たのは昼頃になる。屋敷に居たのは、華琳、春蘭。忙しかったが立場的に居ないとまずいという理由で桃香、愛紗が自己紹介を受けることになった。

 

「え~。既にご存知の方も居ると思いますが本日は、新しくこの屋敷に住む方が二人増える事になります」

 

 御主の後に新しく加わる二人が挨拶を行う。

 

「なんだか改めてするのも照れ臭いな。あたしは、名を馬超、字を孟起。真名を翠って言うんだ。涼州で太守をしている馬騰の一子になるけど気にしなくていいから気軽に頼む」

 

「たんぽぽは、たんぽぽだよぉー! お姉さまとは従妹なんだ!」

 

 二人も此処の決まりに従ってもらう。ちなみに翠は、たんぽぽの保護者として付いて来た。誰が居るかを聞いて心配になったからだ。こちらとしても責任を分けられるのなら大歓迎だ。

 

「よろしくね、二人とも!」

 

「おう、今日は久しぶりに飯でも食おうな!」

 

 桃香は、公孫賛の所でお世話になっていた時に既に翠とたんぽぽと真名を許し合っている仲だ。こちらは特に問題はないだろう。

 

「私は、華琳よ。隣に居るのが、春蘭。馬騰とは、平原で貿易同盟の件について話した時に会ったのだけど確かその時に翠は一緒に居たわよね?」

 

「あたしも覚えてるよ。母さんが忘れるなって言ってたから」

 

「そう……馬騰が」

 

 馬騰は、華琳が認める数少ない人間の一人だ。自分の跡を継ぐかもしれない翠にわざわざ念を押した事を知って嬉しそうだ。

 

「ねぇ、御主。他にも居るんだよね?」

 

「あぁ、居るよ。でも、皆忙しいから。それでも二人に会いたくて忙しい中こうして来てくれたんだよ。せっかくだから桃香、二人を案内してあげてほしいんだけど大丈夫?」

 

「わたしはいいけど、愛紗ちゃんはどうかな?」

 

「二人は、立場的に言えば賓客として扱うべき相手です。朱里たちもそれは分かっていると思います」

 

「別にいつも通りでいいよ、照れ臭いし。それにさ、そういう対応されるとこっちも気にしないといけなくなるから面倒なんだよ」

 

「えー、せっかくだし一度そういうの受けてみたぁーい」

 

「賓客は受ける側にも礼儀が必要なんだよ。たんぽぽはやらなくてもいいけど、やらないといけないあたしの身になって考えて言えってば」

 

「……そう言えば、華琳様に対して何もしていないのではないか? 華琳様は、今や兗州で太守として立派に治めているというのにどういうことだ、御主!」

 

 いきなり春蘭に怒鳴られる。華琳の事になるととりあえず動くのは直した方がいいと思う。それだけ華琳の事を思っているのだろうけど。

 

「最初に話し合っただろ? そう言うのは無くていいって、忘れたのか?」

 

「なんだとぉ! 人を馬鹿みたいに言うな!」

 

「落ち着きなさい、春蘭。断ったのは、私からよ。翠も言っていたけれど疲れるのよ。やる事は山積みなのに気を使わないといけないなんて御免だわ」

 

「ですが、今思うと此処での華琳様への対応はおざなりではございませんか?」

 

「いいのよ、それで。自分の家みたいで落ち着くわ」

 

「春蘭言いたいことは分かるよ。何かあれば言ってくれ、対応するから」

 

「う……うむ、分かれば、それでいい……」

 

 華琳に言われて最初の勢いがすっかり無くなっている。後で華琳が何かするとは思うが、時間があればこちらでも何かしよう。

 

「じゃあ、桃香。二人の事は任せて大丈夫だよね?」

 

「うん、任せて! 此処での暮らしはわたしの方が長いから頑張って案内するよ!」

 

 気合いは十分。空回りをしても愛紗が居れば大丈夫だろう。

 

「ねぇ、御主、一ついいかしら?」

 

「どうかした?」

 

「ずっと気になっていたのだけど、その顔はどうしたの?」

 

「あぁ、コレね……」

 

 御主の顔には、両頬に薬草に漢方を練り込んだ湿布が張られている。結局、翠と白蓮の二人からケジメとしてビンタと言う名の掌底をくらう事となった。

 

「落馬したんだよ。俺が調子に乗ったのが悪いんだけどね」

 

「本当に大丈夫なの? 痛くない?」

 

 あぁ、桃香の純粋な優しさが嘘を吐いている御主の心に響く。それに比べて――

 

「そう、随分と面白い落ち方をしたものね」

 

 華琳は、楽しそうに笑っている。隣に居る翠が話を聞いて少し機嫌を悪くしたので察したのかもしれない。

 

 

 

 ♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 翠とたんぽぽの対応を桃香たちに任せて御主も仕事へと取り掛かる。本当なら役場で手伝いたいところだが、さすがに手紙とかが溜まっているので確認をしておかないといけない。

 

「……この前の返事か」

 

 他を処理しながらも洛陽からの手紙を探して解読を行う。この前の驚くものを拾ったが気になって仕方ない。

 

「……月と霞が会いたがっているか、会いに行きたいけど今行ったら間違いなく斬首だろうな」

 

 あくまでも御主は、董卓の反感を買い洛陽を追い出されたことになっている。洛陽に行けば捕まり、恋に首を落とされるかもしれない。恋が裏切らない証明になるのは別にかまわないが無抵抗な状態では恋の心に傷ができる。

 

「……ちんきゅう? 恋とお似合い? 詠の奴、肝心なところを曖昧で書くなよ」

 

 どうも恋に関することで詠は意地悪をする。驚くものを拾ったとあった次は、恋とお似合い。ちんきゅうが仮に名前だとすれば、やはり生き物だろう。本当に虎じゃないだろうな。

 

「虎以外だと龍とかかな? それとも……男? いや、それはない……ないよな?」

 

 恋が男を拾って来たら確かに驚く。しかし、そうだとしたら死んでもいい。今すぐにでも洛陽に向かう。

 

「今度の手紙は、念を入れてちゃんと書くように詠に言わないとな」

 

 本当に男なら後の事など知らない。乗り込んで恋を奪って逃げてやる。その時は、月たちも一緒だ。さすがに無理矢理はしないが。

 

「御主、少しいいかしら」

 

 部屋の扉が開き、華琳が部屋へと入ってくる。

 

「別にかまわないよ。春蘭は、一緒じゃないの?」

 

「少しお使いを頼んだの。それよりも良い物を見つけたわよ」

 

 華琳と共に卓へと向かい座るのだが、華琳が手に持っている物が気になって仕方ない。

 

「華琳さん?」

 

「なにかしら?」

 

「それは、桃のハチミツ漬けですよね?」

 

 見覚えがある。それは、袁術への献上品の桃のハチミツ漬けだ。

 

「そうよ。この前、倉の中で見つけたの。これって、桃園で飼っている蜂に集めさせたミツなのでしょう? 中の桃にとても合って美味しいの」

 

「うん、よく知ってる。別に華琳なら倉の物を好きにしてもらってもかまわないよ。でもなんで袁家の物ばかり選ぶの?」

 

「これも袁紹に?」

 

「いや、袁術のほうだけど」

 

「そう言えば、ハチミツが特に好きだったわね。それでは、あのハチミツ酒もそうかしら?」

 

 ハチミツが好きな袁術の為に文献を下に製作した物。

 

「物によって少し味が違うのね。甘いのと少し刺激的なのが面白いわ」

 

「最低でも二つは飲んだんだ」

 

 安い物ではない。ただ、値段よりも数が少ないのが問題だ。

 

「まぁ、華琳が気に入るようなら上々だよ。ぶどう酒よりも品質は良いはずだから」

 

「そうね。料理にも使えそう。もしなにかあれば、日頃のお礼に作ってもいいわよ? 今日も面白い子達を連れて来てくれたし。此処に居ると勝手に人も物も来るから楽でいいのよね」

 

「馬騰が怖いからやめてくれ。娘になにかあったら俺の命がヤバい」

 

「あらっ? たんぽぽはいいのかしら?」

 

「たんぽぽもそろそろ自分の道を決めてもいいだろうからね。でも、翠に懐いているから難しいと思うよ」

 

「翠にね……御主には懐いていないのかしら? 仲が良さそうに見えたけど?」

 

 華琳の前でたんぽぽと何かあったか? 普通に紹介したぐらいだと思うけど?

 

「御主? あんまり遊びが過ぎると怪我では済まなくなることもあるのよ?」

 

「別に遊んでいるわけじゃないよ」

 

「そうかしら? でもやはり……あなたを手に入れる方が楽な気がするわね。いろいろと丸ごと頂けそうだもの」

 

「曹孟徳の言葉とは思えないな」

 

「今は、ただの華琳よ。大陸の覇権を手に入れる曹孟徳ではなく、華琳として御主と話しているの。それとも、昔に交わした約束を忘れてしまったのかしら?」

 

「忘れちゃいないよ。二人で居る時は、立場に関係なく対等に。だから倉の中を好きに使っても何も言わないだろ?」

 

 華琳が洛陽から離れる時にした二人だけの約束事。忘れるわけがない。

 

「それならいいわ。ねぇ、それで本当は何があったの? 落馬で誤魔化さないで言いなさいよ」

 

 華琳に嘘は吐きたくない。さて、どう誤魔化すとしよう? 目の前に居るのはただの強敵ではない。一度は、その瞳が見る景色を共に見たいと思えた相手なのだから。

 

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