コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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十六話 破壊

 しばらく、敵前にもかかわらず、石井は呆然とした。銃が故障した?まずはじめに疑ったのは、銃の整備不足。これは和泉から手渡されただけのもの。石井は一切動作確認をしていない。せいぜい、弾倉を確認したくらいか。

 

 いや。大柳和泉に限ってそれはない。彼が戦闘するにあたって念入りに準備をすることは知っている。ロボットが完成する前。石井たちがまだ戦車に乗っていた時から今まで、和泉の徹底ぶりは変わらない。兵器の整備のみ行って、まともに作戦を思案しないのも昔からだが。

 

 とはいっても、結局。何故銃が正常に動かないのか。石井も、和泉も、検討がつかなかった。

 

「どうしたね、そんなに考え込んで。」

 

 依然として、世間話でもしているような自然さで、エルクが言う。

 

 どうして奴らはコチラを攻撃してこない?和泉は、エルクの言葉には何も反応を示さず、相手の腹を探る。もう二回、石井が銃を撃とうとした。和平のためにここまで来たわけではないと、わかっているはず。

 

 和泉がロボットのありかを吐かせたかったように、エルクもまた、和泉たちから情報でも聞き出したいのだろうか。

 

「・・・なんで、俺らを殺さない?」

 

 殺せるかどうかは別問題として。エルクたちは、まだ銃を構えてすらいない。

 

 和泉が、何度か床に向けて銃を撃つ。やはりこの銃も機能しない。重りにしかならなくなった銃を、和泉はためらいなく投げ捨てる。

 

「あえて言うなら、『まだ』殺さないのだよ。」エルクは笑う。

 

 和泉に習い、石井も銃を床に置く。和泉たち二人は完全に丸腰となった。

 

「ロボット。あんな兵器を、東洋の島国が開発した。ハッキリ言って予想外だよ。おかげで、此度の大戦は苦戦を免れなくなってしまった。」

 

 ずっと笑顔を絶やさなかった男が、ようやく表情を変えた。眉を僅かによせただけの、注視しなければ気がつかない変化ではあるが。

 

「俺らから、何かロボットの情報でも得ようとしているのかい?捕虜として。」

 

「ふむ、そうなるかな。元々、そちらの彼にはそうしてもらう予定だったし、一人増えてくれるなら

ありがたい。」

 

 エルクの目的は単純なもの。今日本が優位なのは、ロボットあってこそ。

 再び対等な戦いをするには、エラン国もロボットを投入する他ない。

 和泉たちから情報収集するというエルクの考えは、間違ってはいない。

 

(俺や石井が、ロボットの構造、設計を熟知していればの話だがな。)

 

 和泉も石井も、ロボットを自分で設計したことはない。

 これを言ったら、用済みとばかりに殺されてしまうので、あえて口にはするまい。

 

(こいつらに奪われたロボットの所在はわからずじまいか。それと、銃を無効化した手段も・・・)

 

 観念した。そういった面持ちで、和泉はエルクに向き直る。てっきり降伏するものだと思ったエルク。しかし、和泉の口から聞こえてきたのは、真逆の言葉だった。

 

「よもや、銃を無効化されるとは思ってなくてね。俺としてもお前を捕虜にしたかったんだが、そうも言ってられなくなったわけよ。だから、悪いけど、ここで死んでもらうわ。」

 

 和泉がポツポツと、低いトーンで呟く。

 

「今の君に何ができると?おとなしくしてくれれば、腕の一本や二本で済むがどう――――」

 

 エルクはそれ以上何も発することは叶わなかった。

 エルクたちの背後。壁しか存在しないところから、その壁を突き破ってきたロボットの豪腕が、エルクたちを部屋ごとさらう。

 

 唐突過ぎて、理解が追いつかなかっただろう。安全なはずの室内にいた。狙撃防止のため、窓も設けられていない。だというのに、理不尽なほど強大な力は、有無を言わさずエルクたちの命を奪い去った。

 

 ロボットの腕が通過しただけだが、ただそれだけで、周囲は散々な光景に変わる。

 

 室内・・・、いや、部屋だった空間に残された和泉たちは、特になんの感想を抱くことなく、銃を拾い上げて撤退の手はずを整える。

 

「ま、それでも。あともうちょっとで俺と石井さんごとかっさらってたよね、今の。」

 

 ロボットの操縦者。美由紀に向けた、抑揚のない言葉。

 

『いいでしょ、結果オーライよ。あんたこそ、カッコつけて敵の大将がいる部屋まで行ったのに、銃を封印されるとかダサすぎなんですけど。』

 

 失態を指摘された和泉は、苦笑いをうかべるしかない。

 

「おっしゃる通り。ホント、情けないね。」




ナルヴィはうすい青、ですか。なるほど・・・
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