恋姫†無双外史   作:変なおっさん

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平原での日々②

 星が部屋を出てからも手紙の確認を続ける。業務のほとんどを権限と共に他へ譲渡しているので普段の仕事は各地で起きていることの確認ぐらい。こうして各地から送られてくる手紙を読んでさえいればとりあえず問題はない。しいて言うなら量が馬鹿みたいにあるぐらいで。

 

「おっ……これで三枚目か。さて、なんと書いてあるのかな」

 

 やっと見つけた三枚目の紙に書かれた手紙を今まで見つけた他の二枚と並べるようにして見る。これは、別々の交易路で運んだ手紙を使い一つの手紙にする手法。それに加えて暗号になっており解読の必要もある。洛陽に居る詠とのやりとりをこうして行っているのだがたまに面倒に思う時がある。初めの頃は、なぞなぞみたいで面白いと思ったが早く内容を知りたい時には特にそう思う。

 

「月は……忙しいのか。洛陽も反董卓連合に合せるように動いているんだから仕方ないか」

 

 つい先日の事だ。大陸中に袁紹を盟主とした反董卓連合の結成が伝えられ、そこには各地の諸侯などが名を連ねていた。戦力的には、調べた限りどう少なく見積もっても反董卓連合の方が上になる。ただ勝ち目が全くないわけではない。長期戦に持ち込めば一枚岩でない反董卓連合は空中分解し、各個撃破する事はできる。でも、それはしない。威光の無い皇帝に、悪評を持つ董卓。存続させたとしても民の不満はまた溜まり黄巾の乱のような事が起きてしまうことだろう。もうこの国は、今の皇帝である献帝が最後となり終わりを迎える時なのだ。だからこそ終わりを迎える者としての最後の役目を果たさなければいけない。命を懸けてでも。

 

「恋は……華雄と一緒に残党の討伐。自分の隊を置いてでも戦場に行くとは、武人の華雄らしいな。霞は……酒の量が増えたのか。俺のせいにされても困るんだけど」

 

 手紙を伝わり光景が目に浮かぶ。詠が手紙を代表して書いているのだが、愚痴や文句と共に書かれているのを見ると洛陽に居るみたいだ。

 

「……しかし、これがよく分からないな」

 

 最後の所に書かれている文。どうも含みがあって読み取れない。暗号の解読を間違えていないのならどういう意味だろう?

 

「恋が驚くようなものを拾ってきた……なんのことだろう?」

 

 過去を振り返り考えてみる。過去には、赤子ではあるが虎を拾ってきたことがある。虎柄の猫なんて珍しいなとは思ったが大きく成長すれば分かる。捨ててこいとは言えず、一時期恋の家が立ち入り禁止になった事がある。今の恋なら大人の虎を拾ってもおかしくない。虎に跨る飛翔軍呂布の姿は、意外と様になっているかもしれない。

 

「オーナー! ちょっとええか?」

 

 御主が手紙の内容で考えていると部屋の扉が遠慮なく開く。平原でこれができる者は少ない。

 

「どうかしたのか、真桜」

 

 部屋に入ってきた真桜は、挨拶も半ばで御主の居る卓へと着く。

 

「もう最悪や、上手く行かなくて散々やでまったく」

 

「予算は増やしたろ?」

 

 平原に来た時に真桜の話を聞き開発費の予算を増やすことにした。どうやら全自動機織り機械のめどが立ったようだ。ちなみに全自動と言っても完全ではない。これは、あくまでも本人がその方がカッコいいからそう言っているだけで人手はいる。しかし、水車を原動力として最大で五つの機械を動かせるこの発明は、正に革新的と言える。

 

「せやけどなー、人手が足らんねん。最近、また人が増えたってんでこっちの人が足りひん。なぁ、なんとかならへん?」

 

 平原に来た者達の住居の建設に人手が取られている。他にも黄河での氾濫防止の為の工事も再度行われる。人が増えてもすぐに使えるようになるわけでもないので慢性的な人手不足に陥っている。

 

「今居るのだけじゃダメなのか?」

 

「せやなー、無理って訳じゃないけど早く試したい。オーナーが帰ってくるまでお預けくらってたウチの気持ちも分かるやろ? なぁー、頼むでオーナー」

 

「どちらにしろ材料となる資源も今は品薄だ。知ってるだろ? 黄巾党の残党が散り散りになってるおかげで交易路にも影響はあるんだよ。各地から木材を仕入れているけど前ほど上手く入荷できてない。まぁ、のんびりやってくれ。ほら、余りで悪いが美味いって評判の酒だぞ」

 

 先ほどまで星と飲んでいた酒を真桜に振舞う。味に関しては、星のお墨付きだ。

 

「んー、飲みやすいけど美味いかどうかはウチには分からんな」

 

「そうかな? 美味しかったけど」

 

 酒が好きな星が気に入ってたみたいなんだけどイマイチなのかな?

