コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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十話 兵隊

 現在、和泉率いるロボット奪還部隊は森林を駆けている。隠れるつもりもなく、ただひたすら最短ルートで敵の基地を目指していた。

 

 美由紀が先陣をきり、新型のパワーで大木を次々押しのけてゆく。

 新型のパワーにも目を見張るものがあるが、何より美由紀の操縦が絶妙だ。

 速度を保ちながら、部隊の進行を妨げる木のみを選別し押しのける。

 

 力にものをいわせているだけに見えて、腕もそれなりに高くなければ出来ない芸当だ。

 

「腕は鈍っていないようだな。」

 

「あったりまえよ!!」

 

 ニヒルに微笑む和泉。美由紀からはなんとも頼もしい返事が返ってきた。この分だと戦闘においても期待してよいかもしれない。

 

「でもさ、こんだけガンガン派手に進行して良かったの?いくら焦っているからって・・・。絶対敵に感づかれていると思うのだけれど。」

 

 速度を緩めるなんてことはせず、美由紀が和泉の考えを聞く。

 他の、車両に乗っている隊員達も思うところなのだろう。車両内の映像に目をやると、皆無言でうつむいている。ただ和泉の言葉だけに神経を集中して。

 

「良くはないな。」

 

 なんの気なしに、和泉は言った。美由紀含む隊員たちが唖然とする。隊長の和泉が作戦の結果を左右する。全責任をおっている和泉が自身の作戦に否定的であるのは、兵たちの不安を煽るのには十分すぎた。

 

 明らかに部下たちの精神が不安定になったことで、慌てて美由紀がフォローをいれる。

 

「ま、まあ。あんたのことだから、何か策はあるんでしょ?なら大丈夫よね。」

 

 和泉は美由紀がフォローしてくれたにもかかわらず、更に不安を煽るような言葉を口にする。

 

「策?んなもんは、あってないようなものだろう。後の先をとるのが俺のモットーでね。第一、ここは敵さんのホームだぜ?中途半端な作戦立てて、それを遂行しようとするよりかは、臨機応変な対応のほうが大切だと思うね。」

 

「一理あるけれど・・・。」

 

 美由紀の奮闘のおかげで、兵たちの士気が下がるのを防ぐことは出来た。それでも、ノープランで敵地に乗り込むことに不安を抱かないものはいない。

 

 そこで和泉は全体に伝令用の無線で全員に呼びかける。

 

「お前ら、なんでそれほどまでに怖がってんだ?」

 

 和泉の凛とした声が、美由紀の乗るロボットのコクピット、そして兵隊の乗る車両に響く。

 

「入隊したその日から、お国のためならば命も惜しまないと、覚悟を決めたのだろう。今更怖気づく腰抜けは、この隊にはいないはずだ。」

 

 兵士たち、美由紀、そして和泉本人も、兵隊になった日のことを思い出す。

 第三次世界大戦が開戦して、未来に夢も希望も無くなった時代。

 

 将来の子供たちに明るい未来を託すため、なにより自分が生き残るため。

 必死に身体を鍛え抜いた日々。

 

「あの辛かった訓練を思い出せ。今日までのお前らの努力の成果を、今、ようやく発揮出来るんだ。戦うのは誰だって怖い。けどさ、隣を見れば、苦楽を共にした仲間がいるじゃないか。」

 

 兵士達は互いに顔を見合わせる。

 

「一人で戦うわけじゃない。俺を、仲間を、信頼しろ。」

 

 とある兵士は、先程まで震えていた身体が、元に戻っていることに気づいた。

 またある兵士は、これまで辛い思い出しかなかった訓練生活が、光り輝く尊いもののように感じた。

 

 和泉は何も特別な言葉を使ったわけではない。どこにでもある、ありふれた言葉で激励しただけにすぎない。それでも、だとしても。信頼する隊長が発しただけで、それは不思議な力を纏う。

 

「最後にもう一つ。この作戦を成功させるには、ここにいる全員の力が必要だ。皆。不出来な隊長ですまないが、力を貸してくれ!!」

 

 今、全員の心が一つになった。ロボットを奪還する。ただひとつの目標に向かい、一丸となって突き進んでゆく。

 

 この仲間たちと一緒ならばなんだって出来る。誰しもがそう感じていた。

 

「あんた、人の感情は操作するのうまいわね。」

 

「アホか。全部本音だって。」

 

 相変わらず、嫌味をちらつかせる美由紀。だが、二人にとってはそのようなやりとりでさえ心地よいものであった。

 

 そんな普段通りのやり取りの中、和泉と美由紀は、一瞬気を緩めた。・・・緩めてしまった。

 

 大木の影に潜んでいた戦車に気がついたときには、既に遅く。

 

「待ち伏せ!!?」

 

 発射された砲弾は、戦闘の美由紀目掛けて飛んでくる。

 

「クソがっ!!!」

 

 考えるよりも早く、和泉は美由紀を庇うよう動いていた。

 

 




前書きの部分に本文を入力していました・・・。お恥ずかしい。
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