コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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十八話 撤退

 休息後、和泉たちは廃墟付近を数時間かけて捜索してみたものの、成果と呼べるものはなかった。ロボットの稼働時間もだいぶ長くなってきた。これ以上続けるとガス欠をおこしそうだ。

 

「さすが新型というか。美由紀のロボはまだ半分以上燃料が残っているとは。」

 

 自身が操る旧型ロボットのエネルギーメーターを見て嘆息する和泉。

 

「私が戦闘らしい戦闘をしていないというのも、理由の一つでしょ。それを抜きにしても、燃費は遥かに良いけどね。」

 

 そろそろ日本へ帰還し、ロボットの調整をしたい。和泉も美由紀も、ロボットの活動限界を懸念し始めていた。エネルギー補給は当然として、片方だけになってしまった腕も修復しておきたい。

 

 ロボットをエラン国へ渡すのはしゃくだが、ミイラ取りがミイラになっては意味がない。

 

 自分の乗る機体の状態を把握しておくのも、一流のパイロットの務めだ。

 

「しゃあない。ここいらで撤収としますか。作戦は一時中断。」

 

 和泉が言うと、素早く撤退の準備が行われる。

 

 そんな最中だった。和泉のロボットに非常用の回線で連絡が入る。

 

「これは・・。大島博士か。」

 

 相手を確認し、即座に応答。大島が連絡を寄越してきたのは初めてだ。非常用の回線を使用するほどの用なのか。

 

「こちら第四師団所属、大柳中尉であります。」

 

『む、無事でいてくれたか。私だ、大島だ。』

 

 やはり、連絡主は大島。無事でいてくれたか、とはどのような意味なのか。

 

『単刀直入に、要件だけ言う。』

 

「はい。」

 

 大島の口調は切羽詰っている。なんだか嫌な予感がする和泉。予感だけに終わればどれだけ良かったことか。

 

『・・・アメリカ軍のロボット部隊が、君たちのいるポイントへ向かっている。』

 

「なんですって!?」

 

 アメリカがロボットを所持している?いつの間に、アメリカ軍はロボットの研究を終えていたのか。それに、和泉たちの居場所が掴まれているのも不思議だ。

 

「アメリカがロボットを完成させたのですか。」

 

 半信半疑といった様子の和泉。それもそうだ。今までアメリカは、日本がロボットの研究成果を公開していなかったこともあり、戦争にロボットを投入できずにいた。

 現在も、日本は技術をかたくなに秘匿している。

 

『今、その話は置いておくとしよう。もはや、君たちがそこから逃げきれる保証すらない。』

 

「ロボット部隊とおっしゃいましたが、どの程度の性能か、また、何台編成の部隊なのか。そうした情報は掴めていないのですか?」

 

 相手の情報が多ければ、状況を打開できるやもしれない。

 

『おそらくは、君の乗るロボットと同程度の性能。台数は、発見できただけでも十台はある。』

 

「十台・・」

 

 日本の旧型と同じ性能といえど、アメリカからすれば超がつくほど貴重なロボットのはず。

 いきなり十台もつぎ込んでくるとは。随分と羽振りが良い。

 流石は元ナンバーワン軍事国家といったところか。

 

『どうにか応援を要請してはみたものの、あまり期待はできない。十中八九、アメリカ軍のほうが早くそちらへ到着する。』

 

「日本の旧型レベル、ですか。ならば、どうにかなるでしょう。」

 

『なんだと?大柳くん。なにか打開策があるのかね。』

 

 和泉は口元だけで笑った。

 

「俺が、新型に乗ります。」

 

『いくら君でも、それは無茶だ!いきなり動けるはずが------』

 

 プツン。

 

 唐突に、通信が切断された。

 

 途中から大島との通信に耳を傾けていた美由紀が、和泉に駆け寄る。

 

「和泉!!アメリカ軍がくるって本当なの?」

 

「らしいな。そして、もうすぐご到着だろう。」

 

 大島との回線が切れたのは、敵による妨害電波が原因だろう。

 随分と用意周到なことだ。

 

 和泉は美由紀のロボットへ乗り込む。

 

「あ、あんた!?」

 

「俺が敵を引き付ける。白川隊員。お前は俺のロボットを操り、皆を先導して撤退しろ。」

 

 ロボットに搭載された武装を確かめながら、和泉は指示を出す。

 美由紀も馬鹿ではない。和泉に敵を任せ、自分たちが撤退すれば、全員で迎え撃つよりは全滅のリスクも少ないはず。

 

 納得できるかは別問題だが。

 

「敵を引き付けるだけなら、私でも良いはずよ!」

 

 そう言おうと、どれくらい逡巡したか。

 美由紀がその言葉を発することは、なかった。敵は十台。ここに残ればまず殺される。

 

 美由紀は後一歩のところで、自分の命を優先してしまった。誰も、それが悪いことだと責めたりはしないだろう。

 

 片腕のみのロボットに乗り、撤退するため先行する。どんどん小さくなる上司を尻目に、美由紀は血が出るほど、自分の唇を噛み締めていた。

 

「さーてと、ようやく足でまといがいなくなった。これで思う存分暴れられる。」

 

 残された和泉は迫る死の足音を気にした様子もなく。撤退する仲間たちを、しばらく見守っていた。そして・・・

 

『日本のロボットだな。黄色猿が、散々調子に乗りやがって。この時を堺に、再び我がアメリカがナンバーワン軍事国家となろう。』

 

「おやおや。同盟国相手に、すごいセリフだね。」

 

 和泉は十数台のアメリカ製ロボットに囲まれた。

 

「そんじゃ、まあ。死んでも恨むなよ。」

 

 敵ロボットが銃を構える。和泉は臆することなく、大型の盾でロボットのコクピット部分を庇いながら、敵部隊のど真ん中へ突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

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