 

「凪と沙和は、オーナーと一緒で楽しく過ごしたんやろうけど、ウチは一人で此処に留守番しとったんやで。もうすこーし甘くしてくれてもバチは当たらんのと違う?」

 

「子供じゃないんだから。凪と沙和が戻ってきたら何処か連れてってやるからさ、機嫌を直してよ」

 

 凪と沙和は、交易路の安全の確保に出向いている。反董卓連合のおかげで物流が活性化しているので早めの対応が迫られている。他へも協力は要請しているが当面は難しいだろう。

 

「いつになるか分からへんやないかっ!」

 

「切りのいいところで一旦帰ってくるから」

 

「ほんま? 帰って来てからすぐにバタバタしてまともに遊んでないんやで?」

 

「真桜に寂しい思いをさせたのは分かってるから。そうだ、これから甘い物でも食べに行かないか? 新しくできた甘味処が人気らしいんだが、桃香たちも誘ってさ」

 

「ええなー。しかし、新しくできた甘味処って混んでるところやろ?」

 

「なに、この平原にある店は必ずウチが関わってる。適当に理由を付けて優先してもらおう」

 

「悪いやっちゃなー。でも、その話に乗るで。なら善は急ぐとしようか、ちょっと寄るとこあるから先行っといて」

 

「分かった。あんまり遅れるなよ」

 

 真桜と甘味処に行く約束を交わし、桃香たちを誘いに役場まで向かう事にする。

 

 

 

 ♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 平原にある比較的新しめの地区に桃香たちが公務を行う役場がある。今も尚、拡大している平原では常に場所の移動を迫られることになる。此処も何れは無くなり、ちゃんとした場所に新しく作られることになるだろう。

 

「お邪魔するよ」

 

 使いの者に通され、桃香たちの下へ通される。

 

「これは、御主殿。今日はどういった用件でこちらへ?」

 

 最初に気づいた愛紗が対応をしてくれる。

 

「真桜と新しくできた甘味処に行くんだけど、もしよかったら一緒にどうかなって思って……ダメそう?」

 

 平原に人が増えれば仕事も増える。此処に居る、愛紗、朱里、雛里の机には大量の竹簡が置かれている。

 

「甘味処!? 行きたい!」

 

 急に奥から声がする。既に竹簡の置き場となっているそこから声だけが聞こえる。確か、あそこにも一つ席があった記憶がある。

 

「ダメです、桃香様。まだこれだけ残っておられるのですから」

 

 凪も仕事に対しては真面目で厳しいが、愛紗は迫力が違う。

 

「ふぇ~、御主さーん」

 

 声はするが姿は見えず。助けを求める声だけが聞こえる。

 

「愛紗、少しは息抜きも大事だと思うよ。根を詰めたからって必ずしも効率よくできるとは限らないし」

 

「御主殿は甘いのです。この前も密かに桃香様を手伝われていましたよね?」

 

 桃香が屋敷にまで仕事を持って帰った時の事だろう。実は、彼女達は御主の屋敷に居候している。勅使となった以上は、それなりの屋敷に住む必要があるので建設中なのだ。その為、今まで住んでいたところは他へと譲り引っ越してきた。

 

「夜中にうめき声がしたからね。最初はお化けかと思ったよ。そしたら桃香の部屋からで、山のような報告書に埋もれていたのには驚いたよ。桃香にしかできない事もあるだろうけどさ、少しはね? 愛紗もずっと気を張っていたらいざという時に調子が出なくなるよ?」

 

「確かにあの時は少しやり過ぎたとは思いましたが……」

 

 あの量で少しなんだ。今もそうだけど随分と厳しいな。いや、大工だけではなく全体的に人が足りていないのが原因か。

 

「朱里、学び舎の方から人を持ってこられない?」

 

「そうですね。簡単な読み書きだけなら可能だとは思いますが、さすがに書簡や報告書などは難しいかと」

 

 平原などに立てた読み書きや仕事を教える学び舎。人材育成のために各地に設立してはいるが、育成に時間が掛かるのは仕方がない。

 

「わかった。俺にできそうなのがあれば手伝うよ。朱里と雛里で考えてもらえる? 今日は、桃香と愛紗と行くからさ。二人は、明日休みで」

 

「御主殿! そんな勝手に決めるのは――」

 

「ねぇ、どう? 朱里ちゃん、雛里ちゃん?」

 

 愛紗の言葉にかぶさる様に桃香の声が部屋に響く。声から必死さが垣間見える。

 

「え、えっと……わたしはそれでも……朱里ちゃんが決めて?」

 

「私もそれでいいと思います。確かに最近は、まともに休めていませんから」

 

「やった! いいよね、愛紗ちゃん?」

 

「……分かりました。二人が言うのなら」

 

 愛紗が渋々ながら了承する。桃香はともかく、朱里と雛里の二人からもあれば断り辛いのだろう。

 

「じゃあ、決まり。朱里、雛里、明日何処に行くか考えておいてよ」

 

 愛紗の考えが変わる前に早めに行くとしよう。桃香の喜び具合を見ると誘いに来て良かったのかもしれない。

 

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