コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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十一話 失態

 いくら此方の行動が相手に丸分かりでも、いくら前線から離れて久しい美由紀が相手であっても、微塵も気配を悟らせずに待ち伏せしていたあたりは、敵ながらあっぱれだ。

 

 しかも全力で駆けるロボットのコクピットに戦車で照準を定められるなんて、並大抵の者では不可能だ。敵の一人ひとりが相当な実力を持った選りすぐりの部隊なのか。

 

「こんな手練たちを束ねているのがエルク・ラゼル少佐なのだとしたら、苦戦は免れんか・・・。」

 

 片腕を失くしたロボットを操り、敵の戦車を次々と破壊しながら和泉は呟く。主に上空へと跳躍することで敵戦車の死角へと入り、ロボット用に開発された巨大ライフルで狙い撃ってゆく。

 流れるような動作に、味方は目を奪われる。少し前までは夢物語でしかなかった巨大ロボット。

 映画、アニメ、漫画。少年時代、憧れてやまなかった夢の兵器が、目の前で実際に戦っている。

 それも、自分たちの味方なのだからこの上なく頼もしいし、誇らしい。

 敵対するエラン国の戦車隊でさえ、一瞬とはいえ目を奪われる。それも、いたし方のないことだ。

 

 気がつくと、辺りは戦車の残骸で覆われていた。まさしく一瞬の事だった。命を落としかけていた美由紀を、和泉は片腕を失いながらも救った。

 そこからは敵に追撃する暇も与えず、圧倒的に、一方的に敵部隊を殲滅した。

 

「なんとか片付いたな。」

 

 ライフルを、ロボットの腰部分にあるホルスターにしまう和泉。あまり気にした様子はないけれど、片腕を失った事実は重いはずだ。

 美由紀は自分が招いた結果に吐き気を催す。日本国内ならまだしも、ここは敵国だ。

 ロボットの修理が出来ないため、和泉はこれで、本作戦を片腕のみで乗り切らなければならない。

 

 憎まれ口をたたいて前方から意識をそらした結果がこれだ。

 新型のロボットに乗って気が大きくなっていたのか。久々の実戦に舞い上がっていたのか。

 

 とにもかくにも、和泉がロボットの片腕を失くしたのは他でもなく美由紀のせいだ。

 そして、彼がいなければ、こうして後悔することすら不可能だっただろう。

 

「ご、ごめん・・なさい。わたし・・・」

 

 嗚咽混じりの謝罪。言葉をうまく発せられない。口をうまく動かせない。

 自分が死んでいたかもしれないと、そう考えれば考えるほど、身体の震えが大きくなる。

 

「謝るな。待ち伏せの可能性を考えていなかったわけでは無いが・・・俺のミスだよ、アレは。お前が謝罪すべき事は何一つない。危ない目にあわせて悪かった。」

 

 平生とは異なる、冷たすぎるほど凛とした和泉の声。心から済まなそうにする和泉。そんな、全ての責任を負う彼の態度が、今の美由紀にとっては苦痛以外の何物でもなかった。

 

 どうせなら罵詈雑言を浴びせてくれたほうがまだ救われる。あまりにも自分勝手な考えだけれど、美由紀もまだ二十代前半。仲間に迷惑をかけて平気でいられるほど、経験を積んではいない。

 

「わたし・・浮かれてたの・・かな?」

 

 疑問形だが、誰に問うたでもない、中身のない言葉。

 

 車両に乗る部下たちは、何も言えない。下手な同情も、的はずれな罵声も。

 

 何を言っても、和泉のロボットが復元するわけでもない。損得勘定を抜きにしたところで、美由紀にかけるべき言葉は見つからなかった。

 

 そんな中で、隊長たる和泉だけが発言する。

 

「浮かれてようといまいと、お前がすべきことに変わりはないよ。」

 

「・・・え?」

 

 残った左腕で、和泉のロボットが美由紀の新型ロボットを小突いた。

 

「俺も流石に片腕ではお前に頼らざるを得ない。日本の未来は、お前にかかっていると言っても過言ではなくなったってことだ。」

 

「日本の未来が、私に・・・?」

 

 ここにきて重圧をかけられた美由紀は、もともと白い顔を更に白くさせる。

 

「なんだなんだ。俺の信頼する白川美由紀は、俺のロボットの腕が吹っ飛ぶのを笑って見られるくらい、神経の太い奴だと思っていたんだがな。」

 

 限界まで白くなった美由紀の顔面が、徐々に赤く染まってゆく。

 

「そう、そうよね。あんたの言うとおりだわ。あんたの一人や二人死んだところで、全く気にも止めないのが私だったわね。殺しても死なないもんね、あんたは。」

 

「・・・ったく、お前ってやつは。頼もしいよ、本当。」

 

 美由紀が強がりでそんなセリフを吐いたのであろうことは予想がつく。だからあえて、美由紀に万全になってもらうため、和泉は特になにも反論はしないこととした。

 

 敵の秘密基地はもう目と鼻の先だ。ここからは、様子を見るため、まずは歩兵部隊に基地へと潜入してもらうことになる。

 

「皆、何かあると思ったら、迷わずコールしろ。十分後には俺たちも攻め込む。くれぐれも死ぬんじゃないぞ。」

 

 歩兵部隊の数十名は、敬礼をしてから五人一班として、別々のルートから敵基地へ向かっていった。

 

 

 




私個人としては、ロボットは脆いほうが緊張感あって好きです。
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