コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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二十話 シギュン・エルステル

 朝の日差しは、容赦なく安眠を妨げるものだ。和泉も、ふと瞼の上から光を感じ目を覚ました。

 

「あーあ、あと五分は寝かしてくれよ。あれ?」

 

 なにやら両腕を後ろ手で縛られている。そして、彼は何もない地面に転がっていた。

 さらに言うならば。

 

「あ、目が覚めたのね。」

 

 金髪の美女が、まじまじと和泉の顔を覗き込んでいた。

 ちなみに、新型ロボットは和泉の背後に待機状態で存在している。研究員のような男たちがロボットの調査をしているのが気になるが。

 

 この女性や後ろの男たちはエラン国のものか。

 和泉が小さく舌打ちする。

 

 すると。

 

「シギュン様!おさがりください。」

 

 拳銃を持ったオッサンが数人、美女を庇うように駆けつけてきた。

 関係ないが、それらの拳銃はゴツいデザインをしている。

 

「大丈夫、彼は拘束されています。私は彼に聞きたいことがあるので、皆さんは定位置にお戻りください。」

 

 しかし美女はオッサンを一蹴。

 

「はあ、シギュン様がそうおっしゃるのなら。」

 

 オッサン達は和泉を睨みながら、元いた場所へと帰ってゆく。

 なかなか気の強そうなお嬢ちゃんだ。などと自分の立場を忘れ、和泉がオッサン達に同情していると、その美女がズズイと顔を近づけてきた。

 

 本当に良く整った顔。金髪に、綺麗な碧眼。ため息が出るほどの美人とは、まさに彼女のことか。

 

「貴方、名前は?」

 

 よく聞くと、とても澄んだ声だった。顔からのイメージとピッタリな、気品のある声。

 エラン国の人間かと思ったが、使用しているのは英語。

 外見的に、英国人だろうか。それならそれで、何故英国人がこんな場所にいるのか、新たな疑問がわくけれど。

 

「大柳和泉だ。」

 

 彼女のことを意識してか、和泉も多少渋い声で応えた。拘束され、地面に転がっていなければもっと格好がついたかもしれない。

 

「ウォウヤニィギウィ・ズミダ?変わった名ですね。」

 

 シギュンは顎に手を当て難しい顔になる。

 

 いやいや、貴女のイントネーションがおかしんだよ!よほどそう言いたかったけれど、どうにか踏みとどまる。今そこは重要じゃあない。

 

「聞きたいのは、貴方の素性と後ろのゴゥレムについてです。もし協力してくれるなら、王都へと場所を変えたいのですが。」

 

 シギュンなる少女は、ロボットと和泉を一瞥。

 

(ゴゥレム?ロボットのことか?)

 

 微妙にこの少女の英語はアクセントの位置などがおかしい気もするが、とりあえず言葉は通じる。

 それに、逆らわなければ、今すぐに殺される心配もなかろう。

 

 あの新型ロボットの故障でこんな事態に陥ったのは遺憾だが、ここはひとまず協力し、脱出の隙を伺うべきか。

 

「王都ですか。良いのですか?こんな怪しさ満点の男を王都に連れて行って。」

 

 シギュンを試す一言。

 

「構いません。怪しい動きをすれば、即座に撃ち殺します。」

 

 返ってきたのは実にあっさりした射殺宣言。

 綺麗な外見、しかも真顔でそんな物騒なセリフを吐かれると、やや恐怖度が増すのだが。

 

「俺も、あんたに聞きたいことがある。拘束したままでもいいから、とりあえず話の場を設けてくれるだけでありがたいよ。」

 

「わかったわ。あなたのゴゥレムは引き続きこの場で調査を続行させてもらうけれど、構わない?」

 

「ああ。しゃーなしだな。」

 

 命あっての物種。ロボットを好き勝手いじられるのは心地の良いものではないものの、和泉もこの集団について、聞きたいことがある。

 

 もしも英国がエラン国と日本、そしていまやアメリカと三つ巴となったこの状況に、なんらかの形で接触しようとしているのなら。

 看過できる問題ではない。至急本国へ報告しなければ。

 美由紀たちの安否と、その後のアメリカの動きも気になるところ。

 

「では、ズミダ。あのバイクにまたがってください。」

 

 シギュンが指差すのは、ゴリマッチョの操るバイク。

 

「はあ、わかったよ。あと、俺のことは『イズミ』で頼む。」

 

「イズミ・・?」

 

「そうっす。捕虜の分際で偉そうに、すいませんね。」

 

 

 だが、『ズミダ』と呼ばれるのが、それだけ嫌だったのだろう。

 

「いいわよ、別に。あと、捕虜にしたつもりはないのだけど・・・」

 

「まあ、ともかく行くか。オッサン、よろしく!」

 

 和泉が股がるや、バイクは急発進する。

 

 ハンドルは存在しない。

 

「おい、おっさん。これ曲がれるの??」

 

 和泉の声は、バイクの駆動音にかき消された。

 バイクに乗って改めて、ここら一帯が広い荒野だとわかった。

 走れど走れど景色に変化はない。 

 

(てゆうか、ここ、ロシアとエラン国の国境なんだが。バイクでイギリスまでいくん?)

 

 もっともな和泉の心配は、杞憂に終わることとなる。

 

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