コールドスリープで遥か未来へ   作:いたまえ

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おはやっぷー


二十六話 機体性能

「意外だな。シギュン様が、君をゴゥレムに乗せるなんて。」

 

 王城を囲むようにして造られている城壁には、何箇所かゴゥレム用の出入り口が存在する。

 和泉が現在いるのは、その中でも一番採掘場に近い出入口だ。

 

 美由紀から借りたロボットは、研究員たちに好き勝手いじられた割には、どこにも異常がなかった。この調子ならば、どうにか戦闘もこなせるだろう。

 懸念すべきは、対アメリカ戦で起こった不具合のみ。

 

 あの不具合がいかなる原因によるものなのか、未だに不明なのが心配である。

 

 そんな心理状況の和泉に声をかけたのは、クリシュナの名将と呼ばれるバルド将軍だ。

 

「そうですか。でも、俺としては嬉しい限りですよ。たとえ、貴方の部隊に組み込まれているとはいえ」

 

 バルド将軍のもと、一つの部隊が急遽設立された。

 採掘場にて敵襲を受けたホズルを保護するための部隊。

 

 和泉もその部隊の一員として作戦に参加することとなった。無論、このような状況になったのは、バルドがロボットを取り戻した和泉の監視をするためでもある。

 

 理由はどうあれ、バルドとしては、一台でもゴゥレムという戦力が増えるのは好ましい。

 和泉を信頼するわけではないけれど、シギュンに頼み込まれては部隊に参加させざるを得なかった。

 

「…イズミ。正直君の実力とやらは全くわからない。作戦を行う上で、君自身が無理だと思う状況になったら、迷わず逃げてくれてかまわない。」

 

「また随分な言い方ですね。」

 

 そうは言っても和泉本人ですら、ゴゥレムを相手にどの程度戦えるのかわからない。

 

 アメリカの、なんちゃってロボット部隊よりは遥かに手ごわそうだということは、シギュンから見せてもらった、アテネスとクリシュナの戦闘データから予測できた。

 

「とにかく、君の一番の仕事は我々の邪魔だけはしないことだ。良いな?」

 

 サングラスの奥で、バルドの目がキラリと光る。

 鋭利な目つきは紛れもない人殺しのもの。

 

 プレッシャーは、そうとうなものだろう。

 

 それでも、和泉が飄々とした態度を覆すことはなかった。

 

「はい、了解っす。」

「…くれぐれも、頼んだぞ。」

 

 そう言い残し、バルドは自分のゴゥレムへと乗り込んだ。

 

 ホズルを救うために編成されたこの部隊。

 台数としては十五台前後。

 

 バルドを先頭にして、採掘場へ移動を開始する。

 

 

「採掘場付近は峡谷になっている。敵襲が本当に起こっていた場合、二手に分かれて敵を挟み込む形がベストだ。」

 

 走りながら、バルドがゴゥレム越しに作戦プランを提示してくる。

 

「敵の数は??」

 

 和泉が質問する。

 

「詳しくはわからない。ただ謁見の間でも聞いたと思うが、敵の部隊を指揮しているのは、ゼスという陛下達のご学友だ。」

 

「そんなことも言っていたな。それが?」

 

「そいつが使用する銃は、他の物と比べ口径が大きいとのことだ。射程と威力が桁外れということを頭に入れておいて欲しい。」

 

「ほう」

 

 他の物と比べ。バルドはそう説明したが、まずゴゥレム用の銃がどのくらいの射程距離を持ち、またどの程度の威力なのか。そうした土台となる知識すら和泉は持っていないのだ。

 頭に入れておいて欲しいと言われたからには、覚えておくのもやぶさかではないが。

 

 はたして実戦で役に立つかと聞かれれば、どうだろうか。

 

「私を含む十台が敵と正面からぶつかる。あとの五台は敵の裏へ回って欲しい。」

 

 そうするためには、採掘場周辺の地形を理解している必要があるだろう。

 和泉は自然と、バルドと共に真っ向から敵に戦いを仕掛ける役割となる。

 

 …はずなのだが。

 

「んじゃ、俺も敵の後ろに回り込むわ。」

 

「何を言っているんだ。君では足でまといになるぞ」

 

 バルドの言い分は正しい。将軍として、部隊長として、わけのわからない輩を別働隊にするはずもない。

 それでも、和泉はひかなかった。

 

「敵が撤退するまでには、背中をとらなきゃいけないわけだろ?なら俺が適任だぜ。」

「根拠を提示してもらおうか。」

 

 採掘場は王都から結構な距離がある。しかし、ゴゥレムを使えばたいして時間もかからない。

 部隊は既に、採掘場付近まで迫っていた。

 

「口で説明しても、意味ないだろう。百聞は一見にしかずとも言うことだし。悪いが、お先に行かせてもらうぜ。」

 

 言い終わるや、和泉のゴゥレムが急加速する。

 先程の三倍近くまでスピードが上がった。

 

 進軍するにあたり、バルドたちは王都からここまで全速力だった。

 けれど、目の前のアンダー・ゴゥレムは、いとも簡単にバルド達と距離をおいてしまった。

 

(な、なんという機体性能だ)

 

 それだけではない。ゴゥレムで全力疾走するのは中々難しい。

 いくら操作に慣れようと、一度でも足を踏み出すタイミングがずれてしまえば転倒する。

 

 だが、どうだ。遥か先をゆくゴゥレムの安定感は。微塵も転倒する気配がない。

 機体の力か、操縦士の技量か。いずれにせよ和泉の操る機体は、バルド達の常識を超えていた。

 

(…しかし。これなら、挟撃を成功させられるかもしれん。彼を野放しにするのは不安だが。)

 

「作戦通り、後ろの五台は奴と共に敵の後ろへ回り込め!」

 

「はっ!!」

 

 バルドの部下5人が、大きく返事をし、小隊となって和泉の後を追う。

 この時にはもう、和泉の姿は米粒より小さくなっていた。

 

(彼らにイズミの監視をしてもらうしかない、か。)

 

 バルドはバルドで、ホズル救出に全力を注がなくてはならない。

 申し訳ないが、和泉のことは部下に丸投げする他なかった。

 

 部隊が分かれてから、更に走ること数分。

 採掘場の手前まで到達したバルドの視界に、二台のゴゥレムが映った。

 

 アテネスのゴゥレムと、採掘場で掘り出された黒銀のアンダー・ゴゥレム。 

 状況は、アテネスのゴゥレムが黒銀のアンダー・ゴゥレムに止めをさす瞬間であった。

 

 

 

 

 




最近朝方になってきました。
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