コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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十三話 再会

 秘密基地内部。地下にある牢屋に、石井は閉じ込められていた。

 敵を殲滅するためにエラン国へ潜入していた彼は、百台近い敵戦車に囲まれてしまい、なす術なく捕虜にされてしまった。

 

 エラン国としては、日本との交渉材料、それとロボットの研究において、彼に利用価値を見出した。

 監禁されてから何日が経過したのか。太陽の光すら届かない地下にて長らく過ごした石井の体内時計は、完全に狂っていた。

 

(畜生が。せめて、本国にロボットを奪われた事実だけでも伝えねーと、手遅れになっちまう。)

 

 ボロ切れと見まごう、むしろボロ切れと言っても差し支えない毛布(?)にくるまりながら、石井は考えをまとめる。

 

(俺たちが敗北してから、かなりの時間が経過した。定時報告もしていない今、俺たちが何かしらのトラブルに見舞われたと、本国でも予想はされているだろう。)

 

 ろくな食事をとらせてもらえていないためか、頭の働きも悪い。

 それでも、四面楚歌なこの状況を打破しなければ、いずれ石井は殺されるはずだ。

 

(あーあ。大柳の坊主にはあわせる顔もねーな。あんだけ意気込んで、三台もロボットを失っては格好つかないぜ。せめて、ここに秘密基地があるって事前にわかっていれば・・・)

 

 思考が脇にそれそうになっていたことに気づき、石井は慌てて軌道修正した。

 

(大柳なら、俺たちの心配よりも、まずはロボットの奪還を優先するだろう。あいつ自らが前線に出てくれんなら百人力だが・・・。下手な新米にロボットを預けちまったとしたら。俺らの二の舞を演じることになるな。)

 

 力で押し切られたとはいえ、石井たちも抵抗しなかったわけではない。

 捕虜として捉えられるまで潰した敵戦車の数は、石井一人で二十を超える。

 

 実際、不意打ちで高橋が死んでおらず、三人で戦えていたならば。今頃本部へ帰還できていた可能性もある。

 たかだか秘密基地に、戦車を百台以上用意してあるというのも、石井としては納得いかない。

 

(こっちの動きを捉えたとして、百台も戦車をもってくるなんて。それも、あんな短時間で。)

 

 普通に考えて、無理だ。ロボットの機動力ならまだしも。この秘密基地から一番近い敵の基地との距離も、戦車で移動すれば三日はかかる。

 

 考えられるとすれば。

 

(俺たちの襲撃を完全に知っていた・・・??そうでなければ、こんな辺鄙な土地に百台の戦車を温存しておくものか。)

 

 しばらく思考に集中していた石井は、とある疑問を抱いた。

 

 数時間前から、牢屋を見張る敵兵が全く巡回してこなくなった。

 

 石井の体感で、昨日までは確かに来ていた。急に巡回を中止した理由はなんだろうか。

 

 様々な憶測をしている間に、答えのほうからやってきた。

 

ゴゴゴゴゴ・・・・!

 

(な、なんだ?)

 

 建物全体が、突如振動する。地震か?石井は身構える。

 

(いや。これは。)

 

 地震にしてはどこか不自然だ。揺れの感覚も不定期だし、明らかに上階から振動が伝わってきている。

 大型の何かが暴れているような振動。これが戦闘による衝撃なら、原因は・・・。

 ロボット。考えつく兵器は、それ意外ない。

 

(おやおや。大柳の坊主、随分とお早い迎えをよこしてくれたじゃねーか。)

 

 迎えを寄越したというより、和泉本人が迎えに来ているのだが。

 誰が来たかまでは、石井もわからなくて当然だ。

 

 そんなことよりも。せっかく敵の巡回が途絶えたのだ。今逃げずいつ逃げるのか。

 

 石井は靴の踵部分に仕込んでいた超小型爆薬で、鉄格子を爆破。

 

 すかさず階段を駆け上がる。数日ぶりの運動に若干足がもつれかかるが、すぐさま調子を取り戻した。

 

「さすが大柳の坊ちゃん。伊達に中尉を名乗ってはいないな!!」

 

 音の発生する地点を目指し、全力疾走する。

 和泉は石井が捕虜になっていることを知るまい。可能性としては考えているかもしれないが、助けに来てくれる保証はない。ならばやはり、石井から和泉との合流を測ったほうが早かろう。

 

「なっ!?貴様・・!!」

 

 石井の正面に、武装したエラク兵が現れる。石井は咄嗟に横っ飛びした。

 石井の立っていた場所は、すぐさま穴だらけと化す。

 

 敵の持っていたアサルトライフルの威力に息を呑む石井。味方の助けに浮かれ、あとコンマ数秒反応が遅れていたら、あの世逝きだったことだろう。

 

 回避行動の後、転がるように手近な柱へと身を隠した。

 

(ちっ。こちとら素手なんだっつーの。この間合いでは、何も出来ん・・。)

 

 あと一歩のところでままならない。

 石井は思わず歯噛みした。どうやってこの状況を乗り切ろうか。

 

 特に意味もなく、すがるような気持ちで服のポケットを探っていると、突然敵兵が倒れ込んだ。

 

「ん?」

 

 石井はそっと柱の影から様子を覗う。すると、そこには年下ながらも中尉の肩書きを持つ、見知った男が立っていた。

 

「よ、石井さん。奇遇だな。」

 

 街角で出くわした時のような、軽い挨拶。

 緊張感の欠片もない年下の上司に、石井も笑顔で返す。

 

「待たせやがって、この坊主が。」

 

 和泉がサブマシンガンを石井に手渡した。石井も、無意識に残弾を確認する。

 

「これから敵の司令室を目指すんだけど、随分やつれてますね。ついてこれるかな?石井さんのペースにあわせようか??」

 

「ぬかせ。お前こそ、ロボットに頼って体が鈍ってはいないよな?」

 

 軽口を叩きながら、二人の男は風のように駆けてゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 




身体能力は、人間レベルですよ!いささか平均より高めですけれども。
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