コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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二十三話 疑問

「こんな場所では落ち着かないな。」

 

 そんなホズル国王の一言で、和泉たちは場所を移すことにした。

 謁見の間へ向かう道すがら、ロボットの整備室のような場所が視界に入る。

 

(あれが、この国のロボットか。)

 

 シギュン達に視線を感づかれぬよう、それとなく整備室の様子を探る。

 なにやら粘土のような物を加工している様子だが、一体それがなんなのか。和泉にはわからない。

 

「そんなに気になる?」

 

 気づかぬ間に、シギュンが和泉のすぐ近くまで接近していた。

 

「うお!?ビックリした。」

 

 視線を感づかれぬようにはしていたけれど、バレていたらしい。

 

 気になって当たり前だ。具体的にどの程度までクリシュナがロボットの研究を進めているのか。

 日本と対等の戦力を得るどころか、日本よりも先に、もっと強力なロボットを完成させてしまうかもしれない。

 

「そんなに驚かなくても…」

 

 悲しそうな顔のシギュン。和泉もやや反応が大げさになってしまったかと反省する。

 絶世の美女がそのような表情をすると、何もしていなくても謝ってしまいそうになる。

 

 シギュンを悲しませるのは、和泉としても本意ではない。ひとまず誠意を込めて謝罪した。

 

「ごめんなさい。しかし、私にロボットの整備室を見られても良いのですか?なにかよからぬ結果につながるかもしれませんよ。」

 

 どこの国でも軍に関わることは大抵機密事項のはず。

 

「その点については気にしなくても良い。」

 

 シギュンの代わりにホズルが答えた。

 

「イズミ。我々としても、君の乗っていたアンダー・ゴゥレムに興味があるんだ。君にだけ、我が国のゴゥレムを気にするなとは言うまい。」

 

 何度目だろうか。ここでまた、和泉が知らない単語が出る。

 

「…アンダー・ゴゥレム?」

 

「ああ、そうだ。…まさか知らないで操縦していたわけでもないだろう。」

 

 キョトンとした和泉の反応を見て、ホズルもキョトンとした顔になる。

 

「もしかして、言葉の意味がわからない?」と、シギュンが。

 

「…はい。」

 

 ポリポリと、頬をかく和泉。クリシュナでしか使われていないロボットの専門用語を持ち出されては、理解などしようがない。

 

「かいつまんで言ってしまえば、千年前のゴゥレムという意味です。」

 

 シギュンは淡々と述べた。

 

「千年前?いったいなんのことです。」

 

 和泉のロボットは、大島の開発した最新式のもの。

 千年前のゴゥレムと呼ばれる理由がない。

 最新式ロボットを「千年前の」なんて言うならば、今は西暦3113年ということになってしまう。

 

「貴方のゴゥレムにはおよそ千年前の技術が使用されていることが判明しました。現在、石英を用いてゴゥレムを製造するのに対し、古代では熱と相性の良い鉄が使われていたと聞きます。」

 

 シギュンが追加で説明してくれたものの、結果としてはさらに和泉を混乱させるだけとなってしまった。

 今日、ロボットに限らずありとあらゆるものに鉄が使用されている。

 時代が云々ではなく、この国だけ技術力が違うのではないか。そもそも、鉄を使わずにロボットをつくることなど可能なのか。

 

 まぎれもなく『現代』の技術を、目の前の女性は『古代』の技術とよんだ。

 

 あるいは。和泉は、アメリカ軍との戦闘後、コクピットで聞いたアナウンスを思い出す。

 

(ひょっとして、あの時の…)

 

『コールドスリープ』

 

 まさかとは思うが

 

(俺が、千年間眠っていた…?いや、ありえない。)

 

 可能性の話。しかし、先程から会話が微妙に噛み合わない。

 

 今がいつなのか。2113年に決まっている。だけれど。もしも千年後の世界であったなら、和泉は正常な精神状態ではいられない。しかし、聞かなければならない。シギュンたちの発言は、流して良いものではない。

 たった一言聞けば終わる問題だ。

 

 深呼吸をし、和泉が口を開いたその時。シギュンが急に走り出した。それも、拳銃を構えながら。

 和泉たち集団の前方を歩いていた青年に、シギュンは銃を突きつける。

 

 唐突にホールドアップを余儀なくされた金髪の青年に、シギュンは一歩一歩近づく。

 

 構えはとかないまま、澄んだ声で青年に問を投げた。

 

「ライガット・アロー!どうして私とホズルの結婚式に来なかったの?」

 

 ライガットと呼ばれた青年は顔を青ざめさせる。

 だが、どうやらシギュンとは顔見知りだったようで、殺されかけているのに表情や態度にはまだ余裕が見られた。どうやら顔見知りのようだ。

 

「収穫祭とか、いろいろ忙しかったんだよ」

 

 ライガットの言い分。彼は農家なのか。

 その言葉を聞いたシギュンはたっぷり数秒時間をおいてから、続けてライガットに問う。

 

「…私たちのことを嫌いになったわけではないのね?」

 

「当たり前じゃねーか!」

 

 そのセリフで、ようやくシギュンが銃をおろす。

 ライガットも胸をなでおろす。と、そこで何かに気づいた様子のライガット。

 

「ん?なんだ。ホズルもいたのか。久しぶり。」

 

 安堵したライガットは、続けて和泉の左隣にいたホズルに挨拶した。

 

「おう、よく来てくれたな。早速で悪いが、ライガット。謁見の間まで来てもらえるか?」

 

「ああ、わかった。」

 

 ライガットはシギュンだけでなく、ホズルとも顔見知りらしい。

 それにしても、シギュンとホズルの結婚式と言ったか。

 

 つまりシギュンは王妃。ここにきてやっと護衛の多さに得心のいった和泉であった。

 

 

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