コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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十九話 コールドスリープ

 敵の陣形の真ん中へ踏み込んでくる。アメリカのロボット部隊は精神的によく訓練されており、慌てふためくことこそなかったが、和泉の行動に対し、動揺せずにはいられない。

 多対一。この日本人には恐れという感情はないのか。確かに、距離を置けば銃で狙い打たれるだけ。混戦に持ち込んだほうが、アメリカ軍としても戦いにくい。

 けれど。間髪いれずに敵の懐へ入り込もうと決断し即座に行動するなんて、なかなか真似することは出来ない。

 

 和泉は、手始めに一番近くにいたロボットを破壊した。

 まず、敵が動揺している隙に間合いを詰める。そして、左手に持った盾で相手の銃を持つ腕を弾き飛ばす。

 バランスを崩された敵は、ロボットの操作自体に慣れていないためか、そのまま転倒。

 止めにコクピットを左足で踏み潰す。

 

 アメリカ兵は下手に銃を撃てば味方にあたるかもしれないこの状況で、ただ見ているだけだけしかできずにいた。

 

 味方がやられ、仲間を撃つ心配がなくなった。

 三人ほど銃を乱射するも、和泉は既に防御の態勢をとっていた。

 

(今の射撃、狙いがてんでなっていない。やっぱ、ロボットの操縦は初心者レベルだな。)

 

 右の手で銃を取り出した和泉は、その三人を確実に仕留めた。

 射撃態勢も実に中途半端で、和泉にとっては的を撃つのと変わらなかった。

 

「なに!?一瞬で四台も・・」

 

 アメリカ兵の一人が、今度はハッキリと慌てているのが見て分かる。

 ようやく日本と同じ武力を手にしたと思っているのはアメリカだけだ。日本の最新ロボットとでは比べ物にならないお粗末な性能。

 パイロットがもう少し熟練していれば話は違うが、先ほどの射撃といい、どうやら乗り手も素人らしい。

 

 アメリカ兵たちは盾でコクピットを防御する。だが、いささか遅かったといえよう。

 既に部隊の半数弱が大破した。それと、仲間の死に様を見て防御に徹するのは良い。が、今度は頭部ががら空きとなる。

 

 和泉は確実に頭部へ弾を命中させた。

 ロボットの視界は頭部から確保している。そこを破壊されれば、視界も0になってしまう。

 動けはするが、戦闘の続行は不可能となる。

 

 これで実質五台のロボットが戦闘不能だ。

 

「一斉射撃だ!コクピットを庇いながら、全員やつを撃ち殺せ!!」

 

 敵のリーダーらしい人物の一言で、どうにか士気を維持したアメリカ兵たち。

 

「最初からそうすりゃいいのにさ。」

 

 和泉は盾を捨て、両手に銃を構える。この際、バックステップも同時に行い距離をとる。

 

(ロボットの操作に慣れていないと、この数メートルの距離で一気に命中率が下がる。)

 

 あとは腕の違い。両手に銃をもつ和泉か、素人の、中途半端に守りに入った敵ロボット五台。どちらかが先に死ぬまでの実力勝負。

 

 和泉としては勝ちを確信していた。

 

 そんな、一刻一秒で生と死が決まる世界で。

 

「おいおい、どうなってやがる。」

 

 和泉の操る新型ロボットの挙動がおかしくなる。

 

(腕が・・!いや、脚部も・・・)

 

 動かない。まるで和泉の操作を受け付けない。

 

 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる。アメリカ兵の放った銃弾が僅かにかすり、新型の装甲を削ってゆく。

 

(冗談じゃない・・・。だから、新兵器には乗りたくないんだよ!)

 

 必死にコクピット内部のモニターを操ってみるが、反応がない。

 被弾するたび、和泉の焦りと不安が徐々に増す。破損したわけでも燃料が切れたわけでもない。

 このような、急に動作しなくなるなんてことは、今まで経験したことがない。

 

 まさか、ただの故障か。

 

「くっそ、大島さんよ。あの世で恨むぜ。」

 

 死ぬ。死ねば、どうなるのか。恐怖はないが、死因としては、若干納得がいかない。

 せめて万全な状態で殺されていれば文句はなかったが。

 

 あとは痛くなければこの上ない。

 

「って、やっぱダメだ。死んでたまるか!!!」

 

 ドゴッ!!

 

 渾身の力でモニターを殴る。ただの悪あがきにしかすぎない。

 そんな無意味であるはずの行動が、状況を変えた。

 

(これは・・・?)

 

《緊急脱出モード》

【現状】操縦士の生命力の低下。周囲の環境悪化。

【処置】付近に湖を確認。潜水し、現環境からの一時避難を推奨。

 

「いや、確かに周囲の環境は最悪だが、俺の生命力は低下してねーよ??」

 

 和泉がいぶかる。ロボットはゆっくりと跳躍のため膝を曲げる。和泉の意思とは関係なく。

 そして、新型ロボットの名に恥じない脚力で舞い上がり、そのまま湖に着水。

 ゆっくりと、奥底へと沈んでいった。

 

「うおお!?今すげー飛んだ。つか、なんだこの機能。安全装置か!?

 

 ゴボゴボと、鉄の塊は湖を潜る。

 

「まあ、アメリカさんからは距離をとれたけども・・・」

 

 結果オーライと、事態を前向きに捉えようとする和泉。だが、これで終わりではなかった。

 

 さらにモニターには文字が追加される。

 

【問題回復】周囲の環境は改善。日本軍へ、救援を要請しました。続いて、パイロットの生命維持を開始。

 

 和泉の身体には負傷は一切ない。病気を発症したわけでもない。

 この、生命力とは何をさすのか。

 

 和泉にはまったく理解できない。

 

 ただ。次に表示された文字は、決して無視できるものではなかった。

 

【処置】コールドスリープを開始。救援到着まで、肉体の維持を最優先。維持に失敗した場合、クライオニクスへと移行します。

 

 文字を読みきる前に和泉のまぶたはだんだんと重くなり、そのまま気を失ってしまった。

 




コールドスリープって、床ずれするんですか。そりゃそうか。
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