バイクを直線的に走らせること一時間弱。何もなかった荒野の先に、なにやら巨大な街が見えてきた。
「おお?おっさん。あれが王都かい?」
和泉は運転してくれている男性に聞く。このバイク、かなりエンジン音が大きく、お互いの声はとても聞き取りづらい。しっかりと男性に声が聞こえるよう、だいぶ声を張り上げるも、反応は一切返ってこなかった。
「ち、無視ですか。そうですか。」
ふてくされたように口を尖らせる和泉だったが、それでも運転席の男性は微動だにせず。ただ与えられた仕事を遂行するのみだ。
男性はともかくとして、王都までの道程、和泉は非常に気まずい思いをした。
王都は城を中心とした巨大な都市になっており、また、王都を囲うように外壁が存在している。
古来に存在した「城下町」みたいだと、和泉は思った。
和泉たちはその外壁をバイクに乗ったままくぐり抜け、さらに王城を目指す。
驚くべきことに、外壁の近くではロボットが見張りをしていた。
「なっ!?ここにもロボットが!!」
アメリカに続き、この国にもロボット製造技術が漏れてしまっていたのか。
これではいよいよ日本のアドバンテージがなくなってしまう。これから第三次世界大戦はどううごいてゆくのか。
その事実も、日本へ早急に伝えなくてはなるまい。
(しかし。)
バイクの上から町並みを眺める。
街には高層の建物がなく。車も走っていない。王都というからどれだけ近未来的なのかと思えば、案外田舎を連想させられる雰囲気だ。
あまり文明は発達していないのか。まず、ここが世界地図でいうどこなのか。
先ほどいた場所からバイクで一時間程度では、どう頑張っても英国までは辿りつくまい。
(なんていいますか。映画なんかで見る古代都市っぽいな。ここが王都?)
日本の首都東京と比べると、やや見劣りする。『やや』どころではないかもしれない。
「・・・ついたぞ。降りろ。」
王城近くについたあたりで、和泉は強引にバイクから降ろされた。
「おおっと。サンキュな、おっさん。」
不機嫌そうな顔で、運転手の男性はバイクでさらに王城方面へ走り去った。
シギュンもほどなくして和泉の近くにバイクを停めた。
相変わらず護衛の数が尋常ではないが。
「お待たせしました。ここからは徒歩で行きましょう。」
ヘルメットをとり、乱れた髪を整えながら、シギュンが。
「行くのはいいが、何処へだい?」
「王城に決まっています。」
何をわかりきったことを。シギュンはなんでもないような顔で告げた。
護衛の数で見当はついていたが、やはりこの女、結構な権力を有しているようだ。
「なるほど、王城ね。なるほど。」
既に歩き始めていたシギュンの背中を、和泉は早足で追いかける。否。追いかけようとした。
けれど、腕の手錠をシギュンの部下に握られており思うように動けなかった。
「もしかして、ビノンテンは初めて?」
歩きながら、シギュンが和泉に聞いた。
「ビノンテン?」
聞きなれない単語。この国の名前なのか。少なくとも、和泉は聞いたことのない国名。
第三次世界大戦をきっかけに誕生した新興国かもしれない。
プノンペンの間違いではなかろうか。・・・町並みなどが違いすぎるけれど。
「そうだな。この国は初めてだ。」
「そう。イズミ、出身はどこなの?」
「え?あー、と。」
日本軍に所属していることを、果たして伝えて大丈夫だろうか。大丈夫だと確信できない以上は言わない方が懸命だ。まずは、このビノンテン国について探りを入れるべきだろう。
「東の方さ。出身は。」
とりあえずごまかした。しかし
「へえ、そうなんですか。後でもう一度貴方の出身地も含め、もっと詳しい事情を伺わせてもらいます。珍しいゴゥレムのことも。」
ロボットに関しては、ごまかしようがない。
日本軍所属とバレるのが時間の問題であるならば、素直にしゃべってしまったほうが利口だっただろうか。ビノンテン国と日本は敵対していないのだし。
(何を甘い考えしてんだ、俺は!売国奴にでもなるつもりか)
慌てて自分を律する。日本国の軍人として、日本の不利につながる行動は慎むべきだ。
しばらくして。
王城に到着した。流石に一般住宅とは規模が違う。それでも、外観、内観ともに古代の城を彷彿とさせた。素材がコンクリートやモルタルでないのも、日本の建築と違う。
とある部屋の前にて、シギュンが足を止めた。
(ここは・・・)
「まず、貴方には取調室に入ってもらいます。厳しい処置かと思いますが、この時期にクリシュナ製ではないゴゥレムで我が国にいた貴方の行動は、看過できません。」
「ま、そうなるわな。構いませんよ、もとより覚悟はしています。」
エラン国の軍人に襲われていたら、とっくに天国だった。
こうして生きながらえているだけラッキーだ。
(にしても、クリシュナとはなんだ。またも聞いたことのない単語が・・・)
クリシュナ、ビノンテン、ゴゥレム。和泉にしても、知りたいことがたくさんある。
(エラン国にしろ、このビノンテン国にしろ、新興国は情報が少なくて困る。ロボットも心配だし、中々まずい状況だな。)
取調室にて、和泉とシギュンはテーブルを挟み向かい合う。
「さて、ではまず、貴方自身のことを質問させていただきます。」
シギュンによる取り調べが開始された。
書いてて、自分でも「ビノンテン国」に違和感感じまくりです。